イタリア首相の辞任と、変わるヨーロッパの勢力図

欧州ニュース

イタリアの経済は正常化できるか

ポピュリズムは国を壊す

世界的にポピュリズム政党が台頭する傾向にあり、日本もその例に漏れないワケだが、ポピュリズムは大衆迎合するだけで割とご都合主義な主張をするところが多い。

「五つ星運動」に関しては、どうやら環境テロリストに与する向きがある様で、極度の二酸化炭素嫌い、原発嫌いという方向性に乗っかる、エネルギーの無いイタリアにとっては、危険な思想を持っている。まあ、欧州は国債送電網による多国間の電力取引が発達しているので、ここから「買えば良い」という発想もあるが、売るモノが無い状況で買うだけというのはかなり危険だ。そうした観点から考えると、なかなかこの政党が「モノを考えているな」という印象にならない。

一方の「同盟」であるが、こちらも右派ポピュリズム政治とかナショナリズムの傾向にあるという評価もある様だが、サルビーニ氏は2017年に元々「北部同盟」という名前だったが「北部」の看板を下ろし、「同盟」としたのと一緒に、国民政党に転向し郷土主義の一派を一掃したといわれている。

伊首相が辞任、「同盟」サルビーニ氏と決別-大統領が連立協議へ

2019年8月21日 2:09 JST 更新日時 2019年8月21日 11:29 JST

 イタリアのコンテ首相は20日夜、マッタレッラ大統領に辞表を提出し、ポピュリスト連立政権の一角を担う右派政党「同盟」のサルビーニ副首相とたもとを分かった。学者出身のコンテ氏が政治家を続けるかどうかは大統領の今後の判断に委ねられることになった。

 コンテ氏はこの日、反エスタブリッシュメント(既存勢力)政党「五つ星運動」と同盟の連立政権は終わったと表明していた。しかしマッタレッラ大統領が新たな連立を模索し、連立政権によりイタリアは安定を取り戻せると確信できた場合は、首相にとどまる可能性もある。

~~略~~

 サルビーニ副首相は今月8日、現在のポピュリスト連立政権を終わらせるべきだとの考えを示し、解散総選挙の実施を呼び掛けた。同氏は世論調査での強い支持を背景に、右派政権の樹立を目指している。

「Bloomberg」より

とはいえ、ポピュリスト連立政権を作っていりゃ世話無いよね。

イタリアはどこへ向かうか?

そして、それにも見切りを付けるという形になったわけで、ここからイタリアがどこに向かっていくか?というとEUから距離を置く可能性が高い。少なくともユーロからは離脱するだろうと思われる。正直、イタリアにとってはユーロを使い続けることに旨味が少ない。ドイツの一人勝ち、という様相を呈しているEUで、そのままこの枠組みを維持したいと思わない勢力は結構いるのだ。

政局不安でもイタリアの国債は買われた理由

8/22(木) 9:22

 イタリアのコンテ首相は20日、議会上院で演説し、辞意を表明した。連立政権をつくる極右「同盟」と左派「五つ星運動」の対立が激化し、同盟が内閣不信任案を提出したことで政権運営は困難と判断した(日経新聞)。

~~略~~

 しかし、今回のイタリアの政局不安を受けても、イタリアを含めた周辺国の国債も買われていた。これはリスク回避の動きというよりも、イタリアの政局不安によって、ECBが追加緩和を行うであろう可能性を強めたからとの見方ができるかもしれない。イタリアの総選挙を回避できるのではとの見方もあったようだ。

「yahoo!ニュース」より

この記事の内容はともかく、現象としてはイタリアの政局不安に陥っても株は買われたという事なのだ。そして、記事の分析では「感覚が麻痺している」という事になっている。しかし、別の分析としてイタリアの政局混乱が解消に向かうので、イタリア経済にプラスに働く可能性を考慮した可能性があるという風にみる事もできるわけだ。

少なくともイタリアにとってEUに留まることがプラスか、マイナスかを盲目的に信じるのでは無く冷静に判断することが出来る政権になれば、もうちょっと付き合いやすくなる可能性はあるだろう。

少なくともサルビーニ政権が誕生したときに、支那との距離は遠くなる可能性が高い。支那人がいつも悪いことをするという話では無いのだが、イタリアの文化を守る為にできる事を考えると、支那と距離を置く方がメリットが高いだろうと、僕はそう思う。

ロシアとの距離

ただまあ、イタリアがこういった立場に立ったときに、アメリカと近づき、ロシアから遠くなることは、イタリアの利益に繋がるかというと、なかなか難しい。

コンテ首相、TAPガスパイプラインの実現に意欲

2018年08月02日

イタリアのジュゼッペ・コンテ首相は7月30日、米国の首都ワシントンでトランプ大統領と会談。共同記者会見でイタリアのエネルギー政策に触れ、アゼルバイジャン産の天然ガスをトルコ、ギリシア、アルバニアなどを経由しイタリアに輸送するトランスアドリア・パイプライン(TAP)の実現に向け強い意欲を示した。

