アメリカとの貿易交渉と対支那貿易戦争の影響

北米ニュース

昨日に引き続きアメリカ関連のニュースだ。

トランプ氏が来週、日本を訪れるかどうかは分からないが、ライトハイザー氏との交渉に絡んで気になる話があったので、言及しておきたい。

日米貿易交渉、デジタル貿易も対象に 車・農業を先行

2019/4/17 9:22

【ワシントン=飛田臨太郎】日米両政府は16日午後(日本時間17日午前)、閣僚級の貿易交渉の初会合を終えた。協議後に記者会見した茂木敏充経済財政・再生相は「農産品と自動車を含む物品貿易の議論を開始した」と表明した。物品の貿易交渉を先行する。物品に続きデータ取引も交渉対象に含めることで一致した。早期締結に向け、来週に再協議する。

「日本経済新聞」より

引用は日本経済新聞だが、流石に経済関係のニュースには力を入れているようだ。

アメリカは何しに日本へ?

日米貿易はデジタル貿易も対象に

この「デジタル貿易」という話が一体何なのだ、というのが先ずは気になる訳なんだが。

データ取引は米側が要求した。近年、拡大するデータを用いたビジネスを促進するための規定を設けることを検討する見通しだ。例えば、デジタル製品に関税を課さないといった取り決めが想定される。大きな制度変更は必要なく「両国がすぐに調整できる内容」(日本政府関係者)という。

これが何かというと、要は音楽データ、映像データといったものがまず対象になっているようだ。

ただ、この音楽データ、映像データ、書籍データなどは、ある意味、「モノ」にカテゴライズされるもので、どちらかというとアメリカの本筋はサービスにあると、その様に考えて良いと思う。

つまり、GAFAだ。

世界はGAFA規制へ

Google、Amazon、Facebook、Appleを略してGAFAで、日本人でも殆どの人は知っている企業で、すべてアメリカ企業である。

GAFAへの課税包囲網は狭まらない、「デジタル税」が難航する理由

2019.4.15

 GAFAに象徴される多国籍IT企業への課税強化を狙ったOECDやEU委員会の取り組みが具体化の段階に入ってきた。

 12日開幕した20ヵ国・地域の財務相・中央銀行総裁会議でも主要テーマの一つだが、EUが導入を目指した「デジタル税」は3月12日の閣僚理事会で、全会一致の賛成が得られず、「見送り」となった。

「DIAMOND online」より

このGAFAが世界的な覇権を握っていることはご存じの通りで、世界的にも問題視はされている。

何しろ、その合計時価総額は3兆ドルを超えると言われる巨大企業なのだから、驚き呆れるより他無い。そして、問題視されるのはアメリカの企業とは言え、日本国内で商取引が発生しても日本に法人税を納めていないという部分にある。

ヨーロッパでは既にデジタルサービスに課税する法律を作り始めているようで、日本も周回遅れながら動き出した感はあるが、先にそこに楔を打たれてしまった、なんて可能性もある。

GAFAに対抗するBAT

さて、ここに国を挙げて対抗しようとしているのがBATだといわれている。

米国勢GAFAと中国勢BATが繰り広げるデジタルの覇権争い(前編)【第12回】

2018年10月9日

 米国と中国。この両国を代表するデジタルプラットフォーマー達は当初、それぞれが手掛ける事業領域が異なっていた。それが、デジタル技術を駆使した戦略的事業の拡大に伴い、多くの事業領域で直接的な競合関係が生まれつつある。

 米国勢の「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」などと、中国勢の「BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)」らデジタルプラットフォーマーを中心に現在、市場で熾烈な競争が繰り広げられている事業領域は、以下の13分野に整理できる。

「デジタルクロス」より

Baidu、Alibaba、Tencentというのが支那の切り札なのだが、しかし支那では通信をブロックしたり、国内でGAFAの蔓延を防ぐ為にしようが出来なくしたりと、国を挙げて対策をしている。

GAFAへの人材流出

もう一つ問題になっているのは人材流出の問題だ。これは貿易そのものが問題という話では無いので、今回の話に直接的に関係が無いのだが……、GAFAは人材をどんどん吸収していってしまう事が問題視されている。

日本は「超エリート」をGAFAに奪われている

2018/09/26 11:00

グローバルな人材競争が過熱しています。オリンピックなどスポーツの世界では、裕福な国家は国籍を付与することで優秀な選手を自国に集めようと考えていますよね。私のいるアカデミアの世界でもそれは同じです。

日本のトップ校である東京大学は、アメリカの大学院留学のための予備校になっています。優秀な先生が良い推薦状を書いてくれて、アメリカへ渡ることができる。特に経済学などの分野でそうですよね。やがて日本に帰国する人もいますが、最も優秀な研究者はアメリカや諸外国に残ります。

