祈りを捧げる先は、天安門事件の犠牲者に対してか、或いは未来の香港で弾圧された人々に対してか。現在進行形で弾圧されている自分たちに対してか。
香港市民、禁止令に反し集会決行 天安門事件を追悼
2020年6月5日 3:54
香港で4日、天安門事件から31年に合わせた追悼集会が開かれ、数万人が参加した。当局は新型コロナウイルス感染防止を理由に追悼集会を禁じていたが、参加者らは禁止令に反して市内各地に集まってろうそくをともしたり、民主化を訴える声を上げたりした。
「AFP」より
禁止されていた集会だったが、香港市民は終結して祈りを捧げた。
天安門事件
六四天安門を忘れるな
支那では検閲対象となる六四天安門事件(1989年6月4日)は、支那で沸き起こった民主化運動だった。
切っ掛けは改革派だった胡耀邦の死(1989年4月15日)で、天安門広場に自然発生的に抗議者達が集結するようになっていた。この動きは、上海など他の都市にまで広がり、鄧小平はこの事態を危惧して5月19日に北京市に戒厳令を布告。
6月4日には支那人民解放軍の投入がなされて、兵士や戦車が天安門広場を蹂躙した。デモ隊を軍隊を使って虐殺したのである。その被害者数は明らかにされていない。支那は報道管制を敷いて外国メディアを締め出したからである。
支那共産党の公式発表では、「動乱で319人が死亡(民間人と軍、警察の合計」となっているが、後に明らかになった資料のうち、アメリカ外交公電では「広場だけで10,000人が殺された」と現場にいた市民の証言を伝えており、イギリス政府公文書にも「最低に見積もっても一般市民の死者は10,000人以上が支那軍により殺害された」と報告している。ソ連(現ロシア)の公文書には3,000人の抗議者が殺されたと見積もられると記されている。
こうした資料から分かってきたことは、死者は天安門広場のみならず、周辺地域で多数確認されていて、概ね1万人を越える人々が命を落としているという事だ。
この事件で最も恐るべき点は、支那の人民解放軍は正しく共産党の軍であり、支那の人民を守る存在ではなかったことが実証されてしまったことだ。
一国二制度という幻想
実はこの六四天安門事件の背景には、百花運動という支那共産党の方針の失敗があった。
毛沢東が1956年5月2日に提唱した「百花斉放百家争鳴」という方針は、「共産党への批判を歓迎する」というものであった。毛沢東はこの時期自分の信念に揺らぎが生じていて、ソ連との関係も揺らぎが生じていたためである。
よって、外部からの意見を適度に取り入れることで、政敵である劉少奇や鄧小平らの力を削ぎ、支那の独裁体制を強化しようという狙い、或いは批判者のあぶり出しを目論んでいたという事らしいのだが、コレは見事に失敗する。毛沢東に対する批判が噴出して、収拾が付かなくなってしまったのである。
この時批判を展開した知識人は、軒並み粛清の対象となる。そして、コレをもって、支那国内の言論は見事に封じられたのである。
毛沢東の死後、胡耀邦もこの百花斉放百家争鳴の再提唱を1986年5月に試みたが、保守派の長老グループによって棚上げにされてしまった挙げ句、胡耀邦は翌年失脚してしまいコレは叶わなかった。
六四天安門事件(1989年6月4日)はその延長線上にある話だが、もう一つ関係のある話が一国二制度に関する法整備だと、僕は考えている。
一国二制度は、特別行政区という制度の設置(1982年憲法以降に採用)があり、元々は支那は台湾を武力で開放することを目指していたものの、コレに挫折する。1978年には鄧小平が「台湾の現状を尊重する」として方針転換をした。そして、台湾のために一国二制度を設計するのである。ところが、この一国二制度の設計は中途半端に終わってしまった。台湾の併合に失敗したからである。
特別行政区制度は一国二制度の前準備として設計された制度で、香港とマカオは特別行政区という立場に置かれている。文字通り、異なる制度を運用している地域なのだが、建前としては支那共産党の作った憲法下において運営されている。なお、支那の憲法を見ると案外ちゃんとしている。ただ、運用がクソなので人権に関してはお察しなのだが。
そんな訳で、異なる制度は異なる思想を生む結果になり、コレが今の香港に繋がっているのだ。一国二制度はもともと無理のある制度なのだが、支那が共産主義であるのに対して、香港やマカオは民主主義ベースなので、どうしたって無理が出るのだ。
警察は静観
で、香港市民が集まったのに対して、警察は今回は静観していたようだ。
警察はうち1か所の商業地区で、参加者の一部を逮捕。現場では同市で昨年7か月にわたり続いた激しい民主派デモを想起させる光景が広がったが、警察はビクトリア公園での集会には介入しなかった。
「AFP”香港市民、禁止令に反し集会決行 天安門事件を追悼”」より
……いや、逮捕してるな。
しかし、警官が徹底的に介入しなかった背景には、アメリカの暴動があると見ている。
