種苗法改正案が可決されたら、今頃になって騒ぐ人が

農業

twitterのトレンドに「#種苗法改正に反対します」というハッシュタグを見かけた。未だにそのハッシュタグは消えていないのだけれど、一体何が言いたいんだ?この人達は。

種苗法改正案を可決 海外流出防止、農家負担に配慮―衆院農水委

2020年11月17日16時20分

ブランド果樹など農作物新品種の国外への持ち出しを制限する種苗法改正案が17日、衆院農林水産委員会で可決された。19日にも衆院を通過し、参院に送付される見通し。一方、規制強化により生じる可能性がある農家負担への配慮を政府に求める付帯決議も採択した。

「時事通信」より

だって、11月17日に可決されたのに、今何故騒ぐ?と、思っていたらどうやら衆議院通過、参議院通過を経ないと成立しないからだ、ということらしい。参議院を通過するのは12月1日頃と言われているので、遅くとも今週中には通過する可能性が高かろうと思う。

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しんぶん赤旗がキャンペーンをはる種苗法改正反対

改正の趣旨

取り敢えず、前回の審議の時に某女優が騒いだことで話が大きくなったときに触れた記事を紹介しておきたい。

今回も、前回批判した山田正彦氏が頑張って活動していらっしゃるようだが、それを全面的に応援しているのは「しんぶん赤旗」である。実に筋が悪い。

さておき、先ずは改正の趣旨について。

話題の種苗法改正って? なぜ反対が多い? そもそも種苗法とは
種苗法改正案の審議が11月11日、国会で始まった。種苗法は品種の育成者の権利保護を定めた法律だ。改正には、農業関係者だけでなく、一部の消費者も強い関心を示している。種苗法改正案ほど、人によって受け止め方に差がある法案も珍しいだろう。日本の種

改正の趣旨についてはこちらの記事で説明がなされているので、一読されれば論点の整理ができるのでは無いのだろうか?

ただ読んでくれ、だけでは不親切なので簡単に纏めておく。

先ずは種苗法の目的であるが、立法趣旨はサックリ言うと品種改良の促進と、流通の適性化である。で、今回問題になったのは海外への種苗の流出だ。

その問題の根幹が自家増殖という種苗法の抜け穴の存在であって、この穴を塞ごうというのは今回の法改正の目的となっている。ところが、これに真っ向から反対している勢力がいるというのが今回の騒動の構図だ。

知的財産権の弱点

えーと、どこから説明をすれば良いのか。

先ずは、悪名高い日本弁理士会のサイトから紹介していこう。

日本弁護士連合会:令和2年種苗法改正法案に関する意見書

毎回毎回おかしな意見書を出すことで有名になった日本弁理士会だが、種苗法改正法案に関する意見書というヤツを出していた。

で、「多分、反対なんだろう」と思って読んでみたら逆に改正を求める内容だった。驚きである。

本意見書の趣旨

令和2年通常国会(第201回国会)に提出され、継続審議となっている「種苗法の一部を改正する法律案」は、我が国の農林業の競争力強化を企図するものであるから、十分に審議を尽くした上、早期に同法が改正されることを求める。

「日本弁理士会のサイト」より

書いてあることは真っ当なのだが、いつもの弁理士会の姿勢から考えるとこれも何か落とし穴があるのでは無いか?と疑心暗鬼になってしまう。

ただ、特許法を始めとする知的財産権の考え方を踏襲すれば、どう考えても種苗法の今回の改正は正しいという結論にしかならない。

こうした研究開発の実情については,植物新品種の開発現場においても同 様の問題が惹起し得るところであるが,種苗法においては平成27年改正前 の特許法35条と同様の規定(種苗法8条)となっている。そのため種苗法 改正法案において,これを特許法と同様に職務育成品種についての品種登録 を受ける地位の企業等への法人帰属を認め,またその地位の承継に際しての インセンティブの多様化等を図る対応が行われることが企図されている。

