洋上風力発電を推進し始めた菅義偉政権

政策

大丈夫なのかよ。菅義偉氏が首相になって、いきなり始めた事業というわけではないにせよ、勝算があってのことだと期待したいのだが。

《独自》洋上風力、世界最大手が国内2社と共同応札へ 政府公募事業

2020.12.7 07:17

政府が洋上風力発電を推進する新法「再エネ海域利用法」に基づき初めて公募した着床式の洋上風力発電事業に、世界最大手のオーステッド(本社デンマーク)が日本の陸上風力大手の日本風力開発、ユーラスエナジーの2社と共同で応札する方針を固めた。近く発表する。オーステッドによる日本での公募応札は初めて。菅義偉(すが・よしひで)首相は洋上風力などで温室効果ガス削減を推進する方針で、3社は事業拡大を通して日本で関連産業の育成も目指す。

「産経新聞」より

正直、日本においては陸上に建設する風力発電所よりは、洋上に建設する風力発電所の方がメリットが大きいとは思っているが、しかし、それが実現できるかどうかという話は又別である。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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風力発電所を建設しよう!

風力発電の失敗

日本で風力発電が盛り上がっていない理由は、既に失敗した経験があるからである。

風力発電事業が赤字だらけの理由

2012年1月23日

今年7月から、風力で発電された電気が、固定価格で買い取られる制度がはじまる。 だが、足元の風力事業は度重なる失敗で危機的な状況に陥っている。 発電設備の能力を重視することを改め、発電量を稼ぐことに注力しなければならない。

「Wedge REPORT」より

風車がくるくると回るだけで発電できるイメージがある風力発電だが、実のところ風力発電は日本各地で失敗した事例が報告されている。

実は、日本の国土において風力発電を行うには色々な制約がある。1つは建設するための土地の価格が高いということ。1つは人の来ない土地を探すと、山奥の人通りの少ない地域を選ぶ事になり、結果的に継続的なメンテナンスが困難になること。1つは風況(風力発電に適した風の条件を満たしている)が良い場所は日本国内に少ないこと。などなどが挙げられる。

補助金をぶち込んで、日本全国に風力発電用の風車を建てたにもかかわらず、多くの場所で風車が稼働していないというような残念な結果になってしまったのである。

最後に、地域と連携した開発だ。近年の開発は、やや強引なものが目立ちはじめている。結果として、各地で強い反対運動が起き、また稼働後も騒音、低周波音、風車の影の明滅(シャドーフリッカー)の問題も起きている。

「Wedge REPORT”風力発電事業が赤字だらけの理由”」より

また、稼働している風車にも、騒音問題に悩まされているところもあって、「何の問題も無いクリーンな発電方法」などではないのである。

イギリスで建設される風力発電所

さて、失敗事例を見ただけでは話ができないので、次に成功事例とされる外国の事例を見ていこう。1つはイギリスだ。

海に囲まれる国・イギリス 洋上風力発電で世界をリード

世界の洋上風力発電は近年、急速に拡大しており、2013年・2014年の導入量は各150万kWを超え、プロジェクトの大型化も進んでいます。2015年までの導入実績はイギリス・デンマーク・ドイツの3ヶ国で世界全体の78%*1を占めていますが、中でもイギリスの導入量は他を圧倒し、2位のデンマークと比べても約3倍の規模があり(グラフ1参照)、世界でも最先端の洋上風力発電所が続々と運転を開始しています。

「大阪ガスのサイト」より

イギリスは日本と同様の海洋国家であり、洋上風力発電に力を入れてきた。

イギリスがどれだけ風力発電に力を入れているのか?はこのグラフを見ても分かるが、かなりの力を入れている様子が分かる。

報道によっては『2020年までに7,000基以上の洋上風力発電を設置し、国内の全消費電力の約3分の1をまかなう』などというとんでもない目標を立てていたようだが、流石にそこまでではないようだ(2019年7月末までに9,929機の風力タービンを保有:陸上も含む)。

Wind Energy Statistics

Our UK Wind Energy Database (UKWED) contains useful information and data about onshore and offshore wind projects in the UK.

陸上発電が13,062メガワットで海上発電が8,483メガワットということらしいね。随分とイギリスは頑張っているようだ。

発電コストに関しては、随分と抑える事ができたようだが、それでも建設コストが高いために、ガス火力発電の3倍以上の発電コストがかかっているという報告が出ている。

発電コストの問題

さて、洋上風力発電はイギリスでも積極的に取り入れているという事例を紹介しているけれども、イギリスがコレに踏み切れた背景には、環境問題への意識の高まりと共に、遠浅の海が確保しやすいという事情があったようだ。

海底からニョッキリ突き出している風車だが、イギリスで採用されているものの大部分は海底着床型のタイプ。

日本ではこうした遠浅の海域を確保することが困難であるため、浮体式の発電を選択せざるを得ないと言われている。

当然ながら、左(地上風車)よりも洋上風車(着床式)の方がコストは高く、それ以上にコストが高いのが洋上風車(浮体式)なのである。なお、浮体式洋上風力発電も外国で実績があるにはある。

建設ラッシュの洋上風力は脱炭素の切り札となるか?

