外国製のアプリに関してのリスクというのは割と色々なところで言われているのだが、日本でも人気のアプリ「TikTok」がアメリカで違法性を指摘され、そして「TikTok」を作って運営しているバイトダンスという企業がアメリカ当局と和解したというニュースがあった。

恥ずかしながらスルーしていたニュースだが、これ、考えようによってはヤバイ話だね。
ティックトック罰金6.4億円 児童情報の違法収集 米当局と和解
2019.4.22 09:24
動画配信アプリ「TikTok(ティックトック)」の児童の個人情報の違法収集問題について、運営側が米連邦取引委員会(FTC)との間で和解したことが分かった。運営側は和解条件として570万ドル(約6億3800万円)の罰金を支払う。児童のプライバシーをめぐる制裁金としては過去最大規模となる。
「SankeiBiz」より
報じられたのは昨日だが、ニュースそのものの存在を知ったのはもう少し前の話。ただ、これがどう言う話なのか?ということはよく考えてもみなかった。
アメリカと支那の貿易戦争
先送りされる結論
そんなに簡単に結論が出る話では無いと思っていたが、それでも今年の3月には何らかの方向性が出るとその様に言われてはいた。
米中貿易協議は予定調和の「先送り」——まとまらない対中強硬策に焦るトランプ大統領
Mar. 01, 2019, 05:00
2019年2月24日、トランプ米大統領は3月2日に予定していた中国製品に対する追加関税の引き上げを見送り、3月下旬ごろ習近平・中国国家主席と会談して交渉決着を目指すと表明した。
トランプ大統領は2020年11月の大統領選を見据え「中国の不公正貿易に立ち向かう大統領」を演じたいはずであり、「中国に対しては生かさず殺さずの扱いを進めるはず」というのが既定路線であった。この点、今回の先送り(しかも期限の明記無し)は極めて予定調和な結果であったと言える。
「BUSINESS INSIDERS」より
しかし、それは先送りされることになった。

アメリカ側が期限を切ったのに、何故か先送りしてしまうあたり、簡単に結論が出る話でも無いのだろう。
USTR代表、法律顧問の交代発表-米中貿易協議大詰め控え
2019年4月23日 10:55 JST
トランプ米大統領の貿易交渉チームを率いるライトハイザー通商代表部(USTR)代表は、米中両国の貿易合意が大詰めを迎える前に、対中交渉などでこれまで重要な役割を果たしてきた法律顧問を失うことになる。
「Bloomberg」より
そして、アメリカの体制もぐらつき始めてしまい、結論は更に先延ばしされる可能性もある。
ファーウェイ、逆襲する
さて、貿易戦争の表向きの問題点は、貿易不均衡による巨額の赤字だとその様にアメリカは主張しているが、それは物品だけに留まらず、実際には技術が流出しているのが一番の問題だと考えている。
いわゆる知財権の問題だ。
逮捕されたファーウェイCFO。創業者との親子関係隠し、受付嬢から後継本命に
Dec. 07, 2018, 05:20
米中首脳会談で貿易戦争が“一時休戦”したかと思われた矢先、ファーウェイの孟晩舟(Meng Wanzhou)CFOがカナダで逮捕されたことが明らかになり、“ファーウェイ・ショック”が世界に広がっている。孟CFOはファーウェイ創業者・任正非(Ren Zhengfei)氏の長女でもあり、2018年3月に副会長に任命されたことで、後継者候補の筆頭と目されるようになった。
「BUSINESS INSIDER」より
ファーウェイのCFOがカナダで逮捕された話は世界中を駆け巡ったが、逮捕容疑はマネーロンダリングの疑いであった。ただ、アメリカからの依頼でという線が濃いように思う。
ファーウェイ、アメリカ政府を提訴 – 国防権限法が憲法に反すると主張
2019/03/07 18:58
中国Huawei TechnologiesとHuawei Technologies USAは、米テキサス州にある東部地区連邦地方裁判所に対して、米政府の憲法違反を問う提訴を行ったと発表しました。企業の米国事業を排除する2019年度国防権限法(NDAA2019)の889条がHuaweiを狙い撃ちにしており、米国憲法に違反している、というのがその主張です。Huaweiの取締役副会長兼輪番会長の郭平氏は、訴訟提起は「最後の手段」と強調。899条の撤回を求めています。
「マイナビニュース」より
