タリバン、アフガニスタン政府軍への攻撃再開を宣言す

中東ニュース

はえーよ。

タリバン、アフガン政府軍への攻撃再開を宣言

2020年3月2日 22:19

アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)は2日、同国の治安部隊に対する攻撃作戦を再開すると発表した。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)報道官は、「暴力削減措置は…今や終わり、われわれの作戦は通常通り継続される」と宣言。

「AFP」より

「合意はいったいどうなっちゃったんだよ!」と突っ込みを入れたいところだが、タリバンとしてはアメリカを含む外国部隊を攻撃しない点は表明している。

前回の記事で紹介しているが、アフガニスタンとしても捕虜の開放をするかどうかは、自分たちが判断すると言ったような主張をしているので、これの裏をかかれた感じでもあるな。

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反体制派タリバン

アフガニスタン・イスラム共和国

アフガニスタンの正式名称は、現在、「アフガニスタン・イスラム共和国」となっている。

かつてはアフガニスタンに対してソ連が侵攻し、社会主義政権が樹立するなどの流れがあって、ソ連の影響下にあった時代があった。

しかし、1982年に国連総会において外国軍の撤退要求をする採択がなされ、ソ連軍は撤退(1989年)することとなる。ところがこの時に大量の武器がアフガニスタン国内に残されて、後にタリバン政権が誕生し、アルカイーダが誕生するという流れになった。力は正義なりと言うことなのかも知れないね。

ソ連軍撤退によって、戦力の空白地帯が出来上がったことでアフガニスタン紛争(1989年~2001年)が勃発するのだが、タリバンがその勢力を拡大するにつれ、当初は期待されていた存在だったにもかかわらず、次第にその残虐性を露わにする様になってくる。

タリバンがマザーリシャリーフを制圧した際には、住民の大虐殺を行った。また、イスラム圏内では珍しくないが、服装の規制や音楽や写真の禁止、娯楽の禁止、女子の教育の禁止など、国民の自由を束縛するような政策を進めていった。

厄介な事に、タリバン成立当初はアメリカからの支援を受けていた事もあって、その残虐行為は国際社会からもあまり批難されなかった。

アメリカとタリバン政権の決別

しかし、アメリカはこの方針をとったことで手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。

  • アメリカ大使館爆破事件(1998年8月7日)
  • アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)

何れも有名な事件だ。

ここから、アメリカとタリバンとの全面的な戦闘状態に突入していく。これより19年の長きに渡って泥沼の戦争が継続していくのである。

新大統領が誕生

そして、2004年1月にアフガニスタン・イスラム共和国が成立し、新大統領が選ばれる。

ハーミド・カルザイという人物のようだが、2014年までアフガニスタンの大統領を務めている。

このカルザイ氏、元はタリバン政権時代の駐国連代表に任命された人物だったが、父親がタリバンに殺害されたのを切っ掛けに反タリバンに転したという過去がある。そして、アメリカの協力者としてタリバン政権の打倒に活躍するのである。

この後、第3回目の大統領選挙にて現大統領のアシュラフ・ガニー氏が選ばれるに至る。この時の選挙は民主的手続に則って行われたとされている。

ガニー氏もアメリカで学んだ人物で、世界銀行に勤めるなどの実績もある。

つまり、タリバンにとっては現アフガニスタン政権は、アメリカ寄りの組織であると同時に、タリバン政権を裏切ったカルザイ氏の流れを汲む政権でもある。

このガニー氏は去年行われた選挙によって再選され、大統領を継続するということになっている。ただまあ、この選挙がまた不安定要因の1つになっているというのは、皮肉な話だ。

ともあれ、タリバンが反政府活動をするというのは、タリバン側にとっては実に自然な流れなのである。

アメリカのアフガニスタン撤退は、アフガニスタンの政府が望んではいない

さて、アメリカとしてはシリアからも撤退を表明したし、アフガニスタンからの撤退もトランプ氏の公約としては是非とも実現したい内容である。

トランプ氏、アフガン米軍を半減か 米報道

2018/12/21 7:42 (2018/12/21 10:47更新)

【ワシントン=中村亮】複数の米メディアは20日、トランプ大統領がアフガニスタンに駐留する1万4000人規模の米軍を半減させる方針だと報じた。来年1月中にも一部の部隊が撤収を始める可能性があるという。17年以上に及ぶ戦争の終結が見えず、トランプ大統領が米国民の税金を使って駐留を続ける意義は薄いと判断している可能性がある。

「日本経済新聞」より

実際に、トランプ政権はアフガニスタンからの撤退の準備を開始していて、ガニー氏もそれなりに前向きな発言はしていた。

アフガン大統領「タリバンと対話」 和平実現へ意欲

2019/10/22 18:05

「即位礼正殿(せいでん)の儀」に参列するため来日したアフガニスタンのガニ大統領は22日、日本経済新聞のインタビューに応じ、アフガン和平の実現に向け反政府武装勢力のタリバンと対話する方針を明らかにした。タリバンに対しては米国やパキスタンと連携し、テロの脅威を抑えることが重要になるとの認識を示した。タリバンには国際テロ組織アルカイダなど、ほかの過激派組織との関係を断ち切ることも求める考えだ。

「日本経済新聞」より

実際、今回もガニー氏がタリバンとの対話を模索しているような報道は出ていた。

アフガン和平合意 タリバンの暴力抑制がカギ

2020/2/29 18:30 (2020/3/1 0:41更新)

米国と反政府武装勢力タリバンが和平合意に署名したことで、18年間にわたる「米史上最長」といわれるアフガニスタンでの戦争は終結に向け前進した。タリバンは他のテロ組織との関係断絶を約束した。次の課題は将来のアフガンの統治体制を巡る議論だが、タリバンの暴力を押さえ込める体制を築けるか不安も残る。アフガンの治安回復や経済再建への道のりはなお険しい。