2020年4月3日

丸紅や大林組、関西電力など13社が出資する秋田洋上風力発電は2020年2月、日本初となる大型の洋上風力発電所の事業化を決めた。出力は14万kWに及び、秋田港と能代港の2カ所に分けて建設する。22年の後半から、固定価格買取制度(FIT)の認定に基づき、1kWhあたり36円で20年間売電する予定だ。

「Wedge」より

実は、イギリスで洋上風力発電が進められた背景には、風況に恵まれているという点が評価されたからこそだ。

そもそも、英国を中心とした欧州で洋上風力発電の導入が進んだ理由は、その〝恵まれた〟自然環境にある。英国、ドイツ、デンマークなどの間にある北海の南部には、水深10~20メートルの大陸棚が広がる。洋上風力発電の風車には、水深60メートル未満の海域への設置が適した「着床式」と、水深60メートル以深の海域でも設置が可能な「浮体式」の2種があるが、北海はコストの低い着床式風車を設置できる遠浅の海域だ。

また、年間を通じて同じ方角から吹く偏西風も欧州で導入が進んだ大きな要因だ。北海南部は、年間平均風速毎秒9メートルと風況に恵まれている。

「Wedge”建設ラッシュの洋上風力は脱炭素の切り札となるか?”」より

それを日本に当て嵌めようというのだが、今、有力視されている建設場所は、九州、福島沖、千葉県銚子沖に秋田沖である。秋田県と言えば、菅義偉氏の故郷でもあるよね。

ただ、建設コストを含む事業コストは500 MWの発電設備1箇所で2000億円程度とも見込まれており、更に費用が膨らむことも考えられる。

ダイヤモンドオンラインなどは「15兆円が動く洋上風力バブル」などといって大々的に特集を組んでいたくらいで、政府が掲げる2030年の目標では風力発電の設備容量は1000万kwで、洋上風力は82万kwだという予定らしいので、少々計算が合わないのだが兆単位のお金が動くのは間違いない。

発電コストは外国に比べて高くなる

さて、建設コストが高いと、発電コストも高くなる傾向にある。

これは日本国内での太陽光発電のコストと、陸上風力発電のコストを世界と比べたグラフで、押し並べて高い様子が分かると思う。

日本国内で太陽光発電のコストが高い理由は、単純にイニシャルコストが高いからという事になるのだが、陸上風力発電の方は稼働率が低い事も一因となっているだけになかなか頭の痛い話である。

洋上風力発電ではこれを改善できる見込みがあるという事のようだが、そもそも建設費が高いことがネックとなっている為、安定的な発電が続けられるとしても、発電コストを下げることは困難だ。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)新エネルギー部風力・海洋グループの佐々木淳主任研究員は、欧州と日本の自然環境の違いが大きいと指摘する。 「まず違うのが風況だ。欧州では安定した強い風が吹くが、日本は季節風や台風などにより、欧州ほど安定していない。また、季節ごとの平均風速の揺れ幅も大きい。そのため、場所によっては強く吹く風に備えて風力タービンのブレードを強くするなど、欧州と比べて高クラスの設備が必要になる。また、設備の基礎の部分についても、地震や津波を想定して設置しなければならない」

「Wedge”建設ラッシュの洋上風力は脱炭素の切り札となるか?”」より

条件もそれ程良くないため、その辺りを含めて考えると、トータルコストは高くなるだろうと予想されている。

早々に撤退する企業も

ちなみに、こんなニュースも。

洋野の洋上風力発電 暗礁に 三井不動産計画、機器メーカー撤退

2020.11.30

三井不動産(東京都中央区、菰田正信社長)が洋野町で計画する洋上風力発電事業が暗礁に乗り上げている。環境調査などを着々と進めるさなか、機器の発注先となる国内メーカーが生産から撤退し、軌道修正を要するため、当初想定した2021年の運転開始は難しい情勢だ。参入を前向きに捉え、準備を進めてきた町や町民らは行方を注視している。

~~略~~

日立製作所から国産機の調達を予定していたが、19年に生産撤退を発表し、大型風力発電機を生産する国内メーカーが消滅。海外製品を使う形で計画の練り直しを試みているが、海外メーカーは少数ロットでの購入が難しく、壁にぶち当たっている。

