原発処理水の処分方法が決定されるが適切なのか?

原子力発電

この話、結論は決まっている。だが、丁寧に議論していく必要はあるので、結論は最後に持ち越したい。普通なら最初に結論を書いても良いのだけれどね。

原発処理水、海洋放出へ 政府、福島第1の廃炉優先―風評対策、検討加速

2020年10月16日19時34分

政府が東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含んだ処理水について、薄めて海に放出する方針を固めたことが16日、分かった。今月中にも決定し、廃炉作業を加速するため2022年秋ごろからの放出を目指す。政府は安全性に問題はないと説明するが、風評被害を懸念する漁業者らは強く反対しており、対策の検討を急ぐ。

「時事通信」より

日本政府は「薄めて海に放出する」という方針を固め、後は風評被害対策をどうするか?というモードに入っていると伝えられている。

この話は最近ニュースになっているのだが、何か正しい議論が行われていない印象である。最近のこのブログはお笑い韓国軍ネタばかりだったので、取り扱ってみようと思う。

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処理水は海に流すべきなのか?

トリチウムは取り除けない

先ずは、問題点を整理しておきたい。

このブログでも過去に何度かこの話題を扱っている。僕が出した結論は「海洋放出してしまえ」というものであった。正直、現実的には海洋放出しか選択肢が無いのが現実なのである。

Blue glass molecule structure. Model of simplicity particle. 3D rendering.

ただ、「汚染水」或いは「処理水」とは一体何で、どこに問題があるのかという話は是非とも押さえておきたい。

  • 汚染水と処理水は異なり、何れからもトリチウムは検出される。
  • トリチウムには人体に対する毒性がある可能性がある。
  • 現在でも、常時大量の雨水が福島第1原発が地下水として流れ込んでおり、これを止める事ができない。
  • 現状では処理水を含めて汚染された水をタンクに溜めてあり、このタンクは増え続けている。ただ、そのタンク増設にも限界がある。
  • 汚染水と呼ばれる水は100%回収することは出来ていない。

この辺りだろうか。

東電側の嘘

ところで、この処理水については以前の記事にも紹介したが少し問題があった。

トリチウム水と政府は呼ぶけど実際には他の放射性物質が1年で65回も基準超過

2018/8/27(月) 11:26

 福島第一原発で発生し続ける汚染水からトリチウム以外の放射性物質を取り除いたと東電が説明してきた水、いわゆるトリチウム水に、実際にはその他の放射性物質が取り切れずに残っていることがわかった。8月19日に共同通信が取り残しを報じた後、23日には河北新報が、2017年度のデータを検証したところヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。

 東電は23日の会見で、超過した回数は65回だったことを明らかにした。筆者がさらにデータを精査したところ、告示濃度限度を超えたのは昨年度下半期に集中していることがわかった。

「yahooニュース」より

この記事はかなり角度が付いているので注意して読んで欲しいのだが、「超過した」という結果を出したことは事実である。

「放射線物質を取り除いた」とする「処理水」が存在するのは事実である。ALPSと呼ばれる処理装置があり、放射性物質を取り除く機能があるので、これで「処理」すれば、多くの放射性物質を取り除く事は可能である。

ところが、いまタンクの中に溜められている「水」は「処理前」のものも存在する。

非常に残念なことにALPSの処理能力よりも雨水の流入速度の方が遙かに多いのである。これを凍土壁などを利用して減らしてはいるようだが、狙った効果が出るところまでは残念ながらいっていないようだ。

そして、「汚染水」つまり、地下水が全て汲み上げられて処理されているような表現もまた嘘が含まれている。誰もそれを検証することはできないからだ。

汚染水が出る事は問題なのか?

