【未来の希望】量子技術研究と核融合

政策

さて、先日、菅義偉氏が「カーボンニュートラル構想」をぶち上げた訳なんだけれども、どうやって見積もってもこれが実現するとはとても思えない、現在の日本の技術では。少なくとも原発再稼働前提の数字なハズ(実際は総発電量の20%を原発で賄っても間に合わない)なのだけれど、現実は処理水の海洋放出にすら二の足を踏む始末で、なかなか議論が前に進んでいないな。

そんなもどかしい気持ちであっちこっちのニュースを眺めていたら、こんなニュースを見つけた。

NTT、量研と核融合の共同研究 次世代通信を活用

2020/11/6 22:21

NTTは6日、核融合に関する研究などを手がける量子科学技術研究開発機構と連携協定を締結したと発表した。太陽と同じ反応を地上で再現し、エネルギーを取り出す核融合について共同研究を進める。NTTは核融合炉の制御に次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を活用することで、アイオンの実用例を積み上げる狙いだ。¥

「日本経済新聞」より

この話は結構夢物語のような要素を含んではいるのだが、カーボンニュートラルという視点を考えると決して無視出来ない気がする。

何より、この手の先端技術の流出というのを非常に強く警戒する必要があるだろう。

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近未来の技術?

IOWNって何さ

ところで記事に出てきたIOWNとは何なのだろうか。

NTT・ソニー・インテル主導の次世代光通信基盤、「IOWN構想」実現への道筋

2020年04月19日

次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」の実現に向けた動きが本格化してきた。NTTとソニー、米インテルが米国で設立したIOWNグローバルフォーラム(GF)は16日、富士通やNECといった6社が新規参加したと発表。今後の目標などに言及する白書も公開した。これに呼応する形でNTTは同日、技術開発のロードマップ(工程表)を示した。通信技術を着実に進化させて社会課題の解決に貢献していけるかが問われる。

「ニュースイッチ」より

簡単に言うと、次世代コミュニケーション基盤のことで、通信をスゴく高速化しようぜ!ということになる。何ともぶっちゃけた話だな。

えーと、5G通信規格の次、6G通信規格に対応する物だと理解すると分かり易いだろうか。

これがNTTのサイトでIOWNを説明する概念図なのだが、その技術の実現には3つのポイントがあるとされている。

  • オールフォトニクス・ネットワーク
  • デジタルツインコンピューティング
  • コグニティブ・ファウンデーション

何故、カタカナばかりなのか……。

オールフォトニクス・ネットワーク

簡単に紹介していこう。

オールフォトニクス・ネットワークとは、文字通り光回線を使ったネットワークなのだけれど、現在は通信の入口までが光回線で、そこからメタル回線を使ってイントラネットを形成している様なところが多い。しかし、LANケーブルなどを介すると遅くなるので、ここも光回線にしちゃおうという発想だ。接続するハブも光通信に対応し、接続機器も光通信に対応という感じだね。

え?無理っぽい?いや、そんなことは無いんだよね。

次世代の1ペタビット超大容量空間多重光通信基盤技術|NTT R&D Website
将来の通信トラヒックの急増に対応可能な大容量インフラをめざして、多値変調技術と空間分割多重技術を駆使した超大容量光通信技術の研究をすすめています。これらの超大容量光伝送技術を用いることで、光ファイバ1本当たり毎秒1ペタビットの光伝送を世界で初めて実現しました。

コチラはNTTの研究開発技術を紹介するサイトで、光回線を高速化することで1Pbit/sの超大容量光伝送が実現した(2012年に実験成功)ことを紹介している。実験室レベルではあるが既に長距離データ転送実験も成功している。つまり、ある程度目処が付いているわけだ。

これがオールフォトニクス・ネットワークの成果というわけだ。

デジタルツインコンピューティング

次、「デジタルツインコンピューティング」だが、言葉自体はDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)が作った造語なんだそうで。

しかしその中身は控えめにいって意味がよく分からない。

「デジタルツイン」(電子的双子)というのは、対象物をデータ化した情報で、シミュレーションに使うモデル的なモノだと理解すれば良いだろう。

これはNTTのサイトからお借りしている図だが、説明として「実世界を表す多くのデジタルツインに対して交換・融合・複製・合成等の演算デジタルツイン演算)を行うことで、モノ・ヒトのインタラクションをサイバー空間上で自由自在に再現・試行可能とする新たな計算パラダイム」と書かれている。何かスゴいらしい、という事しか分からずに残念である。

