東京都の感染者数カウントミスと、判断に重大な影響があった可能性

政策

先日こんなニュースが流れた。

<新型コロナ>都感染者111人報告漏れ ファクス送信でミス

2020年5月16日 夕刊

東京都内の新型コロナウイルスの感染者数に百十一人の報告漏れと三十五人の重複計上が判明した問題は、各保健所の現場の多忙さから、都への感染者報告の際にミスが起きたのが原因だった。都は再発防止のため、保健所の感染者情報を即時共有できるデータベースを導入。「基礎データの信頼を揺るがすことのないよう、今後の感染拡大に備えたい」としている。 

「東京新聞」より

意味がよく分からないが、111人報告漏れとはいったい……。この報道が流れた際には余り気にも留めていなかった。「現場が混乱して大変だね」という程度の認識だったのだ。

しかし、この話は掘り下げてみると困った実態が浮かび上がる。

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東京都の感染者数

一体何人なのか

「111人報告漏れ」の他に、「35人の重複計上」が判明した、というのが東京新聞の記事なのだが、これでは一体感染者数がどうなったかがよく分からない。

と、その話をする前に、東京都の問題と言えば、以前にもそんな話があったはずだ。

4日の都内感染者、発表を訂正

4/5 21:15(共同通信)

東京都は5日、新型コロナウイルスの4日の感染者数として発表していた118人が117人の誤りだったと訂正した。これに伴い、5日時点の感染者の累計は1033人となる。

「佐賀新聞LIVE」より

この時はダブルカウントが問題で、重複計上されてしまったという話だった。この時も「そういう事もあるかも知れない」くらいの認識ではあった。

そして5月になってこの問題が再燃する。

【独自】都内感染者、報告漏れ多数…端末入力後に手で書き写し報告した保健所も

2020/05/12 12:33

東京都が発表している都内の新型コロナウイルスの感染者数について、保健所から多数の報告漏れなどが見つかっていることがわかった。都内の累計感染者数は10日時点で4868人だが、都は集計のやり直しを進めており、現時点で100人規模の漏れが見つかっているという。

「讀賣新聞」より

冒頭の記事は実は5月10日に発覚した話で、12日にはこの様な報道がなされている。ミスが分かったので、一度集計をやり直した。で、その体制を見なおすというのが冒頭のニュースである。

都の感染者数集計で報告漏れ、保健所から計111人分…重複計上も35人分

2020/05/11 23:57

 東京都は11日、過去の新型コロナウイルス感染者数の集計で、保健所から計111人分の報告漏れがあったと発表した。これとは別に35人分が重複して計上されていた。11日の累計感染者数は4883人だったが、報告漏れから重複を引いた76人が上乗せされ、4959人となった。

「讀賣新聞」より

冒頭のニュースが伝えられていない、感染者数の実態だが、10日の時点で累積感染者数は「76人多かった」ということのようだ。ただ、どの時点で何人多かったのか、についてはちょっと調べ切れていない。感染者数が多くなって、追い切れなかった。その背景には、ローテクが足を引っ張っていた、という展開となった、僕自身も現状ではそんな認識である。

実は感染者数が多めに報告されていたというのである。

本日の感染者数は5人

さて、では本日はどうなっているかというと、こちら。

東京 新たに5人の感染確認 新型コロナ

2020年5月20日 15時47分

東京都によりますと、20日、都内で新たに5人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。1日の感染確認が5人となるのは、今月17日と19日に続いてで、先月7日に緊急事態宣言が出されて以降、最も少ない人数です。

「NHKニュース」より

ああ、減ってヨカッタネ、ということなのだろうけれど。

確かに感染者数は減ってきている。

  • 5月20日 新規感染者5人
  • 5月19日 新規感染者5人
  • 5月18日 新規感染者10人
  • 5月17日 新規感染者5人
  • 5月16日 新規感染者14人
  • 5月15日 新規感染者9人
  • 5月14日 新規感染者30人

政府の基準に照らすと、「明日をもってクリア」という状況になりそうだ。5月14日の数字が悪いので週平均は上がってしまうのだが、明日の数字が良ければクリアという事になるハズだ。このまま来週に続けば、緊急事態宣言の解除がなされるだろう。