~~略~~

そのためには民族対立の解消も重要だ。2月に決着した大統領選で次点だったアブドラ氏は「選挙の結果は不正に満ちている。自らの政権を樹立する」と宣言した。アフガンは国民の直接選挙制によって最高権力者の大統領を決める仕組みだ。独自の政権構想は違法だが、アブドラ氏はほかの地域政党も巻き込んでガニ氏に対抗する構えを早くもみせる。

ガニ氏は国民の4割強を占める最大民族のパシュトゥン人で、アブドラ氏は3割弱のタジク人として知られる。アフガンの多くはイスラム教徒だが、真の和平実現を妨げるのは民族間の対立との見方も少なくない。

「日本経済新聞」より

ただ、そもそもガニー氏がアフガニスタン国内を上手いこと纏められていないこともあって、その事もアメリカ軍撤退に対して大きな足枷になっている。

中東の多くの国々は、「国」というよりは部族社会の色が濃い。民族間対立は、今なお火種となって各国に燻っている。アフガニスタンもその例外では無いということなんだろう。

今なお、アフガニスタン政権はアメリカ政府の、或いはアメリカ軍の後ろ盾なくしては成立し得ない部分があり、アメリカ軍がこうした事情を鑑みないで撤退した場合には、紛争再燃は避けられない。

黄金の三日月地帯

さて、ここで問題になってくると思われるのは「黄金の三日月地帯」と呼ばれる地域で、世界最大の麻薬の密造地帯となっている事実だ。

これが、アフガニスタン・パキスタン・イランの国境が交差する辺りに存在していて、タリバンの資金源となっている可能性が指摘されている。

かつて、タリバン政権は芥子の栽培を全面的に禁止した事もあっただけに、皮肉としか言いようが無い。

なお、タリバンも一枚岩な組織では無いようで、麻薬肯定派と否定派がいるらしいのが救いかもしれない。尤も、他国との関係を考えると甘い事を言っている場合でも無いのかも知れないが。

何れにしても、欧州諸国で流通する麻薬の8割以上がアフガニスタン原産と言われているだけに、アメリカとしても簡単に手を引けないハズだったのだが。アメリカは、撤退の実利の方を選んだということのようだ。

タリバンは変わったか? 復権を恐れるアフガン女性たち

2020年03月03日12時25分

戦火に苦しめられてきたアフガニスタンから駐留米軍が撤退準備を進めており、旧支配勢力タリバンの復権に向けた扉が開かれつつある。そのような状況の中、この国の女性たちは平和を追い求めて、必死に勝ち取った自由を失うのではないかと恐れている。

~~略~~

 タリバン政権下では、女性は教育を受けることや働くことを禁じられていた。今日、専門職に就くアフガニスタン女性らはこれらの権利を必死で守ろうとしている。  西部の街ヘラートで外交販売員として働くセタラ・アクリミさん(32)は「平和が訪れ、タリバンが人々を殺さなくなればとてもうれしい」と述べつつも、「でも、タリバンが昔の考え方のまま政権に復活するとしたら心配だ」と言う。

「時事通信」より

タリバンの復権により、再びアフガニスタンが混沌とする可能性というのは、十分に考えられるのである。そうなったときに、民主的な手続で選ばれている大統領(不正があったとも言われてはいるが)が、果たしてどうなるのか?という点も含めて、先を見通せない状況にある。

尤も、現アフガニスタン政権もクリーンな政権であるとは言い難く、汚職で行政が回らないなんていう状況もあって、タリバンが勢力を盛り返している状況でもある。

アメリカが手を貸そうが貸すまいが、アフガニスタンの「平和」が仮初めのものである事実は変わらないのだ。

ISも狙うアフガニスタン

もう一つの懸念事項が、ISの勢力拡大である。

米のアフガン撤収を待つIS 再び領域支配の機をうかがう

2020.3.1 08:43

米国とアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンが和平に合意した。アフガンで米軍がプレゼンスを低下させることは、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)にとっては勢力伸長の好機となる。アフガンに「力の空白」が生じるのに乗じ、シリアやイラクではついえた領域支配を再び模索する可能性がある。

「産経新聞」より

ISもタリバンとの連携が噂されているので、タリバンの復権によってISの勢力拡大というのは当然考えられる。もともとアフガニスタン国内でISが拠点を持っている事は知られていた。

駐留米軍の規模縮小により、アフガン政府の弱体化は避けられない。大統領選での敗退を不服とするアブドラ行政長官が独自政権を樹立するとしたことも、国内をいっそう不安定化させるだろう。ISにとり、どんな形であれ混乱拡大は願ったりかなったりだ。

「産経新聞」より

今後その拠点で勢力拡大しやすい環境が構築されれば、当然ながらその勢力は増えていく可能性はあるのだ。

アメリカもそうした現状を考えると動きにくいだろうが、既に合意はなされてしまった。当然、アフガニスタン駐留軍を撤退させる動きは加速するだろう。

トランプ氏はまた、米軍が敵対する武装勢力を「千人単位で」殺してきたとし、「その仕事を他の誰かがすべき時だ。それはタリバンかもしれないし、周辺国かもしれない」と述べた。

マイク・ポンペオ米国務長官は米CBSの番組で、アフガニスタン政府とタリバンの交渉について、近日中に始まることを望むと述べた。

「BBC」より

世界の軍隊をやめると発表したのはオバマ氏だったが、トランプ氏もその路線は推し進める予定である。今後、世界は一時的に混沌とするのだろう。グローバルチェーンを拡大してきた世界にとっては辛い選択を迫られるかも知れない。

もちろん、日本も他人事では無い。

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