アメリカ、中距離弾道ミサイルの発射実験に成功

防衛政策

日本の防衛にとって、重要なニュースである。

米、中距離ミサイルの発射実験に成功…日本配備も検討

2019年12月13日 10時17分

国防総省は12日、地上発射型の中距離弾道ミサイルの発射実験を行い、成功したと発表した。

射程500~5500キロ・メートルの核弾頭や通常弾頭を搭載した地上発射型ミサイルの廃棄を定めた米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約が8月に失効したことを受け、中距離ミサイル開発を推進する姿勢を鮮明にした。

「LivedoorNEWS」より

印象としては、「え?アメリカがミサイル実験?いつもやってるんじゃないの?」というものだけど、実はこれが違うんだよね。引用記事を読んでも分かるんだけど。

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中距離核戦力全廃条約

INFの欺瞞と漁夫の利を得た支那

さて、冷戦時代に決めたことではあるが、中距離核戦力全廃条約(INF:1987年12月8日調印、翌年6月1日発効)なる条約がアメリカとソ連(現ロシア)との間で結ばれていた。

この中距離核戦力全廃条約は、当時超大国だったアメリカとロシアとの間で、「中距離は止めておこうぜ」と話し合った結果、順次核兵器を破棄していく話しで決着が付いた。

この結果、500km~5500kmまでの範囲(中距離)に届くミサイルは止めておこうぜって話になった。で、その結果、1991年までに合計で2,692基の兵器が破壊された。内訳はアメリカ合衆国が846基、ソ連が1,846基である。

ただ、ソ連はその後(1991年)に崩壊している。結局、大量のミサイル兵器を維持できなくなったから古くなったものを中心に廃棄したという側面の強い話なのだ。

実はこの条約で一番利益を得たのは当時のヨーロッパで、中距離核兵器がソ連から撤去されることで、ヨーロッパ各国に届くミサイルがロシアから無くなっていくことを意味する。防衛的な面で考えると、ヨーロッパにとってはプラスだろう。

また、更に利益を得たのは支那で、ソ連からミサイル関連技術の技術者が流出して支那にその技術を売り渡したとそのように言われており、実際に支那のロケット技術やミサイル関連技術は飛躍的に伸びたと伝えられている。

INFを尻目にミサイル開発を続けたロシア

支那の話は先に置いておくとして、ロシアが真面目にIMF条約を守っていたかというと、そうでは無かった。

イスカンデルと呼ばれる短距離ミサイルを開発したのである。配備は2006年からだ。

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これ、一応、射程距離は400kmであるとされている。が、ミサイルの性能的には500kmを超える事が容易であるとされており、実際に、ラインナップとして「イスカンデルE(280km)」「イスカンデルM(400km)」「イスカンデルK(500km)」とある。

まあ、ロシアが約束を守るはずも無いわけで。

むしろ、開発をしなかった(実際は色々検討はしたようだが)アメリカの方が間抜けだという話。

そもそも中距離核兵器とは何なのか?

だいたい、「中距離」の距離の定義が割といい加減である。

近距離のミサイルに関しては、そもそも近距離で核兵器をぶち込もうというアホは滅多に表れないことから、500km以上の距離というのはある程度意味はある。それ以下というのはちょっと考えにくいからね。

では5500kmというのはどう言う数字か?というと、モスクワからワシントンDCまでの距離がそれだとされている。完全にアメリカとロシアとの間の話だね。

INF条約も、最初は二国間の話だったのだ。

ところが、今やイスカンデルタイプのミサイルは、ロシアの他にも支那、北朝鮮、韓国と、類似品がばらまかれた上で、ベラルーシやシリアも保有する計画があるとのこと。

つまり、二国間で済まなかったのだ。この他に、支那はINFに参加する話もあったのだが、実際には参加せずに好き放題開発した結果、日本に届く多数の種類のミサイルを保有するに至っている。北朝鮮ですら同じだ。

INF条約、破棄

アメリカ決断す

好き放題やっている印象操作されているトランプ氏ではあるが、INF条約を破棄する決定をした。

トランプ米大統領:核廃棄条約の破棄の意向表明-露が違反と主張

2018年10月22日 0:39 JST

トランプ米大統領は、米国が旧ソ連との間で締結した中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する考えを表明した。ロシアが条約に違反したためだとしている。

