アメリカ、台湾に戦車を売りつける?

アジアニュース

ちょっとタイトルに悪意があるのは仕様なので許して欲しい。

さて、何の話かというと、エイブラハムスである。台湾がこれを欲しがっていて、アメリカが「売っても良いよ」と、そういったというお話なんだが。

米国、台湾への武器売却を準備 戦車など20億ドル超=関係筋

6/6(木) 5:43配信

[ワシントン 5日 ロイター] – 米国が台湾への武器売却を進めようとしている。事情に詳しい関係者4人が匿名で明らかにした。米中貿易摩擦が激化する中、中国の反感を買う可能性がある。

「ロイター」より

支那の反感って、そりゃそうでしょうよ。

CM11戦車では対応できない

国産とはいえ第2.5世代

台湾が保有している主力戦車はCM11「勇虎」で、これ、中身はアメリカ製のM48H「パットン」と同じだ。

え?M60M3の車体にM48A5の砲塔を設置したものだ?まあ、細かいことはさておき、台湾の国防を担う戦車は、アメリカから技術を輸入して台湾内で国産化したシロモノである。

台湾にはこの他にもCM12とか、M60A3やらM41やら装備している。

  • M60A3戦車 460輌
  • CM11戦車 450輌
  • CM12戦車 100輌

何れにしても同系列の戦車で、装甲に若干の不安があるのは事実だ。台湾の地形に合わせた改良が施されていて運用は良好なようだが。

そんな訳で、新しい戦車をという話も出てくる事自体はそう不思議な話では無い。だけど、買うのはM1エイブラムスですか?

エイブラムスはアメリカの主力戦車

さて、アメリカ軍もM60戦車を主力戦車として使っている時代があったが、後継車両が必要となり、M1エイブラムスを開発して1981年に制式採用されている。

今回、台湾に売りたいのもこのM1エイブラムスである。

ロイター通信は複数の関係者の話として、米政府がM1A2エイブラムス戦車108両や、携帯型地対空ミサイル「スティンガー」250発などの売却手続きを進めていると報じた。既に非公式に議会に通知したとも指摘した。

あ、スティンガーも売るつもりなんだ。

えっと、M60戦車が第2.5世代戦車なのに対して、M1戦車は3.5世代戦車である。この世代の定義は色々あるらしいのだが、ザックリ言うと2.5世代と3.5世代ではモジュール装甲の有無や車間情報システムの搭載だね。

今や、戦車も戦術データリンクを利用して戦闘を行う時代で、この辺りがC11戦車には足りない。装甲も心許ない。だからこそ、と言うのが今回の話が出てくる動機なんだろう。

ただ……、M1エイブラムスは車重が62t以上あるんだよねぇ。台湾で本当にM1エイブラムスが使えるのかというと、何となく不安にはなるな。

AH-64E アパッチ・ガーディアンも装備

台湾には30機のAH-64Eが

ちょっとトラブルもあったが、AH-64E「アパッチ・ガーディアン」が配備されている。

台湾に最新型攻撃ヘリ「アパッチ部隊」誕生 中国軍の上陸作戦に備え

2018.7.17 18:41

 【台北=田中靖人】台湾の陸軍で米国から購入した最新型攻撃ヘリAH64E「アパッチ・ガーディアン」の部隊編成が完了し17日、北西部・桃園市で式典が行われた。

 AH64Eは、米ブッシュ(子)政権が2008年に30機の売却を決定。13年11月から台湾への引き渡しが始まり、14年10月に完了した。

「産経新聞」より

かなりお高い攻撃ヘリだが、台湾はこれを買った。なお、韓国も買っていた気がするが気のせいだ。何か色々オミットされていたしね。

さておき、台湾にとって支那の人民解放軍が海峡を渡って侵略してくる恐怖とは常に戦わねばならず、そのために対戦車兵器を備えるワケだ。

そして、戦車には戦車を備えねばならないだろう。

台湾の国防部は報道にある武器売却の内容は台湾側が米に提出した希望書に合致すると認めた。購入の実現可能性については言及しなかったが「戦力を高め、台米の協力関係を強めるものだ」と歓迎している。台湾は中国の上陸作戦に対抗するための主力戦車の更新を目指していた。

