まずは、3.11東日本大震災から10年の歳月が過ぎ、人々の記憶からいろいろなものが抜け落ちてきているが、今も苦しんでいる人々もいる。先ずは亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
で、他人事のように記事を書いているメディアを見るにつけ、自らの責任を省みる必要があるんじゃないのかな。
福島原発事故から10年 農水産物などの風評被害今も続く
2021年3月10日 4時53分
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から11日で10年となりますが、福島県産などの食品に対する風評被害は今も続いています。
政府は被災地を中心に、農林水産物などの放射性物質の濃度を継続して調べています。
震災後の2011年度に行われた最初の検査では、基準値を超えたのは全体の3.4%で、コメや野菜、果物、水産物など幅広い品目に及びました。
「NHKニュース」より
何というのか、一番の重責を担っているのはNHKなんだぜ。自覚はあるんだろうか?
責任をとらないメディア
現状の風評被害は伝えられているのか
さて、このニュースの伝えている内容を噛み砕いていこう。
震災後の2011年度に行われた最初の検査では、基準値を超えたのは全体の3.4%で、コメや野菜、果物、水産物など幅広い品目に及びました。
今年度は、去年12月現在で基準値を超えたのは、一部のきのこや山菜類などで全体の0.025%まで減少しました。
日本の基準値は国際的なルールと比べて10倍厳しいうえ、基準値を超えると出荷が制限されるため、政府は十分に安全性が確保されているとしています。
「NHKニュース”福島原発事故から10年 農水産物などの風評被害今も続く”」より
時系列的な文の作り方をしているが、「今年度は」の続きがいけない。「去年12月現在で基準値を超えたのは、一部のきのこや山菜類などで全体の0.025%まで減少しました。」と書かれているが、「全体の0.025%まで減少しました」がどこにかかっているのかがわかりにくい。直前の「一部のきのこや山菜類など」なのか、「基準値を超えたのは」なのかは感覚的に良くわからない。
作文技術的には、「基準値を超えたのは」=「一部のきのこや山菜類など」は分かるにせよ、「全体の0.025%まで減少」したのは、重量比なのか品目数比なのか、何%から減ったのか、そのあたりがさっぱりわからない。
データを見ればなんとなくは分かるが、この数字をどうやって作ったのかは分からなかった。
反証はアンケートから
さて、「福島産の産品は安全だ」と日本政府が言っているとして、コレに対する反証がこちらだ。
しかし、消費者を対象にした調査では、放射性物質を理由に福島県産の食品の購入をためらうとした人の割合は8.1%、被災3県は6.1%で、調査を開始した8年前の半分以下まで下がりましたが、風評被害は今も続いています。
「NHKニュース”福島原発事故から10年 農水産物などの風評被害今も続く”」より
市場調査のアンケートで、「福島県産の食品の購入をためらう」という人のデータから、「風評被害は今も続いている」と分析している。
しかし、こうした人々が「何故そう感じるのか」「何を基準にそのように考えたのか」という事を調査しないと、意味はない。公表されたデータを見ていないのか、未だに全数検査をしている事を知らないのか。
むしろ、検査をしない時のデータは気にならないのだろうか?
