これでブレグジットが進む事になるな。
英総選挙 保守党 単独過半数獲得か 首相 事実上の勝利宣言
2019年12月13日 13時59分
EU=ヨーロッパ連合からの離脱の是非が最大の争点になったイギリスの総選挙は開票作業が進んでいて、公共放送BBCは出口調査に基づく予測として、離脱の実現を公約に掲げる与党・保守党が単独で過半数を獲得する見通しだと伝えました。ジョンソン首相は「保守党の政権は力強い国民の負託を得ることができた」と述べて事実上の勝利宣言をしました。保守党が過半数の議席を獲得すれば、イギリスの来年1月のEU離脱に道筋がつくことになります。
「NHKニュース」より
事前情報では、保守党が苦戦して労働党が躍進する、或いは単独で過半数は無理という評価も出ていたが、蓋を開けてみたら、圧勝の勢いだった。
ブレグジットは2020年1月末までに
3年間放置されたブレグジット
いい加減、国民投票の結果が出てから先に進まなくてイライラしていただけに、すっきりした結果になったことは喜ばしいと思う。
英総選挙 労働党コービン党首 事実上の敗北宣言
2019年12月13日 13時39分
最大野党・労働党のコービン党首は、ロンドン北部の選挙区で演説を行い、事実上、敗北を認めました。
「NHKニュース」より
ほぼ一騎打ちの様相を呈していたが、ジョンソン氏の相手となった労働党の党首コービン氏は、敗北宣言を出している。

今朝の段階で、イギリスのBBCがこの様な票数になるだろうと予想していた。
結果は、保守党364、労働党203となって(現時点で1議席未定)、出口調査結果よりも労働党は数を増やし、保守党は数を減らしたのだが、大勢に影響がなく誤差範囲内だろう。
選挙前との変化は保守党は298→364(+66)で、労働党は243→203(-40)である。
過半数が326なので、保守党が過半数獲得し、労働党は惨敗という結果になった。
国民投票の再実施は無くなった
まあ、これはある意味当然の結果かもしれない。
相手となったコービン氏はかなりゴリゴリの左派で、「国民投票の再実施」「富と権力の再分配」「電気・ガス、水道、郵便、鉄道や一部ブロードバンドの国有化」などを宣言し、「民間企業の株式の最大10%を従業員が集団で所有する包摂的所有基金案も明記した」という。ちょっとオドロキである。
確かに、基幹インフラの国有化というのは、一見悪い話ではない。しかし、日本がかつて国鉄やら電電公社など国有企業だった時代に、その中身がどんなだったかは調べて頂ければ分かると思う。後戻りする意味は無いのである。
民営化が全て良い事に繋がるとは言わないが、国有化したら何か良い方向に向かうのか?というと、そんなことは無いだろう。
こんなのを掲げて203議席獲得したのだから、流石イギリスと言うべきかもしれない。こんなの実現されたら目も当てられないだろう。
イギリスの国民投票のコストが幾らだったかは調べられなかったが、日本が憲法改正やるときに国民投票をやると、500億円以上のコスト(850億円と試算されている)がかかるワケだ。
既にブレグジットの答えが1回出ているにも関わらず、再度、国民投票をやるという発想が恐ろしい。それを防げただけでも意味はあると思う。
そもそも、イギリスがこのブレグジットの方向に舵を切った切っ掛けは移民問題だったが、それ以前に社会保障のシステムがバランスがとれない状況になってきて、そこに多数の移民が乗っかろうとしていたから問題なのである。
イギリスは社会保障が充実し、財政に占める国民年金の比率は年々高くなる傾向にあった。そこで緊縮体制を敷いたのがキャメロン氏である。そんな振り切った政策を採っていたからこそ、国民に嫌われ、コービン氏のようなゴリゴリの左派が登場するようになるワケである。
まあ、当然の帰結というべきか。イギリス国民は、社会保障について不満を抱えつつも、しかし移民問題の解決の方が先決だという風に判断したという風に捉えても良いだろう。
ブレグジットの代償
ただし、ジョンソン氏が勝ったことでも混乱はあるだろうと思われる。
それは2020年1月末までにブレグジットに踏み切るとしているからで、残された課題について何か未だ目処が付いたわけでは無いからだ。
ジョンソン政権は減税と教育、警察、医療分野での財政支出拡大を通じ、過去10年間の緊縮財政に終わりを告げると約束しているため、社債と国債の利回りも上昇する可能性がある。
「ロイター」より
ジョンソン氏の公約そのものは割と意味のある清濁だと考えられるが、しかし、貿易的な観点からすると、EUから離脱するために、様々な貿易交渉を各国とやり直さねばならず、これの調整期間が概ね半年だといわれている。
しかし、EU加盟時代に事務手続機能が失われていることもあって、これがスムーズに出来るとはとても思えない。
妙案として、TPPに参加してしまう(既に用意されたパッケージに組み込まれる)というものがあるのだが、それもイギリスにとってはハードな交渉が必要である。
