世界で暗躍するPMCの話

日本ニュース

ご依頼頂いたので、取り上げてみたいと考えたのがPMC(民間軍事会社:private military company または private military contractor)の話。

とはいえ、正直この分野の情報網が無いとなかなか記事を書くのが難しい。だから「出来ない」とお断りするつもりではあった。

けれども、興味もあったし調べられる範囲で整理したので、ご要望にはお応え出来ないけれども、紹介しておきたい。

ゴーン被告、逃亡には民間軍事警備会社を利用か

1/4(土) 11:55配信

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月3日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。カルロス・ゴーン被告がレバノンへ逃亡した問題での支援体制について解説した。

「yahoo!ニュース」より

実のところ、カルロス・ゴーン氏が果たして本当に民間軍事会社を利用したのかどうか、ということはハッキリとは判明していない。ただ、その可能性は高いというのが、大方の見方のようだ。

では、そもそもPMC(民間軍事会社)とは一体何なのだろうか?

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PMCは正規軍が請け負わない仕事を請け負う

元軍人が関与

軍隊というのは特殊な技術を持つ人々が所属する組織である。

ただ、それ故に国から公道に関して多くの制約を課せられている組織でもある。国が行使できる巨大な暴力装置なのだから(言葉に引っかかる人がいるかも知れないので断っておくが、「暴力装置」というのは、国家権力によって組織され、制度化された暴力の態様を意味する社会学適用語である。狭義には、軍隊や警察などを含み、広義には政府、国家などの強制力を持つ公権力全般を含む)、枷を付けられるのは当然なのだ。

しかし、そうである以上、その技術を使いたいけれども、国家として動くには問題があるというケースも出てくる。

その分野をカバーしているのがPMC(民間軍事会社)であり、軍事力を備えた警備会社、というのが建前である。が、その実かなり危険な任務を請け負う組織でもある。

元々は、政府が軍隊に任せられない業務を任せる事のできるリソースという位置づけであり、ある意味、隙間産業的な組織ではあったのだが……、最近はその在り方が変化しているようだ。聞いた話では、軍隊からPMCに依頼がでる、なんてケースもあるらしい。本当かね?

カルロス・ゴーン被告逃走で暗躍した民間警備会社「PMC」の正体

1/19(日) 6:02配信

「民間警備会社」と一口に言っても業務内容は幅広く、そのほとんどは車両誘導や雑踏警備など、通常の警備業務を行っています。ただ、ゴーン被告の逃亡事件で話題に上っている民間警備会社は、こうした通常の警備業務を行う会社とは一線を画しています。今回、ゴーン被告の逃亡を手引きしたような民間警備会社は俗に、「PMC(Private Military Company)」と呼ばれ、直訳すると「民間軍事会社」となります。こちらの会社の実態は軍事会社ですが、血なまぐさいイメージが付かないように「警備会社」と名乗ることが多いのです。

「yahooニュース」より

ただ、そうした軍隊からの依頼ですら実行できてしまうだけの実力を保有しているのがPMCである。しかし、これは軍隊を退役した人間がPMCに就職するような形となっているので、ある意味当然だとも言える。

話は少し変わるが、日本の警察もそういう側面があり、警察を退職した人が民間警備会社に就職するケースは珍しくない。実際に、身内の一人もそうした再就職によって警備会社で働いている。立場や装備は違えど、彼のその経験は警察の、それも機動隊で培われたものである。雇う側としても心強いとは思う。

PMCはそうした流れの軍隊版だと考えて頂ければ良く、軍隊で銃器を取り扱う高度な訓練を受け、退役してからPMCに就職する。当然ながら、人によっては特殊な作戦を実行するノウハウを知っていることは言うまでも無い。そして、そうした知識や経験に基づいて、社員や依頼者の訓練を行っている様だ。

聞いた話によると、自衛隊出身者もいるらしいよ。

国家の枷を離れた暴力装置

しかし、よく考えてみて欲しいのだが、各国政府からの制約を受けずに、特殊な技術を行使できる人材が、民間会社の一員として活躍できるという事は、ある意味非常に恐ろしい事だ。

それが何をしでかすのか?という事を説明するのに都合の良い、「有名な事件」を紹介しておこう。それがこちらのニュースだ。

在イラク米大使館、文民職員の陸路移動を当面禁止

2007年9月19日 23:12

米民間軍事会社「ブラックウオーター(Blackwater)」の雇い兵による発砲で民間人が死亡したとみられる事件の発生を受け、バグダッド(Baghdad)の米大使館は19日、攻撃される恐れがあるとして在イラク米政府関係の文民職員に対し、バグダッドの米軍管理区域グリーンゾーン(Green Zone)以外での陸路による移動を当面禁止した。禁止措置はイラク全土で適用される。

「AFP」より

悪い意味でも有名になったのが「ブラックウォーター」という組織で、現在は名前を変えて「アカデミ」と名乗っているようだ。そして、名前は変われども、その実態はそう大きく変わったわけでは無い。そして、今なお活動中である。

