トランプ氏弾劾の荒唐無稽さと広がる民主・共和党の間の亀裂

北米ニュース

予想通りというか、予定通りにトランプ氏に対する弾劾裁判は否決された。

焦点:弾劾裁判で民主・共和党間に深い亀裂、新政権運営に支障か

2021年2月15日4:43

米上院は13日、連邦議会占拠を巡るトランプ前大統領への弾劾裁判で無罪の評決を下した。しかし民主、共和両党の間には深い亀裂が残り、バイデン新政権の政策運営に支障が生じる恐れもある。

「ロイター」より

ロイターには、新政権運営に支障になるのではないか?という見方が紹介されているが、これもバカバカしい主張ではある。

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史上初、2回の弾劾裁判をうけた大統領

破天荒な大統領だったトランプ氏

トランプ氏の破天荒っぷりは、多くのメディアが紹介していて、今さらこのブログで説明するまでも無いだろう。「メキシコとの国境に壁を建設する」とぶち上げたり、「TTPに参加しない」と宣言したり、「WHOから離脱する」とか「イランの核合意から脱退する」など、まさに様々な事を言い放ち、多くのことを成し遂げた。

ただし、支那との関係については、大統領就任前は「重要なビジネスパートナー」という位置づけであったようだが、その本性を知るや経済的にも対立を鮮明にするなど、大統領就任当初とはその立場を変えた政策もある。台湾政策に関しても、これに付随して大きく変化したようだ。

1度目の弾劾訴追

さて、こうしたトランプ氏の発言や行動に対して、批判・反発もあったようで、政治的に敵対する人も多かったようだ。実際に、2019年12月18日にウクライナ疑惑に関連して米下院議会が弾劾訴追決議案を可決。史上3人目の弾劾訴追を受けた大統領になった。

このウクライナ疑惑だが、直接的には、トランプ氏がウクライナ大統領のゼレンスキー氏に対して、バイデン親子のウクライナにおける活動について捜査するように要請した、というもので、これが大統領の職権濫用に当たるとのものだった。

だが、元副大統領の職にあったジョー・バイデン氏がウクライナ企業から何らかの利益供与を受けていたとすれば、アメリカを揺るがす大問題になりかねない。外国資本からの利益供与で、国策に大きな影響を与えたことを意味するのだから。そして、実際に、ジョー・バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏がウクライナの天然ガス会社であるプリスマ・ホールディングスの取締役を務めており、その報酬は月額500万円にも上っていたとされている。

「息子疑惑」米メディア二分 トランプ氏、バイデン氏追及に躍起―米大統領選

2020年10月22日20時31分

米大衆紙が報じた大統領選の民主党候補バイデン前副大統領と息子ハンター氏をめぐる疑惑で、大々的に報道する保守系FOXニュースと、ほとんど無視するリベラル系メディアの対応が割れている。

~~略~~

2014年ごろウクライナ企業から月5万ドル(約520万円)の報酬を得ていたハンター氏と当時の副大統領バイデン氏をめぐっては、この企業に対する汚職捜査をやめるようウクライナに圧力をかけた疑いが指摘されている。

「時事通信」より

そして、ジョー・バイデン氏は、その職にいる間にウクライナに「汚職捜査を止めるよう」に圧力をかけていた疑いがあった。

つまり、このウクライナ疑惑は、寧ろジョー・バイデン氏の方がマズイ立場にある話であったのである。この疑惑に関して捜査が進んでいるかどうかは分からないが、事はアメリカの国益に関わる話。トランプ氏がウクライナに圧力をかけたかどうかはハッキリしないが、仮にそうであったにせよ、寧ろウクライナに捜査してもらってアメリカ国内の問題を炙り出す必要性はあったと思う。

そうだとすると「職権濫用」であったのか?という点は疑わしいのである。当然、共和党の大半の議員はこの訴追を「無理筋」だという風に感じていた模様。

2度目の弾劾訴追

そして、2度目の弾劾訴追なのだが……。

「トランプ後」米政治占う 弾劾裁判、9日から

2021年02月08日07時11分

支持者による米議会襲撃を扇動したとして弾劾訴追されたトランプ前大統領(共和党)の弾劾裁判が9日から上院で始まる。民主党は、暴動を招いた責任を立証し「トランプ政治」からの脱却を名実ともに国民に印象付けたい考え。一方、トランプ氏の影響力がいまだに残る共和党は、有罪評決への賛否で各議員が踏み絵を迫られ、裁判の行方は党の今後を左右しそうだ。

民主党は上院に提出した準備書面で、5人の死者を出した1月6日の議会襲撃での、トランプ氏の「疑いのない責任」を指摘。その直前の集会で「死に物狂いで戦う」よう支持者に求め、怒りに満ちた群衆が暴徒と化すことは「完全に予見可能」だったと断じた。

