香港の窮状と台湾の焦り

アジアニュース

深く掘り下げるのは難しいが軽く触れておきたい。

昨日の僕のtweetなのだが、香港ではかなり大掛かりなことになっているようだ。

そもそも、このブログの読者であれば詳しくご存じの方も多いだろうから、敢えて解説していくのもどうかとは思う。

ただ、話しの整理をしておきたいので少しお付き合い願いたい。

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香港とイギリスの関係

アヘン戦争から続くイギリス支配

昨日の話題とも関連する話だが、香港という土地はアヘン戦争に深く関わっている。

アヘン戦争(1840年~1842年)の結果、イギリスは支那を破り香港を植民地とする。南京条約(1842年8月29日調印)ではイギリスが支那に自由貿易を認めさせ、上海、復習、広東、福建、浙江の5つの港を自由貿易港と定めて、清国は多額の賠償金を支払う羽目になった。

翌年には治外法権、関税自主権の放棄、最恵国待遇条項承認などが定められ、これに便乗したアメリカやフランスも不平等条約を結ぶに至る。

このお陰で清国はその力を大きく割かれることになり、更にアロー戦争(1856年~1860年)に突入し、日清戦争(1894年~1895年)を迎え、清国滅亡(1912年2月12日)に至る。

こうした清国滅亡に至る過程で、イギリスの植民地となった香港には多数の難民が流れ込み、あの有名な九龍城砦が出来上がっていくことになる。

雑多な都市が築きあげられる香港だが、英国統治は1997年まで続くことになる。イギリスが香港返還の相手として中華民国では無く中華人民共和国を選んだ事が、香港の不幸を招く事になるのだが、支那共産党はイギリスから返還された香港を一国二制度の原理の元に統治することになる。

香港の司法機関はコモンローの枠組みで

イギリス統治下で香港は徳治の文化を開花させていくのだが、イギリスにとって香港はアジアの貿易拠点であるため、香港には多くの富が集中することになる。

そして幸いなことに、香港はイギリス統治下にあってイギリスが植民地として遠隔地をコントロールする財力を失っていたので、イギリスが香港に整備した法体系が香港という地域を形作っていく。

自由貿易港を擁するたった1,104km2程度の面積しか無い香港に、これだけの富が集まった理由は、イギリスの整備した法体系、コモンローは、法の支配と司法の独立が約束された制度であり、いわゆる民主主義の国に近い形を維持できたのはこのコモンローのお陰ともいえよう。

また、この司法の独立を香港総督と呼ばれるイギリス政府により任命され香港を統治した人物が大切にし、返還された後は香港特別行政区行政長官がその後任を請け負ったからこそ、イギリスやフランス、アメリカも香港を民主主義の地域として扱い、日本も含めた多くの国々が独立した地域として認識している。

ただ、現在の香港特別行政区行政長官には親中派を共産党から送り込まれる事になっているので、この枠組みは破壊されつつある。

形としては2047年まで資本主義システムが継続して採用されることになっているが、既に形骸化しつつあるのが嘆かわしい。

六四天安門事件の影響

六四天安門事件(1989年6月4日)の話は、このブログでも紹介させて貰った。

天安門事件の切っ掛けは、「百花斉放・百家争鳴」を提唱した胡耀邦の死を追悼する目的で学生達が騒ぎ出したことだった。

「百花斉放・百家争鳴」は支那共産党に対する批判を歓迎するという趣旨であり、この趣旨に基づいて行われた政治運動は百花運動(1956年~1957年)は共産党によって潰され、後にこの運動に関わった人物は弾圧されることになる。

しかし、この「百花斉放・百家争鳴」は毛沢東が口にした話で、毛沢東が自らの権力の揺らぎを感じて、外から知恵を組み入れようという事を考えたと言われている。ただ、毛沢東が反対派を炙り出すための巧みな罠を仕掛けたという説の方が有力だな。

この「百花斉放・百家争鳴」を再び定昇したのが胡耀邦であり、支那の言論の自由を推進しようという思惑があったといわれている。胡耀邦は支那の近代化を目指したと言われているが、それが元で失脚してしまうのだから、支那における民主化というのは相当険しい道のりであると言わざるを得ない。