アメリカで騒ぎになってくれたことで、支那の非道な行いに対して世界からの目が逸れている。四六天安門事件の話についても、今回盛り上がることはなかった。
英首相、香港人のため移民規則変更を検討 国家安全法に反発
2020年06月3日
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」を施行した場合、イギリスは移民規則を変更し、香港人数百万人に対して「英市民権を獲得する道」を開く方針だと、3日付の英紙ザ・タイムズで明らかにした。
ジョンソン首相は英紙タイムズへの寄稿で、イギリスは香港との関係を維持「せざるを得ない」と述べた。
国家安全法とは反逆や扇動、破壊行為などを禁止することを目的としたもので、中国が独自の治安機関を香港に設置できるとの規定も盛り込まれている。
「BBC」より
イギリス首相の発言も、余り報道される事は無かった。かなりセンセーショナルな発言であったように思うのだが、アメリカのインパクトが大きかったのが原因かも知れない。
元々、この件はイギリスにも責任があるのだ。
香港を返還すべきは、台湾に逃れた国民党に対して、ということだったハズなのだけれど、イギリスはそうはしなかった。
かつてイギリスの植民地だった香港は、言論の自由や表現の自由など、中国大陸ではみられないような権利を享受している。これは、「一国二制度」の下に1997年に香港を中国に返還するという、1984年のイギリスと中国との合意に基づくもの。
「BBC”英首相、香港人のため移民規則変更を検討 国家安全法に反発”」より
イギリスのこの助け船で、どの程度の香港人が救われるのかはよく分からない。が、イギリスにしたって打算はあるので、この申出はイギリスにとっても損な話では無い。
「干渉するな」約300万人の香港市民に”避難場所”の提供を申し出たイギリスに中国が警告
Jun. 04, 2020, 01:00 PM
イギリスのジョンソン首相が300万人の香港市民にイギリスへ移住する権利を与える考えを示したことを受け、中国は6月3日、イギリスに対し、中国の問題に「干渉するのを止める」よう求めた。
「BUSINESS INSIDER」より
もちろん、支那はかなり怒ってはいるのだが、イギリスにしてみればコレは国内問題である。支那が何を言おうと関係ないのである。
台湾も受け入れに
なお、似たことを言った台湾の方が動きは速かった。
台湾、「香港難民」受け入れ整備へ 「法治に傷」と非難
2020年05月29日07時09分
中国全国人民代表大会(全人代)で28日、香港に国家安全法を導入する方針を採択したのを受け、対中政策を所管する台湾の大陸委員会は「民意を無視し、野蛮なやり方で香港の自由民主と法治を著しく傷つけた」として中国共産党に「強烈な非難」を表明した。同法導入で反政府活動が厳しく摘発されると、香港からの政治難民が増えると見込まれるため、受け入れ態勢の整備を急ぐ方針だ。
「時事通信」より
こうしたイギリスや台湾の動きは、何も人道的な配慮というわけではない。上述したように「打算」があるのだ。
実は、香港も金融工学的に優れた人材が豊富で、それなりの資産を持っている方が多い。そういったスキルを持った方はウエルカム!と、その様に言っている訳だ。
イギリスにしても台湾にしても、こうした香港が持っていた金融ハブ的な機能を本国に持ってきてくれるのであれば、多少無理をしてでも国益に繋がるのである。
日本も手を挙げた方が良いよ。
文化大革命という悪夢
天安門よりも悲惨な歴史
なお、軍隊が人民を殺戮した六四天安門事件も悲惨な事件ではあるが、支那にはもっと悲惨な文化大革命(1966年~1976年)という失敗も抱えている。これもまた毛沢東の狂気が招いた失敗だが、文化大革命では人民が人民を虐殺するという悲惨な結果を招いた。
文革50年、語られぬ「人肉宴席」 中国
2016年5月13日 16:09
中国では文化大革命の狂乱のさなかに恐ろしい「人肉宴席」の犠牲となった人々がいた。しかし、文革開始から50年を迎えた中国共産党は、当時の回想も、文革そのものや残虐行為についての歴史的評価も、包み隠そうと躍起になっている。
~~略~~
文革時代の最も行き過ぎた行為の一つに、中国南部・広西チワン族自治区の武宣県で起きた、粛清の犠牲者の心臓や肝臓、性器が食べられた事件がある。
「AFP」より
この歴史について支那共産党はその存在を認めてはいない。しかし、文化大革命の時期の犠牲者数は40万人にのぼり、被害者は1億人にものぼる(支那共産党第11期中央委員会第3回全体会議における報告)とされているが、明確な数字は今なお不明だ。犠牲者は1000万人にのぼるという説を唱える学者もいるようだが。
日本にも影響
こんな悲惨な文化大革命だが、日本国内では「素晴らしいもの」と宣伝された時代があった。
いや、今なおそう信じて疑わない人がいると言うから、その正気を疑わざるを得ない。本人は自覚しているのかそうではないのか。
