球磨川氾濫と熊本県知事の判断

政策

タイトルからすると熊本県知事の蒲島氏を批判するようなものだが、今回のそれは「それだけ」というワケでも無い。

蒲島知事「『ダムなし治水』できず悔やまれる」 熊本豪雨・球磨川氾濫

毎日新聞2020年7月6日 08時38分(最終更新 7月6日 11時58分)

熊本県南部の記録的豪雨で1級河川・球磨川が氾濫し、甚大な被害が出ている状況について蒲島郁夫知事は5日、報道陣に「ダムによらない治水を12年間でできなかったことが非常に悔やまれる」と語った。

「毎日新聞」より

今回、九州で大変な被害が発生してしまった。被害にあった方々にはこの場を借りてお見舞い申し上げます。

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球磨川が氾濫

大雨の影響で

さて、支那の洪水の記事を書いていたら、日本も同じ雨雲の影響を受けたようで、九州地方が豪雨によって被害を受けてしまった。

決壊・氾濫は「重要水防箇所」 球磨川12カ所の危険性、事前に指摘

2020/7/6 6:00

熊本県に降った記録的大雨によって、球磨川で決壊や氾濫が確認された計12カ所は、いずれも洪水の危険性が高い「重要水防箇所」とみられることが5日、国土交通省九州地方整備局への取材で分かった。決壊した区域は、堤防の漏水などに注意が必要と指摘されていた。

「西日本新聞」より

人的被害は現段階で22人以上になっていて、心肺停止している方々や行方不明者も多数でているようなのだ。

球磨川02
球磨川01

酷いものだけれど、一体何故こんな事になってしまったのだろう?

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簡単に言えば、多量の雨が降ったからである。72時間降水量が800mmを越えてしまっている状況なのだが、この状況は未だ数日続きそうだと言うから、更なる被害のおそれがある。

治水対策はどうだったのか?

ところが、この手の水害というのは日本において珍しいか?というとそんなことは無い。

特にこの球磨川周辺は、結構以前からマズイと言われてきた場所である。

 九地整によると、5日正午現在、球磨川の国管理区間では決壊が1カ所、氾濫が11カ所確認され、うち半数が上流部だった。12カ所の内訳は、水害の危険性が極めて高い「Aランク」が1カ所、堤防の高さは想定水位を上回っているものの十分な余裕がない「Bランク」が6カ所、堤防に壊れた跡などがみられる「要注意」が5カ所だった。

 熊本県人吉市中神町で約20メートルにわたり決壊した堤防は、蛇行していた川の形を整備した箇所だが、地質の弱さや漏水の恐れが指摘されており、「要注意」に指定されていた。

「西日本新聞”決壊・氾濫は「重要水防箇所」 球磨川12カ所の危険性、事前に指摘”」より

球磨川は熊本県最大の川であり、日本最大急流の1つでもあるようだ。急流ということは何が起こるかというと、水量が増えると氾濫しやすくなる。

元々、球磨川は氾濫のリスクの高い川なのである。

かつてはダム建設計画があった

そして、ここからが冒頭のニュースに繋がるのだが。

私が2008年にダムを白紙撤回し民主党政権によって正式に決まった。その後、国、県、流域市町村でダムによらない治水を検討する場を設けてきたが、多額の資金が必要ということもあって12年間でできなかったことが非常に悔やまれる。そういう意味では球磨川の氾濫を実際に見て大変ショックを受けたが、今は復興を最大限の役割として考えていかないといけないなと。改めてダムによらない治水を極限まで検討する必要を確信した次第だ。

「毎日新聞”蒲島知事「『ダムなし治水』できず悔やまれる」 熊本豪雨・球磨川氾濫”」より

知事への質問にもあったのだけれども、実は球磨川にダムを造ろうという計画があったのだが、2008年に白紙撤回になってしまった。

未だに残っている民主党のサイトには、この計画について言及がある。

菅幹事長が川辺川ダム建設問題で委員会質問「違法運営の漁協相手の補償交渉はやめよ」

2001/11/09

民主党の菅直人幹事長は9日午前の衆院国土交通委員会で、熊本県の川辺川ダム建設問題について質問に立ち、「国土交通省は建設着工をするために漁業権を買収しようと、ありとあらゆる手段を使っている」として、約20分間扇国土交通相を追及した。