「JETRO」より

この話はコンテ氏が辞表を出したことで流れる可能性が高くなるかもしれない。

仏伊石油大手、ロシア産汚染原油の代金支払い中止

2019年5月21日 / 11:16

ロシア産原油に高濃度の有機塩素化合物が混入した問題で、フランスの石油大手トタル(TOTF.PA)とイタリアの同ENI(ENI.MI)がロシア企業に対する当該原油の購入代金の支払いを中止したことが、複数の商社筋の話で分かった。

「ロイター」より

こんな騒ぎもあったが、ロシアはイマイチ信用できないという印象をイタリアは持っているようだ。

ただ、サルビーニ氏自身はロシア疑惑が囁かれており、割と距離が近いのでは無いかという観測もある。そして、イタリアが東側に行ってしまうことはかなり不味いが、イタリアにしてみれば身近で手に入る安価なエネルギーは魅力的に映るだろうから、ね。

ともあれ、イタリアがどのような方向に舵を切るかによって、日本も対応を変えなければならない。

一般論として、その国のトップがゴリゴリの右派でも付き合いにくいが、コレまでのようなフラフラした左派よりはマシになる可能性はあるだろうというのが、僕の正直な感想かな。少なくとも、一部のメディアが主張する様な「今後誕生する政権は、右派の危険勢力」というのは、間違った分析だと、そう感じている。

そして、良くも悪くもサルビーニ氏が鍵を握っている可能性が高そうだな。イギリスのボリス・ジョンソン氏みたいな強烈な個性を持ったリーダーも出てきていて、そういう意味ではサルビーニ氏も悪くは無いと思う。言いたい事はハッキリ言うタイプみたいだしね。

今後も、注意深く見守っていきたいと思う。

コメント

  1. フォルクスワーゲンはドイツでしたよね?

    • おっと、失礼しました。
      確かにフォルクスワーゲンはドイツでした。

  2. イタリアといえばローマ=ローマ帝国の歴史に興味があるので、僕にとっては欧州でも一番思い入れの強い国なんです。

    その歴史の痕跡や欧州文明への影響の強大さは、ローマ街道が現在も欧州の主要路の基礎、欧州主要都市の多くがローマ帝国により未開の森林から出現した事実の様に、今も世界史上稀に見る帝国だったと考えています。
    属州の統治方法・多くの文化遺産・多彩な食文化、そして当時の公用語だったラテン語から英語・仏語・独語が派生して現在に至っています。
    そして、ルネサンスもこの地で開花しました。

    後年、横暴な異教徒(キリスト教徒・イスラム教徒)に破壊の限りを尽くされたとはいえ、数少なく残った現存する古跡・上下水道跡や美術品の完成度と美しさは僕を魅了し続けます。

    さて、記事の主題ですが本当に残念で懸念しています。
    サラリーマン時代にイタリアのメーカーと取引していたのですが、納期のいい加減さにウンザリを通り越し呆れてしまった事があります。
    時差は仕方ないけど担当者が昼休み中で2時間以上留守とか、バケーションで2週間不在で引き継ぎもないから判らないとか...、ごく平然とノタマウんですから。(苦笑)

    つまり、日本の経済競争力・効率・合理性重視とは全く違う感性な訳で、有名ブランドだけは伝統的に強い様ですが、他の新規分野で活性化するなんて考えていないんじゃないかと思えるくらいですね。
    これじゃあ、競争激しい経済が行き詰まるのも当たり前です。

    それでも、ノー天気とさえ思える国民性は健在ですが、一番恐れるのは木霊さんご指摘の通り支那の経済支配が一気に進んでいる事でしょう。
    今の状況はポピュリズム政党が実権を握る事を国民が望んでいる有様で、右派でも左派でも将来は暗いと僕は嘆いています。

    かつて、軍事で制覇した地域を属州化しても一定の条件で市民権を与え、ローマ街道+都市建設でインフラを整備し、強大な覇権を得ながらも身の丈を考え、最低国境(軍事境界線)を冷徹に判断したローマ帝国と、今の支那の邪で残虐な野心とは全く違う。
    ようやく一帯一路に疑心を抱き警戒を強めたEU諸国なのに、いの一番に支那の覇権にすり寄るとは...、本当に残念ですね。

    ローマ帝国の基礎を造った名君、G.I.カエサルやアウグストゥスが墓の下で嘆いているんじゃないかな。

    • 残念ではありますが、それも仕方がありません。
      優れた文化が消え去らないように、祈るしかありませんね。