「日本弁理士会のサイトの意見書」より

一部抜粋すると、こんな感じだ。

ところが、知的財産権の考え方での最大の弱点は、「金を持っているところが強い」という構図になりがちなのである。少なくとも知的財産権は弱者を守る方向性で設計はされていない。それを「弱点」と分析してしまうと余り宜しくないかもしれないが、弱者救済を目的としていない点はハッキリしている。

また、少なくとも知的財産権の在り方を理解せずにいると、とんでもない事態に巻き込まれかねない法律でもある。それは法律全般に言えることではあるのだが。

ルサンチマンを煽ることを仕事にする赤旗

さーて、そういったベースで考えていくと、「しんぶん赤旗」が何を狙っているかは、理解し易い。

種苗法「改正」の問題点

2020年11月7日(土)

政府・与党は今の臨時国会で、前の通常国会で継続審議とされた種苗法「改正」案を成立させようとしています。法「改正」について、日本共産党の田村貴昭衆院議員・農林水産部会長に聞きました。

~~略~~

「改正」案では、登録品種については自家増殖を原則禁止とし、登録期間の25年または30年の間は、許諾料を払わなければならなくなります。

「しんぶん赤旗」より

「しんぶん赤旗」を引用すると、こんな切り口となっている。しかし自家増殖をする農家というのは現在では極めて少数派である。いや、過去においても少数派であったが。

そして、赤旗の論点で一番マズイ点は、「有機農業や自然農法では自家増殖する農家の割合が高いはず」などというおかしな主張をしている点である。「正確に調査し、これらの農家の意見を聞くべき」って、日本共産党がしっかり調査して資料提出して法案に反対すれば良い話。

現実的には、多くの農家がF1品種の種を使っているため、今回の法改正に影響することはなく、自家増殖している農家が使っている種のほとんどは登録されていない品種か、又は保護期間が切れた品種である。寧ろ、ここで例外を作ってしまって自家増殖OKとなると、自家増殖した種であれば海外へ流出させても罪に問われない、というザル法のままになってしまう。

種子法廃止

ちなみに、「主要農作物種子法」(種子法)が今回の法改正とセットになっていると言われている。

この種子法というのは立法目的が食糧難だった時代に、「お目こぼし」(安定的生産及び普及を促進)の為に施行されていたが、流石に時代が変わったので法律の役割を追えて廃止された。

赤旗はこれにも反対していて、どういう理由か「食の安全が脅かされる」などという事になってしまう。

食の安全脅かされる

多国籍企業の利益に

―種苗法「改正」で、誰が利益を得ますか?

 世界的にみると、多国籍の農業関連企業(アグリビジネス)による種子の支配が広がり、バイエル(モンサント)、シンジェンタなど上位4社が種苗市場6割超を占有しています。これらは化学企業であり、遺伝子組み換えやゲノム編集による種苗販売とセットで、除草剤などの化学薬品・化学肥料を販売しています。

「しんぶん赤旗」より

で、ここで出てくるロジックが、モンサント悪玉論である。

つまり、種は農家、あるいは人類のものなのか、それとも化学企業のものなのか。それが問われていると、私は思います。

「しんぶん赤旗」より

スゴいロジックだな。話が途端に「人類」にまで飛躍しちゃった。だが、既に日本の農業でF1品種(交配種第1世代)ばかりだという話は今さら説明するまでも無い。なぜF1品種がありがたがられるかというと、農作物の安定性に寄与するのである。その事に、このしんぶん赤旗を書いた人は気が付いているのだろうか?