退役軍人による訓練が行われ、退役した軍人本人も民間会社の受注した作戦に参加するケースもある。下手をすれば、PMCの社員は、実戦経験は現役軍人よりも豊富だとされているのだから、その存在がいかなるものかは想像が付くだろう。

 事件は16日に発生。米外交官を護衛していたブラックウオーターの雇い兵による発砲で10人が死亡、13人が負傷した。米政府はその後、事態の沈静化に向けた取り組みを行っていた。

 イラクで最大規模の身辺警護業務を運営するブラックウオーターは、違法行為は一切なかったと主張しているが、イラクの司法関係者は同社が訴追される可能性もあると指摘する。

「AFP」より

そして、そのPMCの社員が起こした事件がこのイラクでの事件で、2007年9月16日に発生した殺人事件は、当時、イラク、バクダードでアメリカ外交官を警護していたブラックウォーターの社員によって引き起こされている。

ブラックウォーターの傭員が民間人に対して一方的に発射し、10人が死亡し、13人が負傷する事件が起こってしまった。

この事件はアメリカ連邦裁判所で有罪判決が出され、1人は殺人罪が適用され、3人が過失致死罪が適用されたとされている。

F.B.I. Says Guards Killed 14 Iraqis Without Cause

Nov. 14, 2007

WASHINGTON, Nov. 13 — Federal agents investigating the Sept. 16 episode in which Blackwater security personnel shot and killed 17 Iraqi civilians have found that at least 14 of the shootings were unjustified and violated deadly-force rules in effect for security contractors in Iraq, according to civilian and military officials briefed on the case.

「NY Times」より

軍隊であれば、軍法会議によって処罰されるケースだが、民間警備会社なので連邦裁判所によって判決が出された。軍法会議だったら、どのような判決がなされたのかは興味があるのだが、ともあれ、殺人罪が成立するような事案であったということである。

日本で活躍するPMC

ちなみに、日本国内でもこの様な話がある。

「傭兵会社」ブラックウォーター:日本でも警備業務

2007.10.09 TUE 23:00

イラクでの民間人への発砲や武器の不正輸出疑惑などが問題になっている、民間警備会社米Blackwater社。日本でも、米Raytheon社スタッフと合わせて約100人が業務についている。

~~略~~

Blackwater社のスタッフは実は日本にも入っていて、この国にある、議論の多い弾道ミサイル防衛システムを警備している。

~~略~~

Blackwater社の職務内容説明書によると、応募は21歳以上で、高校を卒業(または、高卒資格のGEDに合格)していて、「文民警察、軍警察、または民間の警備会社」で経験があるものに限られている。

「WIRED」より

この他にも原子力発電所の警備をやっているなどと言う話もあって、日本国内では警備の方法に困るが、しかし実力行使をされた場合のカウンターが機能しない場合には更に困る。ある意味、必要悪と言えなくも無い。

海外でも活躍するPMC

もちろん、日本国内がそうであるように、海外でもそうした事情はある様だ。

私にも経験があって、イラク戦争の後にバグダッドへ行って、グリーンゾーンという占領軍の組織のなかで半年間働いたのですよ。そこで実際に警備をやっていたのは、全て民間の警備会社でした。実はこの人たちは怖いのですよ。元軍人だから、格好は完全な軍人で、本当に銃をぶっ放すのですよ。アメリカ軍の方が遥かに抑制されています。この民間警備会社の人たちは危険だと思ったら本気で撃ちますから、本当に怖かったです。

「yahoo!ニュース」より

多くが要人警護のような仕事らしいが、しかし、戦闘訓練などもその業務のうちのようだ。

2012年、Academi社がトルコ・シリアの国境において自由シリア軍などといった反アサド派勢力に対して軍事訓練サービスを行なっている。

2014年、民主化運動後のウクライナ東部にて、アメリカ風の戦闘服に身を包んで英語を喋り、AK74と見られる自動小銃で武装した部隊が150人~300人規模で現れ、Academi傘下のグレイストーン社の警備要員がロシア系の住民の暴動などを見越して活動していると見られている。

「Wikipedia”ブラックウォーターUSA”」より

Wikipediaを引用するのは余り好きでは無いのだが、アカデミの公式サイトにもそれらしいサービスを行っている事は紹介されているので、概ね事実だろうと思われる。

幸か不幸か、こうした需要は世界でも多いのである。

実際に、記事を引用することは難しいのだが、各方面で柔軟に対応できるPMCの需要は増えているというのが実情だ。軍隊では制約がかかる行動を、PMCであれば実行可能なのだ。

しかし、逆に言えば金を払えばテロリストであっても訓練を受ける事ができると言う事を意味していて、実際に、ウクライナでもシリアでも軍事訓練が行われている事を考えると、果たしてその存在をこのまま野放しにすることが適切なのか?という点に関しては疑問に思う。

