マイナス金利の時こそ国土強靱化を目指せ

政策

コンクリートから人へ

民主党政権の最悪の選択

ハコモノ行政という言葉が流行し、インフラへの投資が「悪だ」とする風潮が強い時代があった。その結果、建設業界が弱体化するという憂き目に遭うわけだが、それが日本のためなのか?ということに関しては今一度考え直す必要がある。

民主党の事業仕分けよりも前に…田中康夫元知事による工事中断から16年 あのダムがようやく動き出す!!

2016.10.23 14:00

民主党の事業仕分けより以前に、社会問題化した田中康夫元長野県知事による「脱ダム宣言」。その象徴といえる長野市の県営浅川ダムで10月半ば、長野県が工事完成への最終段階となる試験湛水(たんすい)の作業を開始した。

~~略~~

同ダムは、千曲川に流れ込む浅川(長野市-小布施町、延長17キロ)の治水と利水を目的に計画され、平成12年9月に本体部分の工事契約が結ばれたが、同11月に工事が中断。さらに脱ダム宣言で事業が白紙となり、治水対策は有識者や地元住民らによる検討委員会に委ねられた。

「産経新聞」より

脱ダム宣言をして行政を牽引した田中康夫氏は、長野県のダムを減らす方向で働きかけた。

結局、その後ダムは作られることになり、しかしダム完成後にまた訴訟が発生する。

浅川ダム訴訟、住民敗訴が確定

会員限定有料記事 毎日新聞2018年11月21日 20時30分(最終更新 11月21日 20時30分)

 長野県が建設し、2017年に完成した県営浅川ダム(長野市)を巡り、住民ら158人が建設費約120億円を阿部守一知事らに返還請求することなどを県に求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)は住民の上告を退ける決定をした。20日付。住民敗訴の1、2審判決が確定した。

「毎日新聞」より

こんな感じで、田中氏が唱えた「脱ダム」によって多くのダム建設反対派を産み出し、実際に計画されていたダムのいくつかは建設中止されたようだ。

「脱ダム」宣言全文/長野県

ダムがあれば千曲川の氾濫が止められた、等と単純な事を言うつもりはないが、果たして田中氏の目指した「遊水池」は今回、機能したのだろうか?

長野県 千曲川が決壊 広範囲で大規模浸水

2019年10月13日 20時28分

台風19号による大雨で長野県内を流れる千曲川が決壊しました。また多くの場所で氾濫し、長野市や千曲市など流域の広い範囲で大規模な浸水被害が発生しています。

「NHK」より

千曲川の堤防が決壊して住宅地に水が流れ込んで大惨事になった。今回の台風の影響はそれ程までに強かったわけだが、田中氏の治水に本当に問題は無かったのだろうか?

田中氏のサイトに目を通し、理念などを見ていると共感できる部分も結構ある。ただ、その結果どうなったか?というと、千曲川の氾濫は抑えられなかったわけで。

彼だけの責任などという積もりは無いが、方針が正しかったかは点検される必要があるだろう。

甲府盆地の治水は成功事例?

一方、こんなニュースもあった。

信玄堤が水害から守った?

2019年10月14日 05時00分

 台風19号の通貨から一夜明けた13日、短文投稿サイト「ツイッター」で、戦国武将の武田信玄が築いたとされる堤防「信玄堤」(甲斐市)に関する投稿が相次ぎ、「甲府盆地を水害から守った」などと称賛する書き込みが目立った。

「山梨日日新聞電子版」より

しっかりした計画に基づいて堤防やダムが作られれば、被害を抑える事ができたのでは無いか?という気がしてならない。

もちろん、想定外の大規模な災害であったということは出来るのだろうが、失われた資産を取り戻すのは容易ではない。

マイナス金利下の国債発行

随分と遠回りしてしまったが、そろそろ結論に行きたいと思う。

マイナス金利下の国債発行は「一石三鳥」のプラス政策

2019.9.5 5:05

 8月29日に長期金利の代表指標である10年物国債金利が一時▲0.290%と、2016年7月下旬以来、約3年1ヵ月ぶりの低水準となった。

 超低利が長く続くなかで、期間が長くなるほど金利が低くなる「逆イールド」が期間7年物まで続いている。しかも、マイナス金利は15年までというかつてない状況だ。

「DIAMOND Online」より

高橋洋一氏の主張を取り上げると、拒絶反応を示す方もいるかも知れないが、実に分かり易く説明してあるので紹介しておきたい。

そして、高橋氏の主張を裏付ける報道もちょっと紹介しておこう。

国債発行、マイナス金利で1.5兆円「増収」 18年度  

2018/1/23 19:24 日本経済新聞

日銀のマイナス金利政策が国の借金である国債発行計画づくりに寄与している。財務省がまとめた2018年度計画では、マイナス金利下で国債を入札した場合に国債の額面価格を上回る収入が国に入る分で1.5兆円の「増収」になると見込んだ。年150兆円規模の国債発行が続く国の厳しい財政運営を、日銀の金融緩和策が支える図式が強まっている。

「日本経済新聞」より

日経新聞は、寧ろ批判的に国債発行の結果、増収に結びついたが、これは日銀が政府の財政を支えている構図だ!不健全だ!と主張しているのだが……、結果的にそうなっているだけで、これを利用しない手は無いのである。

これを気に建設国債で災害対策をやる、という流れにならなければ、安倍政権の政策は「嘘」だろう。だって、財政にとってプラスになるんだぜ?

