RCEP合意は日本に福音をもたらすのか?

アジアニュース

地域的な包括的経済連携(RCEP)ですか。筋の悪い経済連携なのだけれど、何年もかかってようやく署名に漕ぎ着けたようだ。

「さらなる繁栄と安定」 RCEP合意に経済界から歓迎の声

11/15(日) 17:56配信

日本など15カ国が「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に署名したことを受け、日本の経済界からも歓迎の声があがった。

「yahooニュース」より

繁栄と安定……ねぇ。

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RCEP(東アジア地域包括的経済連携)

自由貿易協定?

先ずは、RCEPの範囲から。

この図を見ると、TPPと違うグループなのかな?という感じもするのだけれど、実はかなりその状況は異なる。

先ずは「自由貿易協定」というのがあって、皆さんもFTPやEPAなどという名前を聞いたことはあるだろう。自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)というのはちょっと枠組みが違うが、基本的には関税障壁、非関税障壁を取り払って、自由に貿易をしましょうという約束事だ。

ただし、FTAよりEPAの方が範囲は広く、FTAは物品やサービスの輸出入に関わる協定となっているけれど、EPあはこれに加えて投資、政府調達、知的財産、人の移動、ビジネス環境整備などの広範囲な取り組みを含む協定となる。要はFTAよりEPAの方が幅広い分野での約束事があるのだ。

ちなみにTPPはEPAの一形態という扱いになっている。

なお、FTAやEPAという呼び方の違いに厳密な定義があるワケではないようで、日本以外では積極的に使われていないという事情もあるようだ。

日英同盟?

なお、日本はイギリスとも同盟を結ぼうとしているという事情もあって(現時点では、日英包括的経済連携協定の署名をして国会に提出されている)、RCEPの構想は2013年より前から存在しているのにちっとも前に進まない。

その理由は色々あるが、最大の受益者は支那になりそうで、日本の推進派の中でも問題視する存在だという認識である。本当に支那がルールを守るのか?そこにインドを加えれば、バランスが採れるのでは無いか?そういう観測もある。あるが……、インドは嫌がっているんだよねぇ、RCEP加入を。

で、イギリスと結ぶ予定(署名は終わっている)のEPAなのだが……。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100092224.pdf

さて、余りしっかり報道されていない気がするので、どんなメリットがあるかだけを少し言及しておきたい。

日英、包括的経済連携協定に署名、貿易投資の促進に期待

2020年10月23日

茂木敏充外相と英国のエリザベス・トラス国際通商相は10月23日、「日英包括的経済連携協定(EPA)」に署名した。両政府は9月11日に同協定に大筋合意していた(2020年9月14日記事参照)。協定は今後、両国議会の承認手続きを経て、英国のEU離脱後の移行期間が終了する2021年1月1日の発効を目指す。

~~略~~

トラス大臣は自身のツイッターで「独立した貿易国家として何を成し遂げられるかを示した。これがグローバル・ブリテンの始まりとなる」とツイート、同協定が(1)英国の農業からテック産業まで幅広い分野に雇用と成長をもたらす、(2)日本、英国という2つの民主的な島しょ国の関係を緊密にする、(3)環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)への道を開くものと評価した。

「JETRO」より

取り敢えず、日本とイギリスではなく日本とEUという枠組みで結んでいた自由貿易協定の代わりに結ぶという位置づけではあるのだが、イギリスのTPPへの加入の道を拓くものというのが大きいと思う。

ちょっと前に「イギリスは環太平洋じゃないだろう!」という突っ込みもあったが、英連邦という位置づけでみれば太平洋には英領ピトケアン諸島が存在する為、理屈的には問題がないと言えよう。

英国の参加検討を報じた英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ハンズ英貿易政策担当閣外相も「多国間協定に地理的制約はない」と語り、遠く離れた欧州からでもTPP加入は可能との考えを示している。

「産経新聞”南太平洋の絶海の孤島が英国TPP参加の切り札!?”」より

それに、そもそもTPPは名前こそ環太平洋ではあるが、地理的制約があるわけでは無い。そういう意味でも加入は認められておかしくは無いのだ。

イギリスにとって、EU離脱による貿易協定の再締結は急務であるが、あまり順調に進んでいるとは言い難い。日本はその点についてEUとの協定の内容とほとんど同じ取り極にすることで、署名までのプロセスを単純化する狙いがあるようで、2021年1月には締結に至ると思われる。

日本としてもイギリスとの貿易協定にメリットはあるので、これが速やかに締結されることは望ましいだろう。

RCEPにはメリットがあるのか?

