いや、本当に覚悟を示せよ。
欧米各国、足並みそろえ中国人権問題に圧力…制裁加わらない日本に米は「判断を尊重」
2021/03/23 10:58
米政府は22日、中国新疆ウイグル自治区の少数民族に対する人権弾圧に関わったとして、自治区の高官ら2人を制裁対象に指定した。米国内の資産を凍結し、米国人との取引を禁止する。欧州連合(EU)のほか、英国、カナダも22日に対中制裁を発表し、人権問題を巡り欧米各国が足並みをそろえて中国に圧力を強める姿勢を鮮明にした。
「讀賣新聞」より
こういったアメリカからの不当な同調圧力に「屈するな」という方もいるだろう。
だが、このケースでは「べき論」を言えば単独でも支那の人権問題を問題視して制裁を決めるべきなのだ。もっとも、それは現実的では無いので、欧米諸国に同調して最も効果的な手法を狙うのが良いだろう。
アメリカと支那との外交交渉・支那の敗北濃厚
舌戦を何となく再現
先日、アメリカの国務長官ブリンケン氏は、支那と口喧嘩をしたというニュースが報道された。
米中外交トップ会談、異例の応酬 冒頭発言全文(上)
2021年3月22日 22:30
米国務省は18日に米アラスカ州で会談したブリンケン米国務長官と中国の外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員らの冒頭発言の全文を公表した。ブリンケン氏とサリバン大統領補佐官の発言に対し、楊氏と王毅国務委員兼外相はそれぞれ猛反論。報道陣の前で異例の応酬となった。
「日本経済新聞」より
その中で、ブリンケン氏は開口一番、支那が最も嫌がる問題を口にした。

ブリンケン氏
- アラスカくんだりまでノコノコと良く来たな!
- 同盟国の日本や韓国と会談して、戻ってきたところだ。オマエんところ行かなかったけどな!
- 言っておくけど、この問題は一地域の問題じゃなくて、世界に関わるモノだ。
- 誰もが同じルールにのっとっているとの確証を持つのが、グローバルな商取引に必要なんだぜ。
- 力こそが正義で勝者が総取りするオマエんとこのルールには乗れないんだよボケぇ!
- 新疆ウイグル自治区、香港、台湾、米国へのサイバー攻撃、同盟国への経済的な強制行為など中国の行動に対する我々の深い懸念についても提議するっ!
- オマエんところとは協調できるところもあるだろうけど、基本ルールに則らなければこの話は無しな!
サリバン氏
- おう!クソ寒いアラスカで会談するのは「適切」だぜ、オマエらとはな!ようこそ!
- 寛大でしなやかで勇敢であるという米国らしさ、感じられるだろ?感じるよな。
- 武漢ウイルスよくもばらまきやがって、散々苦労したぜ。
- バイデンの爺はよぉ、自由で開かれたインド太平洋構想の実現を約束したんだぜ?分かってるのか?
- 世界中の同盟国やパートナーは、オマエの横暴に辟易としているんだよ。
- アメリカは、同盟国やパートナーの利益も守るんだよ。
- それについてこれから話し合うことを楽しみにしてるぜ。

楊氏
- グギギギ、俺と王は、戦略的対話のためにこんなとこまで来てやったんだよ!
- 偉大なチャイナは、全人代と政協で俺様ルール決めたんだよ。
- 武漢肺炎を克服した偉大なチャイナは、自身の努力でここまで成長したんだ、文句言うな!
- 我々の価値観は人類共通の価値観と同じで、「平和、発展、公平、正義、自由、民主」だ!
- 俺様ルールは、オマエが主張する「国際的ルール」とは違ってすげーんだよ。
- どっかの国は戦争を仕掛けて多くの犠牲者をだしているけど、俺の国は違うんだぜ。
- ぎゃ、虐殺とかいうな!
- 印象操作もすんな!
- 偉大なチャイナは俺様ルールを貫くぜ!
- お、オマエの所にも理解を示してくれるのなら、ちょっとだけ分け前をやってもイイゼ。
- だから、アメリカの軍事力や金融覇権を振りかざされると迷惑なんだよ!や、やめてくれよ。
- 他の国を唆してチャイナ攻撃すんのほんとやめて。
- 日本はチャイナの言うこと聞くし、韓国は属国だぜ?ASEANがあるから貿易だって大丈夫だ。
- 近平がよー、「話し合ってこい」って。
- あと、ウイグルとチベット、台湾は俺んとこのだから文句言うな!内政干渉だ!
- そもそも、ジンケン・ジンケン言うけど、おまえんとこ、どうなの?
- 偉大なチャイナはもっと成長して、アメリカを追い越すぜ!
- 貿易戦争もほんとやめて。
- 欧米は世界の中心じゃねーんだよ。世界の中心はチャイナだ!そこんところ分かってるのか?
王氏
- お、俺はちょっと短く喋るよ。
- あ、アメリカはチャイナの真の友人だよな?な?
- アンカレッジに呼ばれたことも恨んじゃいないぜ。ほら、空路を考えればちょうど中間地点だし。
- あー、アメリカの批判は聞きたくない。
- アメリカこそ内政干渉すんな。直ぐ止めろ。
- アンカレッジくんだりまで来てやったんだから、こちらの言い分もちょっとは聞け?