トランプ大統領は20日、ネバダ州エルコで開かれた選挙集会後、「核に関する合意をロシアが違反するのをわれわれは容認しない」とし、「合意を破棄する」と発言した。

「Bloomberg」より

コレに関しては各国から批判された、と言う報道がなされていたが、現実問題として既に多数の国で中距離ミサイルが開発され、保有されていることから、戦力の非対称性が産まれていたワケで。

アメリカ軍の足を引っ張るわけにも行かないから、トランプ氏の決断は妥当だと思われる。この決断にしたがって、2019年8月2日に条約は失効した。

そして、この失効を確認した上で、実験したというのが今回のニュースだ。

国防総省によると、今回の実験では、通常弾頭を搭載した弾道ミサイルが12日、カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から発射され、500キロ・メートル以上飛行して海上に落下した。ミサイルは試験用で、国防総省は収集データを活用し、実戦配備に向けた作業を加速させる方針だ。

「LivedoorNEWS」より

500km飛ばしたミサイルが一体何なのか?は明らかにされていないが、計画凍結したパーシング2あたりは、復活させれば、射程は1600kmなので余裕で飛ぶ距離だ。

現行の計画であればMGM-140 ATACMSあたりが地対地ミサイルなので、ちょっと改造すれば射程を伸ばすことは可能だろう(Block IIAで射程300km)。

日本への配備

そして、申し訳程度に触れられているこの一文が、今後の日本の在り方を変えていく可能性がある。

トランプ政権は、ロシアに加え、条約に縛られずに中距離ミサイルの開発・配備を進めてきた中国への警戒感を強めており、対抗手段として、日本を含むアジアへの配備も検討している。

「LivedoorNEWS」より

飛距離500kmの地対地ミサイルの配備、それが日本に配備されるとなると、他国への牽制と言うことにはなる。

500km

濃い青色が500kmで薄い青色1000kmという感じである。この絵では福岡に配備したことになっているが、沖縄に配備したりすれば、また違うターゲットを狙うことは可能だ。

これ、配備することが重要なのであって、使うかどうかはまた別である。

既に、支那や北朝鮮、韓国には既に中距離ミサイルを配備済みである。そうだとすれば、日本が配備しないことが戦力の非対称性を産み、外交的に不利な立場となるのである。無論、ミサイルをちらつかせて北朝鮮のような外交をしろと言っているわけでは無く、「撃たれたら撃ち返すぜ」、それだけで良いのである。

寧ろそれが出来ない現状が問題なのだ。

アメリカの決断を切っ掛けに、日本も考え直すべきである。そもそも、この程度の距離飛ばすミサイル程度であれば、開発することは日本にとっては造作もない。ベース技術は既にあるのだから、「持つ」という覚悟を示し、実際に配備したことを内外に示す事こそが重要である。

コメント

  1. マスメディア反乱軍 より:

    画像を見ると北朝鮮がパクったATACMSに1段目を推進用ロケット追加した様な感じですね。
    約60cmのATACMSより径が太く見えますから新型なんでしょうかねェ~。

    アメリカが配備する地対地弾道ミサイルはICBMのミニットマンⅢだけのはずで、INF条約により中距離弾道ミサイルがスッポリ抜けてしまったと実感します。
    ロシア・支那にマンマとやられちゃったってご指摘通りって事かな。

    最大射程が5500kmとしてアメリカ領土から撃てるのはグアムくらいしかないので、支那が警戒する通り同盟国への配備を念頭にしていると想像します。
    北朝鮮用を前提とすれば、日本・南朝鮮・フィリピンしかないわけで、アメリカが配備したくても各国が容認するかのハードルは相当高く、実現しても時間が掛かるのは間違いないんじゃないかな?(オーストラリア最北の離島とかなら配備できるかもですが)