一方で、RCEPはどうか?というと、TPPとは別枠の仕組みである。

RCEP署名で暮らしは? 紹興酒やマッコリ、マツタケの日本側関税は段階撤廃

11/15(日) 22:44配

RCEPでは、酒類の紹興酒やマッコリ、そして輸入品が圧倒的に多いマツタケに日本が課している関税が段階的に撤廃される。一方、日本にとっては「聖域」であるコメや牛肉・豚肉などの「重要5品目」は関税の削減や撤廃の対象から除外され、輸入拡大につながらないため、基礎的食料への直接の影響は避けられそうだ。

「産経新聞」より

ところが、RCEPの締結にメリットがあるか?というと、これはなかなか難しい。

TPPは知的財産についても一定のルールを定めて、二国間を跨いだ争いが発生した場合でも、ルールに基づいて裁こうという事になっている。必ずしも日本に有利とは言えないのだが、ルールがあるだけマシとも言える。ただし、厳密に言うとアメリカが提唱したTPPの形ではなく、CPTTPと呼ばれる形の、一部のルールが削除された形で締結されている。

TPP11にアメリカが加わるか?という状況になりつつあるが、当初の予定通りに経済圏が作られれば、日本の貿易にもメリットは産まれる。

ただ……、RCEPは物品に関しては基本的に自由化の方向ではあるが、サービスに関してはまだまだルールに入っていない部分が多く、知的財産に関しては放置となっている。もちろんRCEPの締結で関税の撤廃に向かうことは利益はあるのだが、実は関税撤廃率でもTPPに及ばない。

自動車部品など関税段階撤廃—RCEP、インド抜きで15カ国署名[新聞ウォッチ]

2020年11月16日(月)08時51分

~~略~~

ただ、無関税の割合は、中国でいまの8%が86%に、韓国で19%が92%に拡大するが、ほぼ100%の撤廃率のTPPやEPAには及ばない。さらに、撤廃までの期間は中国向けではガソリン車用のエンジン部品の一部などは即時撤廃となるものの、EV用モーターなどは10年から20年などと長いものもある。しかも、将来的にも経済成長が期待されているインド抜きの協定となったことで、交渉参加国で最大の経済規模を誇る中国の影響力が高まる懸念もあるなど、「メリットの享受も限定的になる」との見方も指摘されている。

「response」より

実のところ、RCEPでの有り難みは、日本にとっては薄いのである。更に、知的財産こそ押さえたいということなのだけれども、支那や韓国にとってこれは都合が悪いので、それを盛り込むことは難しい。

後は、サービスについて、金融関連の中身に踏み込めない支那にとってはRCEPでは触れられない項目になっている。

RCEPで得られるメリット

日本にとってはRCEPで得られるメリットはあるのかというと、ここから更に踏み込んだ交渉の土台になる可能性があるという点くらいだろう。

いや、例えば日本から部品を輸出して支那で組み立て、インドネシアに売るというパターンだと関税が幾重にもかかってくるところ、その分を値下げする事が可能となる。部品輸出の多い日本にとっては、その辺りはメリットと言えるだろう。

後は、支那が勝手にASEAN諸国を巻き込んだ貿易圏を構築してしまうと、日本としてもちょっとやりにくい。だから、支那主導の貿易圏を構築できないような形に牽制する意味での協定を結んでおく意味はちょこっとあるだろうと言われている。

なお、デメリットも当然考えられる。

東アジア諸国から安い製品が大量に流入してくると、日本の製品が売りにくくなるという可能性はあるのだが……、今や日本はほとんど関税をかけていないので、その辺りをそれ程心配する必要はないだろう。むしろルール化しておいた方が、交渉の足がかりとなって話を通し易いのだ。

TPPとRCEPを比べるのは人口とGDPの数字を見て比較すると分かり易い。

ただ、この図だとRCEPにインドが含まれ、TPPにアメリカが含まれていないので、ここが変わるとまた構図は変わってくる。TPPの場合、アメリカが加わると人口+3億人となりGDP+20.5兆円という規模になる。一方、インドが抜けると人口ー13.5億人、GDP-2.7兆円ということに。ついでに、支那のGDPは正しいのか?という懸念はあるので、本当にイメージする時に参考にはなる。

あとは、移民の流入が……、という意見はあるのだが、これに関してはほとんど根拠がない。高度人材、企業内転勤や家族が対象となって入国を緩和するという話があるが、移民よりもスパイの流入の方が心配である。

ここはしっかり法律を作って対処しておきたいところだ。

あと安い農産品流入に関してだが……、ここは杞憂だと思う。実際に、アメリカとの協定で、牛肉やオレンジが大量に流入するという懸念があったが、実際にそんな事にはならなかった。もちろん、農家に打撃があったのは事実だが、結局棲み分けができる格好となった。

もちろん懸念があるのは事実ではあるが、農業にしても畜産業にしても国際競争力を高めていく必要がある事を考えれば、これまで異常に努力する必要はあるにせよ、努力で克服出来る程度の話となるだろう。あと、支那がどれだけルールを守るのか?という点は注目していく必要がある。インド無しでRCEP発効というルートが果たして日本にとって福音となるのかは……、ちょっと想像ができないね。