支那の民主化が幸せかどうかは怪しいが、自由な言論をある程度許容する事は人民にとってのガス抜きをする上でも重要ではあると思う。

今の習近平氏の方針のように、「俺を中華皇帝として崇めよ」「反対する奴は弾圧してやる」というようなスタイルは、決して長続きしないだろう。せめて集団指導体制に戻すべきだと、その様に思うが、まあ、無理だろう。

さておき、この天安門事件を切っ掛けに、百花運動に関わった知識人達は海外に逃亡する流れとなり、香港や台湾を一時的な、或いは最終的な避難場所に選んだ人々は多かったようだ。

雨傘革命

しかし、2014年9月26日の香港で市民団体が中心となったデモ活動が行われることになる。

このデモは、香港の高校生と大学生を中心とした「真の普通選挙」を求める大学内で行われた座り込みが中心となり、それが香港の繁華街や商業エリアの占拠へと拡大していった。

もちろん、この活動にかつて天安門事件を切っ掛けに香港に逃れた人々が関係していたことは想像に難くない。

この運動を武力をもって鎮圧したのが警察組織と支那の人民解放軍である。

雨傘運動で鎮圧されるデモ隊

どのような鎮圧方法を使ったのかは調べて頂ければ分かるが、一説によると装甲車の投入まで計画されていたと噂されている。

香港郊外に当時用意されていた装甲車

これが如何なる画像かはハッキリしなかったのだが、当時は「投入準備か?」と噂されていた。

何故こんな騒ぎになったのか?というと、香港の選挙委員会が「立候補資格制度」が導入されて、「特定の条件を満たしていないと、行政長官に立候補できない」というシステムを採用したのである。

もともとは香港総督を務めたクリストファー・パッテン氏が導入した選挙制度改革の一環で、立法局における総督任命議員を間接選挙に切り替えるためのものだった。しかし、香港特別行政区基本法が改正されて現在は行政長官を選ぶ手法として機能し、その選挙委員会のメンバーは支那共産党の息がかかった人々になった。

その上で「特定の要件」つまり共産党員でなければ立候補できないというような形に変えられてしまったのである。

2019年香港反政府デモ

そして、その上で今回導入が計画されているのが「支那本土への犯罪容疑者引き渡しを可能にする条約改正」である。

「容疑者引き渡し案は引っ込めない」 デモ翌日、香港の行政長官が断言

2019年06月10日

中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする条例改正案に反対する大規模デモが開かれたことを受け、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は10日、条例改正案を取り下げる考えはないと記者会見で表明した。

前日9日に開かれたデモ行進には、主催者発表で約100万人、警察発表で24万人が参加。7月までに条例改正にこぎ着けたいラム氏に、香港市民が断固たる「ノー」を表明したものと受け止められている。

「BBC」より

今のところ支那傀儡の行政長官は、条約改正案を取り下げる積もりは無いようだ。

会見でラム氏は、条例改正は必要であり、人権保護の対策は準備されていると説明。香港の自由が侵害される恐れはないと主張した。

また、改正案は「北京が主導したものではない」と述べ、「良心」と「香港への責任」から提案されたものだと強調した。

「BBC」より

共産党傀儡の人物の「良心」の言葉を信じられるか?といわれるとかなり疑わしく思うより他無いわけで、それがデモを更に加速させる事になるようにも思える。つまり、現段階で長官はデモ収束の為に膝を屈するつもりは無く、つまり民意を汲むつもりは無いと、明言したことになる。

コメント

  1. 河太郎 より:

    第二の天安門事件に発展したら??

    対岸の火事でなく、木霊様が指摘されるように台湾の選挙いかんでは現実化しかねないです。
    さらに本土の思想弾圧的な法律で、
    周庭氏らのグループにカンパしただけで、不当逮捕されてシナ本国へ送られて拘禁される……になりかねない!