「岩手日報」より

日本国内での風力発電は、製造メーカーとしても採算に合わないケースが多い様で、日立製作所が発電施設の生産撤退を発表したことで、岩手県洋野町の沖合に作る予定だった着床型の洋上風力発電は暗礁に乗り上げてしまった。

岩手県のこの発電所が国産メーカーの採用を予定していたのには、前述した失敗事例を参考にしたのだと思われる。実は、海外のメーカーの風車を手に入れるには、納期がかかる上に保守部品をストックしておく事が難しく、万が一故障した時に、直ぐに保守部品を手配すると言うことも難しいという事情があるからだ。

実際に、運用実績を調べても、故障してから何年も動かせない風車というのが国内事例としてあがっている。コレを避けたかったのだと思われる。

外国メーカーに任せるしかない日本の事情

日立製作所が撤退

さて、千葉沖の洋上風力発電所は絶賛計画中のようだ。

千葉沖洋上風力、東京ガスが参画 カナダ社などと推進

2020年12月3日 19:32

千葉県沖での洋上風力発電を目指してカナダの企業などが設立した事業会社に東京ガスが出資した。洋上風力発電を推進する再エネ海域利用法に基づき、県内では銚子市沖の一般海域が7月に促進区域に指定されたが、それに続く適地を開発して事業化に取り組む。

「日本経済新聞」より

現在、銚子沖ウインドファームとして、たった1基の風車がくるくると発電をしているのだが、ここから更に風車を増やす計画のようだ。

銚子沖洋上風力発電所の概要|風力発電|東京電力リニューアブルパワー株式会社
東京電力リニューアブルパワー(RP)の「銚子沖洋上風力発電所の概要」ページ。水力・風力・太陽光といった再生可能エネルギーでの発電に関する情報、卸売やO&Mなどのサービスについての情報を掲載しています。

一応、6年間の実証運転を経て2019年1月から商用運転が開始されているので、予定通り運用が始まるという風に考えれば良いのかも知れない。が、これ、デンマークのオーステッド社が噛んでいる案件だ。

岩手県のようなケースは珍しく、実際には海外メーカーの製品を採用することが多いのが実情のようだ。そんな事情もあって、日立製作所は事業から撤退してしまった。

スクープ 日立、風力発電機生産から撤退へ

2019年1月25日

日立製作所が風力発電機の生産から撤退することが、日経ビジネスの取材で25日、明らかになった。すでに新規の受注活動を停止しており、契約済みの製品の生産が終わり次第、埠頭工場(茨城県日立市)での風力発電機の生産を止める見通しだ。

「日経ビジネス」より

2019年に商売から手を引いてしまった日立製作所だが、2020年には事業が本格化することが分かっていて、何故このような決定をしたのか?というと、「海外メーカーの方が実績も技術力も豊富であると判断したから」ということのようだが、どうにも政治的理由があったような気はする。

政治力を発揮出来れば、国内にこれから増やす予定の風力発電の風車を作る事ができたのだろうが、実際に公募方式を採用した場合には、価格的にも技術力的にも劣る日立製作所では太刀打ちできないと判断したのだろう。

成長する支那の市場

ところで、気になるニュースはこちら。

世界の洋上風力発電が急成長、中国の設備容量は10年後に世界一に

2020年08月06日

 世界風力会議(GWEC)は5日に発表した「2019年世界洋上風力発電報告書」の中で、アジア太平洋地域の指数関数的成長や欧州の持続的な急成長により、世界の洋上風力発電設備容量が2019年末の29.1GW(1GW=1000MW)から、2030年には234GWに激増すると予測した。その時には、中国は英国を抜き、洋上風力発電設備容量が世界最大の国になるという。

「Science Portal China」より

実は、支那では使える海域が狭いにも関わらず、洋上風力発電大国になっている。シェアトップも目前という状況である。

世界の洋上風力発電市場の2013年以降の年平均成長率は24%。昨年末現在、欧州は依然として最大の洋上風力発電市場で、世界の設備容量全体の75%を占めている。同地域は今後も世界の洋上風力発電成長の焦点になる。英国、オランダ、フランス、ドイツ、デンマーク、ポーランドなどのリーディングを受け、2050年に450GWという積極果敢な設備容量目標を掲げた。

アジア太平洋地域及び米国市場はペースを上げており、今後10年に急成長する地域になる。試算によると、中国及びアジア太平洋地域は今後10年の成長を推進する重要な駆動力になる。