さて、「福島第1原発事故の影響で放射性物質が地下水に混じって流れでている」「ある程度の地下水は汲み上げて汚染水として処理している」「タンクの中身は処理済みの水の他に一時的に保管される汚染水もある」という辺りを抑えた上で、福島近海に汚染された物質が流出している事実がある。

ただし、この流出量はある程度把握されている。

海水・海底土壌の検査に関する結果をお知らせします。 - 福島県ホームページ

こちらのサイトにモニタリングの結果などが纏められて開示されている。

これまでの水道水放射性物質検査の結果 - 福島県ホームページ

もう一つ、福島県の地下水から検出される放射性物質に関する情報も開示されている。これらの情報から事故直後には多数の場所で雨水からの放射性物質の検出実績があった。しかし、今は問題無いレベルであるという結論にはなっている。

福島産魚類の汚染検査視察 台湾の原子力学会長ら

2019.9.3 16:21

台湾原子力学会長の李敏・清華大特別招聘(しょうへい)教授(64)らは3日、福島県いわき市を訪れ、同県沖で取れた魚の放射性物質による汚染の有無を調べる検査を視察した。台湾は平成23年の東京電力福島第1原発事故後、福島など5県の日本産食品の輸入規制を続けており、李会長は「検査のデータを見る限り、魚の放射性物質は検出限界値未満で、輸入規制は正しくない」と述べた。

「産経新聞」より

原発事故9年 福島の食はいまどうなっているのか

2020年3月30日 14時38分

~~略~~

県とは別に行われている福島県漁連の調査では、平成27年度以降、基準を超えたのは去年(2019)1月のエイの仲間の「コモンカスベ」1件のみでした。

このコモンカスベも福島県沖の魚介類では唯一、国の出荷制限が続いていましたが、先月(2月)25日にようやく解除され、原発事故後初めて、全ての魚介類が出荷できるようになりました。

「NHKニュース」より

これが「問題無い」と言い切る理由は、全数検査をやっていた時代に出荷制限に引っかかる事例が確認されたことがあるからだ。

どんな要因があったかは不明だが、一例だけしか確認されなかったという事実は、他検査された個体は尽く基準値を下回っていたことを意味する。

確率論的にも、放射性物質の心配はないと言えよう。

確実に未だ放射性物質は海洋に流れでているが、魚介類などからは検出できないレベルで拡散されているということを意味する。そして、放射性物質は生体濃縮することはないので、地下水を全て汲み上げできていない実態があったにせよ、海に流れても問題が出ていないのが実情なのである。

トリチウムは問題無いの?

さて、上で取り除けないという風に説明したトリチウムだが、これはほぼ水(三重水素)なので分離することができないのである。

安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策②「トリチウム」とはいったい何?

2018-11-22

シリーズでお伝えしている、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)における汚染水問題の現状と対策。第1回の「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策①『ALPS処理水』とは何?『基準を超えている』のは本当?」では、現在おこなわれている浄化処理の方法と、浄化処理をおこなった水「ALPS処理水」についてお伝えしました。

このALPS処理水には、処理設備でも取り除くことのできない「トリチウム」が含まれています。トリチウムとはどんなものなのでしょうか?今回は、汚染水問題を正確に、深く理解していくためには必須な、トリチウムの基礎知識についてご紹介しましょう。

「資源エネルギー庁サイト」より

コチラでしっかり説明されているので、読んで頂くとして、トリチウムとは「濃度によっては人体に害がある」という程度ものである。ちなみに「水」そのものも摂取する量によっては人体に害があることは指摘しておきたい。

自然界では、1年あたり約7京ベクレル(Bq、放射性物質の量をあらわす単位)のトリチウムが生成されており、自然界に存在するトリチウムの量は、約100~130京ベクレルと見られています。

「資源エネルギー庁サイト”安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策②「トリチウム」とはいったい何?”」より

で、トリチウムは自然界にも存在する。

このトリチウムがDNAに取り込まれるとか意味不明(積極的に水素が三重水素に置き換えられるという事を示す事象は確認されていない)なことを指摘している大学教授もいるのだが、この発言は多数で支持される意見ではない。トリチウム大量摂取による死亡例というのは報告されているが、積極的な毒性が確認されたということではない(注:研究中である)。

こうしたことから、高濃度のトリチウムは危険なのではないか?というような理解が広まった。

従って、世界各国で排出量規制をおこなって海洋放出しているのが実情である。

トリチウムとその他の放射性物質は区別して理解する必要がある

その処理水は本当にキレイですか?