それ以前のフォールアウト
さて、こんなデータがある。

これは2009年の調査結果で、核実験のフォールアウトの影響を調べたものであった。

実はあまり問題視されていないが、過去においても日本国内にかなりの量のセシウムが降り注いだ時代があった。

コレのほうがわかりやすいか、こちらは上の4つの図のうち左上のものと同様のグラフなのだが、核実験の影響やチェルノブイリ原発事故の影響はかなり強かったと言うことが分かるし、福島第1原発事故の影響でも飛び抜けてた改良の放射性物質が降下したことが分かると思う。これは東京都のデータでなので、距離の近い福島での事故の影響を大きく受けたことは間違いない。
縦軸が対数なので、福島第1原発の影響は1960年代の10倍以上の降下物があったことを意味している。もちろん、影響もあっただろう。が、それ以前にも問題があったことに何故眼をつぶるのだろうか。
科学的データに基づかない決定をする外国
さて、こうした事実を考えると、一時的に福島産の食品に対して悪い感情が出てしまうのは仕方がないにしても、もう10年も前の話で科学的にはクリアなのだ。国民にそのように説明をし、メディアだって「政府は大丈夫だと言っています」などという表現ではなく、メディアも調べた結果問題ないことを確認しましたと何故言わないのか。
その答えがこちらにある。
また、海外では、震災後、最大で54の国と地域で日本産の一部の食品の輸入が規制されましたが、これまでにカナダやオーストラリアなど39の国で撤廃されました。
しかし、依然として香港や中国、台湾、韓国など6つの国と地域が福島県産などの一部の食品について輸入の停止を続けているほか、EUとイギリスなどが、放射性物質の検査証明書の提出などを求めています。
「NHKニュース”福島原発事故から10年 農水産物などの風評被害今も続く”」より
どんな国が福島産だけでなく東北地方からの食品輸入の停止を続けているか、だ。まあ、大部分は支那の影響下にある国だと言って差し支えない。
狙いも解りやすいね。
再稼働できない原子力発電所
そして風評被害を受けているのは、福島県だけではない。
東北電力 運転停止中の女川原発 設備に大きな異常確認されず
2021年2月14日 0時19分
宮城県石巻市と女川町にある女川原子力発電所は現在、運転を停止していて、東北電力によりますと、外部からの電力に問題はなく、設備に大きな異常は確認されていないということです。引き続き、東北電力では詳細な調査を続けているとしています。また、原発周辺にある放射線量を測定するモニタリングポストの値にも変化はないということです。
「NHKニュース」より
久しぶりに名前を見た女川原発だが、東日本大震災のときに被災しながら、安全に停止して問題を起こすことはなかった。
それどころか、他の場所よりも安全だと、当時、原発の近くにあった体育館に避難した方々もいた。
しかし、10年経過した今でもまだ再稼働できないでいる。
宮城知事、東北電力社長に女川原発再稼働の同意伝達
2020.11.18 14:28
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働をめぐり、村井嘉浩知事と女川町の須田善明町長、石巻市の亀山紘市長は18日、東北電力の樋口康二郎社長と県庁で会談し、再稼働への同意を正式に伝えた。村井知事は同日夕方、梶山弘志経済産業相に再稼働の地元同意を報告する。
「SankeiBiz」より
最近ようやくこれの再稼働が議論され始めたのだが、もちろん反対派も動き始めている。
読む価値はないけれどね。
結局これも風評被害なのである。メディアはこうしたことから逃げずに議論し、正しい情報を伝えるように努力してほしい。
追記
この事故に寄せて天皇陛下が寄せられたお言葉を紹介しておきたい。
「御言葉」
東日本大震災から十年が経ちました。
ここに皆さんと共に、震災によって亡くなられた方々とその御遺族に対し、深く哀悼の意を表します。十年前の今日、東日本を襲った巨大地震とそれに伴う津波により、二万人を超す方が亡くなり、行方不明となりました。
また、この地震に伴う津波や原子力発電所の事故により、多くの人々が避難生活を余儀なくされました。
この震災の被害の大きさは、忘れることのできない記憶として、今なお脳裏から離れることはありません。
あれから十年、数多くの被災者が、想像を絶する大きな被害を受けながらも、共に助け合いながら、幾多の困難を乗り越えてきました。
