さて、本日の2本目はタイトルとしてはかなり重いテーマの様に見えると思う。
重度障害のれいわ議員が初登院 正副議長選出で代理投票
2019年8月1日12時16分
臨時国会が1日開かれ、先の参院選で当選した124人の議員たちが初登院した。重度の身体障害がある「れいわ新選組」の議員2人も大型の車いすで現れ、決意を示した。
「朝日新聞」より
巷で話題のアレだ。そして、結論としてはそれほど突飛な話に落ち着かないので、あまり期待しないで欲しいと思う。
大阪維新の会は声を上げた
マスコミは障害者批判をタブー視する
さて、どこから切り込めば良いのやらということなのだが、最初は大阪維新の会の代表である松井氏の発言から引用していこう。
参院の介護費負担を批判=松井大阪市長
2019年07月31日15時37分
松井一郎大阪市長は31日、重度の障害があるれいわ新選組の参院議員2人の議員活動中の介護費用を、参院が当面負担すると決めたことについて、「一部の人だけが優遇される制度を国会議員がつくるのは大問題だ」と批判した。市役所で記者団に語った。
「時事通信」より
大阪維新の会の代表を務める松井氏だが、れいわ新選組の登院について出た問題について私見を述べている。多くのマスコミが怖がって手を出せず、政治家の多くも声を上げられない問題に声を上げたことそのものには評価出来ると思う。
障害者の登院を妨げるモノ
さて、では、一体何が起こったのか?
最初に知らねばならないのは、このブログでは批判的な声を上げたが、れいわ新選組の二人が重度の障害者であるという点だ。いちいちれいわ新選組と言うのは迂遠なので、以降はれい選としよう。
この記事では同時に選挙戦を制したN国ことNHKから国民を守る会に関しても批判的な声を上げている。しかし、れい選とN国の決定的な違いは、N国が制度の隙間を突いて「NHKをスクランブル化する」というワンイシューを国会にねじ込んだのに対して、れい選は制度の隙間を突いてポピュリズムの象徴としての障害者議員を作り上げて国会にねじ込んだことである。
両者は、選挙制度を巧く利用したという点では共通しているが、片や当主自身が議員になったのに対し、片や多数の票を集めた党首は落選し、得票数はとても合格ラインに届かない二人の障害者を国会に送りこんだ事という点で、非常に大きな違いがある。
N国は国民のうち、「NHKをぶっ壊す」というイシューが支持された。
しかしれい選は、その政策が支持されたわけでも無ければ、障害者候補が支持されたわけでも無い。
彼らは、首から下を自らの意思で動かせない重度の障害者であり、そのこと自体は責められるべきでは無いのだろうが、それだけのハンデキャップを背負った議員である。
そして、あろう事か登院前に、「このままでは登院できない」とぶち上げた。
「登院できない」れいわ新選組 新人議員の訴え
7月31日16時38分
参議院選挙で台風の目となった「れいわ新選組」。重度の障害がある2人が当選しましたが、1日の臨時国会を控え、ある不安を訴えています。問題点が何なのか考えます。
~~略~~
「登院したくてもできない」(れいわ新選組 木村英子参院議員)
「れいわ」のもう1人の新人議員・木村英子氏。脳性麻痺などの影響で、両足や左手がほとんど動きません。ただ「登院できない」という理由は障害ではなく、「制度」の問題です。2人は、24時間態勢の介助サービスを受けています。しかし、議員として活動を始めると、その費用は自己負担となる可能性があるのです。現在の制度では、「就労」は公費によるサービスの対象外となっていて、議員活動がその「就労」と見なされるからです。
「TBSニュース」より
僕はこのニュースの内容を最初、理解出来なかった。
「議員としての活動」にあたって、重度訪問介護が「自己負担」になるという事は、議員になる前から分かっていた話である。
しかし、議員になってから「登院できない」とはどう言うことなのか。
重度訪問介護制度の矛盾
どうやら、彼女の言い分を日本の報道機関は全面的に支持する積もりらしい。
通勤でも公的介助が使えない 24歳障害者の願い 重度訪問介護の矛盾
8/1(木) 8:30配信
朝の駅ホームを足早に行き交う人々。到着する列車のアナウンス。京都市営地下鉄今出川駅(京都市上京区)から乗って、竹田駅ホームで乗り換えの近鉄電車を待つ。電動車いすの米国籍のライスチョウ・ノアさん(24)=上京区=のそばで、ノアさんの介助を約4年間続けているヘルパーが見守る。
「京都新聞」より
京都新聞では、何故か日本企業で働く米国籍の一般人の事例を紹介して、重度訪問介護制度の問題点について言及している。
確かに、障害者の就労支援という意味では、現状の重度訪問介護の制度設計は大きな壁になるのだろう。
前の記事にも書いたかも知れないが、僕の子供も障害者手帳を持つ身である。凡そ他人事とは言えない話だ。障害者に対する差別に対しては思う所もある。
ただ、だからといって「障害者が健常者と同じ様に生活できるように!」とは願ってはいない。親としてそれはダメな事かも知れないけれど、差別というのは悪意が無いものこそ無くし難いのである。先ずは周知し、そして理解を求める。でもその理解を超えた先に得られるものが健常者に不便を強いた上でのものだとしたら、それは幸せな結果に繋がるのだろうか?