そして、それに抗議するような形で、ファーウェイはアメリカ政府を提訴。
割と無理筋の訴訟ではあるが、時間稼ぎには意味があるだろう。
そしてもう一つが興味深い。
ファーウェイCEO、アップルに「5Gモデム」提供可能と発言
2019/04/18 06:00
競合のアンドロイド端末メーカーらが、先を争って5G端末を市場に投じようとする中で、アップルの5G端末のリリースは2021年までずれこむ可能性がある。
アップルは長年に渡るクアルコムとの紛争に決着をつけたことで、来年にはクアルコムから5Gモデムの供給を受けられるかもしれない。一方で、アップルが当初5Gモデムの供給元として期待を寄せていたインテルは、アップルとクアルコムとの和解が報じられた直後に、5Gモデム事業からの撤退を宣言した。
「Forbes」より
記事にもある通り、appleがこのファーウェイの提案を受けるはずはないのだが、しかし、appleとクアルコムとの関係は宜しくない。appleは5Gに早く移行したけに選択肢としてはアリだろうが、しかし一方でappleはアメリカ国内で商売することを考えれば、ファーウェイからのチップ受け取りは現実味がない。
ファーウェイなりの復習だろう。
CIAもここに参戦
更にこの話にはCIAが参加する。
米CIA、ファーウェイが中国諜報当局から資金取得と主張。ファーウェイはコメントせず
2019/4/23
米国中央情報局(CIA)が、中国の通信機器メーカー・ファーウェイが中国の国家安全保障当局から資金提供を受けていると主張しています。資金提供元として名前が挙がっているのは人民解放軍、中央国家安全委員会、国家情報網”第三支部”など。
「engadget」より
これ、CIAが指摘するまでもなく、当然なのだ。
だって、ファーウェイは支那の国営企業(支那の企業は漏れなく国有ではあるが)で、CEOは軍人上がりの人物。
それも只の軍人ではなく、まさにエージェントじゃないの?というレベルの扱いの人物である。まさか無関係と言う方が無理がある。支那からの国策としての企業支援は間違い無くあっただろうし、ファーウェイからも支那への資金供与はあっただろう事は想像に難くない。それは支那では問題にならない話だしね。
ただ、アメリカでは問題になるのだけれど。
そしてTicTocに対する攻撃
児童の個人情報を違法なやり方で収集
で、アメリカの貿易戦争第2弾という位置づけで動き出したのが、こちらのTicTocの話なのだろう。
ティックトックに制裁金6億円超、児童の個人情報違法に収集
2019年2月28日 11:12
FTCによると、ティックトックは児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act、COPPA)で求められている未成年ユーザーの保護者からの同意を得ていなかった。
米国内のティックトックの登録済みアカウント数は6500万件に上るといい、FTCによるとティックトックはユーザーに対して電子メールアドレスと電話番号、ユーザー名、氏名、略歴、プロフィール画像の提供を求めていた。
「AFP」より
若者中心に人気の動画アプリということらしいのだが、僕は利用したこともないし、今後もその予定はない。
問題とされているのは、アプリの仕様上、サーバーに動画をアップし、それをダウンロードさせるため、個人情報の収集というのは避けられない。にもかかわらず、「保護者の同意を得ていない」という理由で訴えられたと言うことで。
で、金で解決したというのが冒頭のニュースである。
支那では本人の同意すら得ずに人民の情報を収集しているわけだから、まさかこんな事で訴えられるとは、という空気感かも知れないが、しかし、現実的にそういった法律はあり、それに違反していたというのだから仕方が無い。
とはいえ、これも貿易戦争がらみの話だと推察される。
しかし、真意は別にある
そして、アメリカのもう1つの狙いは、国内への警告という意味合いもあるのだろう。
TikTok が支那の企業である事も日本国内では知られていないように、アメリカ国内で周知することでリスクを知らしめる狙いがあるのだと思う。
企業イメージというのは非常に大切なので、 TikTok にとっては「児童の情報を違法に収集」というのはかなりのダメージだと思われる。
