「とうとう」と言うべきか、「いよいよ」というべきか。
もはや、避けられない運命の輪が回り始めたと言うべきかも知れない。
有事作戦統制権 韓国軍大将が行使へ=韓米国防相会談で合意
6/3(月) 17:46配信
韓国と米国の国防部は3日、米軍主導の韓米連合軍が持つ有事作戦統制権の韓国軍への移管に伴い、作戦統制権を行使する「未来連合軍司令官」に韓国軍大将を任命することを決めた。
「Yahoo!ニュース」より
こちらブログでは、この話題は初めてだったと思うし、久しぶりなのでおさらいからお付き合い願いたい。
有事作戦統制権が韓国に「無い」理由
事情は少々ややこしい
そもそも有事作戦統制権というのは、朝鮮半島での有事における指揮権をアメリカが持つという少々特殊な話だ。
日本は「普通の国」のカテゴリーに残念ながらあてはまらないのだが、普通の国であれば有事における作戦の指揮権は軍部のトップが持つ。
今回のニュースで、作戦統制権は韓国軍大将に移管されると言うのは、まさにそういう事なのである。
しかし、朝鮮戦争において、現状で韓国は作戦指揮権を持っていない。これは、米韓軍事同盟に関する条約(1953年10月1日調印)によるものである。
そもそも日本が敗戦を喫した年となる1945年に入る頃には、朝鮮半島はアメリカとソ連(現ロシア)と分け合って統治するような話がなされていた。この話し合いは完全にアメリカの失敗と言えるのだが、当時のアメリカにとってはその方が都合が良かったのだろう。ソ連と直接対決するよりも、裏取引である程度の所で手を結べるのであれば、その方が良いと、その様に考えていたのだ。
事実、アメリカ軍は日本軍との戦いで相当消耗した。少なくとも、大国ソ連を相手にする気はさらさら無かったのである。アメリカは常に勝てると思った戦いにしか挑まないんだよね。それでも結構負けてるけれど。
分割統治後に始まる朝鮮戦争
しかし、裏取引が成功裏に終わったかというと、そんなことは無かった。
朝鮮半島に正当な政府を樹立するにあたり、南北にそれぞれ政権が誕生してしまう結果になるのである。
そして、アメリカが擁した韓国側の政権は、臨時政府の血統を受け継ぐろくでもない一派だったことも災いするのである。
一方のソ連の後ろ盾を得ていた北朝鮮側は、金日成という偶像的な支配者を得て、これが思いの外機能した。いや、機能しすぎて戦争への道をひた走ってしまった。
そんな感じの、一部の人が口さがなくいう様な「日本のせいで始まった」とされる朝鮮戦争(1950年勃発)が始まってしまう。ハッキリ言って、日本は関係無いのだが。
朝鮮戦争は、アメリカとソ連の代理戦争だったとも言われているが、何のことはない。朝鮮半島の覇権を巡って争った猿山のボスの争いが切っ掛けだった。ただ、当時、ソ連の支援を受けて戦車などの陸軍の戦力を中心に国力を増強していた北朝鮮に対して、アメリカからの信頼を得られずにろくな兵力を有していなかった韓国軍は恐ろしい勢いで自国民を虐殺しつつ釜山まで逃げ込む。
何しろ、1950年6月25日にソウル侵攻が始まった後、韓国軍はたった2日でソウルを放棄する。それ以降、電光石火の勢いで撤退し、たった2ヶ月で釜山まで戦線を後退させる。もちろん、アメリカ軍を始めとした 連合国軍国連軍も戦いはしたが、アメリカを始めとした国々は既に一旦撤収させて、軍隊を解体していた事もあり、国連から声がかかっても、どの国も直ぐに軍を組織することは困難だったようだ。戦線の後退を押しとどめる事ができなかった。
そして、1950年9月15日に決行された仁川上陸作戦が成功しなければ、多分韓国という国は今存在していない。ついでに言うと、日本も果たして1つの国だったかどうかは怪しい。何しろ、韓国の亡命政府を日本の山口県に作ろうという計画があったというから、済し崩し的に日本の一部を韓国に奪われていた可能性は否定できない。何しろ、6万人規模の人員を可能な土地を奪取することを計画していたと言うから、おぞましい話である。
米艦連合司令部に作戦統制権が継承される
このような朝鮮戦争を体験し、何とか休戦を迎えるのだが、その休戦協定(1953年7月27日)の場に韓国の姿はなかった。当時の韓国の大統領の座に就いていた李承晩が、停戦協定を不服として北進統一を強硬に主張していたためだ。
この際には、同席していた連合国軍国連軍の代表として来たアメリカ、支那、北朝鮮は文章にて「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」としている。