「東洋経済ONLINE」より

これは、日本の経済界の問題でもあるのだが、国としても政策的に対策を打たないと気がついたら国内に有能な人材が枯渇なんて話になってしまう。

とはいえ、デジタル貿易の話をアメリカとしたことは、日本にとってマイナスな部分だけでもない。少なくともアメリカは知的財産権は保護する立場にあるので、話を付けられる余地はあるのだ。

結局、貿易戦争の流れ弾にあたる

無関係ではいられない日本

そうした事を考えると、この日米物品貿易協定(TAG:ただし、アメリカ側はFTAのつもり)の構造は、かなり恐ろしい事でもある。

日本は農業の関税下げについて環太平洋経済連携協定(TPP)などの水準が最大限と改めて主張した。TPPの発効で米国の農家は競争環境が不利になりつつある。茂木氏によると、米側からは「こうした状況を早く解消したい」との要望があった。米国が過去に一度、大筋合意していたTPPでは日本は38.5%の牛肉関税を16年目に9%に下げるとしていた。

日本側の主張は、既に一度合意したことだから、それが最低ラインだという話で、ここは最終的にはアメリカも飲むのだろう。

だが、本丸は別だと言うことをしっかり認識しなければならず、日本政府がTAGに拘る理由もそこにある。

ただ……、日本側にも別に弱味がある。

通貨安誘導を禁じる為替条項については、茂木氏がライトハイザー氏に対し「17年2月の首脳会談で財務相間で議論すると合意している」と伝えた。為替はTAG交渉の対象外との日本側の方針を示した。ムニューシン米財務長官はTAG交渉に先立ち「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」と述べていた。

為替誘導を疑われている部分があり、これは日本側としては苦しいのである。

そして問題になる輸出管理改革法

実は、日米の貿易に関する会談で問題になるのは、アメリカの輸出管理改正法(ECRA)である。エクラ、で検索してもあまり出てこないのだが、これが今後大きな問題になることは、容易に想像できる。

輸出規制対象とする新興技術のパブコメ開始

2018年11月22日

商務省産業安全保障局(BIS)は11月19日、2018年輸出管理改革法(ECRA、注1)に基づき輸出規制対象とする新興技術(emerging technologies)の特定方法に関する[パブリックコメントの受付を開始した。ECRAは、既存の輸出規制でカバーしきれない新興技術の中で、米国の安全保障にとって必要な技術を省庁間で協力して特定し、輸出規制の対象とすることを定めている。今回のパブコメは、この省庁間プロセスに資する意見募集を目的としたもの。

「JETRO」より

政府系のところは、それなりに気にしているようだが、経団連などはかなりゆるゆるである。

特定された個別の新興技術は、米国の輸出管理の対象になり、(1)米国からの当該技術の持ち出しや、(2)当該技術の付加価値が一定以上含まれた製品の日本など外国から第三国への輸出(再輸出)についてBISの許可が必要になる。

特にここが問題になる可能性がある。

支那と組むアホ企業

既にちょっと過去の話になりつつあるが、NTTなど通信大手が支那と組んで5Gを開発しようとしていた。

中国勢、5Gのインフラ・サービスで提携加速 アジア最大の通信見本市開幕

2018/6/27 11:45

【上海=大西綾】アジア最大の携帯・通信機器の見本市「モバイル・ワールド・コングレス上海」が27日、開幕した。2019年に本格的な商用化を目指す次世代通信規格「5G」の覇権を巡って、中国勢は海外企業との提携などに動き出している。すでに5Gの規格は標準的な仕様へと統一されており、競争軸はサービスの開発力に移っている。

「日本経済新聞」より

しかし、この後に起きた事件で日本の企業は掌を返さざる得なくなる。

日本勢4社、5G設備で中国製品使わず 政府に配慮

2019年4月11日06時00分

高速移動通信方式「5G」の周波数を割り当てられたNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯事業者4社は、サービス開始に向けて整備する通信インフラ設備に華為技術(ファーウェイ)など中国製の機器を採用しない方針だ。米国の呼びかけを受けた中国製品を事実上排除する政府の申し合わせに配慮した形となった。

「朝日新聞」より

こうした話は出てきているが、しかし、日本の通信社は数年前は本気でファーウェイと組む積もりでいたのである。

トヨタ・日立、中国スタートアップと相次ぎ提携 【イブニングスクープ】

2019/4/15 18:00

トヨタ自動車、日立製作所など日本の主要企業が中国のスタートアップと相次ぎ連携する。トヨタは車載電子機器、日立はフィンテックの開発で現地の新興企業と協力を決めた。中国では起業熱の高まりを受けフィンテックなどの有力企業が次々に生まれ、エアバスなど欧米勢も連携を進める。中国発の技術を世界大手が競って取得する傾向が強まり、革新の軸が先進国からアジアに移りつつある。

