支那が採用する輸出管理法の施行は12月1日

支那

このニュースを読み飛ばしていたので、今さらながら言及しておきたい。

中国輸出管理法、産業界は備えを 経産相

2020/11/18付

梶山弘志経済産業相は17日の閣議後記者会見で、中国が戦略物資やハイテク技術の輸出管理を厳しくする輸出管理法を12月1日に施行することに関し、産業界にサプライチェーンへの影響を把握して備えるよう呼びかけた。

「日本経済新聞」より

これ、RCEPの締結とセットになっていると考えられる支那の法律である。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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輸出管理法とはどんな法律なのか

法律に基づいて国外のことにも口出しするぜ

RCEPのネタに関してはコチラの記事に言及している。

このRCEPの意義としては、ASEANに加えて支那も共通ルールによって話ができるような環境を作る事であるというようなことを、記事の中で説明をした。

支那にとって、RCEPと輸出管理法がどのようにセットになっているのか?に関しては、先ずはコチラの記事を一読願いたい。

中国の輸出管理法にみる「安全保障観」の異様さ

2020/11/11 10:00

世界中の視線がアメリカの大統領選に集まっていた10月中旬、中国の全国人民代表大会常務委員会が新たな法律を制定した。自国の安全保障を理由に輸出を規制することを可能にする「輸出管理法」である。

「東洋経済」より

この記事で分かり易く言及されているので、僕が敢えて言及する必要は無いのかも知れないが、大きく言えばRCEPの方向性とは真逆のコンセプトが輸出管理法に盛り込まれているという点が問題なのである。

「域外適用規定」のある輸出規制

法律はまず、戦略物資など管理品目を決めて輸出を許可制にするとともに、自国の安全保障などを理由に禁輸企業のリストを作り、これら企業への輸出を禁止するとしている。管理品目や禁輸対象企業のリストは年内にも策定すると伝えられている。

~~略~~

しかし、この法律にはそれ以外に注目すべき点がある。法案作成の最終段階でこの法律には「域外適用規定」が追加された。その内容は「中国国外の組織と個人が、本法の規定に違反し、拡散防止などの国際義務の履行を妨害し、中国の国家安全と利益に危害を及ぼした場合は、法に基づいて処理し、その法的責任を追及する」となっている。こうした条文は主要国の法律にはないようだ。

「東洋経済”中国の輸出管理法にみる「安全保障観」の異様さ”」より

この域外適用規定について、この東洋経済に記事を寄稿した薬師寺氏は「よくわからない」と前置きをしながら、幾つか可能性を示唆しているけれども、僕自身は対RCEP用の法律だと考えている。

どこを読んでそう考えているかというと、ここだ。「中国国外の組織と個人」を対象とするこの条文は、「中国の国家安全と利益に危害を及ぼした場合」という曖昧な条件設定のケースにおいて、「法に基づいて処理し、その法的責任を追及する」とある。

一見、法治国家なのだから当たり前だろうと読めるのだけれども、本来、国内法においてわざわざ「国外組織と個人」を対象にするケースは無い。何故か?それは、その国におかれた法律というのは、国内の存在について裁くことを前提に考えられているからである。

しかし、この法律は、海外からの、例えばインターネットなどを通じたアクションについても問題にすると、そう読めるのである。海外のメディアが、支那のことを攻撃し、その内容がネットを通じて世界に発信されたとしよう。その場合、支那の国家安全と利益に気概を及ぼしたと支那共産党が判断すれば、法的責任を問えるという事になる。

その時に記事にも指摘があるが、単に「法に基づいて」と書かれているのだけれど、後から作った法律を適用する事が可能になるので、不都合なケースがあれば、後から法律を作ってこれに対応させるということが可能になるというカラクリである。

凡そ、法律の世界では遡及法に繋がるとして使われない手法なのではあるが、建前としては法に基づいて戦うという話になるため、民主主義の国としてはやりにくい法律である。

意図的に抽象的な言葉を並べることで、中国当局が好きなように解釈し、幅広く適用できるようにしているとしか考えられない。日米欧の主要産業団体は法律の草案が公表された段階で危機感を持ち、中国政府に対して「外国企業を著しく不安にさせる」などとして同条項の削除を求めたが、要求は受け入れられなかった。

「東洋経済”中国の輸出管理法にみる「安全保障観」の異様さ”」より

こんな風な言及があるが、まさにその通りだろう。日米欧の懸念以上のことを支那がやってくると考えて間違いない。

安全保障と貿易は密接に関係している

さて、アメリカと支那が険悪な状況に陥っている原因は、主に支那の政策にあるのだが、やっている事は実にあくどいのである。

自由主義経済の欠点とも言える「強い方の主張が罷り通る」というシステムは、支那共産党にとっては非情に都合が良いのである。支那共産党は一企業ではなく、一国としてこのシステムに加わっているので、支那共産党が目指す方向性に多くの国の企業は太刀打ちできないのが現状である。