「旧民主党サイト」より

実はこの前段階として、日本自然保護協会の話があるのだ。

「吉野川第十堰(徳島県)、川辺川ダム(熊本県)、 清津川ダム(新潟県)には、抜本的な見直しを」

2000.08.24

8月24日、日本自然保護協会(理事長、田畑貞寿)は、自民党政務調査会公共事業抜本見直し検討会(座長、谷津義男)にあてて、「自然環境保全の見地から見た公共事業の見直しの要望書」を提出しました。

~~略~~

●川辺川ダム 

熊本県の球磨川水系の川辺川に計画されている高さ107.5m、総貯水量13300万トンのアーチ式コンクリートダム。川辺川ダム事業審議委員会は1996年に計画は妥当とする答申を出したが、ダム予定地の近くにクマタカの営巣地があることを報告していなかったことが問題となった。1999年には、日本自然保護協会と熊本県クマタカ研究グループの協力により、ダム予定地のクマタカは原石山周辺を繁殖テリトリーとしていることが、明らかとなった。

「日本自然保護協会のサイト」より

もはや、「クマタカの営巣地」とか地雷ワードにしか見えない。

構想図

こんな感じの川辺川ダムが計画されて、それが廃止されている。

川辺川ダム計画は1966年より

球磨川の治水事業に関しては、1966年に計画されて以降なかなか事業計画が進まなかった経緯がある。

八ッ場ダムと共に計画が長期化したダム事業の代表格なのだが、長期化した理由は八ッ場ダムも川辺川ダムも強固な反対運動が長年に渡って続いてたことによる。

ただ、ダム計画を機に「自然環境を守ろう」派による反対運動が盛り上がったようだ。地域住民の反対は確かにあって、「ダム事業に生じる補償案への賛否」は論じられているようだ。

川辺川ダム計画に伴って、五木村の大部分が水没してしまうと言うダムにありがちな問題がついて回っている。ダム建設によって相良村や五木村が水没することになっているのだが、ダム建設自体は相良村であるために相良村には莫大な固定資産税が支払われる。一方、五木村は村の大部分が水没するにも関わらず、そうしたお金が支払われない。故に徹底的に反対したという。

この辺りの不公平感は次第に解消する方向になっていくのだけれど、1990年代には「ダム反対派」と呼ばれる市民団体が暗躍するようになったようで。

そこにパワーを与えたのは毎日新聞熊本版に掲載された「再考川辺川ダム」連載だったようで。比較的科学的視点に基づく検証だとWikipediaには書かれているのだが、これをベースに形成されたと言われるダム反対派の意見を見ると、本当に科学的見地から訴えた内容だったかは怪しい。

https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/070214/pdf/s2-1.pdf

おっと、住民側の視点についてもリンクを貼っておくべきだろう。

県民の会 川辺川ダム住民討論集会とは

全体的な印象としては、国交省側が騎乗の計算値を多用しているのに対して、住民側の主張は実地に基づく検証値を採用しているように見えるのだが、しかしこの手の数字は何れも意図的に増減できてしまう。

個人的な意見ではあるが、どっちもどっちだという気がする。

国交省側は治水の効果を見積もるにあたって、水害の発生を念頭において数字を盛った可能性はある。ただ、予防という観点からすれば、最大限、数字を膨らませる必要性はあったことを考えれば、全てがオカシイと言う事にはならないだろう。

一方の反対派の意見は、当然、「ダムなんて無意味だ」という観点から検証しているわけだから、意見が対立するのは当然打といえる。そして、ダム反対派の主張は「ダムによらない治水対策」をスローガン的に掲げているのだが……、それの根拠がヨーロッパ型の治水対策というから困ったものだ。日本の河川は急峻であり、特に球磨川はその中でも流れが速い。一方のヨーロッパの河川は穏やかな河川が殆どであるため、比較対象としては適切では無いだろう。

