訪日したイラン外相、安倍氏に「有志連合は不参加でお願い」と要請する

防衛政策

イランの外相が日本に来ていたというのもちょっと驚きだが、このタイミングで安倍氏も良く会ったな。

……逆に言えば、会談するだけの価値があると安倍氏は踏んでいると、そう理解すべきかも知れない。

イラン、有志連合不参加を要請 ザリフ外相、安倍首相との会談で

8/29(木) 12:07配信

【テヘラン共同】訪日したイランのザリフ外相が28日の安倍晋三首相との会談で、イラン沖・ホルムズ海峡での船舶保護を理由とした米主導の有志連合構想に反対する考えを伝えたことが29日、外交筋の話で分かった。日本の首脳にイラン指導部の意向を直接伝達することで、日本政府に有志連合に参加しないよう強く促した。

「共同通信」より

さて、何故日本にイランの外相が来たのか?という話なのだが、先ずは外務省のサイトを確認していこう。

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日、イラン外相会談

訪日の日程

これに先立って、イランの外相が日本の外相、河野太郎氏と電話会談を行っている。

日・イラン外相電話会談

令和元年7月3日

 本3日,午後6時から約35分間,河野太郎外務大臣は,モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ・イラン・イスラム共和国外務大臣(H.E. Dr. Mohammad Javad ZARIF, Minister of Foreign Affairs of the Islamic Republic of Iran)との間で日・イラン外相電話会談を行ったところ,概要は以下のとおりです。

1.河野大臣から,核合意を支持する我が国の立場を説明しつつ,今般イランが低濃縮ウランの貯蔵量が核合意の上限を超過したことについて懸念を伝達し,核合意の遵守を強く働きかけました。

2.これに対し,ザリーフ外務大臣から,核合意をめぐるイラン側の立場について説明がありました。

3.両外相は,中東情勢について率直な意見交換を行いました。

「外務省サイト」より

タイミング的にはタンカーが炎上した後なので、日本との関係をそれなりに重視した結果の電話会談だということなんだろう。

時間的には、イラン側はある程度捜査した上で、事実関係を整理する時間があったはずだ。その上で電話会談をし、そして8月末に直接会うという運びになったと予想される。

ザリーフ・イラン外務大臣の訪日 

1.本27日から28日まで,モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ・イラン・イスラム共和国外務大臣(H.E. Dr. Mohammad Javad Zarif, Minister of Foreign Affairs of the Islamic Republic of Iran)が訪日します。

2. ザリーフ外務大臣は,滞在中,河野太郎外務大臣と日・イラン外相会談を行う予定です。

「外務省サイト」より

そして、二日目には安倍氏と会談したと言う事を考えると、イラン外相の訪日は日本にとっても大きな意味があったと考えて良いだろう。

安倍首相とイラン外相、9月の首脳会談調整で一致 緊張緩和へ努力

2019.8.28 16:13

 安倍晋三首相は28日、来日中のイランのザリフ外相と横浜市内で会談し、中東地域の緊張緩和に向け、緊密に連絡を取り合うことを確認した。米ニューヨークで開かれる国連総会に合わせ、9月下旬に首相とロウハニ大統領との首脳会談を調整することでも一致した。

「産経新聞」より

その結果、9月下旬には大統領のロウハニ氏と首脳会談を行う運びになっているようだ。

トランプ氏も首脳会談要求

さて、もう1つニュースを紹介しておこう。

トランプ氏の要求のことである。

イランは核とミサイル開発放棄を 米、首脳会談へ決断要求

2019年8月29日 朝刊

ポンペオ米国務長官は二十七日、米テレビのインタビューで、核とミサイルの開発放棄などを条件にトランプ大統領との首脳会談に応じるようイラン側に求めた。先進七カ国首脳会議(G7サミット)でフランスのマクロン大統領が提案した初の米イラン首脳会談実現に向けてあらためて応えた形だが、イランはミサイル開発を放棄する考えはなく、見通しは厳しい。

 ポンペオ氏は「トランプ大統領は(ロウハニ大統領と)会うと言った。イランは核兵器とミサイルを開発しテロを続けるつもりかどうか、決断しなければならない」と強調。「われわれは取引を交渉する準備はできている。イランは普通の国になれる」と会談実現に期待を示した。

「東京新聞」より

正確にはアメリカ国務長官のポンペイオ氏が会談を要請したのだが、トランプ氏の意向があったと考えて間違いない。つまり、アメリカとしても事態打開を模索しているというのが現状の絵なのだが、イラン側はこれに対して「制裁解除無しでの会談はしない」という姿勢だったようだね。

つまり、日本とイランの間の首脳会談というのは、アメリカがイランと交渉する上でもかなり重要なポストをになうことが出来る可能性を秘めたとも言える。

ただ、直接的にはホルムズ海峡の件と、有志連合への不参加要請という事になっている。寧ろ日本側からイランに対して有志連合に一緒に参加しようぜ!とか言えば面白い展開が期待できるのだが、そういうワケにもいかないんだろうね。