「時事通信」より

何というか、今年の初めに暴徒がアメリカの議事堂に突入するというとんでもない事態が発生してしまった。

そして、その責任がトランプ氏にあったのだというのが、2回目の弾劾訴追の理由なのだが、あまりにも無理のある主張である。ただ、アメリカ民主党の方々は、トランプ氏の存在そのものまで抹殺したかったらしい。

そんな思惑が入り交じって、トランプ氏への弾劾訴追、それもトランプ氏がその職を辞した後の上院への弾劾訴追書類提出ということで、やっぱり無理があった。

弾劾に関しては何処かで説明をしたのだが……、そもそも弾劾とは身分保障された官職にある者を、義務違反や非行などの事由で、議会の訴追によって罷免する手続きなのである。

つまり、トランプ氏が大統領の職にいない状況での訴追は、「意味の無い行為」なのだが、そこに意味を持たせるために、弾劾訴追によって大統領出馬の権利を取り上げようというのが、今回の弾劾の趣旨であったようだ。

……無理がありすぎる。

共和党でトランプ氏の地位を脅かす候補

さて、共和党内部でも、トランプ氏をこのまま旗頭にしておいて良いのか?という葛藤はあるようだ。ただ、次世代の候補となると、副大統領であったマイク・ペンス氏かマルコ・ルビオ氏くらいしか目が無さそうだ。

「トランプ以外」なら誰? 米共和党、大統領候補うかがう面々

2020/12/10 07:30

ドナルド・トランプ米大統領が2024年の大統領選再出馬に関心を示すなか、共和党全国委員会(RNC)は、共和党の大統領候補はほかの人にも開かれているという立場を示そうとしている。

~~略~~

政治ニュースサイトのポリティコによると、RNCのロンナ・マクダニエル委員長は、フロリダ州での会合で話してもらえないか、共和党の要人多数に打診した。この会合は、共和党の大統領候補を評価したり、その数を増やしたりする場の一つとなっている。

トランプは招待者十数人のうちの一人にすぎない。ほかの招待者は、上院議員ではティム・スコット(サウスカロライナ州)、トム・コットン(アーカンソー州)、テッド・クルーズ(テキサス州)、ジョシュ・ホーリー(ミズーリ州)、ジョニ・アーンスト(アイオワ州)、リック・スコット(フロリダ州)、マルコ・ルビオ(フロリダ州)。多くはトランプの忠実な支持者として知名度を上げた面々だ。

また、サウスダコタ州のクリスティ・ノーム、フロリダ州のロン・デサンティス、テキサス州のグレッグ・アボット、アリゾナ州のダグ・デューシー各知事のほか、サウスカロライナ州前知事でトランプ政権で国連大使を務めたニッキー・ヘイリーとマイク・ペンス副大統領も名を連ねている。

「Forbes」より

ああ、国連大使を務めていたニッキー・ヘイリー氏も、アリかもしれないね。

ともあれ、割と小粒な候補が多く、資金力と知名度という点ではトランプ氏の右に出るものはいないのは事実なので、4年後を待たずして大統領選挙が行われる可能性はあるが……、次もトランプ氏である可能性は高い。

なかなか共和党内でも、ポスト・トランプ氏という人材の捻出には苦慮していると言うのが実情だろう。

共和党からも造反

というわけで、トランプ氏を強制的にパージすることで、自らの地位を引き上げようという層もあったようだが。

一方、有罪投票を行ったビル・カシディ上院議員の地元ルイジアナ州の共和党組織は13日、同議員の問責決議を採択。カシディ議員は14日にABCの番組で、事実が分かれば自分の意見に賛同する有権者が増えるだろうと述べた。

「ロイター”焦点:弾劾裁判で民主・共和党間に深い亀裂、新政権運営に支障か”」より

事実が分かったら困る人の方が多い気がする。

客観的に見て、トランプ氏の「扇動」が議事堂の「襲撃」に繋がったとは考えにくい。とはいえ「おかしな証拠」が出てくる事も考えられるので、長引くことがトランプ氏に対してはマイナスに働く可能性も否定はできない。

バイデン大統領は弾劾裁判後に声明を出し、「この野蛮な闘いを収め、ほかならぬわが国の魂を癒やす」ために結束しようと呼びかけた。一方、トランプ氏は下院の弾劾訴追と上院の弾劾裁判は「魔女狩り」だと訴えた。民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、弾劾裁判で無罪を支持した共和党議員を「臆病者」と呼んだ。

バイデン大統領は弾劾裁判の過程でおおむね民主、共和両党のさや当てから距離を置いてきた。バイデン氏は1兆9000億ドル規模の追加経済対策法案の議会通過と一部閣僚人事の議会承認を目指している。しかし議会内の不協和音がすぐに収まることはなさそうだ。

「ロイター”焦点:弾劾裁判で民主・共和党間に深い亀裂、新政権運営に支障か”」より

んで、こうした煽り合いが、バイデン氏の政権運営に暗い影を落としそうだというのがロイターの分析である。残念ながら、バイデン氏は共和党からも賛同を得られる政策を進めるしか無い状況にあり、対トランプという構図を作る事に成功すれば、もうちょっとマシな政権運営が期待できるのだが……。