ただ、時代はダム反対という流れだったために、球磨川ダムは治水一本に絞った計画に変わっていった。お陰で、穴あきダム化が検討されるようになったようだ。その間にも住民の移住は着々と進められて、多くの住民は高台に移り住んでいる。また、周辺道路の拡充なども進められて

だが、結局のところ反対派の意見が強く、2008年3月にダム廃止を訴えて熊本県知事に当選した蒲島氏(自民党から実質的な支援を受けて当選)は、同年8月にダム建設中止を訴え、翌年これが受け入れられた。

蒲島知事は2008年9月、治水目的を含んだ川辺川ダム計画に反対を表明。翌年の前原誠司国土交通相(当時)による計画中止表明につながった。国と県、流域12市町村はその後、ダムによらない球磨川治水策を協議。河道掘削や堤防かさ上げ、遊水地の設置などを組み合わせた10案からダム代替案を絞り込む協議を本格化させる予定だった。

「yahooニュース”川辺川ダム「復活ない」 熊本県の蒲島知事 球磨川治水で”」より

この当時の知事の判断が妥当だったかは検証されるべきなのだが、どういう訳か本日付の熊本日日新聞では「私が知事の間は計画の復活はない」と明言したようだ。

え?検証は?

ダムによらない治水が失敗した事例

千曲川の例

実は去年も似たような話があった。

千曲川決壊、過去最大の水量による水圧 越水も重なる 台風19号

毎日新聞2019年10月15日 08時29分(最終更新 10月15日 11時24分)

台風19号で長野市の千曲川の堤防が決壊した原因について、国土交通省千曲川河川事務所は、過去最大の水量による水圧と越水が重なった可能性があるとみている。

 決壊したのは長野市穂保(ほやす)地区の千曲川左岸の堤防で、1984年に完成し、2007年に幅を7メートルから2倍超の17メートルにまで広げる工事をしたばかりだった。河川事務所や市などによると、13日早朝、約70メートルにわたって崩れ、同地区を中心に広範囲に浸水被害をもたらした。

「毎日新聞」より

千曲川の水害については、元長野県知事の田中康夫氏の意向が随分と影響していたと言われている。田中氏はかなりの反ダム派で、治水事業に関しては随分と消極的であった。

民主党の事業仕分けよりも前に…田中康夫元知事による工事中断から16年 あのダムがようやく動き出す!!

2016.10.23 14:00

民主党の事業仕分けより以前に、社会問題化した田中康夫元長野県知事による「脱ダム宣言」。その象徴といえる長野市の県営浅川ダムで10月半ば、長野県が工事完成への最終段階となる試験湛水(たんすい)の作業を開始した。通常時は水をためない「穴あきダム」に注水することで、強い負荷をかけ、安全性を確認する。建設に反対する住民らによる訴訟が東京高裁で続く中、長年にわたって流域の住民を苦しめてきた暴れ川の治水対策は、節目を迎える。

「産経新聞」より

もともとダム計画というのは長い時間がかかる事でも有名だが、時代の移り変わりによって必要性が変化してしまうと言う問題に対して柔軟に対応出来ない問題がある。

田中氏はそうした点について、「考え直す」という観点から7つのダム工事の中止を発表した。これによって、建設費用が浮き、称賛を受けるのだが……。これに伴って多くの土木業者が廃業に追い込まれる事態となる。

この手の工事ができる業者というのは地域性もあって、一旦いなくなってしまうと、いざ対応しようとしても直ぐには対応出来なくなってしまう。

もちろん、おかしな計画を廃止することは大切ではあるのだが、「何がおかしいのか」という基準に関しては恣意的に捜査できてしまうという問題点を抱えている。

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001317859.pdf

実際に環境の変化に伴う集中豪雨の多発を考えると、これまでの考え方で「大丈夫なのか」という不安は残るだろう。

首長に求められるもの

今回、報道されている内容から察するに、熊本県知事としては、当選した時期の主張を貫く形で政策を進めていくつもりのようだ。

確かに公約を果たすというのは政治家にとって大切な事だとは思うのだけれど、死者がこれだけ出てしまった大災害を目の当たりにして「方針を変えません」というのは、あまりに頭が硬いのではないだろうか。コメントの中には「将来的に判断を変えることもあるかも」という話も出てはいたけれど、逃げ口上にしか見えない。