構成的にはアメリカの指揮下にあった韓国もこれに従う流れになるハズではあるのだが、結局、韓国と北朝鮮との間には散発的に戦闘が繰り返される結果となる。
一方で、そんな状況下において、当初は 連合国軍国連軍が作戦統制権(当時は作戦指揮権)を持っていたが、1978年に米韓連合司令部に承継される。
しかしながら、1993年12月に、平時の作戦統制権に関しては韓国軍に移管され、有事の際には韓国軍は引き続きアメリカ軍の指揮下に入ることとされた。
もちろん、アメリカとしてもいつまでも作戦統制権を握っている積もりは無かったようだが、実は作戦統制権の移管は何度も延期されている。ここで厳密に言うと、「有事」というのは韓国が何処かの国と戦争状態になることを意味しているようだが、そもそも朝鮮半島における戦争は未だに終結していない。よって、実質的には朝鮮戦争に限定された話だと考えても差し支えないだろう。
結局、韓国が有事作戦統制権を保持していない理由は、「まだ準備が出来ていない」と、その様に主張しているから、という事になる。
そして、作戦統制権の返還は予定では2020年代中頃という事になっていた。
ついに返還される作戦統制権
このタイミングでの作戦統制権返還の意味
ところが、このタイミングで作戦統制権の返還の話が出てきたのである。
この合同演習は、韓国軍大将の主導で8月に「19―2同盟」として行われる合同危機管理演習(CPX)とみられる。韓米両軍の定例合同指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン」(UFG)に代わるこの演習では、韓国軍の作戦統制権行使能力を評価する初の作戦運用能力(IOC)検証が行われる。
「Yahoo!ニュース」より
2020年代中頃に作戦統制権を韓国に返還するのであれば、何処かのタイミングで作戦運用能力の検証というのは必要なのだろう。
記事をよく読んでも、どのタイミングでどのように返還されるかは記載が無いので、考えようによってはアメリカ側のサービストークという風に考えられる。
韓国としてはしてやったりだろう。
日本と韓国とは非公式な防衛大臣会談で失敗している。

こんな写真を撮られているが、韓国側としてはしてやったりだろう。良い悪いは別にして、韓国の場合、立場の上下を非常に重要視する。会談において、どちらが主でどちらが従であるかは、大変重要な問題なのだ。
岩屋氏がにこやかに身を乗り出して手を握っている一方で、韓国側はちょこっと手を出して手を握っているような形になっている。日本人感覚では何のことはない写真だが、韓国人に聞くとこれで大成功なんだそうで。
岩屋氏としては大失態だな。
アメリカとの関係は何とか良好に保ちたい
ところが、アメリカとの関係については、冒頭に報じたようなニュースを流す。つまり、米韓同盟は強固であるという印象操作だ。
また、ソウル・竜山の米軍基地の移転により、韓米連合軍司令部本部をソウル南方、京畿道平沢の米軍基地キャンプ・ハンフリーに移転することで合意した。
「Yahoo!ニュース」より
しかし、しれっとこんなニュースが伝えられているが、ソウルから平沢に米軍基地を移転した。
ソウルから平沢市までは概ね60km程度の距離があり、38度線からの距離は凡そ120km。つまり、少なからず北朝鮮の火砲は届かない距離にまで移転したという話になる。
ソウルに無ければ連合軍司令本部が機能しないなんてことは無いのだが、ソウルが火の海になったとしても平沢基地にあれば北朝鮮に対処可能である。
もちろん、KN-09のような多連装自走ロケット砲の弾は届く事になるので、安心とは言えないまでも、リスクが減ることは間違い無い。
ただ、ソウルにとってこの話はかなりリスクを高めた結果になる。ソウルに連合軍指令本部が設置されていれば、少なくともソウルを死守できるようにアメリカ軍は動かざるを得ない。ところが、それが無くなったことで、初動でソウルを守る動きになるか?と言う点に疑念が生じる。
つまり韓国にとってはかなりクリティカルな移転なのだが、作戦遂行の為には韓国軍としては飲まざるを得ない話でもある。
朝鮮半島の非核化
そして、これまたとんでもない事を言っているのが韓国の国防部である。
国防部は「鄭長官とシャナハン代行は最近の朝鮮半島の安保状況の評価を共有し、朝鮮半島の完全な非核化と平和定着のための両国の外交的努力を支えていくという公約を再確認した」とし、「北の短距離ミサイル発射について憂慮を表明し、北の核・ミサイル活動に対する情報共有を含め、さまざまな分野で緊密な協力を強化していくことにした」と説明した。