重度訪問介護の制度設計の話に戻るが、そもそも重度訪問介護はその対象者が就労できることを想定はしていない。
ちょっとしたお出かけなどはカバーするが、毎日の通勤を必要とする就労について「公的補助」の対象とはしない制度設計なのである。
しかし夢だった就職を果たした今年、壁に突き当たった。重度訪問介護の規定では、「通勤・経済活動にかかる支援」は雇用主が負担すべきとされ、公的補助の対象外だ。
「京都新聞」より
雇用主にその負担を求めているのである。
企業に負担を求めると、企業は障害者雇用を諦める
企業には、障害者雇用義務というものを国から求められている。
これは、企業も一定の社会貢献的負担を負ってくれという国からの要請で、障害者の雇用促進という面では一応機能している制度だと言える(違反企業は沢山あるようだが)。
現行制度で就労中に重度訪問介護(重訪)が使えないことをノアさんは知っていた。周囲にも相談したが解決策が見えない。「ひたすら『重訪の就労の壁』が就職活動先にばれないよう、話題に出さずに面接を受けていました。採用されてからどうにかすればいいと、甘く淡い期待を抱きながら」 何度も就活で落ちた。それでも学生時代の実習先だった伏見区の社会福祉法人がノアさんを採用。社会福祉士の資格を取り、今は相談員として働く。
「京都新聞」より
しかし、そもそも企業は営利団体なのであるから、特別な技能を持っていないと障害者を雇用したがらない。制度上、一定の割合で障害者を雇用すべしとなっていれば、障害の程度の軽い人を雇用したいと願うのは、企業としては「当たり前」の認識だろう。
それ故、重い障害を持つ障害者を雇用するのであれば、その割合に応じて費用負担を求められる。これを減免する制度設計になっていて、それ事態には不足があるものの、方向性は間違っているとは思わない。
企業が背負いきれない負担を押し付けるような形になっては、制度自体が崩壊してしまう。そういう意味では、仕方がない面もあろう。
国会議員の仕事は一体何だ?
参議院の対応とそれに対する批判
こうした前提を踏まえて、木村氏の主張を考えてみてもやっぱりおかしいのである。
登院するにあたり、一定の経済負担を求められる。しかしそれは莫大な歳費を貰っている国会議員が「公費負担100%」を訴えるべき話なのだろうか?
そういう意味で、松井氏の主張は正しいと感じる。
参院議場バリアフリー準備 本議場の一部、改修へ
2019年7月25日14時06分
参院選でれいわ新選組の重度障害がある女性と難病患者の男性が初当選したことを受け、参院議院運営委員会は25日の理事会で、2人に採決時の押しボタンを介助者が代理で押すことを認め、大型車いすが入れるよう本会議場後方の議席を改修することを確認した。
「朝日新聞」より
参院、れいわの2人の介助費用を当面負担決定
毎日新聞2019年7月30日 21時18分(最終更新 7月30日 22時02分)
参院議院運営委員会は30日の理事会で、参院選比例代表で初当選した重度身体障害者の舩後(ふなご)靖彦氏(61)と木村英子氏(54)=いずれもれいわ新選組=の議員活動に際し、必要な介助費用について、参院が当面負担することを決めた。国会への登院から議員としての活動、帰宅するまでの間が対象となる。
「毎日新聞」より
参議院は、会議場の一部改修工事を行ってバリアフリー化を進める他、当面、必要な介助費用を負担することを決めた。そして、「当面、必要な介助費用負担」という部分に噛みついたのが、松井氏というわけだ。
しかしこの主張に真っ向から反対するメディアがこちら。
れいわ2議員の介護負担を巡って。社会の側にある障害と「合理的配慮」
8/1(木) 9:28
重度の障害があり、先日の参議院選挙で当選した舩後靖彦氏と木村英子氏の議員活動中に、公費による介護サービスを受けられなくなってしまう問題を受け、参議院議院運営委員会の理事会は、当面、参議院が費用を負担して介護サービスを行うことを30日に決めました。
8月1日招集の臨時国会を前にして、お二人が議員活動のスタートを切れるよう、参議院としてのサポート姿勢をクリアにした意思決定。私はとても嬉しいニュースと受け止めましたが、SNSではさまざまな意見も目にしました。
