能登半島沖で水産庁の船に北朝鮮の軍属漁船が体当たりする事件発生

北朝鮮

なお、北朝鮮の自称漁船に乗っていた乗組員(兵士)は救助され、全員帰国した模様。

北漁船、水産庁船と衝突 能登半島沖 EEZ内、20人海へ

2019年10月7日 夕刊

 水産庁は七日、午前九時十分ごろに能登半島の北西約三百五十キロの海域で、北朝鮮漁船と同庁の漁業取締船「おおくに」が衝突したと発表した。漁船の乗組員約二十人が海に投げ出され、救助に当たっているという。政府は首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置した。

「東京新聞」より

報道では「北朝鮮が哀れ」というような論調に誘導したいようだが、コレはそういう話では無いのだ。

スポンサーリンク

取締りに苦慮する水産庁と海上保安庁

漁業取締船「おおくに」

まず、水産庁が密漁の取締りをやっている、という話から説明したい。

漁業取締船「おおくに」

今回衝突された船は、漁業取締船「おおくに」1300tで、現在は同海域で違法操業などの取締りを行っている。

 大和堆はイカやカニなどが豊富な漁場。北朝鮮の漁船が日本のEEZ内で違法操業を繰り返しており、水産庁と海保が連携して警戒・監視活動を行っている。

「時事通信」より

ところでこの「おおくに」だが、実は水産庁が保有している船では無く、民間から借り上げた船舶であり、乗組員20人のうち水産庁の職員は1人だけという状況だったことがニュースで伝えられている。

水産庁では漁業取締船44隻を運用しているが、このような民間の船は37隻で、漁業取締船のうち水産庁所属船舶はたったの7隻である。もちろん、職員の数も足りていない。

漁業取締りの活動:水産庁
漁業取締活動

ちなみに、この漁業取締船は50tの高速船から2000tの大型船までさまざまらしく、「特性を生かして取締り活動を行っている」と言えば聞こえは良いが、その実寄せ集め部隊である。

また、漁業取締りは現行犯逮捕で無ければならず、主要任務は「警戒・監視活動」である。つまり、逮捕に関しては水産庁管轄では無く、海上保安庁案件なのである。

 海上保安庁の航空機一機、ヘリ一機、巡視船艇三隻、水産庁の船四隻で周辺海域の捜索活動をしている。

 ◇ 

 日本政府高官は七日、水産庁の取締船と北朝鮮の船舶による能登半島沖での衝突について「人命優先で対応している」と語った。衝突の状況に関しては「詳細は分からない」と述べた。

「東京新聞」より

海上保安庁も出張っているようだが、状況としては乗組員の救助を終え、引き渡しした後、新潟港に入港した痕から海上保安庁の出番となった、という感じだな。

 日本の排他的経済水域(EEZ)内にある好漁場・大和堆周辺で、北朝鮮の漁船と衝突した水産庁の漁業取締船「おおくに」が8日午前、新潟市の新潟港に入港した。第9管区海上保安本部(新潟)は、船長や乗組員から事情を聴くなどして、衝突時の詳しい状況を調べる。

「福井新聞」より

状況がハッキリするのは、事情聴取が終わった後になるかもしれないが、現行犯逮捕が出来なかったという説明があった通り、「帰すしか無かった」のかもしれない。

衝突してきた船は大型船

ところで、Newsweekがこんな記事を出していた。

北朝鮮漁民は「100年前の船」で無謀な出漁……日本の漁師から同情の声も

2019年10月8日(火)14時15分

海上保安庁によると、7日午前9時10分頃、日本海の好漁場・大和堆の周辺海域で、水産庁の漁業取締船「おおくに」(約1300トン)と、北朝鮮の漁船が衝突した。現場は、石川県・能登半島から約360キロ北西の日本の排他的経済水域(EEZ)とみられる。

漁船は衝突から間もなく沈没。漁船の乗員約20人が海上に投げ出され、一部は救助されたもようだが、なお全員の安否が気にかかる。(編集部注:日本の海保は、北朝鮮の漁船乗組員約60人全員が救助され、別の北朝鮮船に乗り込んだと発表)