また、国や全国の地方自治体、百六十を超える国・地域や多数の国際機関、大勢のボランティアなど、国内外の多くの人々が様々な形で支援に力を尽くしてきました。
私も、皇后と共に、被災地を訪れてきましたが、関係者の努力と地域の人々の協力により、復興が進んできたことを感じています。
これまで復興に向けて歩んできた多くの人々の尽力とたゆみない努力に深く敬意を表します。
一方で、被災地ではまだ様々な課題が残っていると思います。
復興が進む中にあっても、新しく築かれた地域社会に新たに人と人とのつながりを培っていく上では課題も多いと聞きます。
家族や友人など親しい人を亡くしたり、あるいは住まいや仕事を失い、地域の人々と離れ離れになったりするなど生活環境が一変し、苦労を重ねている人々のことを思うと心が痛みます。
また、原子力発電所の事故の影響により、人々がいまだに自らの家に帰還できない地域や、帰還が始まったばかりの地域があり、農林水産業への風評被害の問題も残されています。
高齢者や子供たちを含め、被災された方々の心の傷を癒やし、心身の健康を見守っていくことも大切であると感じます。
今後、困難な状況にある人々が、誰一人取り残されることなく、一日でも早く平穏な日常の暮らしを取り戻すことができるように、復興の歩みが着実に実を結んでいくよう、これからも私たち皆が心を合わせて、被災した地域の人々に末永く寄り添っていくことが大切であると思います。
私も、皇后と共に、今後とも被災地の方々の声に耳を傾け、心を寄せ続けていきたいと思います。
先月にはマグニチュード七を超える地震が福島県沖で発生しました。
被災された皆さんに心からのお見舞いを申し上げます。
この地震は東日本大震災の余震と考えられており、このことからも、震災を過去のこととしてではなく、現在も続いていることとして捉えていく必要があると感じます。
我が国の歴史を振り返ると、巨大な自然災害は何度も発生しています。
過去の災害に遭遇した人々が、その都度、後世の私たちに残した貴重な記録も各地に残されています。
この度の大震災の大きな犠牲の下に学んだ教訓も、今後決して忘れることなく次の世代に語り継いでいくこと、そして災害の経験と教訓を忘れず、常に災害に備えておくことは極めて大切なことだと考えます。
そして、その教訓がいかされ、災害に強い国が築かれていくことを心から願っています。
今なお様々な困難を背負いながらも、その苦難を乗り越えようとたゆみない努力を続けている人々に思いを寄せ、安らかな日々が一日も早く戻ることを皆さんと共に願い、御霊への追悼の言葉といたします。
「NHKニュース」より
全文引用は本来御法度であるので、NHKニュースの全文を引用するなどと言うことはまずやらないが、天皇陛下の御言葉に関してNHKに著作権は発生しないので(そんなことをしたら不敬である)御言葉の部分だけ全文引用させてもらっている。
日本国民は注釈をつけずにただ素直にこの御言葉を受け取れば良いと思う。
コメント
木霊さん、おはようございます。
数多くの犠牲になった方達に心から哀悼の意を表すると共に、10年経った今も故郷に帰れない方々や心に傷を負った方々がいることを忘れてはなりませんね。
ご指摘通り根強く良く残る風評被害についてはマスメディアの罪は重いと思います。
かと言って、必要以上に安全だと吹聴する必要はなく、2021年時点を起点とし時系列で数値変化・科学的根拠をキチッと報道し、後は国民に周知するお得意のキャンペーン(ネガティブじゃない)をやるのが筋でしょう。
同時に世界各国の専門機関にもデーターをオープンにして理解を求める事も重要ですね。
後は国民・各国政府が日本の真摯な姿勢を冷静かつ合理的に理解をし判断=支持表明すればいい。
P.S.
天皇陛下の強い願いと慈悲を込められたメッセージこそが日本人の気持をストレートに表現された言葉であり、世界中に陛下のお気持ちが伝わる様願ってなりません。
10年経過した今でも、行方不明になった身内を探している人がいるのですから、今なお「終わっていない」のでしょうね。
メディアには「事実に基づいた報道」をしっかりやって欲しいと思いますよ。
東電がやっている事が正しいとは言えないのでしょうが、それについてしっかり報道しないと国民も知らずに終わってしまうのです。
地元が不必要な風評被害に遭う現状は、やっぱり打破する必要があると思います。そして、処理水に関しては既に待ったなしの状況なので、結論を出したいですよね。
天皇陛下の御言葉に関しては、追記として引用させて頂きました。