トルコとシリアの事情

中東ニュース

シリア問題でアメリカが手を引く話になって、一気に事態が動いているね。

トルコ軍 シリア越境作戦開始

2019年10月9日 22時35分

トルコ軍は、9日、隣接するシリア北部の国境沿いから敵視するクルド人勢力を排除するためとして、国境を越えて軍事作戦を始めました。クルド人勢力は対テロ作戦でアメリカに協力してきましたが、トランプ大統領はトルコの軍事作戦を黙認する姿勢で、激しい戦闘にならないか懸念されています。

「NHKニュース」より

トルコは一体どこを目指しているんだろうね。そして、シリア問題はどうなってしまうのだろうか?

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エルドアン大統領の独裁

トルコは西側諸国よりも東側との親和性が高い

一概に独裁が悪いという風に断じるのは誤りであるとは思う。が、トルコ大統領のエルドアン氏はかなり事を急いでいる印象がある。

そして、意外に上手いこと行っているんじゃないのかな。それが良いか悪いかは別にして。

以前に簡単にまとめさせて頂いたが、アメリカとトルコとの関係はかなり微妙な雰囲気になっているようで。

表向きの話では、アメリカが売ろうとしていたF-35Aをトルコに売れないという事になっていた。

アカル国防相、「F-35戦闘機が駄目なら国産戦闘機を製造」

02.10.2019 ~ 11.10.2019

アカル大臣は、トルコの首都アンカラで独立実業家協会(MÜSİAD)が開催した「軍事レーダー・国境安全会議」で演説し、世界では大きな進展、革新、変革が、ものすごい速さで起きていると述べた。

その大部分がトルコにかかわるものだと述べたアカル大臣は、政治、軍事、技術、経済その他の分野で起きているあらゆる進展を注視していると話した。

「TRT」より

それどころか、トルコの国防大臣はこんな事を言い出す始末である。

ヒュルクシュって何よ、一体……。F-35の代わりになる戦闘機だって話か?

調べて見ると、コイツがその航空機らしい。でも、これ、戦闘機じゃ無くて練習機だよね。

……それにしても何処かで見たようなシルエットなんだが。

「防衛産業における国家プロジェクト」 第7回 | TRT 日本語
「ヴェヒジ・ヒュルクシュ」から航空機「ヒュルクシュ」へ

国産機……、はっ!これ、それ以上いけない!!!

この練習機はトルコにも輸出されていたよ。え?どこから?それは言えない。だって、話が逸れてしまうからね。

クルド侵攻とその目的

そんなことより先日のことだ。アメリカ軍は、シリア北部から撤収を開始した。

米部隊がシリア北部から撤収開始=トルコ軍、大規模作戦準備

2019年10月07日22時06分

トルコのエルドアン大統領は7日、シリア北部に駐留する米軍部隊が同地からの撤収を開始したと明らかにした。トランプ米大統領はツイッターで「ばかげた終わりなき戦いから抜け出す時だ」と述べた。トルコ軍は米部隊撤収を受け、現地のクルド人勢力排除を目指す大規模な作戦に踏み切る準備を進めており、情勢は一段と緊迫しそうだ。

「時事通信」より

トランプ氏は、大統領就任当初からシリアから手を引きたがっていて、過去には何度もそういう事があった。

トランプ氏、IS「敗北」宣言 米軍はシリア撤退開始

2018年12月20日

米政府は19日、シリアで過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を展開していた米軍が撤退を開始したと発表した。これに先立ちドナルド・トランプ米大統領は同日、ISを「撃破」したと述べていた。

米国防総省は、「作戦の次の段階」へ移行していると明かした。しかし詳細は明らかにしなかった。

IS掃討支援のためシリアには米兵約2000人が駐留し、同国北東部の大半を奪還した。ただし、IS戦闘員は現在も一部残っている。

「BBC」より

軍事作戦は金がかかる。特に駐留を続けている限りは、現地にいる兵士も疲弊するし、コストもかかるのである。トランプ氏にとって、「無駄な費用だと」そう考えていることは想像に難くない。いや、twitterで実際に言っちゃってるしね。

で、アメリカが撤退を始めたら、トルコが侵攻を開始したわけだ。

エルドアン大統領「テロリストの脅威 排除]

