支那が研究に力を入れている高温ガス炉、日本でも研究炉の運転認可への道

原子力発電

「国内のニュースを見たくない」と嘆いたらコメントで指摘頂いたので、本日は高温ガス炉の話を取り上げたいと思う。

【主張】高温ガス炉合格 中国に先手を取られるな

2020.4.20 05:00

原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査を受けている日本原子力研究開発機構の「高温工学試験研究炉(HTTR)」(茨城県大洗町)の審査書案が同委によって取りまとめられた。今後の手続きが残るものの審査における事実上の合格を意味する前進である。

「産経新聞」より

何のことか?と思う方もいるかも知れないので、いつも通り1つずつ見ていこう。

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本日の状況

と、その前に、昨日までの日本の状況を見ておきたい。

新型コロナウイルス感染症について
新型コロナウイルス感染症に関する情報を掲載しています。

国内患者数は6,656例うち重症者は231名(+12名)、軽~中等症の者4,723名(+180名)、入院待機中の者297名(+28名)、退院者1,222名(+80名)という事になっている。

発生者数で纏められたグラフを見るとこんな感じだ。(2020年4月19日現在)

国内発生動向

こんな感じだ。取り合えずピークを迎えている可能性はあるようなんだけど、月曜日の感染者数を見た感じ収束傾向にあるとは言えないようだ。

4月7日から2週間が経過し、そろそろ「緊急事態宣言」の効果がどのようなカタチに施与で始める時期だ。「自粛疲れ」が見え始めているようなのだけれど、もう一息がんばろう。先が見えない状況が一番辛いんだけど、各自の努力の積み重ねで未来を勝ち取るしかないのだ。

高温ガス炉って?

第4世代型原子炉である

さて、先ずは「高温ガス炉」ってなんぞや、という話をしていかなければならないだろう。

高温ガス炉

こんな建屋を見ても中身は何なのか分からないとは思うが、コイツは日本にある実験炉である。

HTTRは「高温ガス炉」と呼ばれるタイプの原子炉だ。燃料がウランであることは一般の発電用原子炉と同じだが、それ以外「産経新聞」よりの点は全く違う。

産経新聞はこんな説明をしているが、「高温ガス炉」というのは原子力発電という括りではあるが、軽水炉とは構造が異なる。

ザックリ説明すると、今日本に存在する原子炉は軽水炉と言われるタイプの原子炉で第2世代原子炉または第3世代原子炉と呼ばれるものである。

一方で、高温ガス炉と呼ばれる原子炉は第4世代原子炉と呼ばれ、第3世代までの原子炉よりも安全性を高められ、経済性も高められているという。まあ、「理論的には」という事なんだけれども。何故ならば、まだ第4世代原子炉は商用炉として実現出来ている国は無いので、実証されていないからだ。

ただ、今までの軽水炉などとは技術的に異なる思想で作られていると考えてイイと思う。

高温ガス炉の原理

これも詳しく説明しても余り意味がないので、ザックリ説明していく。なお、興味のある方は高温工学試験炉(HTTR)のサイトで勉強して欲しい。

HTTR 高温工学試験研究炉 High Temperature engineering Test Reactor
HTTR 高温工学試験研究炉とは、試験研究炉として高温ガス炉の技術基盤の確立と高度化に関する試験、さらに高温炉心を用いた照射試験を行うことを目的として、日本原子力研究開発機構に建設された原子炉。

さて、ではまず高温ガス炉の特徴なのだけれど、一番の特徴は「高温ガス炉」の「ガス」の部分、一次冷却材に「ヘリウム」を用いている点だろう。第3世代の軽水炉にせよ重水炉にせよ一次冷却材に「水(軽水、重水)」を用いている。

そしてももう1点、「高温ガス炉」の「高温」の部分で、炉内の発生熱の出口部分で1000度近い高温となる。このため、黒鉛の構造物を用いている。黒鉛は耐熱性という意味で優れている(融点は3,550℃)のだが、それ以上に高温環境下において強度を増す上、減速材として有効なのだ。

そんなワケで燃料構造体はこんな感じのカタチに黒鉛を用いて形作られている。

そんな感じの特徴を持っているモノの、ウランなどの放射性物質を用いて発電するという点で、これまでの原子炉と変わらない。

燃料のカタチはペレット状ではなく、被覆燃料粒子という球状の燃料が詰め込まれた「燃料コンパクト」を用いているらしい。これが発熱することで一次冷却材を加熱し、一次冷却材と二次冷却材の熱交換を行って、最終的に熱を取りだしてタービンを回し、電気を作り出す事になる。

熱を作ってタービンを回し発電する方式は、他の発電手段と変わらないね。例外は太陽光発電なんだけど、アレは効率が悪いので要改善である。

各国で研究されている

ちなみに、この高温ガス炉の研究、世界各国で行われている。

その間に、中国が高温ガス炉の開発で猛烈な追い上げをかけてきた。同じ高温ガス炉でも方式に違いがあって、日本方式の方が高温能力も優れているのだが、実用化で先手を取られると、その後の世界展開に制約を受けやすい。

