韓国、とうとう宇宙エレベータの開発に乗り出す

迷走韓国宇宙開発史

やった!

韓国、「宇宙エレベーター」の開発を準備中

2021.05.06 16:58

韓国航空宇宙研究院が欧米など宇宙先進国も成功できていない新たな研究開発に出る。年末に打ち上げ予定の韓国型ロケット「ヌリ号」も計画通りの打ち上げを準備中だ。

「中央日報」より

とうとう宇宙エレベータキター!

……で、宇宙エレベータって何?

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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「宇宙エレベーター」を夢想する韓国

軌道エレベーターって何?

軌道エレベーターまたは宇宙エレベーターと呼ばれる技術は、惑星の表面から静止衛星軌道以上まで伸びる軌道を持つエレベーターなんだそうで。そういえば、SFモノの定番ではあるな。

イメージとしてはこんな感じなんだろう。

概念的にはハンマー投げと同じで、ハンマー投げの選手は地球でハンマーの方が衛星軌道の外にある重しであって、ハンマーと選手を繋ぐケーブルがエレベータ軌道という構図になる。

この状態だと、地球(選手)が自転を続ける限りケーブル(軌道)は張り続ける。もちろん、ケーブルが張り続けるために調整が必要なのだが、ハンマー投げの場合は回転速度などにより調整している。しかし実際の軌道エレベーターは回転速度の調整ができない(自転速度は決まっている)ので、ケーブルの長さを変えて調整するようだが。

カーボンナノチューブのケーブル

で、これのネックは何かというと、ケーブルの強度だ。ケーブルが切れてしまっては大惨事になる。引っ張り強度も重要だが、自重によって破断してしまうような材料では困るのである。

地球上に設置するアンカーとなる構造物と、宇宙空間に浮かんでいる飛翔体、そしてそれを繋ぐケーブルが、それぞれ強度を必要とする。ケーブルの長さは少なくとも10万km以上にも及ぶので、対応出来る素材はグラファイト・ウィスカー辺りだろうと言われている。しかしながら、カーボンナノチューブにせよグラファイト・ウィスカーにせよケーブルにする程の技術はなかなか難しい。

さて、とはいえカーボンナノチューブの技術に関して、強度の面はともかくとして電線として使う目処は出来ているようだ。これは日本の話なんだけどね。

古河電工がカーボンナノチューブ電線を商用化へ

2018年01月14日

古河電気工業はカーボンナノチューブ(CNT)を使った電線の商用化に乗り出す。炭素化合物からCNTを合成する実験炉を6月をめどに同社研究所へ新設する。電線向けに特化したCNT合成炉は、国内では初という。CNTを使った電線を巻き線などに加工すれば、小型で軽量、かつ耐腐食性に優れた自動車用モーターの開発につながる可能性がある。

「ニュースイッチ」より

そこそこの製品が出来ているらしく、分子レベルでの電流輸送量が1平方cmあたり1ギガアンペアと銅と比べても1000倍の導電率を持っているとされている。

発見から25年、カーボンナノチューブは稼ぐ戦略へ

2016年11月18日

カーボンナノチューブ(CNT)の発見から7日で25周年を迎えた。CNTは日本で発見され、国が実用化に向け、継続的に技術開発を支えてきた。この四半世紀でCNTの物性が明らかになり、量産法が確立し、CNTの応用製品が開発された。だがまだ道半ば。これから産業化のステージに入る。炭素繊維のように日本を代表する材料に育つか注目される。

「ニュースイッチ」より

ちょっと前の記事になるが、ゴルフシャフトの試作品やら高性能熱輸送シートの試作品やらが出ている。

ただ、高強度のケーブルが出来るかどうか?という点についてはまだまだらしい。

宇宙エレベーターのケーブル向け材料の2回目の宇宙実験を実施

2020年 06月 11日

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、国立大学法人静岡大学(所在地:静岡市駿河区、学長:石井潔)、有人宇宙システム株式会社(本社:東京都千代田区、社長:古藤俊一)と共同で、宇宙エレベーターのケーブル材料向けに改良したカーボンナノチューブ(以下 CNT(※1))の宇宙環境曝露(ばくろ)実験を行っています。