トルコのエルドアン大統領は日本時間の午後10時10分すぎ、自身のツイッターで、「トルコ軍は、シリア北部で、シリア人の部隊とともにクルド人勢力と過激派組織IS=イスラミックステートのテロリストに対し、作戦を始めた。われわれの目的は、トルコ南部の国境でテロの回廊が作られることを防ぎ、地域に平和をもたらすことだ。われわれの国へのテロリストの脅威を排除する」と投稿しました。

「NHKニュース」より

シリアと国境を隔てて国土を維持するトルコにとって、国内に跋扈するテロ組織に手を焼いているのはご存じの方も多いと思う。

「クルディスタン」で調べて頂ければ、色々と出てくると思うけれども、トルコにとってセーヴル条約(1920年8月)が未だに国内政治に影響を与えているのである。いや、トルコ革命(1918年)の方が影響は大きいのかな。あるいは、ローザンヌ条約(1923年)が起点となったというのが正しいのか。ともあれ、「歴史」や「民族」が現在の事態に大きな影響を与えていることは間違い無い。

トルコ大統領、クルド独立めぐり「民族紛争」勃発の恐れを警告

2017年9月26日 22:51 発信地:アンカラ/トルコ

イラク北部のクルド自治政府が独立の是非を問う住民投票を実施したことを受けて、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は26日、そのような動きは周辺地域に「民族紛争」を引き起こしかねないと述べ、クルドの指導者らに対して独立を推し進めないよう警告した。

「AFP」より

過去にもこんな話があったが、エルドアン氏にとっての「国内問題」というのは、国境を跨いで存在しているクルド人達によって引っかき回されている状況なのである。

ただ、シリアからするとトルコの行動はクルド人達を蹂躙する行動であると同時に、自国の国土を踏み荒らされる行為でもある。だからこそ、複雑な心境となるのだろうけれども、この辺りはお互いに手を握っているんじゃ内かな。シリアも反政府勢力としてクルド人達に手を焼いているのだから。

アングル:米軍撤退、トルコ軍侵攻 シリア情勢はどう変わるのか

2019年10月8日 / 14:15

米ホワイトハウスは6日、トルコがシリア北部で「安全地帯」を設置する軍事作戦を行う見通しであると表明した。トルコの狙いは、シリア国内でイスラム国(IS)勢力と戦ってきたクルド人勢力を排除し、トルコの勢力圏拡大を図ることだ。今回の侵攻で、シリア内戦の構図は大きく変わる。

予想される今後の展開をまとめた。

◎トルコの主な目的

トルコが、シリア北部で軍事作戦を展開する主な目的は2つある。1つ目は、トルコが安全保障上の脅威と見なすクルド人民兵組織「人民防衛部隊」(YPG)について、トルコ国境から引き離すことだ。

2つ目は、シリア側に「安全地帯」を創設し、トルコが対応している200万人のシリア難民をこの安全地帯に移住させることだ。

「ロイター」より

ロイターで紹介されているトルコの2つの目的、これを理解しないと、トルコ対シリアではなくトルコ対クルドの構図になっていることに繋がっていかないだろう。

近代化のためにイスラム教と距離を置くトルコ

過去の記事でもコメントを頂いたが、かつてトルコがケマル・アタテュルクによって独立戦争を戦い、トルコ共和国が建国された。

この時、クルド人達の「国」というのは存在できる可能性があったのだが、ケマル・アタテュルクによってその芽は摘まれた。クルド人達にとってはそれは許せないこととして、今でも根に持っているのだろうが、トルコにとってはイスラム圏の近代化を国を挙げて実現するという目的に邁進した時期だ。

ケマルは、カリフ制、つまりイスラム教指導者を立てて、その地域を支配するというシステムなのだが、これを廃止したのである。その当時、崩壊しつつあるカリフ制だったが、近代化の足枷になると判断したのだろう。

結局、イスラム圏の宗教の影響をトルコから追い出そうと言うのがケマルの考えだったが、それはトルコをケマル独裁体制で強力に近代化するのには邪魔だったという側面があるものの、国民の生活をより近代化させようという考えにとっては仕方のない選択だったとも言える。

