パキスタンのグワダル港の高級ホテルが武装グループに襲撃される

アジアニュース

良いタイトルが思いつかなかったので、ニュースの内容そのままなのだけれども、何の話かピンとくる方はいるだろうか?

ニュースのタイトルを読んだら、直ぐに分かるかも知れないが。

中国「一帯一路」重要拠点で武装襲撃 5人死亡 パキスタン

2019年5月12日 22時49分

中国が、巨大経済圏構想「一帯一路」の重要拠点として開発を進めるパキスタン南西部のグワダル港で、高級ホテルが武装グループに襲撃され、ホテルの従業員など5人が死亡しました。この襲撃について地元の武装グループは「中国や外国の投資家を標的にした」とする犯行声明を出しました。

「NHKニュース」より

さて、僕自身はノーマークの地域だった事もあって、基本的な事柄からよく分かっていないので、少しずつ行きたいと思う。

パキスタンは支那との仲が良い国

パキスタン・イスラム共和国

パキスタン、パキスタンと呼ぶのだが、正式名称は「パキスタン・イスラム共和国」という。

名前を聞くとちょっとギョッとするね。

地理的にはインドと支那に隣接する国にあり、意外なことに今なおイギリス連邦に加盟している国である。

インダス川流域の国という国もあって、その歴史も古いのだが、英領インドとしてイギリスに統治されていた時代に、イスラム教徒とヒンドゥー教徒を分離するために、イスラム教徒の土地として分離独立する形になったのが、今のパキスタンである。

そして、インドとパキスタンは対立するように宿命付けられた。歴史的な経緯は色々あるのだけれど、敵の敵は味方というロジックでパキスタンは支那と近づくことになる。

よって、パキスタンは、アメリカと支那との協力・同盟関係を維持しながら、カシミール問題でインドと激しく対立するのが現在の立ち位置なのである。

パキスタン陸軍は世界7位の規模

インドとパキスタンの国力の差は国土面積を比べても大凡理解出来る所があると思うが、パキスタン陸軍は世界7位の規模、インド陸軍は世界2位の規模、という事になっている。

ただし、この兵力差を埋めるためにパキスタンは核兵器を保有している。まあ、インドも持っているけどね。

……パキスタンもインドも国際色豊かなのだが、この辺りに突っ込みを入れると長くなってしまうので止めておくが、なかなか興味深いのは事実。

そして、そうした兵器を導入する為にはアメリカ、ロシア、支那などと様々な関係を持っている。

支那に侵食されるパキスタン

しかし、パキスタンにとって支那に近づきすぎることは良いことばかりでは無い。

焦点:パキスタン海洋拠点に賭ける中国、巨額投資の落とし穴

2018年1月3日 / 11:28

パキスタン南西部の小さな港町グワダルに、中国は惜しみなく巨額の援助を与えている。地元住民の心をつかみ、商業用の深水港を建設するためだ。しかし米国とインドは、この港がいずれ軍事用に利用される可能性があると危惧している。

「ロイター」より

そして、狙われているのが冒頭のニュースにも出てきたグワダル港である。

このグワダル港には支那の巨大資本が投入されて近代化が進められている。

この埃っぽい港町に、中国は学校を建設し、医師を派遣。さらに約5億ドル(約565億円)の無償資金協力を通して、新たな空港や病院、大学、そして切実に必要な水道インフラを整備すると約束している。アラビア海に突き出たグワダルの港は、石油や天然ガスを運搬するタンカーが往来する、世界で最も混雑した航路に面している。

インフラ整備を約束されていると記事には書かれているが、ここに書かれている意味は、多数の漢人をこのグワダル港に招くという意味であり、将来的に支那の直轄地になる可能性が高い。

この無償資金協力には、新国際空港の建設費2億3000万ドルが含まれており、これは中国が海外で行う支援の中でも最大級のものだと研究者やパキスタン当局者は指摘する。

グワダルにおける中国の積極的な支援姿勢は、他国で見せる普段のアプローチから一線を画している。かねてより西側諸国の援助スタイルを軽蔑する中国は通常、国営商業銀行や開発銀行を介した融資提供によるインフラ整備プロジェクトを重視してきた。

こうした大規模な施設を作り、更に漢人を送り込む。そして気がつくと漢人達の街が出来上がっているという具合になる。

借金を払えないパキスタン

しかし、巨額の融資を支那から受けたパキスタンは、その借金を支払えない状況になっている。

「一帯一路」で中国が開発進めるパキスタン・グワダル港は今

2018年12月14日(金)

酒井 「中国が掲げる巨大経済圏構想『一帯一路』。 巨額の中国マネーで、港や鉄道などのインフラ整備を各国で進めてきました。 しかし、その債務が返済できず、一部の国々では、プロジェクトの縮小や中止の動きも広がっています。」