それに近いことをやっているのが韓国なのだが、韓国は舵取りを誤った為に、ちょっと危機的状況に陥っている。あのやり方を実現するのであれば共産主義を採用しないとダメだろうね。

家電などが軒並み支那や韓国勢に呑み込まれた要因は、完全にそのシステム上の欠陥によってやられてしまったという事なのだ。なお、アメリカの企業、Amazon、Apple、Facebook、google、そしてMicrosoftは一企業でこれを実現しているので、アメリカ側も卑怯とは言えない弱味がある。言ってみれば、アメリカと支那との覇権争いは、同族嫌悪のような部分があるのだ。

ただ、アメリカにとって人権という足枷がある以上、支那のやり方を上回ることはできないわけで。

中国憲法の前文には「中国の各民族人民」が「中国共産党の指導の下」にあることが明記されている。さらに習氏は2017年の党大会で、「党政軍民学、東西南北中、一切の活動を党は領導する」と発言している。これは共産党はもとより、政府、人民解放軍、民間部門、学術部門などすべての分野において、また地理的にも中央を含め中国全土で共産党指導部が主導権を持つという権力集中を意味している。つまり、中国における政治の安定とは、中国共産党の一党支配の維持・継続を意味しているのだ。

「東洋経済”中国の輸出管理法にみる「安全保障観」の異様さ”」より

支那が、全ての分野において支那共産党の指導の下に発展していこうという野望をむき出しにした状態で、ありとあらゆる手を行使してきている。

その上で、アメリカが行った自国防衛の為に貿易制裁という強い手段に抗することができず、旗色が悪かったのが、このアメリカ大統領選挙の前までの話。

支那は、この大統領選挙の結果に基づいて、ゲームチェンジャーとするためにこれらの法律の施行と、RCEPへの署名、TPPへの牽制を使いたいということなのだろう。

その上で、自国の好きなように輸出の禁止などの措置を採ると。もちろん、その事は別に勝手にやって頂ければ問題無いのだけれど、これを他国の組織や個人にも適用しようという話になってきているので、後に実現するだろうと言われているデジタル人民元の話にもリンクする可能性は高いだろう。

デジタル人民元

さて、ついでなのでデジタル人民元についても言及しておこう。

デジタル人民元は10年で10億ユーザーに拡大する:ゴールドマン・サックス

2020年 11月 23日 08:00 2020年 11月 23日 08:00 更新

ゴールドマン・サックスが「Reinventing the Yuan for the Digital Age(デジタル時代に向けた人民元の再発明)」と題した81ページにわたるレポートを発表した

中国のデジタル通貨/電子決済(DC/EP)、いわゆる「デジタル人民元」は、キャッシュレス環境においてフィンテック企業が提供する既存のデジタル決済サービスに取って代わり、より魅力的なサービスになる可能性があると述べた。

銀行口座とデジタル人民元ウォレットの分離は匿名性を可能にし、オフラインでも決済が可能になる。同レポートは、さまざまな決済手段との相互接続性をデジタル人民元の成功の理由として指摘した。

「10年間で、DC/EPは10億ユーザーに達し、1兆6000億人民元(約2290億ドル=約24兆円)が発行され、年間の決済総額(Total Payment Value:TPV)は19兆人民元(約2兆7000億ドル=約280兆円)となり、消費決済の15%を占めると予想している」

ユーザーがデジタル決済プラットフォームを通じた購入で行う取引を指す「消費決済」は、銀行とフィンテック企業が最も激しく競争する場となるだろうとゴールドマン・サックスは述べた。

「coindesk」より

デジタル人民元は、支那の通過「人民元」をハードカレンシーにすることに失敗した(成功しつつはあるけれど、覇権をとるには時間がさらにかかる)事に関係していると思う。

このデジタル人民元を導入することで、一気に状況を覆したいというのが習近平氏の狙いなのである。

システム自体は、それ程難しいことではない。

中国が採用したのは間接型であり、市中銀行が中央銀行に預けている準備預金をデジタル人民元に置き換え、市中銀行は希望する利用者にデジタル人民元を提供する。利用者は専用の口座(ウォレット)を開設することで、自身の預金口座からデジタル人民元を引き出せる。

「FinTech Journal」より

スマホなどを使って決裁ができる様にする、という、それだけの話なのだが、この手の通貨のデジタル化を推進することでいくつかのメリットが考えられる。

1つは、システムの設計をどのようにするのか?という問題は残るものの、通貨の発行高のコントロールが容易になることと、そのシステムを支那共産党が掌握することで、通貨の流れをマクロにもミクロにも正確に把握できるというメリットが得られる。必要に応じて資産の没収なども容易にできる上、国境を越えた通貨の流通ですら容易になる。