- ま、前向きに話しよう。
とまあ、シナリオになかった場外乱闘を始めたアメリカに狼狽しながら、長大で意味のない爆撃をぶちかました楊氏と気後れした王氏。本来なら、簡単な挨拶くらいで終わるはずだったのだが、そうはならなかった。
王氏は適当に取り繕った感じが強いな。別の手もあったのだろうが、楊氏のメンツを潰す訳にも行かないと言う辛い立場である。
第2ラウンド
そして始まる第2ラウンド。
「聞いた話と違う」米中外交トップ会談、冒頭発言全文(下)
2021年3月23日 11:03
18日に米アラスカ州で開かれたブリンケン米国務長官と中国の外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員らの会談では、双方が相手の冒頭発言への反論を繰り返す展開になった。ブリンケン氏は退室しようとした報道陣を呼び止め、米国の立場の正当性を強調。楊氏は米側が外交儀礼に反していると強く反発した。
「日本経済新聞」より
本当なら、第1ラウンドもそこそこに終わるはずだったこの会談、ところが長引いた上に更に第2ラウンドが始まっちゃって、帰るに帰れないのが報道陣である。
ブリンケン氏
- よくも言ってくれたな!マスコミ、ちょっと帰らずに聞いていけよ!
- 同盟国に行ってきたけど、オマエんとこ酷いことをやってるじゃないか。みんな心配してたぜ。
- 逃げないで、議論しようぜ。
- 課題を無視したり課題が存在しないかのように偽ったり、カーペットの下に隠したりする態度はどうかと思うぜ。耳が痛くても受け入れろよ。
サリバン氏
- 俺も付け加えるぜ。
- オマエんとこ、自信満々だけど、自分の欠点見えてないだろ。
- アメリカはそこに立ち向かうぜ。
- ちょっと前に火星に探査機送ったけど、あれ、同盟国とパートナーがアメリカと力を合わせた結果なんだぜ。
- そういう協力をするためには、人間の尊厳と人権の理念に根差している国じゃないと、むーりー。
- そんなわけだからさ、言いたい事があれば言えよ、聞いてやるぜ。
楊氏
- わ、私が間違っていた!話を始める前にケンカにならないように言っておくべきだった!!!
- アメリカのせいで俺はおかしなスピーチする羽目になったじゃないか。
- 見下してるんじゃねーぞ!
- アメリカが良い国だとカンチガイしていたわ!ふ、ぶれいな!
- れ、礼儀を弁えて話をしなければ、偉大なチャイナとは会話が出来ない!尊敬しろ!
- きょ、協議はきっと利益が得られる。
- 俺の顔に泥を塗るな!
- 偉大なチャイナは、包囲網に屈したりはしない!そして、そんな状況では話はできない!
- もう、話す事はない!
王氏
- も、文句を言われても困る。
- 同盟国を使ってチャイナを威圧するのは、ちょっとやだな。
- そのあたり、棚の上にあげて話をしない?
- 話し合う準備はできているから!できてるから!相互尊重の精神でいこう?ね?
……。
ほんのちょびっとだけ悪意があることは認める。認めるが、大筋こんな感じであったことは引用前の文を読んで頂ければ分かるだろう。
アメリカは話し合う気はなかった
でまあ、読んで頂いて分かったように、アメリカは最初から「叩きつける」ことが前提で、「のこのこ来やがったが、一昨日来やがれ!」という姿勢だったみたいだな。わざわざ招いておいて、「話し合いする前に人権問題や侵略行為は止めろよ、話はそれからだ」と言うようなことを言ってのけるわけだから、流石と。
米政府はこれまで自治区トップを含む当局者や公安当局などを制裁対象とし、各国にも同調を求めてきた。EU外相理事会が22日、対中制裁を決めたことに合わせて追加指定を行い、「連帯」を示した形だ。ブリンケン国務長官は声明で、「国際的な非難が高まる中、中国はジェノサイド(集団殺害)と人道に対する罪を犯し続けている」と非難し、ウイグル族らに対する抑圧をやめるよう求めた。
「讀賣新聞”欧米各国、足並みそろえ中国人権問題に圧力…制裁加わらない日本に米は「判断を尊重」”」より
なかなかケンカ慣れしているわ、アメリカ。
支那経済がかなりヤバい事になっているのだけれど、アメリカも笑って座っているほど余裕が無いというのが現状なんだよね。中・長期戦やったらアメリカは不利だ。
だからこそ、今、支那の勢いを挫きたいわけだ。
まあ、習近平氏を招待して、チョコレートケーキと一緒にシリアに対してミサイル爆撃する映像をプレゼントする前大統領のトランプ氏よりは随分とマイルドなやり方ではあるが……。

バイデン政権が始まって、「もしかして親支那派なんじゃね?」と思われていたところにコレだから、継続して戦う気だと明確に示したかったんだろうね。
日本は喉元に短剣を突きつけられる
さて、こういった状況で、欧米は支那に対して人権侵害を軸にアライアンスを組んでいくことに決めた。
また、米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国外相は22日、「我々は中国の人権侵害にスポットライトを当てるために団結し続ける」とする共同声明を発表し、国連などによる独立した調査を受け入れるよう中国に求めた。
「讀賣新聞”欧米各国、足並みそろえ中国人権問題に圧力…制裁加わらない日本に米は「判断を尊重」”」より
当然、クワッドの提唱国である日本こそ、これを主張すべきだった。だが、アメリカは、「日本が自ら決めることで我々が勧めることはない」と突き放した。
さっさと覚悟完了しろよ、という通告だ。
オリンピックを開催しようとしている日本にとって、今、支那におかしな態度をとられるのは勘弁して欲しいという本音はあるだろう。ここの成否は去年一年間引き延ばした結果に繋がるだけに、橋本聖子氏を神輿に担いでやる気を出した状況にあるだけに、簡単に首を縦に振れないという気持ちは分かるし、そこはアメリカも責任を持てないからと言う意思表示だろうね。
韓国にも当然冷たい視線が向けられているわけだが、そこは言わぬが花と言うヤツだろう。菅義偉政権は、さて、どういった選択をするのだろうか?