追記

コメントを戴いて、すっかり重要なポイントをすっ飛ばしていたことに気が付く次第。間抜けにも程がありますな。

さて、何をすっ飛ばしていたかというと、RECPの条件である。

RCEP、15カ国首脳が署名へ アジア貿易の転換点に

2020/11/15 12:35

日本など15カ国の首脳は15日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の署名をめざし、オンライン形式での会合を開始した。発効すれば、世界の国内総生産(GDP)や貿易額で3割を占める大型の自由貿易協定(FTA)が発足する。

~~略~~

工業品や農林水産品の関税削減・引き下げに加え、データの流通や知的財産など計約20の分野で共通のルールを設ける。投資企業への技術移転要求を禁止するほか、コンテンツやデータなどのデジタル情報に関し、国境を越えた自由な流通の確保を各国に求める。

「日本経済新聞」より

知的財産の保護レベルに関して「放置」としたけれど、規定の中には内容として盛り込まれてはいる。また、投資企業への技術移転要求を禁止に関してはそれなりに意味がある。

具体的にはコチラを読んで頂きたい。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100114915.pdf

……単に読め、というのだけではちょっと不親切かな。

一応、知的財産関連の話だけ言及しておくか。

知的財産権に関しては、例えば特許や意匠などの範囲については「最低限のことを守ってね」くらいの記載になっているけれども、著作権に関しては複製や放送(インターネットで拡散することを含む)に網をかけたので、これまでのように野放図にコピーされる場合には、ある程度「取り締まってね、約束だから」ということが可能となっている。

あとは商標に関しては別に規定を置いて、無断で使用したり似たようなものがある場合には、先願・先登録優位の原則に従うようなルールが定められている。仮に登録されている場合には異議申し立てが可能な法律構成となっているため、これまでよりはマシな扱いになったと言えよう。

従来であれば支那が相当に抵抗しそうな内容ではあるが……、よく呑ませたものである。相当タフな交渉であった事は想像に難くない。尤も、支那としてもこれから伸びていくASEAN諸国に技術模倣される事は嬉しく無いので、何とか妥協した感じなのかも知れない。そして、支那がこのルールを守るのか?というと、これは分からないな。

追記2

そうそう、RCEPの話の間接的な影響としてこんなニュースが。

台湾、TPP加入への意欲強調 RCEPは不参加

2020年11月16日2:29

台湾の通商交渉官であるトウ振中・行政院政務委員(無任所大臣に相当)は16日、環太平洋連携協定(TPP)参加に向け「比較的」順調な進展があったが、加入のルールが一段と明確になるのを待っていると明らかにした。

~~略~~

同政務委員は記者団に、TPP参加への意欲を既に表明したと述べた上で「(加入申請で)比較的順調に前進している国々に英国、台湾、タイが含まれている。台湾の懸命な取り組みは多くから歓迎されている」との見方を示した。

その上で、加入申請に関してルールが一段と明確になるのを待っていると語った。

「ロイター」より

実はこのニュース、かなり大きな意味を持つ。

TPPに支那が加わることはできないが、台湾にとっては明確な貿易ルールが定められたTPPに加わることはメリットがある。加入申請に関するルールが明らかになれば、ここに加わる用意があるという事になっている。

RCEPの有効性は疑問が残るが、TPPの加盟国拡大は日本にとっての大きな意味が出てくる。何故ならば、アメリカ中心ではない、日本主導の経済圏が形成されるからだ。そしてTPPに台湾が加わることは、台湾にとっても国の要件が認められるという意味でもかなり重要なポイントとなってくる。

クワッドの話の延長線上にも、この話が載ってくる。

コメント

  1. まさかお互いの妥協が成立するとはちょっと意外でした。
    米国が動けないタイミングでの合意成立は支那のしたたかさを感じさせますね。

    まぁ、日本にとってある程度のメリットはある範囲なんじゃないでしょうか。
    ともあれ、粘り強く交渉した甲斐はあったのでしょう。
    特に技術移転要求云々は地味に効くでしょうし。
    まぁ、相手が支那と南朝鮮だとどこまで守られるかわかったもんじゃないですが。
    資源地帯としてはミャンマーに期待ですね。政治的にはアレですがw

    国会に燃料投入……なんでしょうけど、いまだガクジュツカイギガーとかやってる間は野党に期待してもねぇ

    • 長い長い協定案を読んでみると、かなり踏み込んだ感じで規定されていました。
      最終的にこれが認められるためには、ぞれぞれの国で批准される必要があるわけで。
      だから最初の一歩だという話なのでしょうが、それでもかなりタフな交渉をやったのだろうと思いますよ。