今日は時間が採れないので、肩の力の抜けるニュースを1つ。
11億円かけた韓国初のタワー型太陽熱発電所、使いものにならず8年で撤去
配信日時:2020年1月18日(土) 21時40分
2020年1月16日、韓国・中央日報によると、116億ウォン(約11億円)かけた太陽熱発電所が8年で撤去された。
「レコードチャイナ」より
とても残念なニュースではあるが、ある意味仕方の無いことである。
太陽熱発電所
太陽光発電所とは違う
このニュースで出てくる太陽熱発電所というのは、日本各地で増殖している太陽光発電所とはちょっと違う。

大雑把に言うと、反射鏡で光を塔の先端に集めて、塔の先端の中に貯められている水を加熱して、お湯を作って発電しようという、そういった大雑把な話だ。
一時期、日本でも流行った屋根の上に温水を作る設備を載せて、お風呂を沸かすとかあんな感じのイメージでOKである。
この発電のポイントは、光を集めてお湯を沸かすという単純極まりない方式であるが故に、資源の枯渇や燃料の管理と言った環境問題から解放されるという点である。この太陽熱発電に積極的に取り組んでいるのがオーストラリで、アメリカ、支那、スペイン、南アフリカでも稼働している。ただ、問題もあるんだよね。
2009年に導入
韓国ではこの太陽熱発電を2009年に導入する事にしたらしい。
【写真】韓国初のタワー型太陽熱発電所
2009.09.01 07:44
「ソーラーシティ(Solar city)」こと大邱(テグ)に韓国初のタワー(tower)型太陽熱発電所が設けられる。大邱市の崔海南(チェ・ヘナム)グリーン成長政策官は31日「北区西辺洞新川(プクグ・ソビョンドン・シンチョン)下水処理場西部に2万3000平方メートルと高さ60メートルのタワー型太陽熱発電所を建設する」と明らかにした。来年3月に着工、2011年の完工を目指す。発電の容量は200キロワットで、毎日約80世帯で使える電力を生産する。
「中央日報」より
発電容量が200kwというから、割と小型な太陽熱発電所だったようだ。
例えば、スペインのアルバラド太陽熱発電所では、1号機として最大出力50MW、ソルノバ太陽熱発電所では、1号機、3号機、4号機とあわせて最大出力が150MWである。
また、アメリカのアリゾナ州のSolana Generating Stationでは出力が280MW、南アフリカでもカス太陽熱発電所で出力100MWとなっている。なお、このアメリカの例と南アフリカの例はトラフ式太陽熱発電という、集光型の太陽熱発電所とは異なる方式であるので、直接的に比較するワケにはいかないが。
太陽熱発電所に11億円投資
そんな訳で、比較的小型な発電所であったようだが、11億円の投資を行ったと記事にはある。
韓国では李明博(イ・ミョンバク)政権時代の2011年、大邱(テグ)にあるテソンエネルギーが韓国初となるタワー型太陽熱発電所を建設した。建設費約116億ウォンのうち、国費(韓国エネルギー技術評価院)が約71億ウォン、テソンエネルギーを中心とした協力会社が約45億ウォンを負担したという。
「レコードチャイナ」より
随分金をかけたようだな。
こうした「巨額の投資」にもかかわらず、大邱市は今月15日に「テソンエネルギーが先月、約2億ウォンを投じて発電所を撤去した」と発表した。記事は「100億ウォン以上が8年で消えてしまった」と伝えている。
「レコードチャイナ」より
そして、撤去してしまったようだ。
どうやら、このプロジェクト、テスト的な意味合いが強かったようなのだ。確かに、発電所として200kwでは少なすぎる。
撤去のきっかけは2011年。当時テソンエネルギーは協力会社とコンソーシアムを作り、韓国エネルギー技術評価院の「新再生エネルギー課題事業」に参加した。太陽熱施設が電気をちゃんと作れるのか、太陽熱で電気を生産する技術開発が可能なのかなどの課題に取り組み、5年間の研究結果を報告するというものだったという。こうして国費の支援を受け、研究遂行のためにできたのがタワー型太陽熱発電所だ。韓国政府は2008年~2013年「低炭素グリーン成長」と題して新再生エネルギーの開発に力を注いでいたという。
しかし発電所は事業後に「無用の長物」と化し、8年間で出した研究実績も計4件(特許3件を含む)のみだったという。電力生産量も200キロワットという予想値からは程遠く、20~50キロワットにとどまったという。結局、大邱市とテソンエネルギー側は「発電所はもはや機能していない」と判断、昨年12月に撤去したという。
