イスラエルのネタニヤフ氏と中東の火種

中東ニュース

大丈夫かね、イスラエルは。

ネタニヤフ氏、組閣に再び失敗 野党連合が連立拒否

2019/10/22 3:51

イスラエルのネタニヤフ首相は21日、9月のやり直し総選挙後から続けてきた連立協議が失敗に終わったと明らかにした。右派リクードを率いるネタニヤフ氏は、ガンツ元軍参謀総長らの中道野党連合「青と白」との大連立を模索したが、自身の汚職疑惑を問題視され拒否された。リブリン大統領は「青と白」のガンツ氏に組閣を要請する見込みだが、新政権の樹立は予断を許さず、政局の混乱は続きそうだ。

「日本経済新聞」より

アメリカの盟友イスラエルだが、首相のネタニヤフ氏はちょいちょい贈収賄疑惑でやられているのだけれど、今回も汚職疑惑で上手く言っていないようだ。

スポンサーリンク

アメリカの中東政策の鍵を握るイスラエル情勢

イランと仲の悪いイスラエル

アメリカとイランとの間でかなり険悪な感じになってきているが、そもそもイランはイスラエルとの関係が悪い。

なぜイスラエルとイランはシリアで戦っているのか

2018年05月11日

1979年にイラン革命が起こり、イスラム教強硬派が権力を掌握して以来、イランの指導者はイスラエルの排除を訴えてきた。イランはイスラエルのことを、イスラム教支配地域を違法に占拠する者と位置づけ、同国の存在権を否定している。

これに対してイスラエルはイランを、イスラエルの存在に対する脅威とみなし、イランは核兵器を得てはならないと力説してきた。イスラエルの指導者はイランの中東における影響力拡大を恐れている。

「BBC」より

で、イスラエルとイランの仲が悪いがために、シリア国内でもその影響があったりと、中東を巻き込む話になっている。

記事にもあるが、イランがシリア政府を支援していることは公然の事実で、ロシアと共にシリア政府を支援している状況を、イスラエルが苦々しく見ている構図になっていたが、実力行使もしちゃった、という状況になってきている。

イスラエル軍、シリア空爆 イランの攻撃阻止と主張

2019.8.25 09:07

イスラエル軍は24日、シリアの首都ダマスカス近郊にあるイラン関連の複数の軍事施設を空爆したと発表した。軍報道官は、イラン革命防衛隊で対外工作を担う精鋭コッズ部隊などが爆発物を積んだ無人機でイスラエル北部を攻撃する計画を阻止したと主張した。

「産経新聞」より

何故こんな話になるかというと、シリア、イラン、イスラエルの位置関係をまず頭に入れておかねばならない。

イランはイラクを挟んでシリアに隣接する一方、イスラエルはシリアと国境を接している。

そもそもシリアは敵国であるイスラエルの侵攻を防ぐために東側の武器を装備していて、その装備はロシアから購入するという構図である。ご存じイスラエルはアメリカから大量の兵器を買っているので、イスラエルとシリアは直接的に対立関係にある。

争いの絶えないゴラン高原

この対立構造には、ゴラン高原も関連している。

ゴラン高原はイスラエル、レバノン、ヨルダン、シリアの4カ国が国境を接する高原で、以前はシリア高原と呼ばれていたのだが……、イスラエルがゴラン高原に侵攻して1981年に併合を宣言しちゃった。国際的にはシリアの領土って事になっているらしいんだけどね。

米、ゴラン高原のイスラエル主権認定 トランプ氏が表明

2019年3月22日 3:42

ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は21日、米国はゴラン高原(Golan Heights)でのイスラエルの主権を認めるべきだと表明した。イスラエル総選挙を控えたベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相に大きな贈り物を渡した形となった。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争(Six-Day War)で、シリアからゴラン高原、エジプトからガザ地区(Gaza Strip)、ヨルダンからヨルダン川西岸(West Bank)と東エルサレム(East Jerusalem)を占領。その後、ゴラン高原と東エルサレムを併合したが、国際社会はこれを認めていない。

「AFP」より

で、まあ、アメリカのイスラエル寄りの発言の数々は、中東を刺激するわけだが、このゴラン高原の帰属の話に関してもかなり刺激したと言われている。

イスラエルが攻撃的な軍事国家であることは、誰しも認める話だが、イスラエルとアメリカとの関係は中東問題を更にややこしくしている。

そして、更に状況を悪化させつつあるのがこちら。

アメリカがシリア問題から手を引き、事実上トルコのシリア侵攻を認めた事で、この問題は更にややこしくなりそうな感じなのである。

上の流れを見ていると、アメリカ軍のシリア撤退はイスラエルへの援護射撃的な性格も持っているとも理解出来る。

ネタニヤフ政権の崩壊でイラクとの関係が悪化

強硬派として知られるネタニヤフ氏

さて、ネタニヤフ氏の立場が悪くなり、政権が転覆するようなことになると、アメリカとしても対中東政策の見直しを迫られる事になる。

野党指導者に組閣指示か アラブ系政党が支持表明 ネタニヤフ首相、さらに窮地に イスラエル

2019.9.23 21:31

イスラエル国会(一院制、定数120)の再選挙を受け、アラブ系政党は22日、野党側最大勢力の中道政党連合「青と白」を率いるガンツ元軍参謀総長を次期首相候補として支持すると表明した。アラブ系政党が特定の首相候補を支持するのは1992年以来。