関西圏は解除される見込み

そして、東京都よりも先んじて緊急事態宣言が解除されるだろう事が予想されているのが関西圏である。

関西「宣言解除」有力、東京・神奈川は基準上回る…あす判断

2020/05/20 08:47

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を巡り、政府は、宣言継続中の8都道府県について21日に解除の可否を決める方針だ。生活圏が重なる地域は一体的に判断する予定で、解除基準を満たしている関西の3府県(大阪、京都、兵庫)は政府内で解除が有力視されている。一方、東京都や神奈川県は新規感染者数が解除の目安を上回っている。

「讀賣新聞」より

確かに数字は良くなってきていると思う。

コチラの数字の方が分かり易いね。

18日時点での話ではあるが、赤字になっている「北海道」「東京都」「神奈川県」はまだ基準をみたしておらず、関西圏は既に基準を満たしているという表となっている。

機械的に判断するのであれば、18日の時点で解除して良いという事になる。

だが、判断は5月21日であるという。

大阪の20日の新たな感染者は3人という数字なので、現時点でも大阪府が出した独自基準もクリアしているし、政府が出している数字もクリアしている。

大阪府の休業要請は22日まで 宣言解除が21日の場合

2020年5月20日 15時47分

大阪府の吉村洋文知事は20日の記者会見で、政府が大阪府に対する緊急事態宣言の解除を21日に決めた場合、府が行っている休業要請を23日午前0時に取りやめる考えを表明した。ただ、感染者集団(クラスター)が発生したライブハウスや夜の接客を伴う店への休業要請は23日以降も継続することを検討し、継続した場合は29日までに改めて対応を判断するとした。

「朝日新聞」より

大阪府知事の吉村氏の発言はいかにも鼻息が荒いが、しかし良くやったと思うし、ようやくここに至ったという気持ちは強かろうと思う。

そうなってくると、「東京都も」という話になるはずなのだが、そうやって考えると「感染者数違ってましたー」というのは非常に不味い。流石に現時点では修正されているだろうから、「現時点で基準を満たさす」という点は変化が無く、大勢に影響は無いとは思うが。

重症病床使用率にもミス

把握できていない

ところがここに来て更に拙い話が。

【新型コロナ】東京都の重症者病床使用率、大阪を下回る 正確なデータを公表せず

5/19(火) 14:01

東京都が新型コロナウイルス感染症の重症患者を受け入れるための病床を、都内で約400確保し、5月18日現在の重症者の病床使用率は13%にまで低下し、大幅な休業要請緩和に踏み切った大阪府(19%)を下回っていたことがわかった。大阪府が5月初めに出口戦略の「大阪モデル」として設定した休業要請解除の一つである「重症者病床使用率 60%未満」という基準も、東京都は大きく下回っていることになる。

「yahooニュース」より

実は、病床使用率にも問題があったという。

病床数

現在(18日時点)はこんな感じだという。

 たとえば、緊急事態宣言延長前の5月6日は「2974人」が「入院中」と発表していたが、実際はその約半分の「1511人」であったことが判明。都は12日ごろ厚労省に修正報告し、厚労省が16日、正確な数値を発表した(詳しくは、既報参照)。

 だが、NHKは12日時点で東京都だけが依然、医療提供体制がひっ迫しているかのように報じていた(現在も未訂正)。政府の専門家会議も、宣言延長決定直前の5月4日の見解で、依然として「入院患者を引き受ける医療機関への負荷は現状でもぎりぎりの状況にある」との認識を示していた。

「yahooニュース」より

ちょっとどうなの、この話、マジ?

というか、昨日の記事通信の記事もこんな感じになっている。

新型コロナ感染者用の空き病床、東京は6割に改善 2週前は1割弱―厚労省

2020年05月19日22時19分

厚生労働省は19日、新型コロナウイルスの感染者用に確保した全国の病床数と入院者数などを公表した。東京都では1日時点で空き病床の割合が1割未満だったが、13日時点では6割となっており、約2週間で大幅に状況が改善した。

~~略~~

全国では、1万7290床(15日時点)を確保しているのに対し、3423人(13日時点)が入院していた。同省は「全体のバランスを見ると、現段階では病床が逼迫(ひっぱく)しているとは言えない」としている。

「時事通信」より

あれ、東京都のミスに関して言及してないよね?

一体何の基準で東京都は?