「レコードチャイナ」より
そしてがっかりな結果になってしまったと。
日本でも太陽熱発電は研究されていた
サンシャイン計画(1974年~2000年)と呼ばれる計画に基づいて、日本でもかつて太陽熱発電が研究された時代があった。
日本最小の県が30年前に挑んだメガソーラー、技術の進化で再生
2013年02月19日 09時00分 公開
その中で有望なのが太陽光である。温暖で雨が少ない瀬戸内海の気候を生かせる太陽光エネルギーは香川県にとって最大の資源になる。実は1981年に、太陽光ではなく太陽熱による世界初のメガソーラーが瀬戸内海に面した仁尾町(現・三豊市)に建設されたことがある。2回にわたるオイルショックで石油の価格が暴騰した時期に、当時の通商産業省(現・経済産業省)が推進した国家プロジェクト「サンシャイン計画」の一環で実施したものだ。
太陽光を効率的に集めるために「タワー集光式」(図1の右上部分)と「曲面集光式」(図1の中央部分)の2つの方式を使って、それぞれで1MW(メガワット)の太陽熱発電を世界で初めて実現する先進的なプロジェクトだった。
通商産業省の報告書によれば1MWの発電には成功したとされているが、結局のところ実用化には至らず、香川県がメガソーラーの先進県になるチャンスは失われてしまった。詳細は不明ながら、技術面の問題で1MWの発電能力を安定して発揮することができなかったようだ。
「スマートジャパン」より
記事でも言及されているが、1MWレベルの発電施設を試験的に作って運用してみたが、上手く行かなかったとされている。

その原因について言及されてはいないが、「安定的な発電」が難しかったようだ。現在の太陽光発電でも天候に大きく左右される部分があるため、「安定的な発電」とするのは難しい。
しかし、これは時代背景的に原子力発電に力を入れられていて、太陽熱発電では太刀打ちできないと見切りを付けられたのだと、僕は考えている。
今なら、実用化まで漕ぎ着けることは出来るかも知れないが、そもそも日照条件的に日本のような緯度の地域では太陽熱発電は不利なのである。
サンシャイン計画には4400億円投じられていたので、日本で行ったこの試験的な発電施設にも多額の費用がかけられていたことが予想される。しかし、日本のこの香川県で行われた実験でも出力が計画地を大幅に下回る残念な結果であったとも言われている。……韓国ではこの実証実験のことを調査しなかったのだろうか??
太陽熱発電は有用な発電方法だが
太陽熱発電は、確かに魅力的な発電方法ではある。
しかし、研究用とはいえ200kwというのは、少々規模が小さすぎる。日本ですら1MWの施設を作ったが、これでも効率の面から言えば不足していた。
現在、世界で商用で稼働している太陽熱発電は、50MW以上の太陽熱炉なのだけれど、大規模にしないと発電効率が悪いという事が分かっている。
特に、緯度が高く日照条件が悪いと、ハードルは高くなる。スペイン辺りは日本と似たような緯度で、太陽熱発電所を運用しているが、どうやらガス火力発電も併設しているようで、発電の不安定さを解消しているようだ。
それを分かった上で何か実験したかったのか、或いは知らなかったのか。
何というか、失敗前提で設備を作り、中抜きをしましたというのが、実態だったんじゃないかな?という気がして仕方が無い。無駄に失敗して金を使うのでは無く、新機軸を折り込めば良かったのに、と、そう思うのは僕だけでは無いハズだ。
コメント
木霊様への記事をねだります。
PMCについて記事を書いて下さい
ゴーン逃亡について、零細PMCが関与した報道に危惧しています。
というのは冷戦時代児の私には「傭兵」と言うのは「裏稼業」なのです。マイク・ホア(ワイルド・ギース)のように、企業や政府に雇われようと、武器調達から輸送まで、正規のルートで行ってなかったです。
でもPMCは零細であろうと合法的に出資金を募るたり、銀行の融資を受けて合法的に活動できますね?
これまで私はPMCについては、非対称戦闘が蔓延する世界でしたので、「必要悪」かと思うてきました。それは、あくまで「国家」を相手の表商売だからです。
国連加盟国がクライアントである以上、彼らも契約者も、それなりに活動に政府の枷をされます。
ところが今回のゴーン逃亡は、それが非暴力的な手段であるにせよ、
「私人」による依頼ですね??
