原油増産のチキンレース

中東ニュース

冒頭の画像はダウ平均株価の本日の値動きなのだが、本日のネタは原油価格の話だ。

先日から原油価格が下落しているニュースが報じられていたが、武漢肺炎のニュースの影に隠れてしまってなかなか話題にならない気がする。結構大きなニュースの様に思うんだけどね。

協調減産破綻で原油価格大幅下落

2020.3.16

北米の代表的な原油価格であるWTIは、新型肺炎の感染拡大によるグローバル景気減速が懸念される中、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国の協調減産交渉が決裂したことから、一時1バレル=27米ドル台まで急落、年初来で5割程度の下落となりました。

OPECは5日の臨時総会で4~6月に日量150万バレルの追加減産を実施する案で合意しましたが、6日主要産油国会合でロシアが追加減産を拒否し、交渉は決裂しました。これを受けこれまで調整役となっていたサウジアラビアが増産方針を打ち出したことから、需給悪化懸念が一気に高まったことが要因です。

「幻冬舎GoldOnline」より

この記事が非常に良く纏まっているので、「これ1つ紹介して終わり」でも良いくらいなんだけど、それだとこのブログの価値がないので、少し噛み砕いて行きたい。

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石油の価格は合意によってコントロールされる

OPECの存在意義

OPECという組織をご存じだろうか?石油輸出国機構( Organization of the Petroleum Exporting Countries)で、加盟国はイラク、イラン、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラ、リビアetc…と、中東の14カ国が加盟した組織である。組織の目的は原油価格の操作である。

かつては石油メジャーと呼ばれる巨大企業が石油を牛耳ってきたけれど、実際に油田を持っている産油国の利益が守られないとして組織化された経緯があり、OPECの存在によって中東に富が蓄積されるようになったといっても過言ではないだろう。

OPECと石油メジャーが価格交渉をして原油価格を決定した時代から、OPEC主導で原油価格決定をする時代となってから、OPECの影響力は更に増した。しかしその状況も長くは続かなかった。1970年から1980年頃まではOPECの影響力は揺るがなかったが、先進諸国の石油の備蓄の拡大や代替エネルギーへの促進、北海油田やメキシコなどのOPEC加盟国以外からの産油量が増大したこともあって、その結束は揺らぎ、1985年から1986年にかけて原油価格が大暴落するなど、OPECの支配力が緩む時代を迎える。

その後も原油価格を巡る攻防が続き、OPECはそこそこ影響力を取り戻すのだが、非OPEC産油国にアメリカやカナダ、ロシアが名乗りを上げるようになると、どうしても旗色が悪くなる。支那なども原油の産出国なのだが非OPEC産油国という分類になる。

結局のところ、この辺りのパワーバランス的な話になっちゃうようなんだね。それでもOPECの影響力はそれなりにはある。

> 石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国の協調減産交渉が決裂

ここいら辺りの文脈はそうした話を踏まえた説明となっているんだね。

で、OPECの方がイニシアチブを持っている状況であるとはいえ、無理も言えなくなってきた。原油価格を維持するために話し合いをして産油量を決めていたのだけれども、それが決裂しちゃったというのがここ最近の話だ。

ロシアは石油に経済依存

さて、かつては世界の覇権を争っていたロシアだが、ソ連時代ほどの経済力も技術力も持っていないのが現状である。

OPECプラス会合、追加減産で合意なし-ロシア反対で協議決裂

2020年3月6日 22:37 JST 更新日時 2020年3月7日 2:27 JST

石油輸出国機構(OPEC)加盟国とそれ以外の主要産油国で構成するOPECプラスは6日、追加減産で合意できず、協議は決裂した。サウジアラビアが一段の減産を迫ったが、ロシアは拒否した。複数のOPEC代表が明らかにした。

「Bloomberg」より

今や、ロシア経済の一翼を担っているのは石油に天然ガスである。ロシアの輸出額全体の2/3が石油・天然ガスを中心とする燃料・エネルギー製品なのだから、原油の輸出は生命線と言って良いだろう。エネルギー資源産業はロさうじシア経済の中核なのである。