こうした方針が、他のイスラム圏の国々から反感を買う切っ掛けとなったことは想像に難くないが、トルコの近代化にとってこのケマルの独裁が必要だったという評価は今も根強い。そして、ケマルの近代化方針を歓迎したのが西側諸国で、その流れでトルコは西側の陣営に編入されるような感じになった。その事も、イスラム圏の国々にとってはあまり面白くない事だったのだろう。

現大統領のエルドアン氏も、ケマル路線を吹聴していることもあって、随分とアメリカに近づいていたハズだったのだが……、以前の記事にも書いたように独裁政治は寧ろ共産圏との親和性が高い。だから、いつの間にかロシアとの距離が近くなってしまっているというのが、トルコの現状である。

つまり、ケマルが目指した対イスラム路線(カリフ制廃止)と、クルド人達掲げる民族主義を薄める方針を、エルドアン氏も志向しているということで、何が言いたいかというと、トルコとクルド人達の溝は深い、ということである。

複雑怪奇なシリア情勢

シリアとしても静観は出来ない

一方のシリアだが、まあ、現状の軍事行動についてトルコに対する文句は言っておかないとね。

シリア外務省 強く非難

トルコの軍事作戦に先立ち、シリア国営通信は9日、外務省の話として「シリアの主権と領土の保全のためあらゆる手でトルコに立ち向かう」と伝え、トルコを強く非難しました。

そのうえで、「トルコのエルドアン政権が軍事作戦に乗り出すならば和平プロセスでのトルコの立場は失われ、全体の政治プロセスにも大きな支障となる」としてシリア内戦の終結に向けてトルコが、ロシアなどと進めている和平プロセスにも影響が出ると警告しました。

「NHKニュース」より

そりゃ、国土を他国の戦車が走り回り、建物が燃えてしまうのである。怒りはあって当然だし、その様に表明することは大切だ。

トルコ軍、シリア北部の町を包囲 数十万人が避難の可能性も

2019/10/11

シリアのクルド人民兵組織に対し軍事攻撃を行っているトルコ軍は10日、シリア北部の国境の町、ラアス・アルアインとタル・アブヤドを包囲した。この地域からの避難者は数十万人に上る可能性があると、救援団体は懸念している。

軍事攻撃をめぐり、国際社会からはトルコへ対する批判が高まっている。

大きな懸念の1つは、クルド人部隊が支配するこの地域で拘束されている、過激派勢力「イスラム国」(IS)の戦闘員だった疑いのある数千人の捕虜が、トルコの攻撃に乗じて逃げ出す可能性があることだ。捕虜の中には多くの外国人が含まれる。

「BBC」より

形だけでも反対を表明することは必要だろう。

ただ、国際的にはシリアも批判を受けるような状態にあるので、トルコに批判的な論調がでつつもシリアを擁護するような報道にはならない。

シリアに対する報道とアメリカのスタンス

そもそも、アメリカも先日この様な判断をしていた。

「アサド政権がシリアで化学兵器使用」 米が断定

ニューヨーク=渡辺丘 2019年9月27日09時48分

ポンペオ米国務長官は26日の記者会見で、内戦が続くシリアで今年5月、アサド政権が化学兵器の塩素ガスを使ったと発表した。「アサド政権は戦争犯罪や人権への犯罪を含む無数の残虐行為に対する責任がある」と非難した。

「朝日新聞」より

シリアでの化学兵器使用なんて今さら過ぎてビックリするのだが、こんな報道があって、そしてアメリカ軍の撤退である。

トランプ政権は2017年4月と18年4月、アサド政権の化学兵器使用を理由にシリアを攻撃した。ポンペオ氏は今回、対抗措置について具体的に言及しなかった。

「朝日新聞」より

通常であれば、この様な報道をした後で、人道に対する罪だとか色々理由を付けてシリアに対して何らかの経済制裁とか対抗措置を表明するのがいつもの流れだ。

だが、今回はしなかった。

そして、トルコがシリアに侵攻した。

【シリア】 アサド政権、任意の逮捕を続ける

03.10.2019 ~ 10.10.2019

シリア人権ネットワークは、アサド政権とイランが支援する外国人テロリスト集団から成る政権軍が先月子ども4人、女性1人を含む合計197人の身柄を拘束したことを公表した。シリアの反体制派筋によると、アサド政権の刑務所には少なくとも50万人が身柄を拘束されている。