「大林組のサイト」より

とはいえ、実際に実用化に向けて色々な実験はやっているようだ。

頑張って欲しい。

顕微鏡写真でも、非常に平滑な表面が得られていることが分かると思う。ただ、これを「長く作る」のが結構難しいらしいのだよね。

https://sei.co.jp/technology/tr/bn173/pdf/sei10548.pdf

まあ、技術革新はさまざまやられているので、そのうち日本では実現可能な技術を獲得できるかもしれない。

え?韓国?韓国はどうなんだろうか?カーボン素材を作る技術あるという話も余り聞かないのだが。

先導的研究に集中

ともあれ、先進国では様々な技術開発が為されている。

理由は、軌道エレベーターが完成すると、衛星軌道まで安価なコストで物資輸送が可能となるためである。ロケットの打ち上げコストの1/20に下げられるとも言われているからね。

技術開発に成功すれば、国としての旨味はあるだろう。韓国もその辺りを意識しだしたと言うことだろうか。

李院長は航空宇宙研究院に革新研究を専従する組織を作る構想だ。彼は「これまで韓国は先進国の宇宙研究に早く追いつく追撃型研究に集中したならば、これからは先進国がしていない研究や、試みはしたが目標を達成できていない先導型研究に集中する組織を作りたい」と話した。

「中央日報”韓国、「宇宙エレベーター」の開発を準備中”」より

そういう背景もあるのだろう。韓国もやる気を出しているのだが……、「先導型研究に集中」ですか。そうですか。

成層圏で長期間滞空が可能な無人機、宇宙太陽光研究もまだ成功できていないプロジェクトだ。李院長は「任期中に成功する研究を探すよりは、2050年以降の未来を準備することになる研究の種をまくという考え」と話した。

「中央日報”韓国、「宇宙エレベーター」の開発を準備中”」より

そして、韓国の不得意な長期的ビジョンを示している。韓国が長期的ビジョンを出して成功した話は見たことが無いのだが、それでも懲りずに長期ビジョンを出す気らしい。

まあ、成功率が低くても、長期ビジョンを持つことは大切だ。

ヌリ号、予定通り打ち上げ?

さて、若干話は脇に逸れることになるが、次に気になるコメントが。

ヌリ号と月軌道船打ち上げ計画は予定通りに推進中だ。ヌリ号は10月に打ち上げ予定だ。これまで事業が遅れ議論が多かった月軌道船も来年8月の打ち上げが予定されている。李院長は「ヌリ号打ち上げ準備は順調に進行中」と話した。月軌道船開発状況に対しても「非常に安定的に進行中だ」と説明した。

「中央日報”韓国、「宇宙エレベーター」の開発を準備中”」より

気になったのは「月軌道船打ち上げ」だ。

軌道船とは、月の周囲を回りながら地形観測、月着陸船の着陸地点情報収集、宇宙インターネット技術検証実験などを行う探査船。当初、航宇研は「段階的ループトランスファー方式」(PLT)で打ち上げる計画だったが、軌道船の重量が計画していた550キロから678キロに増え、燃料不足につながる可能性があるという問題が持ち上がった。このため、航宇研は月軌道に到着後、月上空100キロの円軌道を1年間回りながら探査活動を行う当初の計画の代わりに、3カ月は100キロの円軌道を回り、9カ月は100キロの楕円軌道を回りながら探査活動を行う計画に変更したという。

ところが米航空宇宙局(NASA)は、月探査軌道を変更した場合、NASAが月の軌道線に搭載するShadowCamが月面のイメージを計画通りに撮ることができないなど、本来の機能を果たせないことを懸念。航宇研に対し、燃料の消耗を減らせるBLT軌跡への変更を提案した。航宇研はこれを受け入れて「全軌跡設計担当チーム(BTAK)」を構成してBLT軌跡を設計し、NASA側から任務完了可能と評価されたという。