人からコンクリートへとまでは言わないが

そんな訳で、建設国債を発行することは、負債を積み上げることとは違うのだ、ということは分かって頂けたと思う。

もちろんハコモノをたくさん作れ!などと言う積もりは無いが、各地の治水などを早急に見直さねばならず、老朽化した生活インフラの見直しも急務だ。

そして、それらは国が指針を示すべきだろう。また、その資金をかき集めるために建設国債をバーンと増額するというのは間違った方針だろうか?

一時期、国交省がスーパー堤防計画が推進していた時期があって、それはそれで意味があることのようにも思えた。が、蓋を開けてみたら、ろくでもない話であることが判明。

高規格堤防とは

高規格堤防は、土でできた、ゆるやかな勾配を持つ幅の広い堤防です。 広くなった堤防の上は、通常の土地利用が可能で、新たなまちづくりを行うことができます。

「京浜河川事務所サイト」より

実は多摩川の河川工事計画が進められ「スーパー堤防」なるものが作られている。

http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000619267.jpg

これが「良さげ」に見えるのだが、実際はかなり難しい計画である事が指摘されている。

「多摩川堤防27キロ整備されず…高さも幅も不足」(読売新聞)

 7月の西日本豪雨による水害が教訓となり、各地で堤防の未整備がクローズアップされてきています。  首都圏では、主要河川である多摩川でさえ、堤防整備が完了していない区間が2割以上あるということです。新聞報道によれば、未整備区間は約28kmもあり、世田谷区などでは堤防そのものがない所もあるとのことです。

 治水予算が限られる中、ダムやスーパー堤防など大規模公共事業が優先されるため、洪水対策として最も重要な堤防の整備に回す予算が不足しています。「(多摩川の堤防)整備率は78・6%。全国に109ある1級河川の平均整備率67・7%を上回っている」ということですから、多摩川はこれでもマシな方ということになります。

「八ッ場あしたの会」より

何が問題かと言えば、莫大な費用と時間を要する計画であるため、速効性が無いという大きな問題があるのである。

川幅が確保出来ない部分や、老舗があるような場所では立ち退き交渉もかなり難航するとあって、進捗状況も思わしくないらしい。もちろん、スーパー堤防建設も結構なのではあるが、そもそも堤防が無い部分がそのまま、というのが問題なんだよね。そういう意味ではろくでもない。

残念な事に、堤防は全体的に作られなければ意味が無い。弱い部分が犠牲になるからだ。そして、弱い部分が決壊、越水してしまうと、しっかり堤防がある場所でも関係無く浸水してしまうから質が悪い。これは行政だけが悪いって話ではないだろうけれど。

多摩川が氾濫、浸水40cm 住民「こんなこと初めて」

2019年10月13日03時47分

東京都世田谷区の多摩川は12日午後10時ごろ、東急二子玉川駅近くで氾濫(はんらん)し、付近の道路は深さ40センチほど冠水した。近くに住む男性(45)によると、午後4時ごろに急激に水位が上昇。その後じわじわ水位が上がって住宅街に広がり、近くのマンションに流れ込んだという。このマンションは停電していた。近くに住む男性会社員(60)は「長く住んでいるが、こんなことは初めて」と話した。

「朝日新聞」より

で、氾濫したと。

災害対策の予算を増額せよ

何を優先すれば良いのか?ということは今一度問いかけなければならない。が、建設国債を発行して災害対策をやれば、景気にだって良い影響がある。

国の予算を根拠に「シャッキンガー」とか「プライマリーバランスガー」とやるのは、間違いだと言うことを、ここで長々と説明させて頂いたが、「何が必要」で「何が不要か」はしっかり理解すべきだ。

武田信玄の堤は、100年の時を超えて今なおその地域を水害から守っている。今回の災害にどの程度の威力を発揮したかは不明だが、優れた治水計画は、長期にわたって地域住民を守る財産になり得ることの好例とは言えるだろう。

だから、そのための工事はやるべきじゃ無いの、という話。

じゃあ、「今年はドカーンと建設国債発行しようぜ!」と言いたいところではあるのだが、残念ながらそういうワケにはいかないのが、今の日本の哀しい現状である。

何がダメかというと、工事を請け負う事のできる業者が限られているのだ。予算を付けたところで、直ぐに治水が始められるワケじゃ無いんだな。

それでも、計画自体はしっかり立案し、実施すべきだろうと、そう思う。長期的な計画を立てて、工事業者の育成もしなければなるまい。安易な妥協によって、後世に憂いを残すのが最も駄目なパターンだろうね。