えーと、何と言ったら良いのか。

簡単に言うと、アレだ。仮想現実を実現するという話だね、きっと。

これについては正直理解に自信がないのだが、実世界でできない実験を仮想空間でシミュレーションできるよ、という話になると思う。そうやって考えてみると、現在のスパコンでもある程度のことは出来ていると思う。ただ、それの大規模な物になるという事なんだろうな。

何というか、フルダイブ型のゲームが実現できそうな話だな。或いは、セカンドライフ的な価値観が産まれるかも知れない。

コグニティブ・ファウンデーション

「コグニティブ・ファウンデーション」は、もはや字面からは何一つ伝わってこないのだが、早い話がコンピュータ制御をコンピュータが行うということらしい。スマートシティ構想みたいな話だよね。

コグニティブ・ファウンデーションとはなにか|NTT R&D Website
NTTの研究開発特集のページです。NTT R&Dの「今」を様々な角度から特集にまとめてお届けします。

NTTでも説明しているのだが、やはりさっぱり分からない。

「コグニティブ・ファウンデーションは、あらゆるICTリソースを全体最適に調和させて、必要な情報をネットワーク内に流通させる機能を担っています。」とあるんだけど、漠然とし過ぎていて理解の助けにならない説明である。

事例として説明されているのはこんなケースだ。「具体例をもとに説明すると、2019年の台風15号や19号は大きな災害となり、通信サービスにも大きな影響がありました。NTTが通信基盤を提供していくなかで、これまでも機器が発するログから障害をAI(人工知能)が予測して自律的に対処する技術の研究開発に取り組んできましたが、これを今後もう一歩進めます。」

簡単に言うとAIをもっと活用しようぜ!といった事になりそうだな。スカイネットかな?

基本的には通信の高速化と低遅延

NTTのサイトを読んでもIOWNが何かはさっぱり伝わってこないのだが、6G通信規格の先にある概念がIOWNだという理解で良さそうである。そりゃ、コンピューターの計算速度と通信速度が凄くあがれば、やれることはそれに応じて増える。光通信でそれを実現しようというような感じの理解で良いかも知れない。

ただ、6G規格はまだ何も規定されていない。5Gですら始まったばかりである。もちろん、この話もIOWN構想をベースにこれから通信規格を策定していこうという話で、NTTとソニー、米インテルが率先してこの規格を整理していこうという事になっている。

で、冒頭のニュースは、量子科学技術研究開発機構も一枚噛むよという事だね。

通信の高速化に伴って、プロセッサの高速化も求められることになり、開発が急がれている。量子科学技術研究開発機構がIOWNに目を付けたのは、核融合炉の制御のために高速通信や高速なプロセッサが必要と判断したからだろう。

NTTは光技術を活用し、既存の通信よりも高速、低遅延のアイオンと呼ぶ次世代通信基盤の研究を進めている。核融合炉の制御にアイオンを使うことで、核融合炉の膨大な観測データをリアルタイムで収集し分析できるようにする。

「日本経済新聞”NTT、量研と核融合の共同研究 次世代通信を活用”」より

高速通信が実現すれば、ベクトル型のスーパーコンピュータに頼らずとも、スカラ型のスーパーコンピュータでの演算が更に高速化できるだろうから、開発に有利となるという事なのだろうね。

核融合炉の現実

各国で連携して開発を推進

さて、話は変わって核融合炉の話だ。

非常に残念なことに、核融合炉の開発に関していうと、日本単独で実現できるほど甘くはない。莫大な開発資金を一国で賄えないというのである。

実際に、一部の研究は日本と共同開発しているのはフランス及びドイツを含むEUと、アメリカ、インド、ロシア、支那、及び韓国の7カ国が協力して進められている。この中には「本当に協力しているのか?」と疑わしい国もあるが、それはさておこう。