この月軌道船は米スペースX社のロケット・ファルコン9に搭載される予定だという。

「レコードチャイナ」より

夢物語か?!と思っていたが、どうやら韓国は本気らしい。

ただし、打ち上げロケットはアメリカのスペースX社が担当するとのことで、ファルコン9に搭載するとかなんとか。

SpaceXがFalcon 9による第2クルー打ち上げをライブ中継

2021年4月23日

SpaceX(スペースX)は、国際宇宙ステーションへの2回目の商用有人飛行を、太平洋夏時間4月23日午前2:49(日本時間4月23日午後18時49分)に発射する予定だ。このフライトではNASAから2名、JAXA(宇宙航空研究開発機構)から1名、ESA(欧州宇宙機関)から1名の計4名の宇宙飛行士がISSに向かい、科学実験の実施や軌道プラットフォームの維持・改良などの定期的なミッションを行う。

2020年に、Dragon宇宙船とFalcon 9ロケットの有人飛行を正式に認めたSpaceXにとって、今回のミッションは2回目の商用有人飛行となる。

「techcrunch」より

そういえば、国際宇宙ステーションに荷物を運ぶといった話があって、それなりの打ち上げ能力を持っているファルコン9だが、着陸失敗の報道は結構見るね。

ただ、軟着陸はロケットエンジンで噴射しながら着陸する手法で、打ち上げに関する失敗ではない。打ち上げだけであれば成功率は結構高いのだ。構成が結構シンプルだからね。先日宇宙から帰って来た宇宙飛行士の野口氏も、ファルコン9に搭乗している。有人でも安定して飛行出来るのは優秀だね。とはいえ、ファルコン9では衛星軌道までしか行けないわけで。そこから月軌道まではどのように移動するのだろうか?

これに関してはこんな資料が参考になると思う。

https://jpn.nec.com/techrep/journal/g11/n01/pdf/110122.pdf

月軌道に移動するためには、パーキング軌道からスイングバイなどの技術で移動する必要がある。

パーキング軌道は、宇宙待機軌道などとも言われ、宇宙船は宇宙待機軌道まで加速し、しばらくの間惰力で進行して、その後最終的な高度まで再加速する。

この再加速といのが厄介で、惑星の重力を利用して加速するスイングバイが成立するタイミングで加速しなければならないのだけれど、月軌道に至る事のできるロンチウインドウ(打ち上げウインドウ)は、シビアな時間管理が求められる。

こういったタイミング管理は、韓国が苦手とする分野だと思うのだがどうだろうか?そもそも、この手の技術のテストってやったことあるの??

ヌリ号が、上手いこと打ち上げられるかは今年10月頃のお楽しみとなるが、月軌道船に用いるタイミング制御の実験をするためにも、ヌリ号打ち上げ成功は欠かせないだろう。

そして、軌道エレベーター建設にも自前でのロケット打ち上げは欠かせない。月軌道に観測衛星を投入する技術も、軌道エレベーター建設には欠かせない技術だろう。

詰まりビジョンだけを考えれば、意外なことに逸れていないのである。

軌道エレベーターの問題点

さて、軌道エレベーターの話に戻っていこう。

軌道エレベーターの建設にあたって真っ先にやらなければ為らないのは、ガイドロープを張ることだ。このガイドロープの製造そのものにも高いハードルがある事は既に述べたとおりだが、超高強度のワイヤーをガイドローブとし、静止衛星軌道から垂らし、地上側でこれを捕まえる必要があるのも結構難易度が高い。

この時、バランスを採るために反対側にもケーブルを伸ばす必要があるので、ガイドロープの長さは20km以上必要となる。

つまり、20km分のロープを衛星軌道に打ち上げることがまずかなり困難であることを考えねばならない。余り適切では無いが、アルミニウムの線材φ30mmが1kmの長さで凡そ2tである。10km分なら20tにもなるわけだ。実際にはもっと軽くて強度のある素材を使うのだが、アルミニウムだってそれなりに軽い素材である。