花澤 「一帯一路に『逆風』が吹く中、中国が今、力を入れて開発を進めているのが、パキスタンのグワダル港です。」

松岡 「パキスタン南西部にある、グワダル港。 中国は、このグワダル港と中国西部の新疆ウイグル自治区を結ぼうとしていて、『一帯一路』の重要な1区間として位置づけています。 中東からの石油を運ぶ主要な交通路、ホルムズ海峡までおよそ600キロほどの距離にあり、中央アジアやインド洋の玄関口としても重要な位置にあります。

海上と陸上で交通路を確保し、石油などの資源を安定的に、中国まで輸送することを目指しているのです。 このグワダル港の開発に投じられた金額は、わかっているだけで、日本円でおよそ320億円。 このうち8割近い、およそ250億円を中国が負担し、およそ40年という長期にわたり、港湾の管理権を取得しています。 パキスタン軍の厳重な管理下にある、このグワダル港にNHKのカメラが入りました。」

「NHK BS1 ワールドウオッチング」より

巨額の費用をかけて港が開発され、その資金をパキスタンが支払えないので、長期間にわたって港湾の管理権を支那に渡さなければならない状況になっている。

反対する勢力の存在

流石に危機感を覚える

こうした状況に対して、パキスタン政府もかなり危機感を抱いてはいる様だが、しかし、巨額の開発費には抗えないという事になっている。

パキスタン南西部バロチスタン州にあるグワダル港で11日、中国人宿泊客も利用する高級ホテルが武装グループに襲撃されました。

パキスタン軍によりますと、武装グループは3人で、ホテル内で無差別に銃撃を行ったあと駆けつけた軍の兵士らと銃撃戦になったということです。

この襲撃でホテルの従業員と軍の兵士の合わせて5人が死亡し、グループのメンバー3人も殺害されました。 宿泊客は避難して無事でした。

そして、支那人達が宿泊する高級ホテルを襲撃する事件が発生。

この襲撃について、地元バロチスタン州の独立を目指している武装グループが「中国や外国の投資家を標的にした」とする犯行声明を出しました。

この手の武装グループが無差別テロを行う手法は、イスラム辺りではそれほど珍しくない。

地元の独立を目指している武装グループという、割とトンチンカンな主張のように感じるが、やっている事はかなり本気のようだ。

パキスタン中国領事館を武装勢力が襲撃 市民ら4人死亡

2018.11.23 19:45

 【ニューデリー=森浩、北京=西見由章】パキスタン南部カラチで23日、武装集団が中国総領事館を襲撃し、地元メディアによると、市民と警察官計4人が死亡した。武装集団の3人も射殺された。中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」関連事業に基づき、約620億ドル(約7兆円)をパキスタンに融資するが、同時に中国人や企業が標的となる事件も相次いでいる。

「産経新聞」より

こちらの襲撃も、この武装グループが引き起こしたということらしい。

パキスタンで経済危機

こうした背景には、支那が札束でパキスタンを叩くようなやり方をしている反面、パキスタンの経済が悪化している事も関係しているようだ。

経済危機深まるパキスタン、一帯一路で泥沼に

2019/04/04 03:25

 中国の広域経済圏構想「一帯一路」は、同盟国パキスタンの経済を活性化し、双方に恩恵をもたらすはずだった。

 ところが、パキスタンは今や経済危機に陥り、620億ドル(約6兆9100億円)規模の中国関連プロジェクトは半分も進まないまま建設にブレーキがかかっている。中国によるインフラ構造物は全て中国国有企業が建設しているが、パキスタン政府は中国政府の融資に対する返済保証を義務付けられている。

「msnニュース」より

何が問題かというと、支那は経済支援もするが、支援と言う名の借金をパキスタンに押し付けた挙げ句、建設業者は作業者も含めて全て支那企業が入り込む構造になっている。

つまり、パキスタン側には殆ど経済効果が無いのである。

パキスタンはここへ来て、異なる戦略の導入を中国に求めている。約10億ドルの開発支援金と、中国民間企業による工場開設だ。

パキスタンも流石に気がついたようだが、しかし、支那の民間企業による工場開設などというトンチンカンなことを言っているが、支那の企業は総じて支那共産党の支配下にある。

 カーン氏は自らの優先政策に沿って対中関係の重点を定め直し、とりわけヘルスケアや教育といった分野で返済不要の従来型の開発支援を獲得したい考えだ。パキスタン政府は膨張する債務を抱え、財政と国際収支の二重の危機に直面している。

 パキスタン政府の分析によると、これまでに実施したプロジェクトだけでも、向こう20年で中国に400億ドルを返済しなければならない。パキスタンは足元の債務危機について、中国の融資とは無関係だと述べている。