大和堆周辺では近年、北朝鮮漁船や中国漁船による違法操業が問題となっていた。その一方、遭難した北朝鮮船と見られる木造船や、北朝鮮の漁民と見られる遺体が相次いで日本の海岸に漂着した。

遭難の最大の原因は、「日本なら100年前のシロモノ」と言われる粗末な木造船による強引な出漁にあると見られている。サイズが小さすぎ、構造的にも沖合での漁業に向かない木造船は、大波に遭うと簡単に転覆する。海に放り出され命を落とした北朝鮮漁民の数は、漂着が多かった2017年の1年間だけで1000人を下らないと見られる。

「Newsweek」より

同情……だと?

あれは「漁民」ではなく「兵士」だぞ。

北朝鮮の人民は男性の殆どが従軍しているので、漁師とは言え北朝鮮人民軍に属している兵士であり、軍の許可なく操業が出来るとは思えない。

北朝鮮の工作船

そして、今回の事故を起こした船はエンジンを積んだ大型船であったことが確認されている。

60人程度の乗組員が乗船できる船であると推測されており、これまで日本に流れ着いている様な木造船とは異なる。寧ろ、エンジンを持たない木造船を引っ張ってくるタイプの船だと考えられる。

水産庁としては、この程度の大きさの船であれば、接舷して拿捕というのも視野に入れていたとは思われるが、残念ながら沈没してしまったので、違法操業していたという証拠を残すことは無かったと思われる。

「なぜ帰すのか」水産庁に批判相次ぐ 北朝鮮船舶衝突で自民部会

2019.10.8 10:44

自民党は8日午前、水産部会などの合同会議を党本部で開き、7日に能登半島(石川県)沖で水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船とみられる船舶が衝突した事案について協議した。出席議員からは船舶乗組員の身柄拘束や事情聴取を行わなかった水産庁の対応を批判する声が相次いだ。

「産経新聞」より

そして、先日は小銃で威嚇してきたこともあって、水産庁の船が接舷を躊躇した可能性は高い。

小銃威嚇、「領海」の主張も 北の大和堆違法操業

2019.10.7 18:38

水産庁の漁業取締船と衝突した北朝鮮漁船が沈没した日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)にある好漁場「大和堆(やまとたい)」では、平成28年秋ごろから北朝鮮漁船が大挙侵入して違法操業が深刻化し、海上保安庁と水産庁が取り締まりを強化して大和堆への入域阻止に取り組んできた。北朝鮮側が威嚇や抵抗を激化する恐れもあり政府は警戒している。

~~略~~

ただ今年8月、海保の巡視船が北朝鮮海軍の旗を掲げたボートの乗組員に小銃を向けられた。前日には、北朝鮮側が無線で日本側に「領海から即退去せよ」と発信。北朝鮮政府は威嚇に対する日本政府の厳重抗議を受け、「専属経済水域への不法侵犯を自衛的措置で追い払った」などと反論。日本側の主権行使に対抗する姿勢を明確にした可能性もある。

「産経新聞」より

一般人、漁民がまさか小銃を保有しているはずも無く、小銃を持っていた事は兵士であることの証拠なのだが、なかなか海上自衛隊を出して警備行動、と言うところまでは行かないレベルのようで。

EEZ内で他国の船が漁業を行うのは基本的には違法操業という事になるのだが、しかし、実は北朝鮮は国連海洋法条約に加盟しておらず、日本との漁業協定も結んでいない。

Chronological lists of ratifications of

そもそも北朝鮮とは国交も無いので、拿捕したとして、その取り扱いに非常に悩むことになるワケだ。下手をすれば、拿捕を逆手にとって自らの立場の正当性を主張してくる可能性もある。朝鮮民族だから、ね。

海上保安庁の方針

海上保安庁としてもこの手の違法操業の取締りを行いたいところではあるが、九州南西海域工作船事件(平成13年(2001年)12月22日)で、銃撃戦の末、不審船が自爆・沈没してしまい、世間の批判を浴びたことがある。