願わくば、毅然とした態度で臨んで欲しい。
同盟国として、というよりはクワッドの態勢をもっと強固にして意見を取りまとめる、それが日本に求められているものだろう。
追記
コレの前にブリンケン氏の名調子を紹介しなければならなかったのだけれど、韓国分析で定評のある鈴置氏の記事が非常に参考になる。

紹介しておきたいが、問題の部分も引用しておこう。
さらに「米韓同盟は価値を共有する」「人権と自由、法治を重視する自由で開かれたインド太平洋という未来を共に実現したい」「もちろん、米韓は価値を共有している」「我々は基本的権利と自由を求める人々の側に立ち、弾圧する側に反対せねばならない」などと、韓国に対し「民主主義の側に戻れ」と繰り返し要求したのです。
~~略~~
その韓国に対し米国の国務長官が「中朝を非難せよ」と公式の場で命じた。それも会談の冒頭、いわゆるメディア用語でいう「頭撮り」の時間ですから記者もカメラも入っている。
メディア含め韓国側は、公開の席で米国から立ち位置を明確にするよう求められるとは思ってもいなかった。そんなことになれば米韓の亀裂が世界に明らかになってしまう。米国にそこまでの覚悟はない、と甘く考えていたのです。
「デイリー新潮」より
ブリンケン氏、どうやらこの手の外交がお得意らしい。
韓国に対してメディアの前で「民主主義の側に戻れ!」「戻るんだ!」と叱りつけた模様。もはや、韓国の立場無しである。
ちなみにこの記事では、バイデン氏も同じセンテンスを使っていると言うことを紹介していて、米国の韓国不信、韓国疲れを肌で感じる話だ。日米2+2では、日本は完全にアメリカ側とその立場を確認していて、立ち位置も対支那を鮮明にした。
そこと韓国の立場の違いが鮮明になり、ブリンケン氏の発言によって韓国はかなり立場が悪くなった。そして、その事にアメリカが配慮しなくなった事が恐ろしい。
コメント
日本がこれに同調すると、どうせまた「南京ガー」とか騒ぎ出すのが目に見えてはいるような気がします。どうせ見えてる地雷踏むのなら、せいぜい嫌らしいタイミングで踏みに行くしたたかさが欲しいところであります。ドイツあたりと一緒に。
ご指摘の通り、「軍靴の音ガー」と、空耳が聞こえてしまう方々が沢山でてきてしまいますね。
そして、「話し合うべき」とか。
話し合いで解決したら、苦労は無いんだよと。そう言いたいところです。
木霊さん、こんばんは。
アラスカ会談2+2ではアメリカは冒頭から人権問題で攻めたって事ですね。
なかなか痛快なやりとりを意訳して下さり楽しめましたし、とても判り易かったです。
さて、ご指摘通り問題はウジウジしている日本政府ですね。
基軸の日米同盟・QUAD提唱国としての責任・イギリスとの再同盟締結の気流+ファイブアイズへの加入(クリアすべき課題はスパイ防止法制定など多々ありますが)、フランス・ドイツ艦艇の東シナ海派遣...、と西側諸国による支那包囲網は着々と進んでます。
もう後戻りはもちろんブレーキすら掛けられないのですから、しっかりと腹を決めて毅然としたメッセージで日本を世界に知らしめるチャンスなんですよね。
媚中の二階派・公明党・他売国議員を一気にあぶり出し、鉄槌を加えるくらいの大胆な行動に出て欲しいもんです。
アラスカでの会談はなかなか面白いやり取りだったようです。
ただ、本人達は真面目にやっていた訳で、こういった丁々発止ができるというのが、本物の外交なのでしょう。
口汚く罵ったので、美しくないとか、優雅さが無いとかいう話になるかも知れませんが、イギリスがやってくるもっとえげつない外交を考えれば、ストレートな分だけマシなのかと。
そして、こういった強い姿勢にでられる背景にあるのが、経済と軍事なんでしょうね。