パキスタンの首相、カーン氏は相当なポピュリストだと言う話だが、ここまでお花畑だと清々しいな。

武装グループのやり方は、市民を巻き込むテロ行為であるので、凡そ容認できる話では無い。

ただ、支那のやり方に対して嫌悪感を持っているパキスタン人は少なくないようで、この状況が炎上していけばパキスタンとしてもただならぬ状況に陥る可能性が高そうだ。

元首相が暗殺されるような事件も

カーン氏はパキスタン正義党という弱小政党のトップだったが、ここ数年で大躍進を遂げて、今や第1党であるらしい。しかし……、こんな事件もあった。

イスラム圏で初の女性首相暗殺、パキスタン民主化難航

2007年12月29日 12時20分

少し前に亡命生活を終結し帰国したパキスタンのベナジル・ブット元首相は、12月27日にイスラマバード郊外のラーワルピンディーでの選挙集会にて暗殺され死亡した。享年54歳。

インドのガンジー家同様に、パキスタンのブット家は世界の政治舞台では名門。ブット元首相の父親は民主独立のパキスタンを築いたが、最終的に自国民に首吊りさせられた。ブット元首相も同様に自国民に殺害され、パキスタンの民主化への希望が潰された。

「THE EPOCH TIMES」より

なんともきな臭い話だが、パキスタンで初の女性首相が誕生したのが1988年。ところが、首相に選出されたから20ヶ月後には汚職を告発されて解任されるに至る。この疑いが晴れたかどうかはよく分からないが、1993年には再び選挙によって首相に返り咲いている。が、1996年に再び汚職を告発され失脚。

その後、再び首相になることを目指していたようだが、2007年に選挙集会に参加中に暗殺されるに至る。その首謀者はアルカイーダだと言われているが、ハッキリしない。

なお、彼女はアーリー・ブット氏の娘なのだが、ズルフィカール・アリー・ブットー氏は1971年から1979年までパキスタンの首相を務めた人物で、クーデターによって失脚した後、死刑となっている。

そして、今も選挙がきな臭い

そして、民主化の兆しのあったパキスタンだが、それは費えた。ただし、選挙で首相が選ばれるというスタイルは、今でも採られているらしい……、が。

パキスタン総選挙、野党カーン党首が勝利宣言 対立候補は不正選挙主張

2018年07月27日

パキスタンで25日に実施された総選挙で、野党・パキスタン正義運動(PTI)を率いるイムラン・カーン氏が26日、勝利宣言を行った。一方で、対立候補らは不正投票があったと非難している。カーン氏はクリケット界の大スター選手だった。ワールドカップに優勝したパキスタン代表チームの主将も務めた。

カーン氏は26日、首都イスラマバード郊外にある自宅からテレビ演説し、「我々は成功し、国民に信任された」と述べた。

それでも、カーン氏が率いるPTIは過半数議席には達しない見通しで、政権樹立には連立パートナーを模索しなければならない。

今回の選挙は、暴力事件が相次いだ。選挙当日の25日には投票所で爆発があり、31人が死亡した。

富裕階級出身でカリスマ性あふれるカーン氏は、パキスタンが優勝した1992年のクリケット・ワールドカップで代表主将だった。かつてはプレイボーイな有名人として知られていたが、そのイメージはかなり前に払拭した。最近では、パキスタン軍の介入によって選挙戦で有利になったと批判されている。パキスタンは核を保有している。

選挙結果の公式な承認はまだされていない。

リンク切れ

カーン氏が首相に選出された際にも、どうにもきな臭い動きがあったようだ。カーン氏は、首相になる前から軍部との深い繋がりが指摘されているが、パキスタン軍は支那との親和性が高い。故に、支那の金銭的なバックアップでパキスタン正義党が躍進できたとしたならば、支那からの影響より逃れられるハズも無い。

今や、パキスタンは経済危機寸前で、IMFのお世話になる直前の状況なのにも関わらず、支那からの借金を増やすことで経済に悪影響を深めているのが何とも皮肉な話である。

とはいえ、支那からの資金流入がなければそもそも立ちゆかないという状況になっている事を考えれば、まあ、止むに止まれない状況といえるかも知れないね。

パキスタンの事態早期収拾の裏に

ただ……、今回はさっさと事態収束を図ったのだが、事態が長引けば別の展開も考えられた。

パキスタンでホテル襲撃 武装組織「中国人ら標的」

2019/5/12 15:29 (2019/5/12 21:14更新)

~~略~~
BLAは2018年11月にはパキスタン南部カラチにある中国総領事館を襲撃し、犯行声明を出していた。グワダルはパキスタンを縦断するインフラ整備事業「中国パキスタン経済回廊」(CPEC)の南端で、中国が港湾や周囲の経済特区を開発した。同ホテルは中国人ビジネスマンも頻繁に利用し、パキスタンの治安当局は警備体制を強化していた。