バイデン氏にとって、それはかなり「厳しい」と考えているのだろう。

乱発される大統領令

それが大統領令の乱発に繋がる。

トランプ氏、大統領令を連発 就任100日間で戦後最多に

2017年4月27日 23:53

29日に就任100日を迎えるトランプ米大統領が、大統領令による実績づくりを加速している。トランプ氏は100日間で戦後最も多くの大統領令を出した大統領になる見通し。支持率が戦後最低レベルに低迷するなか、大統領令への署名数を強調して実績をアピールする。

ホワイトハウスによると、トランプ氏は就任100日までに30件の大統領令に署名する計画だ。

「日本経済新聞」より

トランプ氏は就任100日で30件の大統領令を「乱発した」と報じられたが、バイデン氏は3日で30件を達成したらしい。

バイデン米大統領、連日の大統領令に批判も

2021年2月3日

バイデン米大統領が次々とトランプ前政権からの転換を図っている。1月28日には医療保険制度改革法(オバマケア)の拡充のほか、人工妊娠中絶を支援する団体への政府の資金援助を禁じる措置を撤回する大統領令に署名した。

「日経ビジネス」より

ロケットスタートを切ったバイデン大統領の胸算用

2021.2.2(火)

就任式当日から1月末までに、バイデン大統領は40を超える大統領令や積極的行動案を発している。これは、過去5代の大統領の就任直後と比べても格段に多い。あまり日本では話題になっていないが、米国以外ではバイデン大統領に対して「無難な大統領」「凡人大統領」との揶揄があり、これが米国に還流している。バイデン大統領にしてみれば、本来の自分の姿を見せるべく頑張っていると考えるのが妥当だろう。

「JB press」より

ご高齢な大統領が、腱鞘炎になりそうな勢いで大統領令に署名する背景に何があるのか?といえば、「仕事をしているぜ」というアピールと共に、政策を示す場がこの程度しか無いのだろう。

何しろ、バイデン氏、アメリカをどう導いていくかの具体的なビジョンがないのだから。

ただ、歴代大統領の中で最多の大統領令を発したのは第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトでその数なんと3,721本である。バイデン氏は流石にこれを超えることは難しそうだ。もちろん、バイデン氏に歴代最多になるという意図はないのだろうけれど、トランプ氏の方針とは大きく異なる為にこんな事態になったのだろう。

亀裂と言えば……

そういえば、こんなアクシデントもあったな。

バイデン氏、右足の甲を亀裂骨折 愛犬と遊んでいて転ぶ

2020年11月30日 10時21分

バイデン次期米大統領の主治医は29日、政権移行チームを通じて声明を発表し、バイデン氏が右足甲の骨にひびが入る亀裂骨折と診断されたと明らかにした。数週間は、患部保護と歩行補助のためのブーツの着用が必要になるとしている。

「朝日新聞」より

バイデン氏が一番心配しなければならないのは、自身の健康問題である。しかし、アメリカ国内の混乱も収めなければならない。

NATO、米欧亀裂の修復なるか バイデン外交と世界

2020年12月4日 2:00

「北大西洋条約機構(NATO)内の政治的な不一致は危険だ」。1日、NATOに提出された報告書は米国と欧州諸国の対立を念頭に、亀裂を早急に修復するよう促した。ロシアと中国がそこにつけいり、NATO各国の利益と安全を危険にさらしかねないと警告した。

~~略~~

米大統領選で当選を確実にしたバイデン前副大統領は同盟重視を掲げ、欧州側の期待は高い。欧州連合(EU)の欧州委員会は2日、バイデン氏に対し、新型コロナウイルス対策、環境問題、貿易・技術、基本的価値の4分野での協力を提案。声明で「国際協力に関する大西洋間の新しい議題を設定する機会だ」と強調した。

「日本経済新聞」より

更に、アメリカと欧州との亀裂の修復も、ということなのだけれども、そもそもNATOがアメリカの防衛費のタダ乗りをしてきたという現実を、アメリカ国民が怒っていることが問題であって、NATOに甘い顔をすることが正しいというわけでもない。

色々、舵取りが難しい状況になっているバイデン氏だが、これ、どうしていく気なのだろうか。トランプ氏は一貫したアメリカ重視政策を展開したのだが、ここで180度方向転換というのはほぼ不可能。何故なら、アメリカ議会の怒りがトランプ氏を突き動かした側面があり、そこは汲み取らなければならないからだ。どの辺りを残して、自らの目指す方向に向かうことができるのか?あちらこちらの「亀裂」と呼ばれるものを修復することにバイデン氏の手腕が問われているのだが……。期待出来そうに無いな。

副大統領はカマラ・ハリス氏ということで、バイデン氏に万が一のことがあれば、史上初の女性大統領誕生ということになるはずだが……。性別云々より、この人物の政治手腕そのものに疑問符が付く状況である。

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