さて、こうした話に対してデイリー新潮が突っ込みを入れている。

【コロナ禍】小池知事はなぜ都の「入院患者数」をごまかし「病床使用率」を隠すのか

5/19(火) 8:01配信

東京都で医療崩壊が起きうるから、緊急事態宣言は解けない――というのが大方の認識のはずだが、都は入院患者数をごまかし、より深刻に装っていたのだ。

「yahooニュース」より

装っていたというのは少々言い過ぎのような気はするが、把握できていなかったのは事実である。

ところが、都の感染症対策課に、入院中の患者数の内訳を尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。

「都のホームページには、入院中の患者さんは5月7日時点で2679人と記されています。このうち重症の方は87人で、全員が入院されています。一方、軽症中等症の方は2592人ですが、入院されている方、ご自宅にいる方、ホテルにいる方をまとめた数字になっています」  131%という、患者がベッド数をはるかにオーバーしているかのような数字は、単に雑な集計のなせる業だった。むろん感染者数が多い他の道府県は、いずれも自宅療養者と宿泊療養者を入院患者に含めていない。緊急事態宣言の延長や解除に際して、カギとなるはずの東京都だけが、このように雑な数字を示していたのである。

対策課の話を続けると、

「2千床のうち400床は重症者のためのもので、中等症の方は、残りの1600床に入ることになりますが、1600床がどれだけ埋まっているかについては、公表していません」  と言う。

「yahooニュース」より

しかしそうだとすると、医療崩壊とは一体……。

そもそも今回の日本政府が出した基準だって、東京都の窮状を汲んだ部分が大きいとは思う。何しろ日本の首都東京がニューヨークのようなことになったら、日本政府としても「取り返しが付かない」と焦るだけでは済まない。政治とは常にそういうものであろう。

しかし、数字が把握できていないにも関わらず、「医療崩壊ガー」と小池氏が騒いでいたのはイタダケナイ。

結局、東京都知事の小池氏はここでも安全ではなく安心を優先したのだ。豊洲の反省は何もしていないということであろう。首長の裁量でここまでヤバい事態になってしまうのは、困った話であるな。

厚労省にも責任が

この話は、そもそも厚生労働省が今回の事について、データ把握が地方自治体頼みになっている所に大きな問題があると言える。厚生労働省は各地から上がってくる情報を整理するに過ぎず、その数字が正しいかどうかチェックする機能を持っていない。

感染者のうち、外国人の割合がどの程度いるのかという点も把握しておかなければならないデータだが、それも把握できていないようだね。これは人権の話とは別なのだ。

twitterでも早くから厚生労働省の姿勢について、自民党の佐藤正久氏は批判しているが、ラジオでもこんな指摘を。

飯田)東京都の小池知事も報告漏れがあったことを11日に発表し、厚生労働省でも9日に数字の修正がありました。佐藤さんが前々から指摘されていたことですよね。

佐藤)闘いというのは、まず敵を知って、我を知らなければいけないではないですか。どのくらいの感染者がいるのかを掴まないといけないのですが、これは全部検査しなければ掴めません。少なくとも、検査した人間くらいは掴まないと判断できません。例えば飯田さんが陽性になったとします。肺炎の疑いがあれば、入院しなければいけません。でも入院するときに、病院のベッドの空き状況や人工呼吸器などの装置の有無がわからないと、どの病院へ搬送していいかわからないではないですか。すべての運用オペレーションの基本はデータなのです。それを把握できないということは、運用上も問題だし、これから解除を進めるときもデータが基本になります。しかも東京都の場合は、検査した人と陽性だった人の割合を決めるときの、分子と分母の数が合っていなかったなど、いろいろなことがありました。早急に改善しなければいけないと思います。

飯田)端末に入力した後でファックスでも送っていたとか、そもそもいまの時代になぜファックスなのかという運用の問題もありましたが、こういうところも一本化しなければいけないということですか?

佐藤)極めてアナログな状況です。しかも、いまは検査機関が保健所と地方衛生研究所だけではなく、大学病院や民間の検査機関など、場所が増えています。端末ごとに入れてもらわないと把握できないと思います。更に、日本人はどうしても情報を軽く見る傾向があるのですよね。厚生労働省は感染症情報について、もっと真剣に考えるべきです。1月から4ヵ月経ってこの状況では、情報に対する意識が低いと言わざるを得ません。

「ニッポン放送”佐藤正久議員~緊急事態宣言の解除に欠かせないもの”」より

結局、厚生労働省は未だに「有事」として捉えていないのである。

そして、自民党の議員のほんの一部はその事に気が付いていた。少なくとも自衛隊の幹部であった佐藤氏は気が付いていたわけだ。しかし、政府は対応が出来なかった。

その事が、東京都のこの様なミスを許したとも言えよう。もちろん僕は今この時点で「誰が悪い」という犯人捜しがしたいわけでは無いが、事実をしっかりと見据えないと大変なことになる。