これは合法的企業活動するPMCが、金次第で「何でもやる」に変化した事と思います。
とても危険だと思います。
かつて南アで産まれたエグゼクティブ・アウトカムズ社は、短期間でアンゴラ内戦を鎮圧しました。PKFに譲られてから元戻りしましたけど(笑)
その後、同社は実績により、航空機や戦車まで重武装する会社になりましたが、南ア政府により解散させられています。
武力を国家が独占するのは近代国家のルールであり、民間企業がそこを脅かしたのを南ア政府が危惧するのは当然と思います。
企業や国家が傭兵を利用するのは冷戦時代からありましたが、傭兵は、ホォーサイス氏の失敗のように裏稼業でいました。
んで、PMCは現代の執拗悪とは思いますか、報酬次第で私人に利用されるとなると、もはや問題です。
日本が相手であったから、非暴力手段のミッションでしたが、これが小国であったなら、武力奪還もあったのではないかと危惧してます。
1995年のオウム事件に傭兵企業が雇われていたならば??
大袈裟と言われるかもそれません。
でも「私人」に雇われるならば、そういう事が起きないとは言えない。
現にゴーン事件後に、山口組から分派した組織の幹部が東南アジアでのPMC設立を発言しています。
事が国際的な活動なので、一国で制御が利かない。これは世界で、金目当ての活動が拡散して、結果として紛争を拡大する事を危惧しています。経済的な利益のみで活動する武力を放任すると、いつかはトンでもない事をしでかす様に思います。
パヨク用語で言う「暴力装置」は「国家」が独占するべきであり、
それを民間に求めるならば、国際条約で、各国がきちんと法的に制御するべきと思うてます。
ゴーン逃亡への関与は、利益次第で合法的な活動する企業が、
理念もない武力衝突を拡大するように思えてなりません。
PMCですか。
むしろ頂いたこのコメントだけで十分に情報の価値はあると思います。僕ではご期待に添える記事を書くことは出来ません。
お断りするのは心苦しいのですが。
トラフ式太陽熱発電とは何か……とWikiを見てなるほどなぁと。
ざっくりと発電用の熱源との距離の違いなんですね
細かい制御が必要なタワー式よりはよさげに見えますが、鏡の清掃など割と手間暇かかることを考えると微妙ですね。
正直、宇宙でやるならともかく、地上でやるには向かないでしょう。
最低でも太陽光であれ、太陽熱であれ、効率を求めるなら成層圏あたりで常に浮いてられる発電装置でも作らないとw
南朝鮮は日本の事例を知らなかったというよりも、知った上で「日本が失敗したなら成功すれば太陽熱発電強国だ」とか対抗心で暴走したようにも思えますねw
トラフ式の太陽熱発電に関しても解説しておけば良かったですね。
ご指摘の様な感じで、割とトラフ式の方が敷居が低い一方で、面積を必要とする分、スケールメリットを活かすしか無いという感じになるようです。
太陽熱発電の前提となる、良好な状態での集光というのがなかなか難しいのが実情らしく、記事には載せられませんでしたが、実際に運用している発電所でも、それなりに苦労しているようです。鏡面の維持などにかかる運用コストが結構高いようなのですよね。
韓国の思惑はよく分かりませんが……、無駄なことをしたなと言うのが個人的な感想ではあります。そして、記事に書いたように失敗ありきだったのかも知れません。
香川県の対岸にある岡山には東洋一の188cm反射望遠鏡があります。
瀬戸内で晴天率はいい。
サンシャイン計画の前から、ドームがあってもミラーに埃が積り、梅雨の間に洗浄してました。いまは50日に1度とかいうレベルです。
天文関係者に1年間でどれくらい集光力が落ちるのか聞いてみたら、概算は出ます。
「生活がある以上、聞いて自分たちのプロジェクトに意味がないことを知りたくはない」
だから他人の研究分野を知ろうとはしません。
当時、太陽熱発電が仁尾太陽博の象徴、目玉でした。
数百枚のミラーで集光塔が真っ白く光る。圧巻です。
3年で撤去されました。
NEDOよると『原因は不明』になってます。
『原因不明』であるがゆえ数年前に今度は宮崎大学、横浜や山梨県北杜市で行われました。その後は不明です。
収支は明記されていませんね。