さて、そういう話を踏まえた上で、考えなければならないことが幾つかある。

海洋放出する場合、タンク内の処理水について再度放射性物質を除去し、トリチウム以外の放射性物質の濃度を海に流してもよい数値まで下げる。その上でトリチウムの濃度も下げるため海水で薄め、数十年かけて少しずつ放出する計画だ。

「時事通信”原発処理水、海洋放出へ 政府、福島第1の廃炉優先―風評対策、検討加速”」より

一つは、海洋放出される予定の「処理水」はどのようなものなのか?ということだ。

処理水ポータルサイト | 東京電力
福島第一原子力発電所では、多くの方のご協力を頂きながら、事故に伴って発生した高濃度の放射性物質を含む「汚染水」への対策を進めています。当サイトでは、皆さまに福島第一で発生した汚染水を浄化した「処理水」に関する情報やデータをお伝えしてまいります。

TEPCOのサイトでは無駄に凝った紹介ページが作られているのだが、トリチウム以外の多核種は概ね取り除いたのだと説明している。

トリチウムは取り除けないので除外されているのは仕方が無いとして、随分と除去に苦労している様子は伺える。

今後は淡水化を図り、放出する予定ということになっている。

ではその時にトリチウムはどうするのか?という点なのだが、こちら。

処理水海洋放出ならトリチウム500倍希釈 福島第一、東電が素案

2020年03月25日

東京電力は3月24日、福島第一原発で発生する汚染水を浄化処理した後の水について、海や大気への放出が決まった場合の処分方法の素案を公表した。海洋放出では、浄化処理しても除去できない放射性物質トリチウムの濃度を、国の排出基準の40分の1程度の濃度に海水で大幅に薄めてから処分するとしている。

「東京新聞」より

東京新聞も随分とおかしな記事を書いていたものだが、要は海洋放出するために処理した水を更に希釈して流そうという話である。

反対派のロジック

グリンピースなど環境活動家団体は、流すな!と大騒ぎしているが、読んで頂くと分かるとおり一見まともそうな説明をしてはいる。

東電が汚染水を海に流してはいけない4つの理由 - 国際環境NGOグリーンピース
東京電力福島第一原発の敷地内には、放射能で汚染された水(汚染…

ただ……、「理由1」はミスリードを生じさせているけれども、東電側としても処理水を今のまま流すと言っている訳では無い。

海洋放出出来るレベルのものもあるが、二次処理が必要な処理水も存在することは東電側も認めていて、希釈する前に二次処理をして「放出する際の基準を満たす」と。

次に、「理由2」だが、これも「濃度による」としか。確かにトリチウムを体内に取り込んだ場合、内部被曝のリスクはあるし、死亡例では高濃度のトリチウムを体内に取り込んだことが原因だとされている。

だが、そもそも自然界にはトリチウムが存在して日常的に体内に取り込んでいることは無視しているし、問題となる濃度についても言及してはいない。そりゃそうだろう、未だに判明していないのだから。

ただ、水道水に含まれるレベルのトリチウムの量であれば、問題がないことは明白である。

「理由3」の「最善の手段」というのは、海洋放出が最善と判断されれば、それでOKという意味(他国がやっているのに、否定ができない)だし、「理由4」のトリチウム分離技術に関してだが、これも分離能力がお話になら無いレベルである事には、言及していない。

アメリカで「トリチウムの分離」が行われているとしているが、アメリカでも原発から海洋放出をする水の中のトリチウムを取り除いているわけではない。

「長期保存しろ」とはいっているが、それにかかるコストに関しては全く無視している点で信用出来ない。結局、リスクとコストのバランスで考えるより他ないのだ。

結論は

結局、僕としてはこの話、それ程悩む事なく海洋放出すれば良いと、そう考えている。ただ、その前提として、放出する水に含まれる放射性廃棄物の総量を決めておき、それに沿った放出をすべきだと、そう考えている。希釈にはあまり意味が無いんだよね。年間排出総量が問題だと思う。薄めたらどれだけでも放出出来る、では話にならないから。

そして、放出出来ないヤツは、相変わらずタンクに溜めておくべきなのだ。処理出来たものだけ流す。

答えは非常にシンプルなのだ。

基準が適切か?という議論は意味がなく、今ある基準をクリアするのであれば流せばいいだろう。不明確な部分があれば決めれば良い。ただそれだけなのだ。

あとはその手順が適切に行われている事を確認する仕組みさえしっかりしておけば、この話は騒ぐ程のことでは無い。それが安倍政権下で決定出来なかったのは、重ね重ね残念である。