で、これが間髪スケジュールの一例である。

このロードマップはあくまで「案」のレベルのものなので、あくまで参考に紹介したとの理解でお願いしたい。現在、ITERと呼ばれる国際熱核融合実験炉がフランスのカダラッシュに建造されているのだが、運転が開始出来るのは2035年頃となっている。この次の商用炉が完成すれば、核融合発電に近づけるということになるのだろう。

そして、支那もこの計画に噛んでいて不穏な感じはするが、計画開始当初は野望を露わにしてはいなかったから、仕方が無いかも知れない。

なお、最近こんなニュースが報じられていた。

進む「人工太陽」計画 核融合実験炉に中国の技術が貢献

2020年11月4日 14:00

中国、欧州連合(EU)、インド、日本、韓国、ロシア、米国の7極が共同で進めている国際熱核融合実験炉(ITER)計画。「人工太陽」を創造する構想は多くの困難と時間を要するが、夢の実現に向けて歩みを一歩ずつ進めている。

「AFP」より

随分とホルホルしたAFPの記事ではあるが、支那からの情報によって記事が書かれているようだ。

順調に行けば2050年頃には目処が

予定通り核融合発電が実現できれば、化石燃料を燃やして発電するなどという必要は無くなる。更に、核融合発電でも放射性廃棄物は出るが、原子力発電と比べればその量は僅かだ。

そして、その中でもトップレベルのノウハウを持っているのが日本、ドイツ、フランスなのだけれど、何れの国も資金繰りには苦労している模様。

ただ、菅義偉氏が本気になって予算を付けるのであれば話は別である。

コチラの記事で紹介したように、菅義偉氏は2050年までにカーボンニュートラル実現とぶち上げた。しかし、その手法は一切明らかにされていないが、流石に何らかの目算があったと考えた方が良いだろう。

それが核融合関連技術であれば、IOWN構想の進捗とあわせて、多少は期待感が出てくる。あるいは、努力目標という位置づけで発表しただけかも知れないが、少なからず最先端技術に活を入れる(役人に対してだが)という目的はあったのだろう。何としてでも実現する方向性を模索するという意味で。

そして、この分野では各国競ってその方針を出しているので、行政としても反対しにくいだろうしね。そうすると、将来有望な技術に金を注ぎ込むというのは自然な流れだ。

冒頭のニュースがそうした日本の未来に繋がれば良いなと思った次第。記事を書いてみて、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話に感じもしたが、そうした種をあっちこっちに撒くのが政治家の役割でもある。是非とも頑張って欲しい。

追記

おおっと。

韓国の人工太陽KSTARが世界記録達成…1億度で20秒間運転

2020.11.24 16:40

韓国の人工太陽「KSTAR」が再び世界最高記録を達成した。

韓国核融合エネルギー研究院KSTAR研究センターは24日、2020年度KSTARプラズマ実験で核融合核心条件である摂氏1億度超の高温プラズマを20秒以上連続運転するのに成功したと明らかにした。これは1億度超の高温プラズマ運転の世界最高記録であり、昨年の運転記録である8秒の2倍以上延びた成果だ。核融合研究院は2月にも1億度超の高温プラズマを8秒以上連続運転する世界記録を立てている。

「中央日報」より

コメントを戴いた記事は多分これの話で、「韓国の人口太陽」とは笑わせると、鼻で嗤ってしまったのだけれど、ネタとしては結構面白いので紹介しておきたい。

単独で記事にしても良かったのだけれど、あまり良い事を書けないので、追記という形でお茶を濁すことに。

まず、この韓国核融合エネルギー研究院だが、2008年に日本からこのKSTARに関する機材を無償貸与されている。

核融合研究所、日本からプラズマ発生装置を貸与

2008.06.27 19:08SHARE LIKE SAVE PRINT FONT SIZE

核融合研究所、日本からプラズマ発生装置を貸与

【大田27日聯合】国家核融合研究所は27日、日本原子力研究開発機構(JAEA)から核融合発電研究に必要なプラズマジェネレーターの無償貸与を受けたと明らかにした。

「聯合ニュース」より

研究開発を一緒にしようぜ!という話になったのは、韓国が経済的に落ち込んでいた1995年頃の話だったのだけれど、なんとか2007年に計画が承認されて施設竣工に漕ぎ着けている。で、施設の中に設置されたプラズマジェネレーターは日本から……。