当時の、お花畑世論がその様に誘導されたから、と言えばそれまでなのだが、朝日新聞が翌年1月6日の天声人語にて「明らかに風邪と思われる症状が多数出ていても風邪と断定できないように、沈没したのは『不審船』と断定はできない」などとふざけたことを宣った(引き上げは平成14年9月11日で、この後の調査で北朝鮮の工作船である事が判明している)ように、世間の風当たりは強かったようだ。

またこの時、支那に対しても1億5000万円もの「捜査協力金」なる金が支払われている。これは沈没地点が支那のEEZ内であったことが災いしているワケだが、北朝鮮の工作船が日本のEEZ内に入り込んできた挙げ句、銃撃戦の末、自爆を許してしまっている辺り、当時の装備の脆弱性が忍ばれる。

実際、その後、海上保安庁の装備は強化がなされている。

なお、この事件の際には海上自衛隊も出動待機命令が発令されていたが、銃撃戦が繰り広げられたにも関わらず、実力行使されなかった。

結局、北朝鮮船籍の船の拿捕はロクに行えていないのが実情なのである。

北朝鮮側は「自国水域」を主張

更に、北朝鮮側は強硬な姿勢を見せている模様。

北朝鮮、強硬姿勢へ「自国水域侵犯」主張か 漁船衝突 外貨不足背景に

2019年10月7日 20時43分(最終更新 10月8日 12時29分)

日本海の好漁場「大和(やまと)堆(たい)」で違法操業を繰り返していた北朝鮮の漁船と日本側の取り締まり船が衝突し、現場海域に緊張が走った。事後処理のなかで、北朝鮮側が一方的に、沈没した漁船への賠償や現場海域での権益を巡る議論を提起する事態も予想され、対話が途絶える日朝間の新たな火種となる可能性も出てきた。

「毎日新聞」より

簡単に「拿捕が出来ない」という状況を逆手にとって、この様な強硬な姿勢を採ることも予想されているらしいのだが、寧ろこの記事で毎日新聞が北朝鮮に御注進といった趣である。

どうやら北朝鮮の軍属の船が急に接近したために、おおくには衝突を避けられなかったのだが、狙ってぶつかってきたと考えるのが妥当だ。何故ならば、北朝鮮側は急旋回して近接して来たのに対し、日本側は左に舵を切って避けるのが通例となっている為、結果的に衝突した。でも、北朝鮮の船は日本側の船に比べると小型で取り回しが効くことを考えると、寧ろ意図的に舵を切ったのだと理解される。

逃げ切れないと判断して体当たりするという手法は、以前から知られているので、その予測はそれほど大きく外れてはいまい。今回はまさにそんなケースなのだろう。

今後の展開

北朝鮮がこれを切っ掛けに強硬な姿勢を示すことは想像に難くない。

しかし、おおくにが取締りの様子をビデオ撮影していれば、それを公開して行けば良いのだろうが、多分、海上保安庁の船でもないので、そうした装備は無さそうである。

そうだとすると、これで大騒ぎして更に態度を硬化させるなんて事もあるかもしれない。慎重な対応が求められるし、毅然とした態度で臨むべきだと思う。

そして、日本側は「次」に備える必要があるだろう。先ずは海上保安庁の船の増強という話になろうが……、人員の確保からして難しい事を考えると、なかなか対応は難しいのだろうね。

思い切って海上保安庁に予算を付け、給料を上げて人が集まるような形にでもしない限りは、事態に対応出来るようにはならないだろう。

コメント

  1. マスメディア反乱軍 より:

    60人余りが全員救出されたという事で、「おおくに」乗員の働きぶりは見事です。
    ご苦労様でした!!

    1人でも死亡者が出ていたら北朝鮮からどんな難癖付けられるか判ったもんじゃないんで、皆さん必死で救助活動に当たられたのでしょう。
    一人も拘束せずにすぐに開放したとか後出しで批判が出そうですが、究極に緊迫していたであろう現場としては「そんなの二の次、何より全員無事に救助し引き渡す」、これが精一杯の任務と僕は理解しますね。
    できれば安倍首相自ら(最低でも農林水産大臣)称賛し、ねぎらいの言葉をかけて欲しいもんです。