「日本経済新聞」より

それの後を追うようにして支那との提携を考えているのが自動車業界なのである。日本の基幹産業とも言える分野だが……。

コラム:買いたたかれたJDI、屈辱的救済でも他に選択肢なし

2019年4月15日 / 14:39

[香港 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中小型液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)が救済受け入れに合意したことは、日本政府にとって何とも体裁が悪いが、避けては通れない動きだった。JDIには企業連合が最大800億円(7億1400万ドル)を投じ、最終的に約3分の2の株式を取得する。液晶分野で日の丸を背負って誕生した企業としては安く買いたたかれてしまった形だ。企業連合には中国勢も含まれるので、今後の手続きに米国から待ったがかかる可能性も出てくる。それでもJDIの経営陣は、この救済措置が実現に至ることを祈る以外に道はない。

「REUTERS」より

そして、白物家電をはじめとして、家電系の企業は日本でほぼ全滅である。

何処がシェアを伸ばしているかは説明するまでも無いだろう。

しかし、「アホ企業」というタイトルは付けたが、止むに止まれぬ事情も色々とあるのは事実で、一概に責められない。責められないが……、敢えて毒まんじゅうに手を伸ばすのは情けない。

ECRAと貿易戦争

何故、「アホ」なのかは、ECRAの話を絡めて考えるとかなり深刻である。

ご存じの通り支那は知的財産の分野で、非常にあくどいことをやっていて、他人の技術を盗んで自国の製品を作って安く売るという戦略で、世間を席巻した。

トランプ氏はこれに怒り、アメリカ企業が損をしないように支那と経済戦争を仕掛けた。

そして、「支那に技術を盗まれない」というのが大切で、アメリカの技術が日本企業を経由して支那に技術が流れることも警戒している。

つまり、支那と組んで研究開発するアホ企業はアメリカとの取引を切られる可能性が高いのだ。事実、日本の通信会社が日本政府がファーウェイ製品を忌避せざるを得なかった為に、これに巻き込まれた。

似たような話は十分に起こりえるのである。

政治と経済は分離できない

良く、「政冷経熱」などといって、政治と経済は別だと主張される方も多いが、これは大きな間違いである。

何故ならば、特に支那などは、国内企業ほぼ国策企業なので、付き合えば政治の影響を大きく受けてバカを見る話になる。

これはアメリカだろうが韓国だろうが似たような話で、まだ、アメリカはマシな相手といえるかも知れないね。

国益を最大限に守るような判断をお願いしたいモノである。

……なお、この交渉で「消費税増税」の話が出る可能性は高いので、その点においても日本国民としては注視しておきたいところ。

コメント

  1. マスメディア反乱軍 より:

    木霊さん、おはようございます。

    アメリカとの貿易摩擦は古くからありましたが、かなり形を変えた規制法で攻め立てるつもりというのがよく判る記事でした。

    IT・デジタル化・半導体の急速な進歩があるのですし、それらはコンピューターやスマホに限らず自動車に代表されるように、大量消費が見込める分野に爆発的に浸透しているのですから、当然といえば当然の流れなのでしょう。
    トランプ大統領が狙う支那封じ込めの本丸も、知的財産権や最新技術譲渡を強要する悪辣な国叩きなのも理解できますね。(ビジネスが判っている大統領って事かな)

    その悪辣な国の膨大な購買力だけに目が行って、共産党独裁の怖さやリスクを見ようとしない「アホ企業」には本当に困ったもんです。
    しかもタチの悪いのはトヨタや日立など超大手が率先している事で、世界を引っ張る日本企業としてのプライドなんかとうの昔にドブに捨てちゃったんでしょう。

    諭吉翁が殖産を説いたのは政府に頼らず(もっとも当時の日本政府には金がなかった)、企業人は優れた産業で起業し国家・国民に貢献する高い意志を持てだったはず。

    しかし、現実はリーマン・ショック等が起き危機に直面したら、真っ先に財政出勤・法人税減税をオネダリするのがこの「アホ企業」のバカトップどもです。
    さらに、雇用を守る責任感もゼロのようで、これまた真っ先に人員調整に走り保身を図るのも「アホ企業」...。
    経常が10兆円を超えたと自慢していた時に、「来るべき危機に備えて内部留保する」と言ってたクセにこの始末ですから、本当に自分のオシメくらい自分で替えろよな!!(怒&軽蔑)

    僕は支那以上の購買人口があり潜在成長が見込める、インドをパートナーにするべきと考えています。

    • 木霊 より:

      このデジタル貿易の話がどう進んでいくかとか、デジタル貿易がどうなったら日本にとってメリットがあるのかとか、その辺りまで踏み込めたら良かったんですが。
      しかし、取り敢えずルールを決めるというようなスタート自体は良かったのかも知れません。変なルールを飲まされることは、今の政権ならば無いかも知れません。
      ただ、何れにしてもタフな交渉が必要であり、国民はその中身を知らねばなりません。