この時点で判断を聞くメディアもどうかと思うが、「記録的短時間大雨情報」などの情報等を見ても、川辺川ダムに対して国交省が想定したよりも水量があったのではないかという指摘がある。

検証して、必要であれば方針を翻す。そういったことも首長に求められる資質なんじゃないかな。これは、熊本だけの話じゃなくて、全国的にも言えることなんだと思う。

追記

熊本県知事、叩かれてますな。

熊本知事「『ダムによらない治水』極限まで検討したい」

7/6(月) 11:14配信

熊本県南部を襲った豪雨の被災地では5日、建物や道路の破損など爪痕の大きさが徐々に明らかになってきた。ぐずついた天気が続く中、決壊した堤防の緊急工事や水没した自宅や家具の片付けなど、各地で復旧に向けた動きも出始めた。

~~略~~

蒲島郁夫知事は5日、県南部の豪雨被害を巡り「球磨川の氾濫を実際に見て大変ショックを受けた。改めて『ダムによらない治水』を極限まで検討したいと確信した」と述べた。人吉市や八代市を視察後、県庁で報道陣の取材に答えた。

「yahooニュース」より

何を拘っているのか……。

熊本県知事「ダムのあり方も考える」 球磨川の治水対策巡り発言

2020/7/6 20:57 (2020/7/7 0:19 更新)

熊本県の蒲島郁夫知事は6日、同県南部の豪雨で氾濫した球磨川の治水策を巡り、県庁で報道陣に「今回の災害対応を国や流域市町村と検証し、どういう治水対策をやっていくべきか、新しいダムのあり方についても考える」と述べた。

蒲島氏は5日、球磨川の治水策について問われ「『ダムによらない治水』を極限まで検討したい」と発言。「私が知事である限りはそういう方向でやっていく」と強調したが、1日で軌道修正した格好だ。

「西日本新聞」より

批判されて撤退した模様。

そもそも、「ダムによらない治水」という話を色々検索してみたのだが、何も前に進んではいない模様。

球磨川治水対策協議会・ダムによらない治水を検討する場について

最終更新日:2019年7月1日企画振興部 川辺川ダム総合対策課

平成20年(2008年)10月、熊本県知事と国土交通大臣が会談し、国と県が一緒に「ダムによらない治水を検討する場」を設置することで合意しました。

 平成21年(2009年)1月、国・県・流域市町村で構成する「ダムによらない治水を検討する場」が設置されました。

「ダムによらない治水を検討する場」では、現実的な対策を最大限積み上げ、着実に治水安全度を高めていくこととしていましたが、対策実施後の治水安全度が、現状より向上するものの、全国の直轄管理河川に比べ低い水準にとどまる結果となりました。

そこで、中期的に必要な治水安全度の目標を戦後最大の洪水被害をもたらした昭和40年7月洪水と同規模の洪水を安全に流下させることとし、新たな検討組織で治水対策の手法を検討することとなりました。

「熊本県サイト」より

これが去年の記事なんだけれども、去年、九州で大雨があったにもかかわらず、まだこんな寝ぼけた事を言っている始末。この人、知事になってから何年経っていると思っているのだろうか。2008年4月に熊本県知事に就任してから4期11年知事をやっていて、当初から掲げていた「ダムによらない治水」を未だに検討している始末だ。

なお……、川辺川ダムを考える住民討論集会と森林の保水力の共同検証の発言集に目を通していくと、非常に気分が悪くなる。

例えば……、こんな部分。

同じく川辺川ダム、人吉、球磨川の中流でも役に立ちます。まあ、人吉の場合は、80年に一
度の洪水、毎秒7,000トン、これをどうにかしなきゃいけないということで、川の中で4,000トンを流して、川辺川ダムと市房ダムで3,000トン、ということです。