また、金を払いさえすれば、政府が軍隊を使ってやれないことが「できてしまう」ということ、そのものが問題である。何故ならば、必要があって軍隊には制約が課されている。国同士の約束でそう決めている部分もあるのだが、その制約に縛られないという事もある。

具体的に言及することは難しいが、例えば、他国での軍事作戦は基本的にNGだ。それは非公式であっても、バレなければ良いというものではない。しかしPMCを使えば、NGであるハズの軍事作戦の遂行が可能になるケースがある。

軍事会社の雇い主が「政府」から「個人」へ

そして、コメントでも頂いたが、軍事会社の雇い主が「政府」から「個人」に移っているところが更に問題となる。

軍事会社の雇い主が「政府」から「個人」へ

宮家)誰に頼むか、普通は政府の諜報機関がやるような話ですよね。しかし、公には頼めません。やはりそこにはプロがいるのですよ。それで民間軍事会社と呼ばれているところに頼んだのでしょう。

~~略~~

彼らが何をやっていたかというと、米軍兵士の命がどんどん大事になってくると、嫌な仕事や面倒くさい仕事は民間の彼らに全部やらせるのですよ。昔はそういう形で雇い主が軍や政府であることが多かったのですが、最近は戦争がないでしょう。会社はいろいろな形で仕事を引き受けるわけですよ。いまは個人にもお客さんがいるのだと思います。もちろん確証があるわけではないけれど、恐らくゴーンさんが個人で多額の報酬を払って会社に頼んでやらせた。奥さんが関係ないというのは本当かもしれません。お金さえあればこういうことはできると思います。

「yahoo!ニュース」より

この情報を出しているのは宮家邦彦氏で、個人的には余り好きなタイプの評論家では無いのだが、キヤノングローバル戦略研究所の主幹を務めていることもあって(キャノングローバル戦略研究所の立場が、支那寄りである事が多いため)、取り扱う情報は豊富に持っている。したがって、強ち間違いとも言えないだろう。

実際に外交官として支那やイラクにも赴いている実績もあるで、ある程度の情報は信用してイイと思う。支那で外交官をやっていたという実績は寧ろマイナスのような気はするんだけども。

PMCの社員は紛争地など危険地帯で活動することがあるため、武器を持つことが多く、戦闘経験はあったほうがいい。だから、社員の中には軍の特殊部隊に所属していた人間もいます。彼らは一日1000ドル以上の給料をもらいながら働いている。これは、一般的な軍人よりはるかに高い給料です。

特殊部隊員は、孤立することを大前提に選抜され、訓練を受けていますので、自分で何でもできてしまう。パラシュートで海面に降下し、スクーバ潜水で島に近付き、上陸後はレンジャー行動(崖やジャングルなど、道のない場所を歩くこと)をとることができます。怪我をすれば自分で治療をし、現地で水や食糧を調達しながら作戦を実行する。とくに銃器の扱いについては、多岐に亘(わた)る知識と豊富な経験があり、ナイフや素手での格闘能力も高いので、PMCからすれば打って付けの社員となるわけです。

「yahoo!ニュース」より

ともあれ、PMCは世界各国で暗躍していてそれは日本でも例外ではない。

そして、その雇い主が政府のような大きな組織から、金持ち個人に移りつつあるという。理由は色々言及されているが、その理由はどうあれ、個人のニーズを叶えるために、軍事知識を持った人材が動いてしまうと言うことは、政府がそれを動かすよりも更にハードルが低くなると予想される。

国際間で明文化された、或いは暗に了解されている約束事がある。しかし、民間が民間を動かす場合は、法的な制約には縛られるものの、国際関係までに配慮する必要がない。更に言えば、国境を跨いで活動する事もあって、果たして法的な制約にすら縛られるかどうかは怪しい。

しかし、そうしたリスクが分かっていたとしてもこれを取り締まることはなかなかに困難だ。日本で言えば、公安が目を付けてはいると思うが、PMCに対する抑止力になり得るか?と言うとこれは難しい。特に、日本国内では武器の使用に大きな制限がかかるため、軍事スキルを持つ人間を警察などが対人スキルで制圧するということが現実的では無いからだ。あくまで、警察は民間人に対する制圧を前提をしている為、流石にPMCに所属する人間に対処しろというのは、荷が重い。

そう考えると、PMCが跋扈する世界、それも個人に雇われた組織が動く世界というのは、非常に恐ろしいことになる可能性がある。

PMCとて、業務に支障が出るようなことをすると、今後の活動に支障が出るおそれがある。故に余り無茶なことはやらないかも知れないが、外国に高飛びする前提であればそうした心配はくなる。暴力団といった非合法組織が日本国内にあり、そうした組織に対して警察はそれなりの体制を構築はしているが、PMCは前提からして違う。その事を考えると、この問題はもっと真面目に考えるべき話なのかもしれない。

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