「Science Portal China”世界の洋上風力発電が急成長、中国の設備容量は10年後に世界一に”」より

支那は洋上風力発電の分野でも、技術的後進国であったにも関わらず、今や世界でトップレベルの増加速度で風車を建てまくっている模様。

コレが何を意味するのか?ということは、支那の海洋進出を含めて考えれば容易に分かると思う。

中国、洋上風力発電への国家補助金を2022年に廃止へ

2020年1月9日 11:26

中国の関係部門は、収入に応じて支出を決める方式で、今後補助金が必要な再生可能エネルギーの建設規模を確定することを明らかにした。2022年からは新規洋上風力発電事業への中央政府の補助金を廃止し、地方政府による補助金支給を奨励し、地元の洋上風力発電事業の建設を支援する。上海証券報が伝えた。

「AFP」より

支那ではもの凄い額の国家補助金をぶち込んで洋上風力発電産業を育ててきた。ここ10年ほどでその事業は拡大し、今や世界でのシェアもトップ10に3社が食い込むような状況だという。

ちなみにこうした傾向は陸上の風力発電でも見られ、2000年頃から多数の風車を建設して支那国内の風力発電所を順調に増やしてきており、風力発電の設備を作る会社も順調に育成されてきている。計画自身はもっと前からあるので、30年以上係属してこの計画を推進してきたといえる。

なお、設備ありきで建造した為に、一部で作った電気を送電することができずに捨てているという皮肉な結果になっているようだが、それも次第に解消していくと思われる。

国家的プロジェクトでないと推進が難しい

結局のところ、洋上風力発電というのは世界的な潮流になりつつあり、順調に増えてはいるのだが、日本ではそれに乗り遅れた感が強い。

その理由は日本政府がこの計画に及び腰だったからである。

洋上風力発電をする場合には、洋上に風車を浮かべる必要があるという技術的問題に加えて、送電設備をしっかり計画して建設する必要があり、海中に送電ケーブルを敷設するなど、様々な分野で様々な技術的課題を解決していかねばならない。

その上で、陸地に送電ケーブルを繋いで、陸上の送電施設に繋いでやる必要があって、変電施設も海岸沿いに建設する必要がある。これがかなり大きなプロジェクトとなるので、政府の後押しなしでは実現はかなり困難なのだ。

3.11以前までは、日本は原子力発電を推進する方向で原子炉を増やしており、風力発電は見限っていたというレベルで力を入れていなかった。その結果が今に繋がっているのだが……、しかし、「効率の良い発電」が実現できるかどうかは又、悩ましいところ。

日本政府が本腰を入れたにせよ、82万kwの商用発電を確保するには様々な困難を伴うことが予想される。設備さえ整えば、割と順調に発電してくれるのが風力発電の良いところなのだが、メンテナンス性まで含めて考えると、投資に見合う結果が得られるかは不透明だ。

政府は11月27日、発電事業者に一般海域の30年間の占有を認める同法に沿って秋田県沖と千葉県沖の計4区域で公募を開始。3社は秋田の「能代市・三種町・男鹿市沖」「由利本荘市沖北側」「同市沖南側」の3区域に応札する。

「産経新聞”《独自》洋上風力、世界最大手が国内2社と共同応札へ 政府公募事業”」より

菅義偉内閣は洋上風力発電に光を見出したようだが……、果たしてそんなに都合良く話が進むのだろうか??秋田県に利権を落とすだけの結果になるにせよ、「成功する」という結果が得られることを期待したいのだが。

しかしそうだとすると、発電機の製造も国内で賄えるようにしないとダメだと思うのだが、撤退してしまった日立製作所に早めにお願いするか、先に撤退した三菱重工を呼び戻すのか。国内で生産出来てメンテナンスできるところまでキッチリ考えないと、ダメだと思うんだけどね。国内産業まで育ててこそ、大規模な事業展開が出来ると思うんだけど。

これも菅氏の手腕によるところが大きいのかな。

コメント

  1. 風力は、安定した風が吹かず、台風も来る本邦にはあまり向かないと当方も思いますが、消去法的にはこれしかないのでしょう。
    最有力の地熱は、土地がらみの問題(温泉街の存続、国定公園内で建設出来ないetc)があり、太陽光の筋の悪さは折り紙付き。となると……

    ひらめいた!いっそ巨大洋上プラットホーム作って、そこにイージスアショア載せちゃえ!

    • 風力発電も、風況が良い場所限定だとかなり良い発電手法のようなのですが、なにぶん、日本はこれが良いところが乏しいのですよね。
      土地の選び方が一番大切なのですが、その辺りがネックのようですね。

      洋上プラットホーム+イージス・アショアは、ありといえばアリなのでしょうけど、それを防衛するのはなかなか大変なのだとか。
      何かの施設と兼ねるというのは、良いことだと思うんですが。