    多分開発中の最新中距離弾道ミサイル完成までの、支那・ロシアへのデモストレーション的な位置づけと想像します。

    特に支那が力を入れている各種の中距離弾道ミサイルへの対抗は必須なんで、精密誘導できる超音速巡航ミサイルと併せて開発を急いで欲しいですね。
    その時こそ、日本への配備要請は高まり断れない状況になる可能性がありますんで、支那との距離を冷徹に判断して腹を括るべきでしょう。

    • 木霊 より:

      「時既に遅し」という感じはしますが、しかし、今回のアメリカが発射したミサイル、実戦配備するとしたら、真っ先に日本が候補地にあがるんでしょうね。
      そうなったときに、日本がアメリカに「お願い」して米軍基地に配備するのかという事になりますが、日本の米軍基地から先制ミサイル攻撃をする事の是非は問題となるかと思います。
      そして、そもそも、米国を狙ったのであればともかく、日本を狙ったミサイルに対して基地攻撃をするという選択肢を持たないことが大きな防衛上の欠点になると思いますので、先制攻撃が出来ないにせよ、撃たれたことを検知したら返す刀で撃ち返すべきであります。
      そのためにも、公式に配備し、撃てる体制にすべきなのだと思いますよ。

      • マスメディア反乱軍 より:

        木霊さん、おはようございます。

        >濃い青色が500kmで薄い青色1000kmという感じである。この絵では福岡に配備したことになっているが、沖縄に配備したりすれば、また違うターゲットを狙うことは可能だ。

        射程5500kmなら首都北京は当然で支那全土がターゲットとなります。(ロシア全土もカバー)

        >これ、配備することが重要なのであって、使うかどうかはまた別である。

        核は除くとしてペイロードと運用できる多機能爆弾の種類次第じゃないでしょうか?
        弾道ミサイル最大の長所は超高速性なんですが、精密誘導が難しく攻撃目標から数百mズレちゃいますからピンポイント破壊には向かない。
        そして、大型TELからの発射なんで有事の展開には制限が出てくるでしょうから、発射基地の固定化が必須でしょう。→つまり真っ先に狙われる。

        ピンポイント打撃で実績のある巡航ミサイル・トマホークは、鈍足とペイロードのなさで破壊効果は期待薄って感じですが、一度に数百カ所への精密攻撃ができるのが最大の長所。
        地上移動型のVLSが完成すれば中距離弾道ミサイルより威嚇性は高くなりますから、これもトマホークと併せて配備すべきと考えます。
        イージス・アショアのソフト変更をすれば、日本各地に展開する移動式VLSからの精密攻撃が可能です。

        そして、何度か書いていますが開発中の超高速滑空弾で(射程は1000km)、初動の支那ミサイル基地&TELを叩く事が必要、地対地・空対地型共用タイプとして素早く報復する体制を確立して欲しい。

        初動は超高速滑空弾で支那沿岸部のミサイル基地を叩く→次にVLSから新型トマホークで空軍含む主要基地を精密打撃→最後に中距離弾道ミサイルで支那内陸部拠点・主力基地を攻撃...、専守防衛に即時報復を加える3種セットの武器が抑止力として必要と思っています。

        >そして、そもそも、米国を狙ったのであればともかく、日本を狙ったミサイルに対して基地攻撃をするという選択肢を持たないことが大きな防衛上の欠点になると思いますので、先制攻撃が出来ないにせよ、撃たれたことを検知したら返す刀で撃ち返すべきであります。
        >そのためにも、公式に配備し、撃てる体制にすべきなのだと思いますよ。

        僕もBMDの一環として報復兵器(主はミサイル)はセットであるべきという考えです。
        とりあえず必要なのは三種の神器ならぬ三種の矛ですかね。

      • 木霊 より:

        そうですね。
        アメリカが実験したのは弾道ミサイルで、命中精度に関して「ピンポイントでの精密射撃」が可能かというと、なかなか難しいのが実情であります。
        日本が欲しいのは、どちらかというと足の長い巡航ミサイルの方でしょう。弾道ミサイルを使うのであれば、複数同時に撃たなければならないでしょう。

        盾(BMD)だけ用意しても意味はありませんから、セットで矛も用意しないとダメですよね。両方揃えてこそですから。