ところが原油価格が下がってしまうと、ロシア経済は立ちゆかなくなる。だからこそ、「量を売りたい」という発想になるのである。

OPECは減産することで価格維持を目指していたのだけれど、世界経済の縮小がもはや不可避の状況にあってなりふり構っていられない状況と言えるだろう。

サウジアラビアは増産に踏み切る

さて、OPECとしてはロシアが裏切ったことで価格の調整は難しくなった現実を受け入れざるを得ず、OPECの主要国であるサウジアラビアとしても、「減産」とばかり言ってはいられなくなった。

コラム:米ロ揺さぶるサウジ、原油増産という「荒業」の勝算

2020年3月11日 / 13:20 / 4日前

サウジアラビアが原油生産を巡って、ロシアとの対立をエスカレートさせている。ロシアを再び交渉の場に引っ張り出すか、あるいは米国が国内のシェール業者を守るために仲介役として乗り出してくるのを待つ狙いだ。

国営石油会社・サウジアラムコは、4月から市場への原油供給量を日量1230万バレルに引き上げると表明した。現在のサウジの生産量を200万バレル以上も上回り、同国の持続的な生産能力よりも30万バレル多いことになる。

「ロイター」より

で、いきなり荒技にでたようだ。

日量1230万バレルもの原油を市場に出すと言い始めたのだ。供給開始時期は4月で、そこが「交渉期限」だと表明したも同然である。

「通常の生産能力よりも多い原油を過剰に供給するぞ」と脅しているのだが、これはサウジアラビアにとって自傷行為でもある。過去にもこの手を使って手痛い失敗をしたのだが、他に手も無いのだろう。

一方、サウジとロシアが実施した価格押し上げのための減産によって、米シェール業者は穴埋めのための増産と市場シェア拡大の機会を得る形になった。12年以降のほとんどの年で、世界の原油消費の増加分の全てないし、ほぼ全てをシェール生産者が取り込んでいる。

北海ブレント価格が平均1バレル=71ドルかそれ以上だった12-14年と18-19年が、まさにこうしたケースだった。ただ、平均56ドル弱だった15-17年だけは、消費増加のうちシェール生産者のシェアが半分に届かなかった。

「ロイター」より

そして、サウジララビアには全く勝算がないワケでも無い。

記事にあるように、アメリカのシェールオイルが海外に売れる理由は、生産コストの高いシェールオイルを売っても利益が出るだけ原油価格が上昇しているというもの。

だからこそ、バランスを崩してシェールオイル業者を刺激し、アメリカを動かそうという目論見があるようだ。

アメリカも余裕がある状態ではない

さて、サウジアラビアの勝算だが、これは強ち間違いでは無いだろう。

アメリカは現在、絶賛武漢肺炎の禍に巻き込まれ中であり、経済の方も相当ヤバい状況を迎えている。そう、株価の大暴落である。

【市況】13日の米株式市場の概況、ダウ平均株価は1985ドル高と過去最大の上げ幅

2020年03月16日08時32分

 13日の米株式市場は、NYダウが前日比1985.00ドル高の2万3185.62ドルと3日振りに反発し、上げ幅は過去最大のとなった。

「kabutan」より

本日は反発して一転過去最大の上げ幅を記録したが、不安定な状況であることには変わりが無い。

そもそもアメリカと支那との貿易戦争の影響はどうしても避けられない情勢なので、景気も停滞局面にある。ついでに大統領選挙を控えていて、トランプ氏としても票が欲しいトコロ。シェールオイル業者を敵に回したくはないだろう。

ロシアとしても生産量の維持はしたいが原油価格の落ち込みは避けたいだろうから、チキンレースが始まる前に何らかのアクションを起こす可能性はあるだろう。

ただ、中東も武漢肺炎の影響でかなり混乱しており、特にOPECの一員であるイランの混乱っぷりはかなりのものがある。その事情がどう影響してくるのか分からない「変数」となり得るため、今後どうなるのかは注意深く見守る必要はあるだろう。

原油価格が下がってくれること自体は、購入する側の日本としては嬉しいのだけれど、この原油価格の変動は世界経済にも少なからず影響するだろうと予想されている。日本も経済の停滞は望まないので、混乱が最小限に収まってくれれば良いのだけれど。

コメント

  1. >冒頭の画像はダウ平均株価の本日の値動きなのだが

    このグラフ(チャート)は、ダウ平均株価の日足(一本が一日の値動きを示す)ですね。
    2/13以降、ダダ下がりということですね。

    • チャートの説明ありがとうございます。
      ニューヨーク株式市場では3回目のサーキットブレーカーが働いたということで、乱高下は続きそうです。