米国の児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)では、ウェブサイトやアプリなどのオンラインサービスで児童からの情報収集や利用・開示に制限を設けている。FTCによれば、ミュージカリーのアカウントはデフォルト設定で別のユーザーが児童のプロフィルや写真、動画などを閲覧することが可能だった。
米国のマーキー上院議員(民主、マサチューセッツ州)は今回の罰金について「COPPA違反の課徴金としては過去最大だ。しかし、この金額はプライバシー侵害に巻き込まれる子供たちの危険や、他の企業による将来的な法律違反の抑止策を考慮すれば足りないくらいだ」と話した。
そして、こうした情報の蓄積こそが、アメリカが問題視している点なのである。もちろん、自国の企業がやっている事は(法律に基づいている以上は)問題視していないようだが。
日本でも問題視すべき話
この情報収集という点に関しては、かなり深刻な問題も含んでいる。
ファーウェイにせよ、TicTocを運営するバイトダンスにせよ、情報の収集によって何をするのか?というところを危惧しなければならない。
インドの「TikTok禁止」で強まる、中国バイトダンスへの批判
2019/04/21 11:30
インド政府は、グーグルとアップルに対し、人気の動画共有アプリ「TikTok」をアプリストアから削除するよう命じた。ポルノなど子供に有害なコンテンツが拡散することを防ぐためだという。
アプリを運営する中国企業「バイトダンス」は、現地の下級裁判所によるアプリの販売停止命令に異議を申し立てていたが、最高裁がそれを退けた。TikTokはインドで2億4000万回以上ダウンロードされており、MAU(月間アクティブユーザー)は1億2000万人に達する。全世界のユーザー数は5億人とされており、インドはバイトダンスにとって非常に重要な市場だ。
「Forbes」より
インドでも支那を警戒して、 TikTokを禁止する方向に舵を切っている。
日本では野放図に利用をさせているようだが、子を持つ親としても、この事は真剣に考えなければならないだろう。韓国企業によるLineアプリも、気軽に使っているが、東側に行ってしまったアノ国の企業を本当に信用して良いのだろうか?
日本は情報漏洩のリスクに対して鈍感すぎるのである。
まあ、アメリカ企業のapple、Google、Facebook、Amazonを警戒心なく使っているのもどうかと思うんだけどさ。
コメント
木霊さん、おはようございます。
>ファーウェイにせよ、TicTocを運営するバイトダンスにせよ、情報の収集によって何をするのか?というところを危惧しなければならない。
古来、支那が得意とする10~20年後を見据えた長期戦略が、蜘蛛の巣のように張り巡らされているって事でしょうか?
ITやサイバー空間だけに表面化しにくいけど、敵ながら賢い侵略を着々と進めてきたのでしょう。
>そして、こうした情報の蓄積こそが、アメリカが問題視している点なのである。
今後、この手の警告(制裁も伴う)が増えてくるのでしょうけど、日本も外圧ではなく独自に対策を考えないとけませんね。
日米安全保障でこの分野も適用されるニュースが出ましたが、すべて他力本願(というか、言われて初めてアタフタする低能ブリ)からそろそろ後手後手から脱却しないとね。
>韓国企業によるLineアプリも、気軽に使っているが、東側に行ってしまったアノ国の企業を本当に信用して良いのだろうか?
恥ずかしながら南朝鮮製でLINEだけは嫌だけど使っています、子供達家族に連絡網としてほとんど強制的にインストゥールされちゃいました。(大苦笑)
でも、孫たちの日常の画像・動画が簡単に送られてきますし、友人・知人もほとんど利用しているから無料電話も魅力ありますからね。
それでもメールは個人情報は書かずに注意し(もちろん決済には使いません)、簡単な連絡事項だけに留めていますけど、本質的な情報漏洩を考えると怖いですね。
P.S.
LINEが100億超の赤字とか...、代わりになる日本製のサービスが普及するきっかけになるといいのですけどね。
支那の長期戦略と言うより、アメリカの真似という風に感じます。
まあ、戦略として成り立つので、真似でも何でも良いんですけどね。
なお、僕もLINEを使わざるを得ない状況になって長らく経ちますが、イイカゲン足を洗いたいと思いつつ、ユーザーが多いので止められないのが現状であります。困ったものですね。