開票はほぼ終了しており、アラブ系政党は13議席で第3党になる見通し。ガンツ氏ら中道・左派勢力はアラブ系政党の支持を加えて57議席となり、ネタニヤフ首相率いる右派・宗教勢力の55議席を上回る。ただ、いずれも連立政権発足に必要な過半数(61議席)には達していない。

「産経新聞」より

ネタニヤフ氏が右派なのに対して、対立候補のガンツ氏は中道・左派勢力とされている。

で、中道左派勢力は、隣国との和平を望んでいると言われてはいるが、話し合いで物事が解決するのであれば、中東戦争は起きないわけで。そもそもイスラエルはユダヤ人の国として建国されているものの、建国の時点で第一次中東戦争(1948年5月15日~1949年3月10日)の引き金を引くに至った。

簡単に言うと、ある日突然「イスラエル」という国が出来上がり、権利を主張し始めた。故に、周辺諸国にとっては、イスラエルという国家の存在自体が気に入らないというような感じなのである。

まあ、「ある日突然」というのは言い過ぎだし、イギリスの植民地政策の失敗が原因ではあるのだが、部族者会の中東に無理矢理国境線を引いてしまえば、争いが起こるのは無理も無い。

そして、こうした成り立ちのイスラエルである以上、話し合いで簡単に和平にたどり着ける、なんてことにはならないのである。

実際に、第二次~第四次中東戦争でイスラエルはあっちこっちの国と軍事衝突に至っている。もちろん、停戦合意にいたってはいるが、あちらこちらで争いは今なお続いている。今さら「話し合おう!」とか言われても、イスラエルの周辺国が簡単に納得ができるとはとても思えない。

イスラエル議会、「ユダヤ国家法」採択 アラブ系住民排斥への不安高まる

2018年7月19日 14:50

イスラエル議会は19日、イスラエルを「ユダヤ人の国家」と定義する法案の採決を行い、これを採択した。同法案をめぐっては、アラブ系住民に対するあからさまな差別につながるとして物議を醸していた。

「AFP」より

例えば、去年の7月に通ったこの法案は中東で物議を醸したといわれるが、ネタニヤフ氏が政権トップの座から退いたらこの方針が撤回されるかというとそんなことは無いだろう。

アラブ系政党の代表者は「ネタニヤフ時代を終わらせたい」と述べ、対パレスチナ強硬派の首相の続投阻止のためガンツ氏を支持すると述べた。

ユダヤ教超正統派への優遇政策撤廃を主張して8議席を得た極右「わが家イスラエル」のリーベルマン前国防相は、現時点ではガンツ、ネタニヤフ両氏のどちらも支持しない意向を示した。

「産経新聞」より

イスラエル国内でも、ネタニヤフ氏より更に強硬派の勢力があり、一定の力を持っている。また、アメリカはイスラエルが中東をまとめ上げる力があると信じていたかどうかは分からないが、アメリカのイスラエルへの関与が弱まれば、イスラエルと対抗する組織は力を増すだろう。

結果的に、中道左派勢力が権力を握ったとしても、和平の道に繋がるとは限らない。

イランはアメリカの圧力によって疲弊している

ところで、先日、イランはアメリカとの対話を拒否していたが、そもそもアメリカの経済制裁はイランを疲弊させている。

イラン最高指導者「米と対話せず」 サウジ石油施設への攻撃 対イスラエルも緊張

2019.9.17 22:12

サウジアラビアで世界屈指の石油施設が攻撃された事件をめぐり、トランプ米政権がイランの関与を指摘する中、同国の最高指導者ハメネイ師は17日、「イラン政府当局者は決して米国と対話しない」と述べた。ロイター通信が伝えた。ロウハニ大統領とトランプ氏が今月下旬、ニューヨークの国連総会の場で両国間の緊張緩和に向けて会談するとの見方を牽制した形だ。

「産経新聞」より

イラン核合意の破棄が問題だとも言われているが、そもそもイランは核兵器開発を推進していて、イランが核保有国になった場合には、中東の軍事バランスが大きく崩れかねない。