実は、F1品種は概ね狙った作物が得られるけれども、F2、F3と世代が進むと、先祖返りしたり、味や風味が変わってしまったりと、同じ品種として名前を付けて販売するのに問題のある農作物が増えてしまうのである。

そんなわけで農協を始めとして率先してF1品種の種の販売促進をしているのが現状である。

それが、いつの間にやらモンサントの種が日本を席巻するから、外患誘致だみたいな理論になってしまうのは理解ができない。

種苗法改正案が可決 農家負担増の回避を 適正な運用で附帯決議
衆議院農林水産委員会は11月17日、日本で品種登録した農作物の品種の海外流出を防ぐための種苗法改正案を審議・可決した。改正種苗法によって、地域の伝統野菜や有機農産物を生産する農業者の負担増にならないよう、種苗の適正価格での安定供給、自家増殖の許諾手続きの適正な運用を求める附帯決議を採択した。

農協は当然、そういう経緯があるので今回の種苗法の改正には賛成する立場であり、更に「付帯決議」を勝ち取ったという主張をしている。

自家増殖の許諾手続きには問題があるから、ここを整理しましょうと。……なんの問題があるのか。

反対派は何に反対しているのか?

そんな訳で、今回の法改正に関して問題視されている点の多くはカンチガイによるものであると言える。

「理由は無いけど反対」という意見が多い(それは意見なのか?むしろ工作なのでは)が、何が問題かをしっかり整理しないと、ただ騒ぐだけのお祭りに終わってしまう。

そういえば、前回のお祭りの立役者、柴咲コウ氏は今回は反対しないのかな。

柴咲コウさん、種苗法改正案に関するツイートへの誹謗中傷に言及「意見を言うことは、誰にも平等に与えられた権利」
寄せられた誹謗中傷や脅迫行為などに対しては「法的措置も検討しています」と明かした。

信念を持って反対したのであれば、今回も声を上げるべきだった。

女優である彼女を今さら責めるのはお門違いなのだけれど、覚悟を持ってtweetしなかったのであれば、じゃあアレは何だったの?と。

自家増殖制限と種の海外依存 公共的支援枠組みを 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏

2020年12月01日

種苗の自家増殖を制限する種苗法改定の目的は種苗の海外流出の防止とされてきたが、その説明は破綻した。農家の自家増殖が海外流出につながった事例は確認されておらず、「海外流出の防止のために自家増殖制限が必要」とは言えない。

「日本脳病新聞」より

そうそう、この方も何か品との外れた主張をしていらっしゃるが、国内の多くのF1品種のシェアは国内の2社に占められている。

TPPの話を持ち出す構図も、おかしな話だと気が付いているのかいないのか。

何千年も皆で守り育ててきた種は地域の共有資源であり、それを「今だけ、自分だけ、金だけ」の企業が勝手に改良して登録してもうけるのは「ただ乗り」による利益の独り占めだ。地域の多様な種を守り、活用し、循環させ、食文化の維持と食料の安全保障につなげるために、ジーンバンク、参加型認証システム、有機給食などの種の保存・利用活動を支え、育種家・種採り農家・栽培農家・消費者が共に繁栄できる公共的支援の枠組みが求められている。

「日本脳病新聞”自家増殖制限と種の海外依存 公共的支援枠組みを 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏”」より

更に品種改良すら否定する始末である。

種苗法の趣旨すら理解されていないのだが、「食文化の維持」とか「食料の安全保障」とか、そうした事に今回の種苗法改正は無関係である。

誰もが、誰かの品種改良した種を自由に利用できる構図である場合、そもそも品種改良に莫大なコストをかけようとは思わなくなってしまう。もちろん、巨大資本の一人勝ちになるリスクがあるのは上に指摘した通りではあるが、そのことと品種改良の否定というのは些かピントがずれている。

そもそも登録された品種が常に強いというわけでもないので、「先に品種改良できている」という事を証明できれば、登録の効果が及ばないという規定によって、後から種を盗んで登録されてしまうという事もある程度は手当てされている。