「日本経済新聞」より

そんなわけで、台湾側が切望し、トランプ政権もこれにOKを出すという流れになったようだが、実現には未だ時間がかかるだろうね。

潜水艦も更新

自主開発の努力

ちなみに、台湾海峡を渡ってきてもらっては困るので、「潜水艦を」という話も出ている。

台湾初の国産潜水艦、模型初公開 2025年末引き渡しへ

2019/05/09 19:36

国産潜水艦の建造を担う専用工場の起工式が9日、南部・高雄市内で行われ、建造される試作艦の模型が初公開された。建造を手掛ける造船大手、台湾国際造船の周志明・副総経理(副社長)によれば、試作艦の排水量は2500~3000トン。2025年末の引き渡しを目指す。

「中央社フォーカス台湾」より

この話は、アメリカに相談したとか、日本にも売って欲しいとお鉢が回ってきていたのだけれど、日本から潜水艦を輸出すると言う話にはならなかった。

なお、これ、とんでもない話もあって、ちょっと情報が正しいかどうかは疑っている。

北朝鮮、台湾に小型潜水艦輸出を打診も成立せず

Posted April. 10, 2019 07:38, Updated April. 10, 2019 07:38

北朝鮮が台湾に小型潜水艦と関連技術の販売を打診したが、取引が成立しなかったことが明らかになった。

自由アジア放送(RFA)は8日(現地時間)、台湾上報、台湾ニュースなど現地メディアを引用して、北朝鮮が台湾の国産潜水艦導入事業(IDS)初期である2016年、台湾国防部に潜水艦の販売を打診したと報じた。台湾は、中国の脅威に対抗して防衛用潜水艦を建造するとしてIDSを推進し、米国など17ヵ国の業者が入札に参加した。北朝鮮は、台湾のある貿易会社を通じて入札提案書を提出したという。この貿易会社の名前は公開されなかった。

「東亜日報」より

いやいや、北朝鮮が台湾に潜水艦を売るってあり得ないでしょうに。ホントかよ、このニュース。

……さておき、なりふり構わず潜水艦を欲しがっていたという風に考える事もできる。

高まるリスク

支那による台湾侵攻リスク

台湾がここまで焦っている理由は、習近平氏の不用意な発言にあるようだ。

習近平氏「中台統一の基礎固める」 台湾政策5提案示す

2019年1月2日15時55分

中国の習近平(シーチンピン)国家主席は2日、北京の人民大会堂で演説し、今後の台湾政策について、「中台の融合と発展を深め、平和的な統一の基礎を固める」など5点の提案を示した。昨年、国家主席の任期制限を撤廃し、長期政権を視野に入れる習指導部が体系的な台湾政策を示したのは初めてだ。

~~略~~

習氏は「台湾は中国の一部だ。中華民族が偉大な復興に向かう過程に台湾同胞は欠かせない」と述べ、自らが提唱する「中国夢」(チャイニーズドリーム)をともに実現しようと台湾側に呼びかけた。

「朝日新聞」より

習近平氏が国内に力を見せつける為には、台湾に侵攻していくという姿勢はプラスに働く。

台湾軍 中国の侵攻を想定し大規模演習 対抗姿勢鮮明に

2019年5月23日 4時14分

台湾の軍は、統一を目指して台湾への圧力を強める中国が侵攻してくるという想定で、実弾も使用した大規模な演習を実施し、中国への対抗姿勢を改めて鮮明にしました。

「NHKニュース」より

一方で、この習近平氏の発言があった為に、台湾総統の蔡英文氏の支持率が高くなるという皮肉な話に繋がったとも言われており、台湾がこの事を如何に真剣に考えているか、という事でもある。

真面目に考えていない様に思えるのは寧ろ日本なんだけど、台湾が支那の手に落ちると相当深刻な影響があるんだけどな。

コメント

  1. 電気屋 より:

    確かに台湾でのM1戦車運用は厳しい気がしますが、既に同クラスのレオパルド2をシンガポールやインドネシア等の東南アジア諸国が運用しているので何とかなるのかもしれません。

    • 木霊木霊 より:

      台湾軍の指針がイマイチ分からないので、どのような運用を考えているか次第なのかもしれません。
      ただまあ、心配な面が強いのは事実ですね。

  2. 暇人 より:

    10年程前に台風でインフラに相当な被害が出て、M1のような重量級の戦車は運用することは難しい、と言っていたと思いましたが、どうなんでしょうね。
     それこそ日本の10式戦車を羨望のまなざしで見ていることと思いますが、日本からの戦車輸出なんて、米国から輸出する以上に難しいでしょうけど。
     

    • 木霊木霊 より:

      日本としても、10式を開発した経緯が90式では本州の防衛に用いるには橋梁を渡るのにも大きな制約があるので厳しいという話がありましたから、台湾でも似たような判断になるのは不思議では無いのかなと。
      10式を売るには色々と問題があるのかも知れませんが、何かこう、フルスペックじゃ無くても良いからあのパッケージで商売ができる様にすれば、良いのですけどね。
      そういう武器を売る商売というのは色々難しいのでしょうかね。

  3. マスメディア反乱軍 より:

    木霊さん、おはようございます。

    各国の主力戦車はいずれも60t越えですし、近代化改修された最新型もほとんが第3.5世代ですね。
    台湾の選択肢はその中からしかない訳で、M1エイブラムスのチョイスは仕方ないと思います。

    他の方も指摘されていますがCI4搭載の第4世代で攻撃力・防御力も90式並みと言われる、10式戦車が一番欲しかったんじゃないでしょうか。
    また、日本の場合でもほとんどの橋梁を砲塔・車両一体でも、大型トレーラーで通過できますから戦略機動性は抜群。
    離島へもおおすみ型LSTで運べますので(90式戦車も同様)、有事にはほぼ日本全国で展開させる事ができますからね。

    日本の戦車定数が300両となっていますので、10式は配備済み100両+追加30両程度...、セコく開発費なんかまで考えると海外輸出しないのは実にもったいない気がしています。
    台湾には退役中の74式より古い設計のパットン系が1000両以上ある様ですが、エイブラムスをポンと100両以上買うんですから、10式を武器輸出の主力に解禁したら世界で軽く1000両以上の需要はあると想像するんですよね。

    主力戦車は時代の遺物となりつつあるのか、アメリカはもちろん欧州でも第4世代以降の新型開発の声はあまりないのも現実。
    まあ、現代戦で上陸されたら(または国境を越えられたら)負け戦って感じですから、その前に敵の上陸部隊を叩く戦略が主なのは仕方ないかも。

    これって、500年以上前に武田信玄公が領国防衛の基本とした戦略、「敵の侵入を許したら国が亡ぶ時。」と覚悟を示し、居城の躑躅ヶ崎を敢えて要害化しなかった理由と似ているのが興味深い。

    >この話は、アメリカに相談したとか、日本にも売って欲しいとお鉢が回ってきていたのだけれど、日本から潜水艦を輸出すると言う話にはならなかった。

    だから、台湾が本当に欲しいのは台湾海峡で支那艦隊を迎撃し上陸を阻む潜水艦だと思います。
    これも、日本の最高機密なんで輸出はできないでしょうし、アメリカには通常型潜水艦を建造するノウハウはありません。
    いつまでも待っている訳にはいかないので国産化へ舵を切らざる得ないですね。

    そうりゅう型は無理にしても、あと10年で全て退役しそうなおやしお型が10隻くらいあるんで、延命&改修で供与する手は検討しないのかなァ~?
    それとも、計画中と噂のモジュール化で警戒監視・機雷搭載まで折り込み済の無人潜水艇、これを数揃えれば支那艦隊の脅威になると思うんですけどね。

    台湾の政情次第で風が変わるのが最大の懸念なんで、モメるでしょうけど米台同盟=台湾独立待ちかな?

    • 木霊木霊 より:

      10式戦車は第4世代か第3.5世代かという議論はある様です。
      ただ、フルスペックの10式を台湾に輸出するのはそれなりにリスクがあり、高価な戦車が必要と言うよりは近代化した安価な戦車が数欲しいというのが台湾の本音かもしれません。
      そういう意味では10式の廉価版を何とか作れないか?或いは共同開発が出来ないか?などとは考えてしまいますねぇ。
      台湾と商売するための武器を作るという発想にはならないのが日本の防衛産業の弱い部分なのかも知れません。