イギリスとEU、新しいブレグジット案に合意と 英下院の承認不透明
2019年10月17日
イギリス政府と欧州連合(EU)は17日午前、ブレグジット(イギリスのEU離脱)条件を定めた新しい離脱協定案に合意したと明らかにした。新協定の施行には欧州議会と英議会の承認が必要となるが、イギリスでは複数の政党が反対を表明している。英下院は同日、19日に緊急審議を開き、新協定案を採決すると決定した。
~~略~~
ンケル委員長は、アイルランド島の「平和と安定」を守り「単一市場を守る」、「公平でバランスの取れた」協定だと評価。その上で、「合意できたのは嬉しいが、ブレグジットは残念だ」と述べた。両首脳は記者団の質問は受け付けなかった。
「BBC」より
ただしまあ、EUとの交渉は既に済んでいて、合意無しのブレグジットだけは避けることが出来たと言えよう。
しかし、焦点となる北アイルランドの扱いをめぐり、北アイルランドの民主統一党(DUP)は「現状」では支持できないと表明している。ジョンソン首相率いる与党・保守党は下院で単独過半数を得ていないため、2017年以来、保守党に閣外協力しているDUP(10議席)の支持がなければ、政府の協定案が下院を通過するのかは不透明だ。
~~略~~
バルニエ首席交渉官はブリュッセルで記者会見に臨み協定合意を発表し、新協定の4つの要点を説明した。
1.北アイルランドは今後も、物品に関するものを中心に、一部のEU規則の対象となる
2.北アイルランドはイギリスの関税地域に留まるが、EU単一市場への「入り口であり続ける」
3.単一市場の一体性を維持しつつ、付加価値税(VAT)に関するイギリスの正当な要望に応える
4.北アイルランドの代表は4年ごとに、EU規則を北アイルランドに適用し続けるかどうかを決定できる
(4)については、親英派とアイルランド派の双方の過半数ではなく、北アイルランド議会の単純過半数で決定する。
さらに、EU単一市場に入るモノへの関税は、EUとイギリスの合同委員会が選別したものについて、イギリスがEUに代行してEU関税を徴収する。
「BBC」より
北アイルランドの扱いに関しては、まだまだ混乱しそうだけどね。
なお、この合意に関して、イギリス議会は承認しなかったのだが、国民の支持が得られたとしてジョンソン氏はこの合意を元にブレグジットを敢行するんだろうね。
日本の課題
アメリカ大統領選挙に影響する
このイギリスの選挙の結果、アメリカの次期大統領選挙にも一定の影響力があると考えていいだろう。保守系の勢力が勝ったことで、トランプ再選の確率は高くなった。
米大統領選 民主党に新たな候補 指名争いさらに混戦に
2019年11月15日 6時50分
来年のアメリカ大統領選挙に向けた野党 民主党の候補者指名を目指し、オバマ前大統領に近いアフリカ系の有力政治家が新たに立候補を表明しました。支持層が重なるバイデン前副大統領などの選挙戦に影響する可能性もあり、民主党の候補者指名争いはさらに混戦となりそうです。
「NHKニュース」より
今のところ、共和党が混乱している状況なので、トランプ氏に対して勝てるかどうかは怪しいが、トランプ氏としても、「盤石」というワケでは無い。
よく分からない弾劾裁判への動きもある様なので、印象が悪くなれば選挙で負けることもありうる。案外トランプ再選は危うい状況なのである。
ただ、今回のイギリスの結果は「追い風」になる可能性は高く、そうだとするとトランプ政見に太刀打ちできる人材を日本の総理として据える必要が出てくる。安倍再選の可能性が出てきた?(苦笑)
共同開発に絡んだ思惑
一方で、イギリスの情勢を考えると、共同開発の話が今後どうなるかは、ロードマップを敷き直す必要はあるだろう。
日本、英国とミサイル共同開発 防衛装備政策に転機
2017/11/24 1:30
日本、英国両政府は2018年度、戦闘機に搭載する新型の空対空ミサイル(AAM)の共同開発に乗りだす。これまでの共同研究から格上げするもので、航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35などへの搭載を見込む。同盟国、米国以外との攻撃型兵器の共同開発は初めて。準同盟国に位置付ける英国とのAAM開発は日本の防衛装備政策の大きな転換点になる。
「日本経済新聞」より
防衛方面ではこんな話しが数年前にあったが、これが具体的に進むのか?と言う点については予断を許さない。
日英共同開発のMBDA「ミーテイア」ミサイルの試射は2023年
2018年7月22日
日本製シーカーを搭載する欧州MBDA製空対空ミサイル「ミーテイア(Meteor)」改良型の開発が進んでいる。日本は日本製シーカー付き「ミーテイア」の試射を2023年3月までに実施、またこれとは別に英国は、F-35戦闘機に搭載可能にするためフィンを変更した改良型「ミーテイア」を2024年から配備を始める。