原子力機構は高温ガス炉を求めているポーランドに協力して同国で実用化を進める方針だが、そのためにもHTTRの早期再稼働が望まれる。高温ガス炉は、日本のエネルギー確保策の灯だ。規制委にその認識がなければ、国の将来は暗い。

「産経新聞」より

産経新聞も言及しているが、支那でも猛烈な勢いで研究が進んでいる。

日本の研究では、ポーランドやイギリスとの技術協力を行いながら進められている。そして冒頭のニュースで認められた運転許可は、試験運転OKという話になってくるので、商用炉の前段階まで来たという理解でよかろう。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉 敏雄、以下「原子力機構」という。)は、ポーランド国立原子力研究センター(以下「NCBJ1)」という。)と「高温ガス炉2)技術に関する協力のための覚書」を平成29年5月18日に締結しました。また、英国のURENCO社3)と「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」を平成29年5月18日に締結しました。

「JAEA」より

ポーランドやイギリスは「勝ち馬に乗った」という事かも知れないが、その期待に応えられるとイイネ。

一方の支那だが、かなりのカネが突っ込まれて、商用型60万kw級の高温ガス炉建設が始まっている。実証炉の試験運転認可は2018年の状況だったので、商用炉の建設認可まで進んでいることを考えると、日本よりは一歩リードしていると考えていい。

[中国]商用60万kW高温ガス炉(次世代の原子力炉)、2017年に着工

2015年6月4日

2015年5月27日付の地元紙によると、中国核工業建設集団公司は、瑞金市に建設を計画している商用高温ガス炉2基(単機容量60万kW)について、専門家による事業可能性の事前検証が審議会を通過、建設許可申請を国に提出すると発表した。着工予定時期は2017年。

「電気事業連合会」より

ただ、その商用炉の建設は今どうなっているのかハッキリした情報はないようだ。それと、支那が採用している高温ガス炉は日本とは異なる「プルベッド型」と呼ばれるタイプで、これがどうも安全性に対する問題を指摘されているようだ。

メルトダウンがないことは、すべての危険な事象が起こり得ないことを意味するものではないので、過度の安全神話はかえって危険であるという。特に新技術では常にユーザーエラーの可能性が高い。事実、プロトタイプのHTGRは、高レベル放射性ダストによってホットスポットが形成されることがわかった。ペブルベッドの設計はまた、大量の放射性廃棄物を生成し、これを長期に貯蔵または処理するのが困難である。

「放射線ホライゾン」より

この「放射線ホライゾン」というサイトの情報だけなので、情報の信頼性と言う意味において疑念はあるが、ブロック型に対してプルベッド型の方が不確定要因が大きいという懸念材料はありそうだ。日本が運用を目指しているのは六角柱型炉(ブロック型)と呼ばれるタイプである。

支那の高温ガス炉はサウジアラビアやインドネシアにも建設予定がある模様。そして、イギリスは支那の方にもコナをかけている状況であるらしく、高温ガス炉共同開発に関する了解覚書を締結しているそうな。

イギリスから支那への情報漏洩なんてバカバカしい事態にならないことを願いたいね。

あとは、アメリカでX-エナジー社がプルベッド型高温ガス炉の研究が行われているようで、こちらも要注意ではある。

日本の高温ガス炉の研究は低調

とはいえ、技術的なハードルはそれなりにあるようで、茨城県大洗町にあるHTTRの試験運転が行われるにしろ、まだまだクリアしていかなければならない課題は多い。

安全性が高いとはされているが、その安全性を担保するための技術はまだ確立されていないのが現状である。

次世代の原子炉そのもののニーズが低いというのも問題ではある。

原子力科学技術委員会 高温ガス炉技術研究開発作業部会:文部科学省

これは文部科学省による原子力科学技術委員会の高温ガス炉に関する作業部会の資料なのだが、最新の作業部会開催は平成26年(2014年)だというから、呆れてしまうな。政府としてもうちょっと後押ししても良さそうなモノだが。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 高温ガス炉研究開発センター
高温ガス炉研究開発センター トップ

あ、サイトは去年新しくなっているようだが。

日本が今それどころではないというのは理解出来るけど、新しい技術開発は必死でやっていかないと世界に取り残される。産経新聞ではないが、もっと積極的に後押しする体制を作り、過度な安全性への規制(原子炉の規制は第3世代までを対象に決められており、第4世代原子炉だからといって基準が弱められたりはしていないようだ)がなされるあまり、運転開始が遅れてしまったら元も子もない。

とはいえ、「アレもコレも」研究開発出来る程日本にお金があるというわけではない。核融合炉も未だテスト段階でお金のかかる話だ。将来性の高いところにかけていくしかないのかも知れない。そして、それが高音ガス炉かどうかは誰にも分からない。

研究者の努力に期待するしかないのかな。

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