イタリア首相の辞任と、変わるヨーロッパの勢力図

欧州ニュース

このブログでは滅多にニュースとして取り上げないイタリアの話だが、本日はちょっと触れてみたい。

イタリア首相が大統領に辞表提出、金融市場混乱も

2019/8/21 5:32

【ジュネーブ=細川倫太郎】イタリアのコンテ首相は20日、議会上院での演説で辞意を表明し、マッタレッラ大統領に辞表を提出した。連立政権を構成する極右「同盟」と左派「五つ星運動」が主要政策などを巡って対立を深めており、これ以上の政権運営は難しいと判断した。伊政局の不安定化は避けられず、金融市場が混乱する可能性もある。

「日本経済新聞」より

日経新聞としてはイタリアの金融市場の混乱を招く!コンテ首相の辞任は悪いことだ!という論調で行きたいようだ。

ただ、そもそも現状を続ける事に無理があったのだから、寧ろコレで正常化に向かうのでは?という気はしている。

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イタリアの奇妙な連立

「同盟」と「五つ星運動」の連立

皆さんが「イタリア」と聞くとどんな印象を持っているだろうか?

ワイン?オリーブオイル?それともチーズ?或いはフェラーリ、ランボルギーニ、アルファロメオ、フォルクスワーゲンだろうか?案外、ベネチアングラスなどのガラス細工やプラダ、グッチ、アルマーニなどの服飾メーカー辺りが思い浮かぶかも知れない。或いは観光地としても世界有数の知名度を持っている場所が幾つもある。

ともかく、イタリアは優れた文化と工芸、美術品などやデザインに優れた工業製品、食品など割と多岐に渡って世界でもトップクラスのネームバリューを誇っている。

しかしながら経済状況が良いかというと、実はあまり芳しくは無い。

2018年下期以降、景気の停滞が継続中

2019/6/4

欧州第3の経済大国であるイタリアの2019年1~3月期のGDP(国内総生産)成長率は前期比+0.2%となり、3四半期ぶりのプラス成長に回帰しました。2018年7~9月期、10~12月期ともに同-0.1%と景気後退の目安と言われている2四半期連続のマイナス成長となっていましたが、一旦は底打ちしたものと思われます【グラフ1】。しかし、IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)のみならず、イタリア政府も2019年の成長率予想を前年比0%近辺まで引き下げており、景気低迷が意識される中、年後半にかけて予断を許さない展開となりそうです。

「ニッセイ アセットマネジメント株式会社のサイト」より

この経済状況を回復すべく、2018年に誕生したコンテ首相は獅子奮迅の活躍をした……、かというと、そんなことは無かった。

2018年の選挙で大勝した「五つ星運動」という政党だが、実は左派ポピュリズム政党で、雇用の安定化や政治腐敗への反対、環境主義などを掲げていて、一体この政党の何がウケたのやら。なお、「五つ星運動」から輩出されたのが首相であったコンテ氏であった。

この「五つ星運動」と連立を組んだのが右派政党の「同盟」だというのだから、まあ、話にならない。だって、左派と右派と組んで、まともに話しが噛み合うわけが無いだろうに。

実際に、コンテ政権はバラマキ政策に終始し、政策面では殆ど機能しなかったようである。正直、左派だろうが右派だろうが、合意できる部分で協力して政治を前に進めていれば問題なかったのだろうが、バラマキ政策しか合意できなかったという事らしいな。

「同盟は」は排外主義者か?

ところで、今回のこの騒ぎで「極右政権が誕生し、イタリアを危機に陥れる」という論調で話を語る方々がいる。

「欧州で最も危険な男」サルビーニの国取り作戦

2019年8月21日

イタリア議会上院が8月13日、サルビーニ内相の提案した不信任投票を拒否したため、同氏が導く「政権奪取計画」は一旦ブレーキがかかった。だがコンテ首相は「内相が自分の政治的野心の追求を優先して今回の危機を引き起こしたため、連立政権の維持はもはや不可能だ」と述べ、8月20日に辞任の意向を明らかにした。左派と右派のポピュリスト勢力が作った奇妙な連立政権は、わずか14カ月で息の根を止められた。