日本製シーカーは空自が配備を進めている空対空ミサイル「AAM-4B」(99式空対空誘導弾(改))に搭載中のものの改良型になる。
改良型「ミーテイア」は日英共同のプロジェクトだが、採用予定は今の所日本しかない。他の「ミーテイア」採用国は開発状況を注視している段階である。
「tokyoexpress」より
ミーティアの改良という点で日本とイギリスが手を結んだことの意味は、同じF-35A、F-35Bを採用する国としては非常に意義がある。何しろ、イギリスも海洋国家であり、おかれた状況は日本と似通った部分がある。
残念なことに、自衛隊が保有している空対空ミサイル「AAM-4B」は太さの関係でF-35Aのウェポンベイの中に入らない可能性が高い。よって、ミーティアの共同開発によって新たな空対空ミサイルを手に入れる事ができることは、意味のあることだと思う。
まあ、F-35A用にはAIM-120を用意出来たらしいんだけどね。
さておき、そうした共同開発、軍事的な面での共同演習などの話を継続して行っていけるように交渉していくべきであろう。
民間企業の投資
そして、もっと重要なのは民間の話である。
英国スコットランドに自律型無人潜水機 (AUV)の現地法人を設立
2019年02月01日
川崎重工は、英国スコットランドのアバディーン市に自律型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)の製造・販売・アフターサービスを行う現地法人Kawasaki Subsea (UK) Limitedを設立します。
「Kawasakiのサイト」より
川崎重工はイギリス好きらしく、防衛関係でも民間事業でもイギリスでの商売を考えているようなのだ。だが、ブレグジットによって関税が高くなってしまった場合に、イギリスで生産してヨーロッパで売るという商売は、あまり旨くない商売になってしまう。確か、鉄道事業も受注していたような……。
ホンダ、英工場を閉鎖へ 3500人が失職の見通し
2019年02月19日
ホンダは19日、2021年に英イングランド・ウィルトシャー州スウィンドンの生産工場を閉鎖すると発表した。世界の自動車産業を取り巻く急激な環境変化と、電動化の加速に対応する生産体制の適正化の必要があると説明している。これにより、3500人が失職する見通し。
「BBC」より
ホンダが撤退した話は話題になったが、こうしたイギリスで作ってヨーロッパで売るというパターンが使えなくなり、割と混乱するだろうと予想されている。この辺りも上手いこと外交的に解決出来ると良いと思う。
まあ、そんな訳で、イギリスと付き合っていく上では様々な作業が必要で、その為の交渉はお互いに良い結果を産むような形になると、日本としてもメリットがあるだろう。
で、そこで国際的にも外交的に存在感を示している安倍氏が、ブレグジットにも上手いこと絡んでいくと、良い結果が得られるんじゃ無いかな、と。
コメント
木霊さん、今晩は。
少なくとも拗れに拗れた問題の方向性が見え、これまでの迷走・混乱が完全じゃないけど収束するという意味はあると思います。
>ジョンソン氏の公約そのものは割と意味のある清濁だと考えられるが、しかし、貿易的な観点からすると、EUから離脱するために、様々な貿易交渉を各国とやり直さねばならず、これの調整期間が概ね半年だといわれている。
とはいえ、ご指摘通り課題は山積みですから移民問題・社会保障制度の劇的な施策は、イギリスにとって運命的な試練となりそうですね。
>まあ、そんな訳で、イギリスと付き合っていく上では様々な作業が必要で、その為の交渉はお互いに良い結果を産むような形になると、日本としてもメリットがあるだろう。
>で、そこで国際的にも外交的に存在感を示している安倍氏が、ブレグジットにも上手いこと絡んでいくと、良い結果が得られるんじゃ無いかな、と。
日本にとって国益となるように安倍総理にはイニシアティブを発揮して欲しいもんです。
ホンダ撤退などは近未来的には仕方ないのですが、仰るとおり民間交流と投資に妙案がないものなのか精査して行くべきでしょう。
>さておき、そうした共同開発、軍事的な面での共同演習などの話を継続して行っていけるように交渉していくべきであろう。
軍事はアメリカ一辺倒を牽制する為という意味でも、ここら辺から関係強化を進めるのがいいのかも知れませんね。
日英同盟復活となれば支那への牽制ともなりますが、お荷物しょいこむだけかなァ~?
イギリスに関していうと、色々と無理がある状況だったので、収まるべきところに収まったという感じなのかなと。
案外、異色のトップみたいな報じ方をされているジョンソン氏ですが、政策を見ると割と左派寄りのような気がするんですよ。保守色は強いんですけどね。
それって日本でもアメリカでもそんなに事情は変わらないわけで。
イギリスの行く末は気になるところではありますが、良い方に動いているのかも知れません。ただ、イギリスは4つに分かれちゃう可能性は出てきましたけどね。