今回の襲撃を巡り、宿泊客らの避難が完了した11日夜には一時「ほぼ鎮圧した」との情報が流れた。カーン首相も鎮圧前の12日朝に「治安部隊の初動のおかげで大きな被害を避けられた」と声明を出した。実行犯らに治安部隊の動きを把握されないよう情報統制するとともに、早期の事件収束を中国などに示す狙いがあったとみられる。

「日本経済新聞」より

このニュースには直接的に指摘されていないが、支那がパキスタン内での支那人を狙ったテロに対してかなり神経を尖らせているという話が漏れ聞こえてきている。

場合によっては事態の収拾に支那が直接的に乗り出してくる展開というのもあるのかも知れない。

支那への不満が高まっていることは、カーン氏も理解しているかもしれないが、支那からそっぽを向かれるのも困る訳だ。

しかし、支那領事館襲撃事件も今回の高級ホテル襲撃事件も、支那人が犠牲になったと言う情報は見受けられない。何となく、違和感の残る話である。何か裏があるのか?と勘ぐってしまうが、情報をしっかり集めていないせいかな?

コメント

  1. 河太郎 より:

    不穏な国のホテル宿泊

    フロント団体時代に現地スタッフやストリンガー(フリーの報道カメラマン)や「本社」の方に教わった話です。
    ①宿泊は2階か3階に。
    ②1階ならばロビーから離れた部屋。
    ③吹き抜けの階段室(非常階段)の付近に部屋を取らない。
    理由)
    ①途上国の消防梯子車は中層まで梯子が届かない旧式が多く、ダウンタウンだと長い梯子車でも、梯子を伸ばすポイントを狭い路地で取り難い。
    ②テロリストは大抵、1階ロビーを真っ先に制圧する。また途上国の治安部隊は乱暴で、そこに突入してくる事がある。
    ③これ廃墟でサバゲー経験ある方なら解ると思うですが、吹き抜けの階段室・屋内非常階段は奇襲や拉致に便利なのです。
    なお路上でドンパチに遭遇した場合は、車陰を盾にしない。
    小銃弾は簡単に車両を貫通します。
    エンジンルーム側ならば貫通しませんが、ガソリンタンクに引火する可能性はあります。密度と重量のある遮蔽物でないと盾になりません。

    • 木霊木霊 より:

      何とも貴重な含蓄をありがとうございます。
      こうした知識が役に立たないことを願いたい所ですが、案外沖縄や北海道など日本の観光地も危ういですよね。
      ①~③あたりは国内でも通用する知識のような気がします。
      知識として覚えておきたいと思います。
      非常階段から近いのがデメリットになるというのは、皮肉な話ではありますが。

  2. マスメディア反乱軍 より:

    木霊さん、おはようございます。

    これって規模は判りませんが、確実に支那とそれに擦り寄る現政権に反発するグループがあるって事ですね。

    動機は不純な感じもしますし一般市民を犠牲にする無差別テロは決して容認できない。

    それはともかくパキスタンの置かれた現実はお陰様で理解できました。
    支那による「一帯一路の債務の罠」にまさにズブズブにハマった国...、この先どうなる事やら不安材料なのは確かです。
    そして、今回の事件に何らかの裏がありそうな感じも拭えません。

    インドが元々日本の提唱した「インド太平洋構想」で安保と軍事協力でアメリカに近づいて来ていますが、アメリカも簡単にパキスタンを見捨てられないのかなァ~? 是々非々的な距離間を持って対応って事でしょうね。
    イランへ12万人規模の戦力投下とかいうニュースも入ってきていますから、「世界の警察を辞めた」とはいいながらアメリカもアジアに注力できないタイミング。

    こういう股裂き状態に付け込むのが狡猾なロシアや支那ですから、北朝鮮を含め予断を許さない状態が続きそうですね。

    アブナい、アブナい...。

    • 木霊木霊 より:

      このパキスタンの話はウラがとりにくいので、果たしてどんな現状なのかと言うことは一概に言いにくいのですが、支那に近づきすぎたのはパキスタンにとって不幸だったとは思います。
      アメリカもロシアもインド、パキスタンというのは手を伸ばしたい場所だと聞いています。
      アメリカにとっては日本とセキュリティダイヤモンド構想を実現する上で、インドは外せませんし、インドが一筋縄ではいかな国であることを考えればパキスタンとも手は切れません。
      ロシアにとっては支那と事を構えるリスクを考えると、挟み撃ちの状況を作れるインド、パキスタンとの関係は無視が出来ないのですよね。
      支那にとっては、自分の土地だ、くらいの認識かも知れませんが……。