「Yahoo!ニュース」より
この「朝鮮半島の非核化」というのは、北朝鮮のロジックで、「在韓米軍は朝鮮半島から出ていけ」の意味だ。
それを韓国の国防部が口にするあたりが終わっていて、アメリカの国防長官代行を務めるシャナハン氏は、その話を冷ややかな視線で見たのかどうなのかは知らない。
だが、シャナハン氏にとって、というかアメリカにとって「朝鮮半島の非核化」はデメリットの少ない話。
実際に、作戦統制権を韓国に引き渡す積もりで、それを急いでいることがアリアリと見えているだけに、もはやアメリカは韓国を見限ったんだと、その様に考えてもおかしくない話なのだけれど。
シャナハン氏は会談前の冒頭発言で「われわれは相互間の安定に挑戦する北朝鮮の全ての活動を監視していく。われわれの戦略は完全な準備を備えていると考える」とし、「北朝鮮が国際社会が求める規範と規則を責任を持って順守するまで、制裁を徹底的に履行していく」と述べた。
「Yahoo!ニュース」より
更に言うと、シャナハン氏の冒頭の発言で、「制裁の徹底的な履行」を口にしている。しかしこの時点で韓国と見ている方向は異なっている。
いよいよ関係が壊れてきている気がしてならない。
コメント
>一方で、そんな状況下において、当初は連合国軍が作戦統制権(当時は作戦指揮権)
>を持っていたが、1978年に米韓連合司令部に承継される。
この部分に関しては「当初は国連軍が」のほうがよいかと思います。
「United Nations」は(WW2における)「連合国」の意味もあるので「連合国軍」と訳せますが、ちょっと問題あるかと。
ご指摘ありがとうございます。
確かに国連軍という方が正しいのでしょうが……、アレも正規の国連軍というわけでは無かったようですね。
言葉というのはなかなか難しいですね。
>作戦統制権の返還
なんか韓国の皆さんは、これにより「韓国の指揮下に米軍が入る」
と言ってはしゃいでいましたね。
米軍が韓国を撤退する準備だ、とは、あまり思わないようで。
「アメリカンスクールの閉鎖」について特に騒いでいなかったと記憶していますが、
「家族持ちの軍人(士官クラス?)がいなくなるかも」ということですから、
大きいシグナルに思えるんですけどね。。
形としては韓国軍の指揮下に米軍が入る様に思えますが……、実際にはそうなら無い気がします。
アメリカ軍が、他国の軍隊の指示を受けて動くわけが無いと、そういう風に思いますよ。
あと、アメリカンスクールの事も追記として書かせて頂きました。重要な情報ですね。
米韓同盟による在韓米軍の紛争介入には、議会の承認が必要となるみたいよ。つまり、国連軍として、駐韓していた米軍は、統帥権を韓国に渡した時点で、もう、国連軍ではなくなったと考えた方がいいかも。そして、もし万が一の事態が発生しても、責任は統帥権を持つ者となるなら、フリーハンドになったも同然かしら?こわい・・
議会承認は当然必要なんですよね。
しかし、それは多分、現状、有事作戦統制権を有していない韓国においても同じだと思うのですよね。
まさか、韓国議会、或いは韓国政府の承認を得ないで韓国軍が動く構造になってはいないでしょう。現実的には、アメリカに指揮権を丸投げして、それに従うという形にはなるんでしょうけれどね。
では、立場が入れ替わったアメリカ軍がどうするかというと……、アメリカの議会は韓国軍の言いなりになって動く在韓米軍の存在を許さない気がするんですよね。
この辺り、法的根拠を確認したわけでは無いので、正しいかは分からないのですが。
それが正しいとすると、米韓軍事同盟は維持する可能性は、まだ欠片ほど残っていたとしても、作戦司令部の存在はお飾りに成り下がる未来が見えているという事なのでしょう。
元々、米韓連合司令部の指揮系統は①南朝鮮大統領が国防長官を通じて統帥権発動→②合同参謀本部議長を通じて作戦指揮権を行使する→③米韓合同参謀本部は米韓の大統領と国防長官の指示を受け、戦略指針と作戦指針を米韓連合司令官に指示する→④米韓連合司令官はこれを受けて反撃作戦を遂行する、となっていたはずです。(Wikipediaから引用)
建前上とはいえ米韓連合司令部(在韓米軍司令官兼務)には有事といえども、在韓米軍単独で軍事行動を起こすことはできなかったと僕は解釈しています。(もちろんいざとなったらアメリカは許さないでしょうけど)
平時ならともかく有事(第二次朝鮮戦争)となったら、南朝鮮トップの判断次第で2.8万人の将兵が身動き取れず危険にさらされる可能性があるって事ですね。(特に今のトップが文クンなんですから余りにもリスクが高すぎ)