先行投資をしてシェアを握れば、デジタル人民元で世界を盗れるのだ。

今、アメリカが強いのは、世界の基軸通貨ドルを発行できる立場にあるからで、今、アメリカがドルと人民元の取引を止めてしまえば支那は窮地に立たされるどころの騒ぎではない。実質上の宣戦布告という事になるだろう。もちろん、ドルの信用性を毀損する可能性が高いため、アメリカはそんな事はやらないのだろうが、リスクとしては存在する。支那にとってこの様な状況は甘受できないのだろう。

世界戦略的には、デジタル人民元の早期流通は正しい戦略だと言えるが、これが他国からハッキングを受けたりすると大変なことになる。そういう場合に、輸出管理法などを根拠に戦えるという想定なんだろうと、そんな風に思われる。

ハッキングそのものを輸出管理法で禁止できるわけではないが、貿易を人質にとってハッカーがいる國に対して対抗可能だ、というわけだ。カードとして有効かは分からないが、手札は多い方が良い。況してや他国には採れない手段なのだから、なお有利だ。

懸念はあるが

とまあ、色々と書いたが、冒頭に紹介した記事では、経済産業大臣の名前で懸念が表明され、サプライチェーンに異変が起きれば直ぐに報告してくれという様な経国を出したというニュースとなっている。

実際に、政府が懸念するだけのリスクがこの法律に存在するのだ、と、考えて良いと思う。

今後もこのニュースは追いかけていきたいが、香港でも似たような構造の法律が施行された事を考えても、支那のトレンドはこういった内政干渉を含んだ法整備、域外適用による武装ということなんだろうね。

コメント

  1. 端的に言うと、華為の競合会社や半導体の供給を止めた企業は支那で問答無用で訴追されたり、入国したら同法を根拠に拘束されるリスクがある。ということですね。
    まさにチャイナなリスクを体現した法律になりますが、これ、まさかそう思わない、とか思ってないよなぁ?

    これに関しては具体的な処罰例を待つしかないですが、国民皆兵な法律があるお国だけに何があってもおかしくない……

    • そうですねぇ、近視的に見れば対アメリカを考えているというのが分かりやすいと思います。
      ただ、アメリカの方は大統領がバイデン氏になれば、かなり巻き返せますから、そういう事を考えると、今あの法律を作った理由は寧ろ他に照準を合わせていると考えた方が妥当で、十分警戒する必要があると思いますよ。

  2. 木霊さん、おはようございます。

    国際法なんて散々無視して自分勝手な覇権を目指す支那ですから、RCEP参加してもそのルールの縛りを尊守なんて幻想に過ぎませんからね。
    国際社会からの孤立感を多少和らげる為の方便に利用されるのがオチでしょう。

    >大きく言えばRCEPの方向性とは真逆のコンセプトが輸出管理法に盛り込まれているという点が問題なのである。

    要はRCEPに優先する輸出管理法という国内法を創って、問題が起きたらいつもの「内政干渉」を尊大に言い張る姑息な手段のつもりなんでしょう。

    >支那は、この大統領選挙の結果に基づいて、ゲームチェンジャーとするためにこれらの法律の施行と、RCEPへの署名、TPPへの牽制を使いたいということなのだろう。

    TPP参加を臭わせたのは明らかにアメリカ次期政権への先制パンチで、アメリカの混乱の隙を狙っているのもミエミエですし、万一支那を加えてしまえばせっかくのTPPのルールもグチャグチャになっちゃうんじゃないかな。
    これまでTPPを主導してきた日本ですから、単独でも強烈な拒否の意志を発して欲しいもんです。

    別の記事でトランプ氏の大統領去就の大逆転の可能性に触れらていますが、アメリカの政治的混乱・空白は支那に利するだけ。
    支那べったりと噂されるバイデン氏の動向は気になりますが、今はともかく上下院議会が与野党で支那包囲網・警戒と制裁で一致しているのが微かな救いなんで、これを切り崩される事がないように意志統一をしアメリカは団結して欲しいです。

    • 確かに、RCEPのルールを破ってくることは十分に想定されますが、ルールがあって破ってくるのと、ルールがなくて好き勝手やられるのでは、まだ前者の方がマシですから、無いよりマシレベルの話でも、日本としては推進して行くしか無いのでしょう。

      その意味で、輸出管理法が「外国に対して使える」というスタンスを許してはダメでしょうね。

      TPPに関しては、支那に「参加出来るものなら参加してみろ」という態度で迫るべきではないでしょうか。その代わり、現状のルールを一切曲げるつもりは無いと。
      ……ただ、日本が本気で突っ張れるかがポイントなんですが、茂木氏のアレを見るとがっくりですよね。