「TRT」より

【シリア】 アサド体制軍が民間人を攻撃 子どもが死亡

06.10.2019 ~ 11.10.2019

シリアのアサド体制軍が、10月6日の朝からずっと、イドリブ地域のケフレンビル地区、シェイフ・ムスタファ村、ケフェル・アヴィド村、ラジキエ(ラタキア)地域北西部の山岳地域にあるベクセリエ村とベドリエ村を地対地武器で攻撃している。

イドリブ地域の民間防衛隊筋から得られた情報によると、朝、ラジキエ(ラタキア)地域のベドリエ村への攻撃で子どもが1人死亡した。

「TRT」より

で、トルコ側からこんな報道が出ているから、今回のアメリカ軍撤退とトルコのシリア侵攻は関連があるんじゃ無いかという風に見るのが普通だろう。

シリア北東部から撤退表明のトランプ氏、トルコをけん制 経済を「破壊する」と

2019年10月8日

シリア北東部から米軍を撤退させるといきなり表明したドナルド・トランプ米大統領は7日、それによってトルコが「行き過ぎた」行動をとるようなことがあれば、トルコ経済を「破壊する」とツイートした。

トランプ大統領は6日、トルコによる軍事作戦に関与しない方針だと発表。これに対し、トルコがクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」への攻撃を開始する道を切り開くことになりかねないなどと、身内の与党・共和党内からも批判が殺到した。

「BBC」より

アメリカ側は一応、今回のトルコのシリア侵攻は許されない行為だというようなスタンスを見せてはいるんだけどね。

アメリカとYPG

クルド人民防衛隊(YPG)はクルド民族統一党(PYD)の武装部門である。PYDはシリアで活動するクルド人の政党で、アサド政権との裏取引によってシリア北部の3地方に実質的な統治が認められている。

で、このPYDなりYPGはシリア内戦においてテロ組織ISから距離を置いていることもあって、アメリカ軍の支援をうけてテロ組織ISに対して勝利を収めるに至る。

なお、余談ではあるが日本の公安警察庁はPYDを国際テロ組織に分類しているために、日本としてはYPGを支援することにはかなり消極的であるようだ。

で、アメリカ軍は一時期シリアに出兵し、2018年12月に撤退を表明していることから、シリア北部におけるYPGのの勢力は拡大していると見られ、トルコが出兵したのはここを叩く目的だという話になってくると、シリア政府と協力して勢力を伸ばしたYPGとしては、「アメリカに裏切られた」という発想にはなるのだろう。

トルコ軍、トランプが見捨てたクルド人勢力に地上攻撃を開始 駐留米軍は危機、IS捕虜は逃亡の可能性も

2019年10月10日(木)19時30分

トルコは10月9日、シリア北東部への軍事作戦を開始した。ターゲットは、これまで米軍が支援してきたクルド人勢力。この地域に駐留し、クルド人を支援してきた米軍が巻き添えをくう危険性も高まっている。シリア駐留米軍にはIS (イスラム国)掃討作戦を打ち切るよう命令が下っており、再び混乱が拡大しかねないことが本誌の取材で明らかになった。

「Newsweek」より

ただ、アメリカの裏切り的な側面はあるのだろうけれど、アメリカとしてもシリア政府と握っているYPGとの関係を続ける事には批判もあって、テロ組織ISとの戦いに一定の目処が付いた段階で手を引きたいと考えたアメリカの判断は分からないではない。

この他、シリア民主軍(SDF)だとか、色々な勢力にアメリカ側からの支援がなされていて、その事がアメリカとトルコの間の関係を悪化させる原因にもなっている。そして、アメリカはそちら方面からもさっさと手を引きたいという事なんだろう。

シリアは地政学的に他国の侵略を受けやすい

そもそもシリアという国がどんな国か?ということは、あまり話題に上らない。

しかし、シリアは比較的肥沃な大地に恵まれて古くから文明の栄えた地である。しかし、古くはバビロニアに滅ぼされたり、マケドニアの征服を受けたり、ローマの支配を受けたりとあちらこちらから支配を受ける地域でもあった。

そのうちにモンゴル帝国に征服されたり、エジプトのマムルーク朝の支配を受けたり、オスマン帝国の支配を受けたりと、名だたる古代帝国の侵略を受け、フランス統治時代(1920年~1946年)を迎えるに至る。