JAEAは2億5000万ウォン(約2600万円)相当のこの装備を韓国側に貸与する代わりにKSTARを利用した研究に参加することになる。

核融合研究所の権勉(クォン・ミョン)先任研究部長は、日本は核融合エネルギーの開発に非常に積極的な国の一つで、今後も装備の貸与だけでなく研究者の派遣など人的交流も拡大していく計画だと話している。

「中央日報”核融合研究所、日本からプラズマ発生装置を貸与”」より

もちろん、ジェネレーターだけでなく、研究者の派遣など人的交流もなされていた。

これが当時中央日報に載った写真のようだ。

国産技術で作られた、と説明されていた緒はいつもの通りらしいのだけれど。実際には日本人技術者が設置に行ったということらしい。

ソースが得られなかったのであくまで伝聞ではあるが……。

ともあれ、2600万円相当の機材をぽーんと貸与しちゃう日本もどうかと思うのだけれども、研究を行う人的資源などの確保を考えれば、韓国が主体的に実権をやってくれることは、日本にとってもプラスになると考えられたのだろう。

ちなみに、計画では2011年までに反応装置で20秒間のプラズマ・パルスを観察することが目論まれていて、将来的には5分間維持する事が目標だったようだ。

これまで中国など海外の核融合装置は瞬間的に1億度以上の高温プラズマを達成するのには成功したが、これを10秒以上維持できなかった。KSTARは次世代プラズマ運転モードのひとつである内部輸送障壁の性能を向上させ長時間プラズマを維持するのに成功した。

韓国核融合エネルギー研究院のユン・シウKSTAR研究センター長は「1億度超の高温プラズマの長時間運転技術は核融合エネルギー実現に向けた核心課題。今回20秒維持した成果は長時間の高性能プラズマ運転技術確保に向けた重要な転換点になるだろう」と話した。

「中央日報”韓国の人工太陽KSTARが世界記録達成…1億度で20秒間運転”」より

日本のJATAといえば、トカマク型の核融合実験炉JT-60を1985年から運用していて、2006年5月9日に28.6秒プラズマの持続に成功したと発表している。ちなみにこの後継機はJT-60SAとして2007年に竣工されて、2020年4月22日に完成が発表された。JT-60SAはJT-60の建屋をそのまま再利用して運用されているため、この名前がつけられているのだが……、肝心のJT-60は何処に行ってしまったのだろうねぇ?

尤も、韓国が何も努力しなかったと言う事を言っている訳では無く、2012年に17秒間にわたる5000万度の高温プラズマの維持に成功し、2016年に55秒、2018年に90秒にわたるプラズマの維持に成功したと報じられている。

今回は1億度以上に温度を上げたうえで20秒維持したのだから、その点は評価に値する話。

核融合発電に向けた政府の振興基本計画によると、核融合エネルギー研究院は2026年までにKSTARの高性能運転技術を確保し、実際の核融合を通じた電力生産ができる実験炉に対する概念設計と核心技術を備える計画を立てている。また、その後2041年までに核融合発電所設計技術を確保し、電力生産実証まで終える計画だ。

「中央日報”韓国の人工太陽KSTARが世界記録達成…1億度で20秒間運転”」より

鼻息も荒く、こんな計画を喧伝してはいるが、ベースになったのは日本の技術という事実を書き忘れてはいないだろうか?え?わざと?

まあ、それでも国際貢献してくれればそれで良いんだけどさ。

コメント

  1. ITERは、韓国製造部分に問題が起きる予感がします。
    簡単には、動かないでしょう。

    • ITERについて、韓国が負担している分野は、余り重要なポイントでは無いようで。
      多分ですが、研究が進まなければ、他国で代替できるんじゃないかなぁ。

  2. 皆さま、今晩は

    韓国核融合エネルギー研究院KSTAR研究センターは24日、2020年度KSTARプラズマ実験で核融合核心条件である摂氏1億度超の高温プラズマを20秒以上連続運転するのに成功したと明らかにした。(中央日報)

    だそうですよ。本当かなぁ。

    • ちょいと追記しまして、そこにちょっとした事情を書き込ませて頂きました。
      幾つか調べて見ると、確かに韓国国内で実績を積み重ねているのは事実のようですね。