この国の政治体制は、一時が万事こうなのかもしれない。安倍氏ができる事にも限界があるのだろうが、今のまま放置すると、次の有事には取り返しが付かない事になるかも知れないという危機感を持つべきだろう。

コメント

  1. 有本香さんがDHCテレビで言ってましたが、こういうことがあったそうです。

    都職員:「保健所の業務がいっぱいいっぱいで支援の必要があります」
    百合子:「なんで都がやらなきゃいけないの?それは国の仕事でしょ?」

    保健所が都の機関だと知らなかったようだ、と言ってましたネ。

    • 言っていましたねー。
      アレが本当がどうかを確認する術はありませんが、小池氏は現場を顧みない感じの人物である印象なので「さもありなん」とは思ってしまいます。

      そこで都の職員が「このクソババア!それは都の責任でやるべき仕事なんだよ!」と、進言できないところがお役所仕事なんでしょう。
      平時はそれでも回っていきますしね。

    • >保健所が都の機関だと知らなかったようだ、と言ってましたネ。

      東京都の保健所については、ちょっとややこしいことになっているようです。

      ググったら、厚生労働省が官邸?に提出したと思われる資料が出てきました。
      PDFですが、リンクはります。
      https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kouzou2/hyouka/chousa/iryoubukai06/siryou_kourou.pdf
      一部引用します。
      >地域保健法により、517カ所:都道府県(47)に389カ所、政令で定める市
      >(64)に105カ所、特別区(23)に23カ所設置されている。
      >(平成20年4月1日現在)

      ということで、東京23区と町田と八王子の保健所は、東京都の設置ではなく、特別区または市が設置しているとのことです。
      事実、東京都の「都保健所一覧」には、23区の保健所は載ってません。
      https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo.html

      そのあたりも、都との連携に問題が発生した一つの原因らしいです。

      • なるほど、確かに保健所は23区が管轄するので、東京都が直接知らないという事はありそうです。
        しかし、東京都が直接管轄する保健所も6つほど(出張所を除く)ありまして、23区が管轄する保健所も含めて東京都に存在する保健所の情報の統合をするのが東京都、という構図は、他の都道府県と余り変わりが無いと思います。
        ご紹介頂いたサイトは直接管轄する所が載せられているということだと思います。
        https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo.html
        そうだとすると、やっぱり「知らなくて良い」と言うことにはならないような気がしますよ。

        東京都は広域でかつ多数の人を擁しますから、混乱が起きたのはある程度仕方が無いことだとは思います。
        ただ、重要な判断の根拠とした数字が違うと言うことが、今回の問題の深刻さを示していると思いますよ。、

  2. 木霊さま、皆さま、今晩は

    以前(最近)、医療機器の操作はもっと自動化できるのではないか、医療の現場はコンピューティングの先端からはずいぶん遅れているのではないか・・・というコメントを書きましたが、
    お役所は周遅れ・・・何周遅れ??・・・といくらい遅れているようですね。
    何年か前に「年金下さい」の手続きをしたのですが、
    年金手帳なんかを見ながら端末に入力・・・大量の紙を印刷・・・必用な紙を抜き取って、それを見ながら(別のアプリに)手入力。参照しなかった紙は「不要な紙を入れる箱」に直行。それからそれから・・・何とまぁ、大変だねぇ。と思った事があります。東京の保健所はそのレベルみたいですね。韓国発のニュースに「日本はアナログ」というのがありましたが、アナログではなくて「アナクロ」ですね・・・。

    • お役所仕事は本当に……。
      一般的な役所の人員は半分以下に削減できる程度にはアナクロです。
      例えば、住民票の交付なんてコンビニで出来る時代に、役所では未だ手書きで申請して貰う始末。あんなの発券機作れば済む話です。もちろん、対応出来ない一用の窓口は必要なんですが。

      一時が万事そんな感じで、マンパワーを使うべき所に使っていないのですよね。

      保健所はもっと酷い現状がありますよ。
      お役所の下請け的側面がありますので、書類書類でアホみたいに書類を必要としますから。保健所を窓口にして検査をやった今回の感染症対策はその辺りが足を引っ張った可能性は否定できません。