シリアが独立してシリア共和国として誕生したのが1946年のことで、その後も争いが絶えず、何度かクーデターによって政権が代わりハーフィズ・アル=アサド政権が誕生(1971年)に至る。過去から他国に蹂躙され続けた地において、軍事政権が独裁的に振る舞うことは、それほど不思議な事では無い。

それ故に、ロシアや支那との親和性が高い事も、強ち責められまい。

そして、共産圏に良くありがちな虐殺もまた、シリアでは行われた過去がある。

ハマー虐殺(1982年2月)と呼ばれる焦土作戦で、シリア軍がハマーの街を蹂躙した事件である。

シリア政府によるムスリム同胞団の壊滅作戦だといわれる。ただ、これより前にイスラム主義者勢力によるバース党へのジハードが宣言されており、暴徒化したイスラム主義者達が反政府勢力としてハマーの街を占拠している。これが切っ掛けとなって、ハマー虐殺は実行されたのである。

民族主義的な世界観の世界にとっては他民族を圧殺するというのは、頻繁に起きる出来事なのである。

そして、現シリア政権を指揮するバッシャール・アル=アサド政権は、父であるハーフィズ・アル=アサドからその権力を譲り受けた息子バッシャール・アル=アサドによる独裁政治ではあるのだが、前政権よりも寧ろ独裁色は薄められ、どちらかというと集団指導体制の色合いが濃くなっている。

バッシャール・アル=アサド自身は、大統領就任当初は民主化を含む政治改革を訴え、腐敗の撲滅に尽力したこともあった。ただし、西側諸国が仕掛けたと言われている「アラブの春」の流れを汲む、シリア国内でのダマスカスの春以降は、その態度を硬化させる。

そして、政治的にロシア、支那、北朝鮮といった国々との付き合いを深めて、兵器などを入手する状況にあるために、西側諸国から悪し様に言われるにいたるわけだが……。シリア内戦のトリガーを引いた「アラブの春」がそもそも西側諸国の演出した出来事だったという疑いがある以上、一方的にシリアを悪者にするのはどうかと思う。

シリア国内では、シリア政府と、一枚岩ではないシリア反政府勢力による内戦状態が続き、西側諸国の武器支援・軍事支援などで引っかき回されている状況だけに、他国からの干渉で事態が解決する、なんて展開になる可能性は低かろうと思う。

今後の展開

難民を送り込むと脅すトルコ

そんな訳で、横から外国が口出ししたところで何かが解決する話でも無さそうだが、当事者達も「迷惑だから口出しするな」というスタンスだ。

「占領と呼ぶなら難民送り込む」、トルコ大統領がEUに警告 シリア攻撃

10/11(金) 11:00配信

(CNN) トルコのエルドアン大統領は10日、首都アンカラで演説し、欧州連合(EU)がシリア北東部での軍事攻撃を「占領」と呼ぶなら、数百万人の難民を送り込むと警告した。

エルドアン氏は演説でEUに「正気に戻れ」と呼び掛け、「もう一度言う。目下の作戦を占領と位置付けようとするなら、我々の仕事は簡単になる。ドアを開けて難民360万人をあなた方のもとに送る」と述べた。

「CNN」より

この脅しもどうかとは思うのだが、そもそもトルコの狙いはシリア難民をシリアに送り返すことと、抵抗勢力であるクルド人部隊の殲滅である。

シリア北部の拠点を潰せば、トルコとしても国内の状況改善に結びつける事ができる可能性はある。

それが「人道的な行為」だとは口が裂けても言えないが、シリア内戦による難民の発生がトルコの国内情勢を複雑化するような事に繋がっている可能性も否定できない。

戦線は拡大する

今のところ、シリア政府軍が動きを見せていないようだが、それはトルコが攻撃しているのが反政府勢力に近い筋の勢力だと言うところも関係しているのだろう。

シリア北部で7万人が避難 クルド人勢力、トルコに反撃

2019年10月11日 12:17

トルコがシリア北部のクルド人勢力に対する越境軍事作戦を開始したことを受け、空爆や砲撃から避難を余儀なくされた民間人は、9日の進攻開始から1日足らずで推計7万人に上っている。クルド人民兵部隊は10日もトルコ軍を食い止めようと反撃を続け、一帯では人道危機の恐れが高まっている。