イマイチ役割が判らなかった横田基地の国連軍後方司令部なんですが、これはアメリカ太平洋軍の隷下にあり、危機にさらされた在韓米軍支援・在韓アメリカ人救援・戦争への直接介入を判断するのではないでしょうか。(国連の承認が必要とは思いますけど)
つまり、今の流れは南朝鮮の意向など無視して、「やる時はやるぜ!!」という外堀固め...。
韓米連合軍司令部本部を平沢基地に移動させたのは、朝鮮半島有事発生の時に国連軍に転換し、在韓米軍+在日米軍を動かすのが目的じゃないかなァ~。
在韓米軍2.8万人のうち陸軍2万人と極端な構成なんですが、その主力は平沢基地防衛と大邱基地に配備されています。
朝鮮半島有事には陸軍の前線配置は考えておらず基地防衛に特化、第7空軍による空爆で緒戦をしのいだ後に、在日米軍の空海軍+グアムの空軍による圧倒的制圧ってシナリオと想像しています。
南朝鮮は軍事主権回復などとハシャイでいる場合じゃなく、自前で防衛できなければ首都はもちろん38度線の都市も壊滅する危機にあると認識したほうがいいと思う。
おっと、Wikipediaにそんな事が書いてあったのですね。
平沢基地に米軍の機能を移動させた理由は、実効性を高めると共に、韓国軍と共に沈むつもりは無いという意思表示だと思います。
平沢基地からであれば、海路を使って陸軍を早期に撤退させることも可能ですから、状況悪化と見るや、本当に米軍が朝鮮半島からいなくなる可能性が高まったと、その様にも考えるべきのように思います。
韓国軍がはしゃぐような状況ではないというご指摘はその通りだと思います。
木霊さん、レスありがとうございます。
>平沢基地に米軍の機能を移動させた理由は、実効性を高めると共に、韓国軍と共に沈むつもりは無いという意思表示だと思います。
そうですね、ソウル&38度線防衛の主力である東豆川基地の第210火力旅団も平沢基地に撤退予定とか...、これで漢江以北には米軍はいなくなりますからね。
「アメリカ陸軍はソウルがどうなろうと知ったこっちゃない、平沢基地防御&撤収と在韓アメリカ人の避難が最優先」、と完全宣言した同然と思っています。
さてその際、南朝鮮軍はソウルや38度線に侵攻した北朝鮮の火砲や特殊部隊を単独で撃退できるのか、それとも朝鮮戦争で僅か2日で逃げ出した悪夢の再現となるのか...?
なかなか、興味深いところかな?
P.S.
>議会承認は当然必要なんですよね。
これは日米安保が発動される要件でもアメリカ議会の承認が必要なのと同じで、日本の平和ボケが無条件でアメリカが来てくれると妄信しているのですから笑えませんね。
有事が始まったら明日駆けつけてくれる訳じゃない。
特に支那の尖閣侵略なんかでは緒戦は日本単独で断固対抗し、その後にアメリカ参戦というシナリオしかない籠城戦すら成功しないでしょう。
はっきりしないアメリカとの同盟関係下でさえ(利用されている節もあり)、緒戦で国を守り切るという覚悟の台湾を見習うべきじゃないかな。
撤退の場合、それは北朝鮮との「平和条約」「朝鮮戦争の終結宣言」とバーターになりますか?
それはあり得ないような……議事から思うに、「撤退」は米軍属の「家族」らを後方に下がらせる……「先制攻撃可能」の手段であると思えるので。
ムンムンはしてやったり…と考えるでしょうが、撤退さえすればアメリカは先制攻撃できる。
後難の憂いなく……
すると横田基地にある「朝鮮国連軍」の後方指令部はどうなる?
確か朝鮮戦争時に「朝鮮国連軍地位協定」なる協定が結ばれているはず。日本は北朝鮮と戦う為の「多国籍軍」の一員で、この「協定」は未だ生きているはずです。だから横田基地に後方指令部が残存しているはず。
正式にアメリカと北朝鮮の間で
平和条約が結ばれるまでは、国際法上は「戦争」は継続してるですよね?
つまりこの地位協定も「生きて」いる事になる!
これが残る限り、アメリカは日本との安保条約による事前協議など抜きに「攻撃」できる!
そして我が祖国は、朝鮮国連軍に対して、ホワイトビーチ、嘉手納、普天間、佐世保、横須賀、座間、横田の基地を提供する義務がある!
いや、パヨク的に「米軍かいるから狙われる」理論でなく。
70年以上、アメリカの核の傘で繁栄してきた以上、筋として協力せざる得ない!
当然に「備え」るべきです!
必ず標的にされてますから!
ムンムンは「攻撃ある時には北朝鮮へ伝える」と裏切り発言を公にしてますからね。
そういう危機的な状況下ですから、朝鮮国連軍が解体されるのか、継続するのか?
そこは脱半島が確実になった以上、注目して耳を長くしないと!