大切なのは、対費用効果と優先順位の付け方だ。そして、防災の観点からすれば地方自治体にそれぞれ対策を投げるのではなく、県や国といった大きな単位で防災計画を進めるべきだ。細分化すればするほど地域の意見を聞きやすくはなるが、意見を聞いたところで政策に反映させると多摩川のような問題を引き起こしかねない。寧ろ、個別に意見を聞いたり、地域の利益を優先させたりすると国益を損ねる結果になりかねない。大きな視点で物事を考える必要がある、それが防災であり治水なのだから。

コメント

  1. ちょっと補足させてください。

    「国の借金」という言葉がミスリーディングさせています。NHKの2019年2月9日ニュースから引用します。

    >国債や借入金などを合わせたいわゆる「国の借金」が、去年の年末の時点で
    >1100兆円を超え、過去最大を更新したことが分かりました。日本の総人口で
    >割ると1人当たり871万円となります。

    これ、正確には「日本政府の借金」であって「日本国全体の借金」ではありません。

    また、日本国債のうち7.4%が海外に流出しており(国庫短期証券を含めると12.8%)
    残りは日本国内で消化されてます。つまり、債権者は日本国内の企業または家計ということになります。(令和元年6月末速報値)

    なので、日本の対外負債・純資産に影響を与える額は国庫短期証券を含めても、政府の借金の12.8%の145兆3161億円になります。

    • ご指摘通り、その辺りの情報も基本事項として盛り込むべきでした。
      「国の借金がー」というのは、財務省の常套手段みたいな話で、政府の債務の内訳に関しても見ていくと、ご指摘の通り「リスク」と判断される要因は少ないのですよね。
      ミスリードのさせ方としては悪質ですが、マスコミを含めて良くこの手の情報操作はされますから、注意したいですね。

  2. とても参考データーを元にした興味深く関心させられる記事です。

    公共事業すべてが悪だという風潮が広まって、すでに20年位かな定着しちゃって長く経ちます。
    ゼネコン汚職や政治家・官僚の汚職腐敗は許せませんし、地方自治体が無駄なハコモノを造ってきたのも大問題でしょう。

    しかし、国の安全保障の中には「国土の途切れる事のないメンテナンスと必要な強靭化」が必要なのですから、「公共事業=金食い虫の悪」でないのは当たり前です。

    都市部からちょっと離れてドライブしていると、美しい田園風景や山間の道路・起伏に富んだ河川などの風景に触れる事ができます。
    でも、想像を超えた自然の驚異によって、一瞬で破壊される脆弱さも併せ持っているのですよねェ~。

    急斜面下に建てられた集落・がけ崩れや陥没しそうな山道など、改善すべき場所がいったい日本全国にどれくらいあるのか...?
    一朝一夕では解決できないし、長いスパーンで考えた地道な改善・補強策が求められるんじゃないかな。

    かといって、僕にはどうすりゃいいかなんて方法論は見当もつきませんけど、財務省のデーターを操作した情報誘導には長年ウンザリですね。
    ちょっと調べれば判る話なんですが、マスメディアが相乗りして煽ってきましたから、老人さん達含め新聞・TVしか見ない国民が鵜呑みにしちゃって信じているのが一番マズい!!

    • 頑張って書いてみましたが、間違った内容にならないかとヒヤヒヤしておりました。

      公共事業に金がかかるのは当たり前で、それを領民にどうやって納得させるのかが、為政者の腕の見せ所という感じだと理解していました。
      しかし、スーパー堤防のように、作り始めてから莫大なコストと時間がかかっても、やり遂げなければならない工事もあるワケで。
      それにどうやって説明を付けるかが政治家の腕の見せ所なんじゃないかなーと。そう思っていますが、そんな政治家、最近見ませんよね。

  3. こんにちは。

    マイナス金利でそのお金が海外ファンドと不動産に流れててどうしようもない状態ですね。
    触れておられていましたが民間銀行の審査能力が無いせいで不動産担保に捕われていて設備投資に全然回っていません。金融庁もなんとかしたいと指導等を行っているようですが……
    不動産に回ってしまうせいで、
    土地価格上昇→賃料上昇→個人の財布を圧迫→消費が冷える
    のような現象が起きている部分も見られます。

    国の借金はデフレ脱却してインフレ率2%ぐらいになれば20年で約半分になりますからね。
    デフレ脱却が一番の肝だと考えられますが上手くいっていませんね。
    どうすればいいのでしょうか。

    • ろくでもない状況ですが、消費税が導入された結果が出てくると(ちょっと先になると思いますが)更に結果が変わってくるのでは?
      外的要因で経済が悪化するのは目に見えているので、「外的要因が問題で、消費税増税による経済悪化じゃ無い」と強弁する事もできるのでしょうが、そんなタイミングでわざわざ経済にブレーキをかけなくとも……。

      政府によるデフレ脱却のコントロールは、僕はそもそも困難だと思っています。
      政府が介入して経済をコントロールできる余地は少なく、民間牽引による経済好転が無いとダメなのかと。
      とはいえ、建設国債使ってインフラ作ると言うのは、無駄にならないと思うんですよね。本当に必要なモノを作るのであれば、それは生きた金の使い方になるし、多少の経済効果も期待できますから。