おぞましい事に、文化大革命は日本にも輸出されようとしていたという。毛沢東自身、「日本共産党も修正主義打倒を正面から掲げろ」「日本でも文化大革命をやれ」と発言したといい、対日干渉が行われた。興味深い事にコレに反発したのが当時の日本共産党だったが、日本共産党の内部でも文化大革命を賛美する派と、反対する派で激しい論争が行われたらしい。
そして、その延長線上にあるのが山岳ベース事件(1971年~1972年)でありあさま山荘事件(1972年)であった。
今日の香港、明日の台湾、明後日の沖縄
結局、支那の動向は日本に大きく影響するという点で、無視出来ない話。
流石に国賓待遇で日本に習近平氏を招待するなんて話はヘドが出そうだが、対話を無くすわけにもいかない。少なくとも支那の動向をしっかり把握できていなかったことで、今回の武漢肺炎の悲劇があったのだから、日本政府も反省すべきである。
ヒューミントの整備と、情報を運用できる体制を構築せねばならない。それと同時にスパイ防止法の早期立法、施行をお願いしたい。香港の話は、他人事ではないのだから。
もちろん、人道的には香港に何とか手を差し伸べるべき、だとは思うのだが、もはや香港の明日は見えない状況にあるようだ。香港に手を差し伸べるとしたら、それはアメリカと協力して対支那包囲網の構築を急ぐべきだろう。数年前ならいざ知らず、習近平氏が侵略の意思を隠そうとしないことここに及んでまさか支那の手をとるなんて話はあり得ない。
支那と対等に付き合おうと思うのであれば、コチラも殴られたら殴り返すだけの力を持たねばならない。それが外交なのである。お花畑の理想論は、相手に付け入る隙を与えるだけなのだ。
コメント
木霊さん、おはようございます。
>で、香港市民が集まったのに対して、警察は今回は静観していたようだ。
国家安全法が西側諸国から厳しく非難を浴びているため、さすがに躊躇したのでしょうかねェ~。
>しかし、警官が徹底的に介入しなかった背景には、アメリカの暴動があると見ている。
この事件でアメリカの人権問題を攻撃している最中ですから、当然そういう思惑も強く働いているのでしょう。
ところで、アメリカの暴動は最悪な軍投入を避け鎮圧されつつあるようです。
元々、事件の批判・根深い人種差別、そして失業率を増加させた武漢ウィルス対策に対する不満が拡大した訳で、大半は平和的な抗議デモであり略奪などの暴力行為は噂されるアンティファ等の反政府勢力、そして支那・ロシアが裏で支援し煽っている可能性が高いのです。
アメリカ国民も暴力組織には厳しい目を向けていますから、トランプ大統領が軍投入をする事態は避けられそうかな。
とはいえ今後の香港で自由なデモを継続するのは無理、木霊さんが天安門事件と同じ共産党軍による国民虐殺の繰り返しを懸念されるのは当然ですね。
民主化勢力を根絶やしにする為なら、政府組織を使って自作自演するくらいやるのが支那共産党ですから。
>イギリスのこの助け船で、どの程度の香港人が救われるのかはよく分からない。が、イギリスにしたって打算はあるので、この申出はイギリスにとっても損な話では無い。
香港の人達は故郷を捨てるという辛い選択になりますが、もはや移民としてイギリス・台湾の移民支援策に乗るしかないのかもです。
750万人市民全てを救うのは無理にしても、同調する国(日本やアメリカ)が増えれば相当数の市民の移住が可能でしょう。
取り残されるのは経済的弱者なのが辛いところですけどね。
事態は複雑に動いているようですね。
アメリカがあの状況ですから、燃料をガンガン投入指定勢力は色々あるようです。
一方で、支那としては何としても現状を覆したいという思惑があるようで。
白々しい「白書」を出したり、様々な努力をしているみたいですね。どれだけのカネを使っているのでしょうか?
香港問題ですが、香港警察がデモに資金提供してた星火同盟の社長を含む四人をマネーロンダリングの罪で逮捕したようです。
香港に関しては、江沢民派の牙城、北朝鮮の資金調達の場だと云われ居りまして、その事に関連し、其れが本当かのように、共産党と山本太郎、SEALDsが早々に香港民主派デモ隊の支持を打ち出しましたね。
香港の民主派はSEALDsと友好関係に有り、フイリピンでアジアの民主主義を考える的な会議に参加した仲です。
此の民主派に関しても、香港で慰安婦碑を建てたりして、江沢民派に近い勢力だと云われて居ります。
今回の香港デモを、単純に民主主義の危機を感じた一般市民達が立ち上げって当局に抗議しだしたデモだと割り切って見る事も出来ません。
日本でデモ支持で蠢いてる勢力がコレマタ、ドン引きさせる要素として作用してます。
む、この情報はこちらの記事ではありませんか?
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53747750U9A221C1910M00/
香港の情報は、なかなか掴みにくいのが現状である様です。
活動家が色々と動いているのも確かに気になりますが、様々な思惑が裏で動いているのも事実だと思います。
世の中の動きはナカナカ単純に割り切るのは難しいですね。