「第2回発言集」より

こちらはダム建設推進をする国交省の側の説明である。一方で、反対側の意見はこちら。

国は河道整備を計画どおり、河道整備というのはですね、川床を掘ったり、堤防のことを考えたり、遊水地を考えたり、色々する訳なんですが、国は河道整備を計画どおり実施しても、人吉では毎秒4,000トンしか安全に流せないから、ダムは必要と言っています。国土交通省のさっきの説明にもありました。ところが、国はですね、人吉で川底を掘る計画を隠されています。さきほどですね、これは人吉地区で球磨川の断面図なんです。国土交通省の計画ではですね、今の川底から1.5メートルから2メートル掘ることになっています。これは、国土交通省の資料にあります。ところが、今川底が高いままの今の状態で、昭和57年7月毎秒5,400トンの水量が人吉で流れているわけです。きちんと川底を掘ったら一体どれだけの水量が流れるのか、国土交通省は明らかにするべきです。

~~略~~

もう一つの問題はですね、80年に一回の最大洪水量、一体何トンかということです。国土交通省の計算では、川辺川ダムと市房ダムがなければ7,000トン、これは人吉地点の話ですね、それから市房ダムだけであると6,600トンの数字が出ております。これ本当かということです。実は、求めたのはですね、今から遥か昔、1966年のことであります。計算手法も問題ありまして、これ雨量から求める方法で、これは雨量確率法というんですけれども、いくつも仮定があります。もう一つやはり問題は、古いデータですね、一昔前のデータを使って計算したもんだということです。ということで、これはとても科学的な計算結果と言えるもんではないということですね。

「第2回発言集」より

エラそうに宣っていた方は、今いったいどんな気持ちでいるんだろうか。意図的に洪水被害のあった人吉の部分を抜いてきているが、9割完成しているダムを造らない理由がこれだというのは、ちょっと……。

国交省の計算が杜撰だと指摘するのは分かるが、毎秒7000tが毎秒6600tになったから何だというのか。

サンクコスト(既に支払われた費用)のことを考えると、数字の正当性を議論して中止という判断に至った理由が分からない。

今回の洪水が川辺川ダムが完成していたとしても止められたかは分からない。山林の保水力に関しても議論されているのだけれど、雨が降り続いた後に多量の雨が降ると、期待した保水力が発揮出来ずに雨量にかかわらず川に流れる水の量が増えてしまう。今回はそうした実例だと、そう思う。

反対派は河床掘削に拘っているのだけれど、そのうちに鮎がどうとかという話に推移していく。

そして、こうした議論を元に知事の態度表明という流れになったようなのだが、川辺川ダム事業に関する知事の発言についてに表明されたように、最終的な判断は最大受益蓄となる人吉市の市長が「白紙撤回」を求めたことを根拠にしている。

更にこんな事を宣っている。

最後になりましたが、川辺川ダムを造らないからといって、水害による被害から目をそらすことはできません。しかし、有識者会議の佐藤洋平委員が提言されたように、「洪水を治める」という旧来の発想から脱却し、「洪水と共生する」という新たな考え方に立脚すべきであると考えます。そのためには、ダムによらない治水対策を極限まで追求すると同時に、都市工学の英知を結集して「川とともに生きるまちづくり」を目指すことも必要になると考えます。

「知事の発言について」より

洪水と共生する積もりだったようなのだ。

つまり今回の洪水や犠牲者もある程度織り込み済みだったと言うことなのだろう。そして、その立場を許容したのが熊本県民なのだから、今回の洪水は避けられないことだったのだろう。

だが、だからといって、犠牲者を多数出した洪水をうけてなお「洪水と共生」と言えるのかは注目しておきたい。

追記2

九州は大変なことになっているね。

浸水の車、救命ボートに子ら… 冠水の福岡を空から見た

7/7(火) 11:33配信

九州北部を襲った豪雨から一夜明けた7日朝、現場上空を本社機「あすか」から見た。本州では青空が広がっていたが、九州に近づくと様相は一変。有明海は茶色く濁っていた。

「yahooニュース」より

大牟田市も冠水してしまったようだ。

筑後川の氾濫ということらしいのだけれど、日本の三大暴れ川の1つである。あの豪雨がこれまでの治水計画で想定されてきたかは、なかなか。

実際に、写真を見るとどこに堤防を作るんだよ、というレベルの場所である。筑後川は古くから比較的治水が行われてきた川だけに、これだけの被害が出てしまうとなると、今後はどういうところに人が住めるのか、ということも含めて考えていかなければならないかも知れない。