「日経ビジネス」より

……また日経だった。

まあさておき、内容としては大統領であるセルジオ・マッタレラ氏と連携する可能性が高いのは「危険な男」であるサルビーニ氏で、彼の思想通りである場合に、イタリアがEU加盟国の立場にありながら、EUの求める緊縮政策に反対し、場合によってはユーロの放棄やEU離脱のリスクがあるとされている。

そもそも、「同盟」は右派ポピュリスト政権であり、移民反対を主張しているのだから、人道的にも問題だという、そんな論理展開なのだが、現実を考えるとこの分析が正しいかどうかは悩ましい。

そもそもイタリア経済はネームバリューの割には強くは無い。それは、イタリアでは鉱物資源やエネルギー、森林資源に恵まれず、材料を輸入してイタリア製品を輸出する構造の経済になっていて、更にエネルギーの面では外部依存率が高く、そういった弱点がある。

また、イタリアは南北で経済格差が激しいという構造的な問題もあり、工業化が進んでいるミラノやトリノを擁する北部に対して、南部は島嶼部が多い上に農業、観光業、軽工業が中心であり、北部に対して南部は貧しいという状況になっている。ここにマフィアが食い込んでいて余計に話がややこしく、真っ当な政治を行うにはなかなか難しい土壌がある国である。

そんな中で工業発展のために移民を随分と呼び込んでいるのだが、これがまた問題を引き起こすという悪循環を招いていた。

イタリア、反移民政策を強化 罰金増額や施設閉鎖

2019/8/7 16:28

イタリアが反移民政策を一段と強めている。非政府組織(NGO)などが運航する移民救助船への罰金を現在の20倍の100万ユーロ(1億2千万円)に引き上げる法案を議会で可決した。欧州最大級の移民収容センターも閉鎖した。伊政権は移民受け入れを巡って過剰な負担を強いられているとして、移民救助船の入港を拒んでいる。移民問題を巡る欧州連合(EU)との摩擦が激しくなりそうだ。

「日本経済新聞」より

サルビーニ氏はこの移民問題を深刻に捉えていて、厳しい対応を実施する一派だと言われている。

移民が引き起こす問題

しかし、イタリアが深刻に捉えているのは、EUに対する移民割り当てとかそういう話よりも、文化や政治に介入してくる移民である。

ジローラモが警告「そのうち寿司職人も移民になるかもよ」

2019年01月18日 21:00

 ジローラモの祖国・イタリアは、アフリカや中東を中心に多くの移民を受け入れてきた「移民大国」。それが、国家に及ぼす影響を教えてくれた。

「日本もこれから大変になりますよ。イタリアが先例です。今のイタリアの政府は、移民受け入れを厳しく制限しています。それは、さまざまな弊害が起きたからです。

 たとえばイタリアのトマト農家では、もはやイタリア人は働いていません。賃金の安い海外からの労働者に取って代わられたからです。

「BLOGOS」より

特に支那系の移民達は、資金力に任せて様々な企業買収を行っている様だ。

依存深刻、「中国マネー」に分断されるEU

2019/04/16 18:09

習近平国家主席に続き、李克強首相が欧州を訪問するなど、中国の欧州接近が目立っている。米中対立が深まる中、欧州は中国にとって重要なパートナーとの位置づけだ。欧州は経済協力を歓迎しつつも、中国マネーによる企業買収、技術流出には警戒感も強い。そんな中、イタリアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」参加を決めた。強大な中国に対抗するには欧州が一枚岩になる必要があるが、中国マネーの誘惑に抗し切れなかった国が切り崩されていく。足並みをそろえられない欧州の苦悩をドイツ在住のジャーナリスト・熊谷徹さんにリポートしてもらった。

~~略~~

 これにより、イタリア企業は中国における製鉄所の建設などで数十億ユーロ相当のプロジェクトを受注するほか、中国はジェノバ港とトリエステ港の整備・拡張工事に投資することが決まった。

「讀賣新聞」より

イタリアにとって支那マネー汚染はかなり深刻な問題のようで。

『ドルチェ&ガッバーナ』中国人侮辱事件はイタリア人の本音そのものだった!