「yahooニュース」より
この内容は、論点がズレているので、一読する価値も無い。ただ、メディアは公費負担を求める立場だということを紹介したかったので。
「合理的配慮」というのは、はき違えてはいけないと思うんだ。
問題はいきなり制度をねじ曲げた点
僕自身は、この話、最終的に公費負担が認められようと、そうで無かろうとどちらでも良いと考えてはいる。ただ、この話は本来であればれい選が「党として責任を持って負担」すべきだと思っている。何故ならば、「特定枠」の候補者に押し上げたのだから。
しかし、公費負担だろうと税金負担だろうと、れい選負担だろうと、等しく税金からの持ち出しになる点は変わらない。変わるとすれば、議員個人の収入が変わるのだろうね。
では、何を問題に感じているのかというと、今回、上で説明した様に、重度訪問介護の制度設計から外れた運用を、議員のワガママでねじ曲げた点にある。
議員の本来の仕事は、法律を作ることと法律を変えることである。
故に、木村氏は、本当であれば真っ先に「重度訪問介護の制度」にある問題点を国会で指摘し、法改正をすべく声を上げるべきだった。ただでさえ議員の活動が十全に行えるのかと、懐疑的に思われているのである。法律の設計がおかしければ、そこを変えていく、そのプロセスは本人が関わるべき問題であろうし、当事者だからこそ主張できることもあるだろう。
逆にそうで無ければ、介護なしに登院できない候補を議員として国会に送り込む意味は何処にあるのだというのだろうか?そこまで高い能力があるというのだろうか?
その事は今後、本人が証明していくことになるとは思うが、そもそも制度設計のおかしい選挙で当選した候補なのだから、高いハードルを越えていって欲しいし、そうあるべきだ。
船後氏の主張の方が好ましい
そういう点ではれい選のもう一人の議員である船後氏の主張の方が好ましいと思う。
国会バリアフリー化 共生へ前進 車いすで入れる議席 分身ロボ活用検討
2019年7月26日
与野党は、二十五日の参院議院運営委員会の理事会で、重い身体障害があるれいわ新選組の候補者二人が参院選で当選したことを受け、本会議場の議席の改修や、介助者の本会議場への入場、代理投票を認めるなどの国会のバリアフリー化推進を確認した。公用の福祉車両の使用や「分身ロボット」を活用した議員活動の可否についても、今後検討する。
~~略~~
議員宿舎や議員会館の割り当て、公用の福祉車両の使用については、秋に予定される臨時国会に向け、引き続き協議する。船後氏は、重度障害者らが端末で遠隔操作でき、会話などができる分身ロボットを活用した議員活動の実施も要望。今後、理事会で対応を検討する。
「東京新聞」より
技術的困難性はあるだろうが、分身ロボットの活用というのは面白いし、重度訪問介護制度の問題もクリアされる可能性が高いだろう。
ただ、分身ロボットは本人がリアルタイムで操作しているのかを確かめる必要があるなどの問題はあるだろうし、分身ロボットを移動させる人間は一体誰なのか?とか、色々とそれに付随する問題も出てくるだけに、そう簡単な話では無い。
何より、外部との通信を禁ずるなどとの理由からタブレットの使用なども禁止するなど、前近代的な場所が国会であるため、通信というのはかなりネックになる可能性もあるね。
議論の必要はあるだろう。
国会議員は国会で主張しろ
ともあれ、国会議員は国会で議論し、国民の利益を最大化するように働いて欲しいのである。
だからこそ、登院する前から自分のために制度をねじ曲げるようなことはやって欲しく無い。そうした意見を表明する人は、大阪維新の会の松井氏以外にも多い様だ。
にもかかわらず、メディアがこれを非難できないことを良い事に、山本太郎はおかしな論調を振りかざしている。
ただ、それは彼が議員であるうちにやるべきだった話なので、一顧だにする価値も無い。必要であれば衆議院選挙にお出になって、当選した上で仕事をやってくれたまえ。
重度訪問介護の制度見直しは必要か?