大分 熊本 筑後川水系の下筌ダム 緊急放流開始 水位上昇に注意

2020年7月7日 12時30分

国土交通省九州地方整備局によりますと、大分県と熊本県にまたがる下筌ダムで午前10時半ごろまでに筑後川水系の津江川への緊急放流を開始したということです。

「NHKニュース」より

ダムのコントロールも大変だな……。

コメント

  1. 昔、JRを使って、八代市から人吉市に移動したことがあります。
    その区間は球磨川沿いを走るので、車窓からの眺めはよいのですが、川幅は狭かったことを覚えています。
    なので、人吉盆地や球磨川水系の上流に大量の雨が降った場合、その区間がネックになったのかと考えています。

    >一方の反対派の意見は、当然、「ダムなんて無意味だ」という観点から検証しているわけ
    >だから、意見が対立するのは当然打といえる。

    中央リニアの静岡県知事の言動もそうなのですが、観点はともかく、まともな検証なしに結論ありきで動いている気がしてます。

    >ダム反対派の主張は「ダムによらない治水対策」をスローガン的に掲げているのだが……、
    >それの根拠がヨーロッパ型の治水対策というから困ったものだ。

    以前書いた気もしますが・・・
    左翼活動家(いわゆる「パヨク」)は、一つの物事(事実)を複数の観点から分析したり、複数の物事(事実)を組み合わせて分析できない感じがしてます。
    「根拠がヨーロッパ型の治水対策」というのも、単純に飛びついただけのような気がします。

    もし、ダム無しの治水を考えるなら、土地(特に山)の保水力を上げる→植林や間伐などの林業の再興と、休耕中の水田の復活・人吉盆地に(地下?)貯水池の建設などが必要だと考えます(ダムの貯水・保水機能を、ほかの手段で置き換える)。
    でも、人吉盆地に(地下?)貯水池を作るなら、ダムを建設したほうがいいと思います。

    • 補足情報です。やはり予想したのと同じような事態が起きた模様です。

      >なので、人吉盆地や球磨川水系の上流に大量の雨が降った場合、その区間がネックに
      >なったのかと考えています。

      ソース)日経クロステック(有料記事)「球磨川中流域で水位急上昇、上流の人吉盆地で行き場失う」
      >次に変化が起こったのは4日午前0時ごろだ。中流域の熊本県球磨村にある「渡(わたり)」
      >と「大野」の観測所で水位が急上昇を始める。
      (中略)
      >球磨川は人吉市の市街地が広がる上流域の人吉盆地を流れた後、渡観測所の周辺から
      >先の中流域で様相が一変する。約40kmの区間にわたって川の両側に山が迫り、川幅が
      >急に狭まるのだ。渡と大野の両観測所で水位が急上昇したのは、中流域の狭窄
      >(きょうさく)部に上流から大量の水が押し寄せた影響とみられる。
      (中略)
      >中流域の水位が上昇した影響を受けて、上流域でも排水が思うように進まず、
      >行き場を失った水によって水位が上昇。
      (中略)
      >盆地の下流側に位置する人吉市では、球磨川の氾濫によって過去に何度も浸水被害が
      >発生している。いずれも同様のメカニズムが働いたとみられる。

      過去に何度も浸水被害が出ているのに、根本対策を取らなかった行政に問題があったことは、間違いないようですね。
      (人吉市内では川幅の拡張など、河川改修はやっていたようですが)

      • 川幅を増やすという対策って、案外ダメなんだと言うことを聞いたことがあります。
        ボトルネックとなる部分を改善するという意味ではある程度の効果が期待できるようですが、他の部分が弱くなってしまうので、トータルでやれないと意味が無いのだとか。
        特に、人吉地区のように2本の河川の合流するような地域では、なかなか被害を押さえるのが難しい感じですね。