ともあれ、中東情勢に関しても日本を軸に話が展開する目が出てきたという事を考えると、外交的にも期待しておきたい。

有志連合への参加の可否

日本が有志連合に参加する日

今回の有志連合に関して、アメリカはどのように説明しているのだろうか?実は、今回の有志連合は軍事的なオプションというよりは、協力してホルムズ海峡の航行の安全確保をしましょう、という体になっている。

日本も参加要請されている「有志連合」から、ドイツがいち抜けた

2019年8月8日(木)11時20分

ホルムズ海峡の航行の安全確保に向けてアメリカが呼び掛けていた有志連合に、ドイツは7月31日、正式に「参加しない」と表明した。一方で、アメリカと対立するイランは、緊張緩和のために宿敵サウジアラビアと対話するとまで言いだしている。

ドイツのマース外相は、「軍事的な解決などない」との考えを示し、有志連合への不参加を明言。政府報道官は「外交の道を探ることが重要だ」と述べた。

「Newsweek」より

ドイツがどういうつもりかは分からないが、ここの所のドイツのヘタレぶりは目を覆いたくなるような状態で、多分だがドイツの現状を考えると、ホルムズ海峡に軍隊を送りたくても、「物理的に無理」というような状況なのだろう。そこまで軍事費を削っているのだ。

で、ドイツの話はさておいて、イギリスやフランスも「えー、トランプに協力はちょっと……」という感じになっている。

つまり、トランプ氏としてはこのホルムズ海峡の話を実現する為には、どうあっても日本を引きずり込みたいのだ。そうなれば、他国も動くという計算はあるのだろう。

ホルムズ護衛「有志連合」呼び名変わる 軍事色薄く

2019/8/28 11:30 (2019/8/28 17:42更新)

中東・ホルムズ海峡を護衛する枠組みに軍事色の弱い表現が使われるようになってきた。米国は当初、軍事行動を想起させる「有志連合」として各国に参加を呼びかけていた。賛同が広がらず「海洋安全保障イニシアチブ」に切り替えた。日本政府もこの呼び名を使い、自国船の安全を確保するための自衛隊派遣を検討している。

「日本経済新聞」より

実際に名称変更して軍事的な行動をするという印象を薄める工作もやっている様だ。

だが、日本としてもホルムズ海峡への依存度は極めて高い。だから自衛隊を送らないという選択肢は、基本的にあり得ないのである。有志連合に加わるか否か、という話はさておき、送らねば守れないのである。

トランプ氏、ロシアをG7に復帰させることを画策

そんな中、先日行われたG7の会合で、トランプ氏がロシアを会合に復帰させてG8にしようや、というような提案をしたようだ。

トランプ氏が「G7にロシア復帰」を主張、他国とは溝も

2019.08.28 Wed posted at 17:46 JST

フランス・ビアリッツ(CNN) フランス・ビアリッツで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、米国のトランプ大統領がサミットへロシアを復帰させたい意向を表明したものの、一部の首脳からは明確な異議が出されていたことがわかった。外交当局者らが明らかにした。

トランプ氏は24日に開かれた夕食会で、ロシアのサミットへの復帰に言及した。夕食会ではイラン情勢やアマゾンの熱帯雨林での火災なども話し合われた。そうしたなか、トランプ氏は、その規模や世界情勢での役割を考慮するなかで、なぜロシアがサミットに参加すべきでないか尋ねた。

「CNN」より

クリミア半島併合という愚を犯したロシアを、国際的な枠組みの中に復帰させようという話をなかなかしにくいのが今のG7なのだが、しかし、サミットにロシアを参加させないと話が進まない事が多い。それこそ有名無実になっている状態のG7を維持する意味は無いとすら言われている。

そういう意味でもトランプ氏の言うサミットへのロシア復帰というのは、行われるべきだと僕は思うのだが、しかし一方でクリミア半島併合の落とし前を何処かで付けるべきだと言うのも事実。

ロシアが飲める条件で何処かに落とし所を見つけていくという方向に舵が切られたと見て良いと思う。

イランはアメリカとは徹底抗戦の構え

経済的にヤバくなっているイランだが、大統領のロウハニ氏は国民に結束を呼びかけたらしい。

イラン大統領、米の「経済戦争」克服へ結束呼びかけ

2019年8月29日 / 06:52

イランのロウハニ大統領は28日、国民に向けて行った演説で、米国が仕掛けた経済戦争を乗り切るため結束するよう呼びかけた。一方、イラン政府はトランプ米大統領への不信感を示しつつも、外交を通じた対立解消に努める考えを示した。

「ロイター」より

ただ、イランとしてもアメリカとドンパチする積もりは無いようだ。経済状況が良ければ「結束」など呼びかけなくとも政府に付いてくるのだが、わざわざ結束を呼びかけないと不味い状況になってきたとも理解出来る。