    • 木霊 より:

      習近平氏の焦りがあるのか、かなり強硬な感じで推し進めている気がしますよ。
      どうなっているんですかね、支那の内情は。

  2. マスメディア反乱軍 より:

    >彼自身は民主主義についてコストがかかりすぎる無駄なシステムだと断じていて、まあ、それは事実なのだろうが、その視点は完全に独裁者のそれだと思う。

    台湾国民にとって今回の香港の騒ぎは政権選択のポイントになるよう期待したいもんですね。
    また、直近の世論調査で支那の「一国二制度」反対は8割以上となったそうで、つい先日のはアメリカが「国家」と表記した様で、これにも良い効果が盛り上がればいいと思っています。

    >これ、香港に旅行していた日本人が香港で逮捕されたら支那で有罪になるなんて展開がありうる。
    >つまり、この話は観光でも大きな利益を得ている香港にとってもかなりヤバイ話になるし、台湾でも対岸の火事という話では無い。

    マカオと合わせてアジアの国では気軽に行ける近場であり、観光資源も魅力的な国なんですが、ご指摘の様な事態を想定したら敬遠する観光客も増えるかもですねェ~。

    >ただ、だからこそアメリカが邪魔してくる可能性は高く、二国間での軍事同盟締結は実現性としては薄い。だが、ここにアメリカを加えた三国同盟と言うことであれば、また話は変わってくる。

    新三国同盟ですか...、EU離脱大混乱で経済がヤバイ状況のイギリスと、露骨に脱退を焚き付けるトランプ大統領ですし、イギリスのTPP参加なんかが契機となるやもしれませんね。

    それにしても支那も(というかキンペー)も相当焦っているのか、武装警官が催涙弾まで使い始めた様です。
    スマホで一瞬にして動画が世界中に拡散する時代ですから、支那だって天安門事件の様な殺戮はやれないと自制する事を祈りますが、ルール・常識無視の独裁国家なんで楽観はできないのが怖い。

    • 木霊 より:

      SNSで拡散するリスクを冒してまで弾圧に入っていますから、危機感が足りないのか何なのか。
      焦っている、ということかも知れません。

  3. まり より:

    トランプ師匠は、香港は中国と話し合い解決できると、報道あり。一国二制度で、あくまでも中国内での出来事。
    同盟関係とは、本当に大事な事。
    壁が台湾から、香港にランクアップされ、貿易戦争から、文明や価値観の対立にステージが変更された。この地においては、経済不景気のイギリスが主役として、登場するかしら?そういえば、日本と武器弾薬の防衛協定を結んでなかったかしら?

    • 木霊 より:

      香港をトランプ氏が守る気があるのか無いのか。
      ステージ変更といっても、イギリスが乗り込む事態にはならない気がしますよ。どちらかというと、イランの方に首を突っ込んでいる感じです。

  4. マスメディア反乱軍 より:

    来年の台湾総統選民進党の予備選で現職の蔡総統が選ばれましたね。
    香港のデモが追い風になったところも確実にあるでしょうが、時局に乗ってアメリカをジワジワと引き付けてきたのも大きいでしょう。

    さて、アメリカはほぼ公式に台湾を「国」と認知したニュースもあり、いつまでも自国ファーストでは済まない責任を台湾と台湾国民に示す必要があります。
    インド太平洋戦略の要衝東シナ海の防衛に台湾を都合よく利用するつもりだけなら、隙を突かれ一挙に支那包囲網の破綻は台湾からとなるかも...。

    日本が香港問題にも消極的であり台湾との距離もまだまだあります、イニシアティブを発揮してアメリカを牽制するくらいでないといけないと思いますが...、今は支那との友好を優先させたいのでしょうか?

    P.S.
    それにしても、7人に1人がデモに参加とは(政府発表は20万人少し)、日本の人口比に換算すれば1700万人くらいになります。
    これほどの民意を黙殺する支那共産党の恐ろしさですね。

    • 木霊 より:

      おおそうですか。
      蔡総統で行くのですか。
      リスクには違いありませんが、さて、どう責めていくのでしょうね。
      アメリカが台湾を「国」と扱った辺りも関係している気がしますが、誰がシナリオを書いているんですかね、これ。