        ご紹介頂いた記事は実に興味深かったです。

    • そうですか。
      日本では川幅の狭い山間の河川というのは結構あって、今回、今現在もですが、かなり大きな被害に繋がっているという話になってますね。

      日本の林業は、「山でやる田植え」なんだそうで、今の山は保水力など殆ど期待できないのだとか。そりゃ、杉、桧がアホほど整然と並んでいる時点で、「山としてオカシイ」ワケですよ。これもまたヨーロッパ型の考え方なのでしょう。

      個人的にはもはや人吉地区の復興というのはなかなか難しくて、歴史のある土地なのでしょうけれど丸ごと遊水池にしてしまうくらいでないと、ダムを造ったとしても今回の規模は防げないような気がしていますよ。それでも、ダムがあったら被害を減殺できていた可能性が残されているだけに、何故やらなかったのかと、思いますけどね。

  2. こんにちは。

    現段階の対応が大変なときに責めるのはちょっと酷なような気もします。
    ダム建設廃止が市民の80%を超えていたことを考えると結果は享受せざるを得ないとも考えます。
    ただ12年間協議してたみたいですが、協議では氾濫は防げないのではないのかと小1時間問い詰めたいですね。
    「馬鹿の考え休むに似たり」との言葉が頭の中で浮かんできます。
    また市長が「極限」と表現しすぎで自己保身しか考えてないのだなと透けてきてしまいます。
    治水は統治者の義務みたいなものなので検証もせず逃げているだけでは市長失格の烙印を押されても仕方がないと思うのです。

    • そうですね、責めるのは違うのだろうとは思う訳です。
      ただ、今この後に及んで、何故まだ「ダムに頼らない治水」の看板を下ろすことに躊躇するのかが理解できない。
      ご指摘頂きましたが、検証はきっちりすべきでしょうね、これから。

    • >現段階の対応が大変なときに責めるのはちょっと酷なような気もします。

      あれだけの被害を出した張本人の熊本知事が、性懲りもなく
      『ダムは、いらねぇ~』

      未だに宣っている。
       これを
      今責めないで、いつ責めるのですか!

  3. 木霊さん、おはようございます。

    亡くなった方・被災された方には残酷過ぎますが、20世紀以降の日本最大水害被害者(台風含む)200人以上は、1959年伊勢台風の5098人を筆頭に18回という話です。
    200人以上は平成では2018年の平成30年7月豪雨が最大の人命被害。
    数値で判断するのは危険という前提で何が言いたいかというと、治水ダム・河口堰・支流の放水施設・堤防の強靭化という治水施策は100年以上進めてきているんですよね。(その効果もちゃんと検証し評価されるべき)

    それでも毎年起こる水害対策には追いつかない...、他にも防災アラートによる避難勧告・ハザードMAPなんかも各市町村レベルではやれる範囲でやっていますが、安倍ちゃんの「国土強靭化政策」の是非を非難するのではなく推進して欲しいもんです。
    長期に渡って粛々と推進するべき大切で壮大な国土保全計画ですから、例え政権が代わっても「水害国日本」として同じテーマを共有し宿命とすべきでしょう。

    >そもそも、「ダムによらない治水」という話を色々検索してみたのだが、何も前に進んではいない模様。

    「ダムによらない治水」ってのがお題目でないなら、一体何をやってきたのかだけはちゃんと検証されるべきでしょうね。
    最後の防波堤である球磨川河口堰も結果的に機能しなかった訳で、国土交通省の試算を根拠もなく甘く見て否定し、「ダムによらない治水」を推進した熊本県知事の責任は重大だと思いますね。

    • 伊勢湾台風ですか。
      そういう世代ではないのでピンとは来ませんが、東海地方は甚大なダメージを受けたようですね。
      そして、改めて伊勢湾台風の情報等を眺めてみましたが、なるほど「あまり反省が見られない」というような感じです。

      今、自分の住んでいる地域で大きな災害が発生したら?というような事は、一度考え直して見るべきなんだと思いますけれど。
      そして、「国家強靱化計画」ですが、これはもっと大きなスパンで眺める話なので、一朝一夕で結果がでない政策です。進めれば間違い無く叩かれるでしょう。今の政治家にはどだい無理な話ですな。