対イラン経済制裁はかなり効果が出ていると言えるワケだね。

アメリカがイランとどういう関係を構築したいかよく分からないのだが、アメリカも軍事的衝突を望んでいないと言われている。

しかし、イランとイスラエルが仲が悪く、アメリカはイスラエルの肩を持つという構図がこの問題を引き起こす切っ掛けの一端になっている。

以前もコメントで、イラン・カタール・イエメン(フーシ派)・トルコ vs サウジアラビア・UAE・アメリカという構図だと教えて貰ったけれども、陣営的にはサウジアラビアサイドにイスラエルがいて、様々な争いがあるようで。

イスラエル、3カ国で相次ぎ攻撃、イランとの“影の戦争”激化

2019年8月27日

イランの同盟国であるイラク、シリア、レバノンの3カ国がこの数日、相次いで無人機やミサイルによる攻撃を受けた。イスラエルがイランとの“影の戦争”を激化させていると見られている。レバノンのシーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師が報復を誓うなど中東情勢は新たな緊張に包まれている。

「WEDGE Infinity」より

イスラエル回りの争いは更に激化する方向で、イランが核を持つ事で更に話がややこしくなる可能性は否定できない。

とはいえ、イスラエルが核を持っているからこそ、周辺諸国はイスラエルがデカイ顔をしているのを黙って見ていなければならない状況(黙って見ていないけどね)を作り上げられてしまっていることを考えると、イランの反発も無理は無い気はする。

下手に首を突っ込むと身動きがとれなくなる可能性があるだけに、日本も外交交渉は慎重に行わねばならないだろう。

コメント

  1. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_3 より:

    裏では「フッ化水素」の件を話しているかもしれませんね…
    ぐらいの問題提起はしておきましょうか。

    この件、これ以上のマスコミ報道を見かけませんが、このあと出てくるのでしょうか?

    • 木霊 より:

      フッ化水素の話ですか……。
      ちょっとやぶ蛇な感じもしますが、多分、情報収集はやっているのでしょう。

      マスコミは、ホルムズ海峡への自衛隊派遣は「避けられない」という論調にしたくないのでしょうかね。

  2. マスメディア反乱軍 より:

    >時間的には、イラン側はある程度捜査した上で、事実関係を整理する時間があったはずだ。その上で電話会談をし、そして8月末に直接会うという運びになったと予想される。
    >そして、二日目には安倍氏と会談したと言う事を考えると、イラン外相の訪日は日本にとっても大きな意味があったと考えて良いだろう。

    時間の経過・G7の後などタイミング的に考えると、木霊さんの洞察はほぼ合っていると同意します。

    >正確にはアメリカ国務長官のポンペイオ氏が会談を要請したのだが、トランプ氏の意向があったと考えて間違いない。つまり、アメリカとしても事態打開を模索しているというのが現状の絵なのだが、イラン側はこれに対して「制裁解除無しでの会談はしない」という姿勢だったようだね。

    問題はアメリカも緊張緩和のタイミングと狙っているのでしょうが、イランは原則論を盾に意固地な態度で突っぱねているって事でしょう。

    >アメリカがイランとどういう関係を構築したいかよく分からないのだが、アメリカも軍事的衝突を望んでいないと言われている。
    >しかし、イランとイスラエルが仲が悪く、アメリカはイスラエルの肩を持つという構図がこの問題を引き起こす切っ掛けの一端になっている。

    イスラエル...、この強硬な反イスラム主義国家に気を使わなければならないのが、アメリカ最大のジレンマなのかなァ~。
    日本を含む北東アジアでは歴史問題に介入しないとクールなんですが、中東に関しては介入したくなくとも未だに引きずり込まれてるのが現実と考えますから、完全にダブルスタンダードと思います。

    古来、蔑視と迫害を受けた流浪の民、そしてナチスによる民族浄化大虐殺という理不尽で不幸な歴史を持つ同情すべき民...なんですが、今や世界の喉骨に刺さった厄災の元と考えるのは行き過ぎでしょうか?
    領土的には小国なのに中東軍事バランスを崩す核開発とモサド等の裏世界での暗躍、そして反イスラム主義を絶対に曲げない意固地なイデオロギー...、支那共産党独裁と何ら変わりない嫌悪感を僕は拭えません。

    • 木霊 より:

      アメリカはイスラエルとの関係は容易に切り離せないでしょうから、仕方が無いですよね。
      イラン絡みのニュースはかなり厄介な事になっていますが、調べるのが大変なので、あまり追えていないんですよ。

      ユダヤ人は金融マフィアと言われるほど絶大な力を持っています(注:陰謀論です)から、恨みを買いやすい立ち位置にあったと、そう考えて差し支えないでしょう。
      ただし、唐突なユダヤ人差別が、かつてのドイツでわき起こった背景は、あまり光が当てられていないと思いますが、迫害されたのはユダヤ人だけではなかったという記録もありまして、この辺り、もっと光が当たっても良いのでは、と(アフリカ系ドイツ人が迫害された、という内容の映画が作られたようです)。
      それだけ、ユダヤ人の仕掛けたキャンペーンが上手くいったという事なのかも知れません。

      話が逸れてしまいましたが、イスラエルの問題はなかなかに深刻だと思います。
      そして、アメリカも無関係でいられないのが、中東問題をさらに複雑にしているのかなと、そう思います。