追記

この件で、支那や韓国が騒いでいるようだが……、いつものパターンだね。

「福島海洋排出、韓国の100分の1」…文大統領にデータ突き付けた安倍首相

2019.12.29 11:10

日本の安倍晋三首相が24日に中国の成都で開かれた韓日首脳会談で文在寅(ムン・ジェイン)大統領に「福島第1原発から排出される水に含まれる放射性物質の量は韓国の原発の排水の100分の1以下だ」と話したと産経新聞が29日に報道した。

「中央日報」より

これは2019年の安倍氏の反撃の記事だ。

韓国知事 トリチウムなどを含む水 海洋放出しないよう求める

2020年10月20日 19時24分

東京電力福島第一原子力発電所で増え続ける、トリチウムなどの放射性物質を含む水の処分方法をめぐって、韓国南部・チェジュ道の知事は、「放出された水は日本の海だけに流れ込むのではない」として、日本政府に海に放出しないよう求め、要求が拒否された場合には、沿岸住民などに呼びかけて日本と韓国でそれぞれ訴えを起こすことも辞さないという考えを示しました。

「NHKニュース」より

安倍氏が指摘した事実を無視して、「内政干渉も辞さない!」と騒ぎ始めたのだが、これに乗っかった団体も騒いでいるようだね。

トリチウム含む水処分 「海洋放出以外もっと検討を」市民団体

2020年10月20日 18時41分

東京電力・福島第一原子力発電所で増えるトリチウムなどを含む水の処分をめぐり、原子力政策に提言などを行ってきた市民団体は、海洋放出ありきではなく、陸上で長期に保管して放射性物質の量が減るのを待つなど、ほかの選択肢をもっと検討するべきだとする声明を出しました。

「NHKニュース」より

福島第一原発 トリチウムなど含む水処分 周辺国と協議を 中国

2020年10月19日 23時08分

東京電力福島第一原子力発電所のトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分をめぐって、中国外務省は「周辺国と十分に協議したうえで慎重に方針を決めるよう望む」と述べました。

「NHKニュース」より

NHKもこんなニュースを垂れ流すメディアになり下がっているのが嘆かわしい。

コメント

  1. 「トリチウム」と言えば「ヤマト完結編」なのですがそれは置いておいて。

    日常的に存在するものなのだから、自然由来と同様である基準値を明確に示し、それ未満である事を明確にして放出すれば良いだけ、だと思うのですが。

    マスコミに蔓延する「放射脳」を如何に退治するかがむしろ問題でしょうかね……

    あと隣から大量放出されてるトリチウムを大々的に公表するとか。
    いや公表はされてるはずですけどねぇ……

    • この話の解決策はそんなに難しい話では無いわけですが、福島での風評被害が深刻であるのならば、「別の場所でも放出」と言う事を考えても良いかも知れません。
      大阪が「大阪湾で」などといっていましたが、流石に長距離輸送は大変ですし現実的でもありません。タンカーを使って海路で海に放出する(EEZ内)は如何ですかねぇ。
      そうしたら一石二鳥になるのではないでしょうか。

      なんというか、事故発生前は普通に流していたものが、事故後流せなくなるという点に不自然さを感じないのは、如何なものかと。

      あと、ヤマト完結編は見ていないのですが、Wikipediaを読んだら、何やら海洋採取しているみたいですね。
      なんというか、この技術があればトリチウムを集めることもできるのに、とか思いました。

      • 風評被害ガーって言っているマスコミが、風評被害起こす気満々というマッチポンプに最大の疑問を感じます。
        最大の問題は、「人は見たいのだけを見て、信じたいものだけを信じる」ので、どれだけエビデンスを積み上げても放射脳の人たちは絶対納得することはない、という事でしょう、大変非合理的で残念ですが。
        #彼らは、「福島のトリチウムとよそのトリチウムは違う」くらい言いかねないので。

        どなたか政治家が、処理水をがぶ飲みして、頭からかぶって見せるのが一番かも知れません。
        実際、その程度でどうにかなるようなレベルではないはずですから。

        追記:ヤマト完結編はむしろ観ない方が良いです、ヤマトに美しい思い出をお持ちなら。
        酒飲みながら突っ込みまくりで大笑いして観るには良いのですが……いや良くないか。