~~略~~

 トルコの進攻を非難する声は国際社会でも大きく、国連安全保障理事会(UN Security Council)は緊急会合で対応を協議。仏、独、英、ベルギー、ポーランドの欧州理事国5か国は、トルコにただちに対クルド攻撃を中止するよう求めた。

 シリア北部の一帯では10日、自宅を逃れた民間人らが車や徒歩で家財を運びながら避難する姿が見られた。国連人道問題調整事務所(OCHA)の10日の発表によると、トルコの進攻開始からこれまでに避難を余儀なくされた人は、推計7万人に上っている。

「AFP」より

国連が何かしょうもない事を宣っているようだが、力のない国連が何か騒いだところで意味はあるまい。結局、国連が動くためにはアメリカ軍の兵力をあてにするより他に無いのだから。

そして、EUも動く事はあるまい。表向きの騒ぎはともかくとして、トルコの方針は難民問題をある程度解消する可能性があるからだ。

そうだとすると、シリア北部のクルド人部隊が壊滅する辺りまではトルコ軍の動きは収まらないだろう。その後でシリアが動くか、ロシアが動くか、というところだが、ロシアにとっても今回の事態は悪い話では無い。

焦点:トルコのシリア侵攻、ロシアの中東戦略に希望とリスク

2019年10月11日 / 14:22

トルコが9日、国境を越えてシリアへの軍事作戦を開始した。中東地域への影響力拡大をねらうロシアにとって、米軍引き揚げの隙を突く貴重なチャンスと言える。だが、プーチン大統領に近い関係者からは、トルコの軍事行動が長期化するほど、ロシア外交のリスクは増大するとの警告も聞こえてくる。

複数の関係者によると、プーチン氏は、トルコのエルドアン大統領からシリアのクルド人武装勢力を掃討すると事前に知らされた。その電話会談で、プーチン氏は期間と規模の両面で掃討作戦を限定的なものにとどめるよう強く希望したという。

「この対立は解消が早ければ早いほど、誰にとっても有益だ。トルコ側は、シリア政府軍と地上でぶつからないよう全力を挙げてほしい。ロシア兵との衝突はなおさらやめてもらいたい」と親プーチン派のロシアの有力上院議員、アンドレイ・クリモフ氏は言う。

「ロイター」より

長期化せずにトルコとシリアとが手を結ぶことが出来れば、ロシアとしては勢力拡大という意味でも、今回の騒ぎによって得られるものは大きいはずだ。

ロシアがお目こぼししてくれる範囲でならば、トルコはこの状況を加速させるだろう。

コメント

  1. マスメディア反乱軍 より:

    歴史・地政学・大国の目論見絡み...、いつもながら複雑すぎて僕にはハードルが高く簡単にコメントできない話題です。

    ひとつだけ心配しているのは、狡猾なロシアがあっちに付いたりこっちに付いたりしている不思議さというか、漁夫の利を渡してはならないと思うくらいですね。
    アサド政権を支援しながらトルコに核心ミサイルを売り、そして今度はクルド勢力まで取り込むのなら、もう何がなんやら...。

    対してアメリカはクルド人を見捨ててシリア撤退を始めた直後なのに、サウジアラビアには空軍を含む2000人規模を増派するとか(THAAD持ち込みの話もあります)、どうも右往左往させられている印象です。
    中東紛争のバックにはイスラエルがいるから、無理に忖度してるんじゃないかと穿った見方もしています。

    • 木霊 より:

      いやいや、僕自身も記事を書いていて、上手く説明出来たかどうか。
      調べながら、「ああ、こんな話もあったんだ」と感じることもありまして、改めて考えさせられました。

      ロシアが高笑いできるシチュエーションにならない様にしたいところですが、どうなんでしょうか。
      今の状況だと、「漁夫の利を得た」というような表現をしているメディアもありますが。

      • マスメディア反乱軍 より:

        >ロシアが高笑いできるシチュエーションにならない様にしたいところですが、どうなんでしょうか。

        不思議なのはロシアも財政は楽じゃないはずなのに、中東はもちろん世界中に関与してきますよね。
        打ち出の小づちでも持ってんでしょうか?

        僕が良くも悪くも世界最強の指導者と思うプーチン氏はしぶとく寿命長そうだし...、困ったもんです。