    >ところでこの「おおくに」だが、実は水産庁が保有している船では無く、民間から借り上げた船舶であり、乗組員20人のうち水産庁の職員は1人だけという状況だったことがニュースで伝えられている。
    >水産庁では漁業取締船44隻を運用しているが、このような民間の船は37隻で、漁業取締船のうち水産庁所属船舶はたったの7隻である。もちろん、職員の数も足りていない。

    武装して攻撃される可能性がある事案に、水産庁の装備や配員の事実に驚きましたが、これが現実って事を国民は危機感を持って知るべきですね。
    海保も手一杯ですし海自は法律に縛られ簡単には動けない...、そんな足元を見透かされて好き勝手されている現状を憂います。

    • 木霊 より:

      水産庁にはこの事件の責任をとらせるのはちょっと違うのでしょう。
      しかし、今後も起きうる話ですから、直ぐにでも対策が必要ですよね。

      • マスメディア反乱軍 より:

        木霊さん、おはようございます。

        >水産庁にはこの事件の責任をとらせるのはちょっと違うのでしょう。
        >しかし、今後も起きうる話ですから、直ぐにでも対策が必要ですよね。

        海保・水産庁・水上警察(そもそも港湾や河川担当)の権限や装備では、もう対処できない事がはっきりしています。
        僕は建造中のFFM護衛艦と併せて開発&配備予定の新哨戒艦(1000~1500tクラス)を増産し、日本海側・尖閣含む島嶼部に集中配備させる方法が有効じゃないかと考えています。

        30人前後の搭乗員で運用する対艦戦メインの省エネ艦との話ですから、水産庁の約50隻の半分30隻位を配備しても、人員は1000人未満で済みます。
        DD型護衛艦(はつゆき型・あさぎり型)が退役間近ですから、その内5隻程度の人員で何とか賄えます。

        ただ、海自の人員不足も深刻なんで精鋭乗員は最新艦に必要、ここは水産庁でも導入している民間人を半分くらい思い切って採用する必要があると考えます。
        アメリカはすでに重要な無人機オペレーターを軍民セットで運用していますし、北朝鮮の弾道ミサイル監視目的で対馬に展開中のミサイル追跡艦(ハワード・O・ローレンツェン)の乗員も軍民セットの様ですから、今やこの形態は軍事の世界では常識となりつつあります。

        退役した予備自衛官の積極登用はもちろんですが、最新のレーダー等警戒システムを担当するのは志を持った優秀な民間人を活用可能でしょう。

        残る最大のハードルは法改正と待遇改善だけ。(細かい懸案はあるでしょうけど除きます)
        要は海保の警備権(=警察権)を海自にも与え自衛権の範囲として行使を認め、新型哨戒艦をフルで活用する事ですね。
        日本の自衛権のネックである敵国軍にしか対応できない足枷を外し、漁船を含む国籍不明船や不審船に対しても防衛権の範囲と規定し、威嚇や臨検はもちろん逮捕権があれば「下手に侵入するとヤバイ!!」と、相手に自覚させる事が一番の抑止力になると思います。

        長年の海保・海自間のセクショナリズム対立なんてちっちゃな事に拘ってる場合じゃないのは、現場の海保職員が一番痛切に感じているんじゃないかな?
        幹部エリートの幼稚な傲慢・プライドなんて、政治主導発揮で抑え込んでしまえばいい。

  2. 二式大型七面鳥 より:

    こんにちは。

    >保安要員

    いやいや、蟹工船のごとくに船員が一斉蜂起して船を乗っ取って国外逃亡する恐れもありますから、政治将校よろしく保安要員というのは意味的にはアリかも知れません。
    そも、全ての船員が「漁業戦士」なのでしょうから、一朝事あらば船倉にしまっておいた小火器重火器を全員で持ち出して……
    あ。
    だから、拿捕される前にわざと母船を沈めたのかも……とか、今思ってしまいました。

    • 木霊 より:

      そ の 発 想 は 無 か っ た!!
      船に乗っている兵士達を監視する、そんな目的だとすればそれは「保安要員」なのかもしれません。

      しかし……、わざと沈没させたのは僕も疑っていますよ。
      沈没させないと、「都合の悪いモノ」が見つかりますからね。逃げられないと判断すればそうした判断もありでしょう。