で、ファルコン9の静止トランスファ軌道へのペイロードは8.3t。H2Bロケットの静止トランスファ軌道へのペイロードは8t。アトラスVは8.9t程度だとされている。であることを考えると、もっと軽くて強い素材を求める必要があって、2分割とか3分割で打ち上げて良いのか?ということを考えねばならない。

つまりヌリ号のペイロードも気にする必要があるし、打ち上げの成功率も上げていかねばならない。それが本当に可能なのかは疑問だ。

更に、ガイドロープを下ろすに際しては、その下端が赤道面に向かってガイドロープが垂れていくため、これを捕まえて適切な場所に移動させなければならないが、これもなかなか技術が必要である。移動させるときには宇宙空間に浮かんでいる中継点側の方にも推進力が必要となるからね。

大林組の構想

この手の研究に関しては大林組がもうちょっと詳細に検討していてオモシロい。

宇宙エレベーター建設構想|季刊大林
季刊大林は、建設文化に関わる情報を周辺文化と共に紹介する大林組の広報誌です。

大林組の構想では低軌道(LEO)で建設用宇宙船(125t級)を組み立てて、そこから静止軌道(GEO)に移動し、そこからケーブルを垂らしていくという構想をだしている。LEOまでの打ち上げならペイロードが上げられるので現実的な気もするが、LEOで宇宙船を組み立てるというのはなかなか凄い発想だ。

さらに、ケーブルは20tと見積もっているのだけれど、技術的に可能な重さかはよくわからないな。

ともあれ、韓国としてもこうしたことを真剣に考えるよと、その様に発表したらしい。黙ってやれば良いのに、大々的に発表して転けるところまでがお約束だと思われてしまうしね。

まあ、頑張ってください。応援だけはするから。

コメント

  1. 大林組のをはじめ、「技術的にはできそうなんだけどね」という話は結構前から聞きますが、繋ぐ先が静止衛星以外にあり得ない以上、地上側も赤道付近にしか造れんよね。と、いう…またぞろインドネシアあたりに建てる気なんでしょかね。

    • 確かに、大林組の計画も実現可能かどうかは怪しい部分もあります。
      そして、軌道エレベーターは静止衛星に繋がないと、安定性に欠けて使い物にならないという観点での指摘を忘れておりました。
      技術的に出来なくも無いのでしょうが、ハードルはかなり高くなりますからねぇ……。
      何しろ、赤道付近に置かないと地上ポイントと衛星の距離が変わってしまって、ケーブル部分を伸び縮みさせる必要がありますから、各段に難しくなりますよね。

      まあ、とはいえこの話、そもそも妄想の類ですから、言うだけなら何でもアリです。

  2. 静止衛星の公転速度が秒速3キロらしいです。そこから20キロのワイヤーを垂らすと、先端の速度は6〜7倍になるらしく(振り子の原理?コリオリ力?)、単純に考えると音速の70倍になるようです。先端を捕らえることも困難ですが、超音速が巻き起こすソニックブーム(衝撃波)で、赤道地域が壊滅するとか何とか。すみません、物理学の素養が欠落しているのでらしいばかりですが、大惨事になるようですよ。

    • 原理的には、静止衛星は相対的に停止しているので、静止軌道からワイヤーを垂らしたとしてもワイヤーの先端が音読を超える様な事態にはならないと思います。
      ただ、実際には完全に停止しているワケでは無いのでしょうし、指摘されるコリオリの力の影響や風などに煽られれば動く為、それなりの速度のワイヤーを安全に捕まえる技術はかなりハードルが高いと思います。
      この辺りの事は、ある程度は論理立ててシミュレーションが可能ですが、実際にワイヤーを垂らして観測してみないと分からない事も多いと思います。
      ……実験にはそうとう金がかかりそうですけどね。