イランは北朝鮮とも繋がっていると言われるので、イランへの経済的締め付けは北朝鮮問題にもリンクしてくる話ではあるのだが、標的にされているイランにとっては経済の疲弊でアメリカに対する恨みを募らせている状況であるため、話し合いも拒否したという状況だ。

事件の背後関係は不明だが、イランは今後とも、自らの影響下にある周辺国のイスラム教シーア派民兵組織と連携し、トランプ米政権のイラン包囲網を揺さぶる方針とみられる。今回は米政権が中東政策の基盤に据えるサウジが大きな打撃を受けたが、中東最大の米国の同盟国イスラエルをめぐっても軍事的緊張が続いている。

「産経新聞」より

アメリカとネタニヤフ氏のラインが切れてしまうと、この辺りの軍事バランスは大きく変わってくる。イランに対してイスラエルとトルコの力を増すことで中東を押さえ込もうという方向なのではあるが、ロシアの切り崩し作戦でトルコは既に西側とは言い難い。

しかし、アメリカにとって中東問題は金がかかる割には利益が少ない。何しろシェールガス開発に成功してしまったアメリカにとって、石油利権を積極的に守る動機が薄くなってしまったのだ。既に「世界の警察」を卒業する路線は発表しているし、今後更に介入を、という事にはならないだろう。

よって、イスラエルが力を落とせば、イランが力を増し、エルサレムを巡って勢力図を書き換える自体に発展しかねない。

中東問題は、ネタニヤフ氏退場によって更に悪化しそうだというのは、こういった勢力図の書き替えが起こる可能性からなのだが、一概に「アメリカのトランプ氏が悪い!」と切って捨てるマスコミはこの手の話をきちんと説明してくれないので、イマイチ分かりにくいよね。

コメント

  1. マスメディア反乱軍 より:

    >何故こんな話になるかというと、シリア、イラン、イスラエルの位置関係をまず頭に入れておかねばならない。
    >まあ、「ある日突然」というのは言い過ぎだし、イギリスの植民地政策の失敗が原因ではあるのだが、部族者会の中東に無理矢理国境線を引いてしまえば、争いが起こるのは無理も無い。

    イギリスも当時の政策上この場所しか思いつかなったんでしょうけど、世界史史上最も安易で愚かな決断だったと思いますね。

    >そして、こうした成り立ちのイスラエルである以上、話し合いで簡単に和平にたどり着ける、なんてことにはならないのである。

    僕はおそらく最低限の和平すら無理と絶望的な感想しか持っていませんけど、地域混乱と無辜の庶民が犠牲になる無慈悲な戦争は続くと思うと憂鬱になっちゃいます。

    >イラン核合意の破棄が問題だとも言われているが、そもそもイランは核兵器開発を推進していて、イランが核保有国になった場合には、中東の軍事バランスが大きく崩れかねない。
    >イランに対してイスラエルとトルコの力を増すことで中東を押さえ込もうという方向なのではあるが、ロシアの切り崩し作戦でトルコは既に西側とは言い難い。
    >よって、イスラエルが力を落とせば、イランが力を増し、エルサレムを巡って勢力図を書き換える自体に発展しかねない。

    今さら原因を振り返っても仕方がない世界中が抱える抜け出す道なきジレンマ...、解決への微かな妙手すら思い浮かばないのですが、せめてこういう混沌に付け込む狡猾なロシア=プーチンだけでも封じ込めないもんでしょうか。

    • 木霊 より:

      >イギリスも当時の政策上この場所しか思いつかなったんでしょうけど、世界史史上最も安易で愚かな決断だったと思いますね。

      いやー、イギリスは狙ってやっていると思いますよ。
      中東が発展すると、ヨーロッパの利益が目減りします。争わせて置いた方が継ごうが良いと考えていたんだと思います。
      当時も今も、イギリスはその程度のことはやらかす国です。

      中東の争いが無くなるためには、どこか1カ国が中東一帯を牛耳るような展開になるくらいしか目が無いのかなと。
      ただでさえ、オイルマネーで潤っていますからね。中途半端に金を持っている金持ちはろくなことしません。

      • マスメディア反乱軍 より:

        >当時も今も、イギリスはその程度のことはやらかす国です。

        なるほど、どこが紳士なのか嫌な国ですねェ~。

        >中東の争いが無くなるためには、どこか1カ国が中東一帯を牛耳るような展開になるくらいしか目が無いのかなと。
        >ただでさえ、オイルマネーで潤っていますからね。中途半端に金を持っている金持ちはろくなことしません。

        莫大な金と強大な軍事力が必要な話ですね、となるとバックにユダヤマネーがあるイスラエルかオイルマネーのサウジアラビアかになるんでしょうか?
        いずれにせよ、幸福な未来は見えてこない気がしますけど...。