さて、そんな訳で、話がタイトルからズレてきているので軌道修正をしておきたいが、障害者の方々のQOLを上げるという意味で重度訪問介護の制度見直しという必要性を訴える記事があり、それはそれで検討すべきだし、個人的には障害の程度によっては対応できるような幅を上げる必要はあるのかも知れない。
制度設計として、重度訪問介護が必要な人が就労をするなんて事は考えてはいなかった、というのが現実なのだろう。
じゃあどうなんですか?という点に関しては様々なところからの意見を集約して決めれば良い。それが国会議員の仕事なのだから。
コメント
「特定枠」は定数変更にともない与党が自分たちのために作った制度、
と理解しているので、
「想定外」の使われ方をしたからといって、
早々に引っ込めるわけにはいかないでしょうね。
正直、驚いた、としか言えない結果でしたが、
彼らの活動を支援しないと格好の攻撃材料を野党さんに提供するだろうし、
正直、松井さんの言葉にとても納得しているけれど、
まずはどう対応していくのか静観するしかない、と。
で、次に出てきそうというか、やられそうなのが(と書いたらある種の皆さまに怒られそう)、
「LGBT」支援に熱心な党の
性同一障害の男性(または女性)が議員となった時に、
女性用(または男性用)のトイレを使わせるのか、という問題でしょう。
こちらも議論しておいた方が良いのでは、と思います。
LGBTとトイレの問題ですか。
まぁ、国を主導する国会議員のことですから、喜んでご一緒すればいいと思うんですが。
LGBTに優しい国にしたいのであればですが。
ナブラチロワが提起した問題もありましたが、障がい者(この書き方も好きじゃないんですが)を差別しないという考え方が、いつの間にか障がい者と健常者が同じように過ごせなければいけないという考え方になってしまっている気がして、本当にそれでいいのか?と思ってしまいます。
同性愛者が婚姻関係になり、それを認められたい。その気持ちはわかりますが、国家制度として認めるのはどうかと言うと、私はNOだと。国が認めるということは、税制面にも関わってくるわけで、それは国家を構成する国民に対する優遇制度としてはいびつなものになってしまうのではないでしょうか。地方自治体で行っている「認定制度」はいいと思うんですが。
トイレ……。
多目的トイレを増やすのでOKでしょうかね。
ご指摘の通り、色々な政治的都合で作ったのが「特定枠」です。自民党だけでは無く、公明党や他の党も一枚噛んでいるような噂を聞きました。しかし、何れにしても政治家の都合で制度をねじ曲げ、そこを利用されたんですよね。
しかしまあ、明らかに欠陥のあるシステムである事が分かったのですから、少なからず議論をした上で世論の後押しを加えて変えていかなければならないでしょう。
そして……LGBTですか。
あれは本当にダメな話だと思いますよ。現在、LBGTが差別されているかどうかについても怪しい感じはしますが、本人達はソッとしておいて貰えればそれで良いのでは無いでしょうか。
まず何が問題なのか?辺りから議論が必要ですよ。
まず、特定枠を悪用した小賢しい山本太郎如きに、マンマとやられた自民党首脳陣は猛省すべきですね。
国会バリアフリーはいい事ですし、議員に問題意識を深めさせる機会でもあり、障害者の方たちに少しでも勇気と希望を持ってもらえればと思います。
ただ...、失礼ながらこのお二人には政治参加意識や政治信条の話以前に、その姿を晒す為に利用されたパペットの様で、僕は正直に嫌悪感すら持ってしまいそうです。(多分、半年もすればメディアも冷たく忘れちゃうんでしょうけどね)
こう書いて「差別」と厳しく非難されるのは覚悟していますが、僕の中では政治とは何たるかを考えた上での「区別」という判断です。
P.S.
男性の方は天皇陛下のお言葉があると意識・配慮したのでしょう、酷暑に関わらずフェルト帽には脱力しましたが、昼間の招集でしたので議員のほとんどが正装モーニングでしたけど、彼にはモーニング・ネクタイは無理なので精一杯の気持ちは汲めましたね。
一方女性の方...、正装の着物は着れないのは当然承知ですが、あの汚そうな髪と髪型は何とかならなかったんでしょうか?
「髪は女性の命」と言いますから自由なんですが、あれじゃ日常の訪問介護だって洗髪するのに大変でしょうし、とてもお洒落とは程遠く鬱陶しさしかなかったですね。
サラリーマン時代に仕事の中味はもちろん、部下の服装チェックに厳しかった僕ですが、「年始の挨拶にはクリーニングに出したスーツで、ネクタイは明るめで靴はちゃんと磨け」とか、「ネクタイは戦士に例えれば剣である、くたびれたりシミの着いたネクタイは戦う剣が錆びれている証拠で論外、相手に舐められるだけ」とか、「シャツの首元サイズがあっていないのはルーズで無神経な奴と見られる」とか、仕事の基本は所作と服装からと嫌がられながらも言い続けました。(苦笑)
だからこそ、政治家の服装センスまで見ちゃってイメージ偏るかもですが、個人的には太郎ちゃん(麻生)の正統派トラッドは好みですね。