2018年11月27日 21時00分

中国でイタリアの高級ブランド『ドルチェ&ガッバーナ』(D&G)の広告動画に「差別的」との非難が殺到してから、中国の大手インターネット通販サイトには11月22日までに同ブランドの商品が表示されなくなった。

中国人有名女優も商品のボイコットを表明。不買運動が広がり、D&Gはたった一晩で中国市場をすべて失ってしまった。

~~略~~

 「イタリアはすでにフィレンツェの隣町、古都プラトーの皮革工場などが中国人に乗っ取られ、イタリアの有名ブランドの輸出の多くが華僑の利権となっています。プラトーには、いつのまにか5万人の中国人が住み着き、学校へ行くと半数以上が中国人子弟となっています。同国は人道上、移民排斥ができないため、なすすべがありません。安い中国製品に席巻された皮革産業は、若い人が職人になっても食っていけず離職、高齢化により衰退の一途をたどっています」(同)

 アドリア海の内湾に入り込んだイタリアの港、トリエステは、古代ローマ時代から軍事要衝だったが、ここに中国が大規模な投資、インフラ建設に参入した。これにイタリアのメディアが騒ぎ出した。

「niftyニュース」より

危うい状態にあるのに、「五つ星運動」という政党は一帯一路政策に対して前のめりになった。そういえば、支那も五つ星の旗を掲げていたよね、紅いヤツ。

これがイタリアの現実でもある。

コメント

  1. ななし より:

    フォルクスワーゲンはドイツでしたよね?

  2. マスメディア反乱軍 より:

    イタリアといえばローマ=ローマ帝国の歴史に興味があるので、僕にとっては欧州でも一番思い入れの強い国なんです。

    その歴史の痕跡や欧州文明への影響の強大さは、ローマ街道が現在も欧州の主要路の基礎、欧州主要都市の多くがローマ帝国により未開の森林から出現した事実の様に、今も世界史上稀に見る帝国だったと考えています。
    属州の統治方法・多くの文化遺産・多彩な食文化、そして当時の公用語だったラテン語から英語・仏語・独語が派生して現在に至っています。
    そして、ルネサンスもこの地で開花しました。

    後年、横暴な異教徒(キリスト教徒・イスラム教徒)に破壊の限りを尽くされたとはいえ、数少なく残った現存する古跡・上下水道跡や美術品の完成度と美しさは僕を魅了し続けます。

    さて、記事の主題ですが本当に残念で懸念しています。
    サラリーマン時代にイタリアのメーカーと取引していたのですが、納期のいい加減さにウンザリを通り越し呆れてしまった事があります。
    時差は仕方ないけど担当者が昼休み中で2時間以上留守とか、バケーションで2週間不在で引き継ぎもないから判らないとか...、ごく平然とノタマウんですから。(苦笑)

    つまり、日本の経済競争力・効率・合理性重視とは全く違う感性な訳で、有名ブランドだけは伝統的に強い様ですが、他の新規分野で活性化するなんて考えていないんじゃないかと思えるくらいですね。
    これじゃあ、競争激しい経済が行き詰まるのも当たり前です。

    それでも、ノー天気とさえ思える国民性は健在ですが、一番恐れるのは木霊さんご指摘の通り支那の経済支配が一気に進んでいる事でしょう。
    今の状況はポピュリズム政党が実権を握る事を国民が望んでいる有様で、右派でも左派でも将来は暗いと僕は嘆いています。

    かつて、軍事で制覇した地域を属州化しても一定の条件で市民権を与え、ローマ街道+都市建設でインフラを整備し、強大な覇権を得ながらも身の丈を考え、最低国境(軍事境界線)を冷徹に判断したローマ帝国と、今の支那の邪で残虐な野心とは全く違う。
    ようやく一帯一路に疑心を抱き警戒を強めたEU諸国なのに、いの一番に支那の覇権にすり寄るとは...、本当に残念ですね。

    ローマ帝国の基礎を造った名君、G.I.カエサルやアウグストゥスが墓の下で嘆いているんじゃないかな。

    • 木霊 より:

      残念ではありますが、それも仕方がありません。
      優れた文化が消え去らないように、祈るしかありませんね。