要は運用上の問題なのである。そして、改正した内容で問題がないのかは、しっかり監視して行かなければならないだろう。何事も、完璧と言うことは無いのだから。

追記

コメントを戴いて、実例を示すのを忘れていたのに気が付いたので紹介しておきたい。

サツマ「べにはるか」 無断流通 韓国で拡大 栽培面積の4割 輸出競合に懸念

11/15(日) 8:04配信

韓国で、日本のサツマイモ「べにはるか」が無断で栽培され、広く流通している実態が明らかになった。既に韓国ではサツマイモ栽培面積の4割を同品種が占める。日本の農産物輸出の有望な品目・品種であるだけに、国内産地からは海外に売り込む際、競合することを心配する声も上がっている。

韓国への流出は、同国の農業者らが日本の産地を視察した際、「べにはるか」の種芋を無断で持ち帰ったのが原因とみられる。2015年ごろから南部地域の全羅南道海南郡で栽培が始まり、18年には同国のサツマイモ栽培面積(2万753ヘクタール)の4割に達している。

「yahooニュース」より

これまたヒドイ話なのだが、こうした事例があった場合、本来であれば法的に処罰して欲しいところだが、これが又難しい。

新品種保護に関する国際条約(UPOV)という条約の適用が困難である点はこの記事でも指摘されているが、本来であれば韓国でも品種登録の出願をして保護すべきという事案であった。

反対派のロジックでもこの話は持ち出されるのだけれど、今後この様な問題を解決する為のプラットホームになり得るのがRCEPだったのだが……、さて、その辺りはどうなんだろうね。知財権に関しての規定はかなり緩かったようだけれど。

追記2

法案が通過したようだ。

改正種苗法が成立 海外不正持ち出し禁止

2020.12.2 10:50

国内で開発されたブランド果実などの種や苗木を海外へ不正に持ち出すことを禁じる改正種苗法が2日、参院本会議で可決、成立する。令和3年4月に施行される見通し。

「産経新聞」より

あとは、自家増殖の許諾のシステムを整理しておけば、そこから勝手に種や苗を外国に流すと罰金が、というような形になり、一定のブレーキがかけられるのではないかと、期待はできる。

もちろん不十分な部分もあるんだけれどね。

コメント

  1. むつかしいことはよくわかんねーんですけど、シャインマスカットや美味しいサツマイモが無断で栽培されて損失を出してるのはみんな知ってるはずなのに、種苗法反対の人は、代わりにどのような防御手段を提案してくれてるのか、まるで分からないのが怖いっす

    • シャインマスカットやべにはるか(サツマイモ)の流出が起きてしまったことが今回の法改正の切っ掛けですが、既に流出して絞まったモノに対して、何らかの手がうてるという話では無いのですよね。
      ただ、法改正語に流出したケースで、摘発する際に自家増殖をした人を罪に問えると、それだけの話。
      海外流出に対する万全な法改正、と言う訳ではないのが残念なところです。
      例えば、品種改良し、登録した方が海外の方に苗を分けてしまった場合、これが罪に問えるのかというと、そうはならないんですよね。
      根本的に、種苗法によって何が保護されて、自分たちにとって何が利益かという点について、勉強をする機会をもうけ、日本の農家が賢くならないとダメなんですよ。

      ただ、この法改正をしないままだと、ずーっとこの状況が続くのですが、それに歯止めをかける一助になるよ、と、そういうお話なのです。

  2. 特亜の方々に「視察」をさせるのをやめたらどうでしょう。
    「盗むのは悪いこと」という意識がなく、
    「盗めばすむのにやらないのはバカ」とか、
    「盗んだことがばれるのはバカ」という文化のようですから。

    • 赤松口蹄疫事件の時にも、留学生に牧場を見学させていたみたいな話が出ていましたね。
      何が原因だったのかはハッキリされませんでしたが、防疫面では日本は残念なところが大きいように思います。

      別の話ではありますが、外国人留学生の問題や、外国人技能実習生の問題など、様々な文化面での軋轢があって、日本人の常識が通用しないシーンが結構あるかと思います。
      そうした事を「知る」ことから始めていかないと、性善説でバカを見る羽目になりますよね。