再エネ支援政策を見直しで、大規模太陽光発電からの買い取りを除外に

電力

固定価格買取制度(FIT)で、大規模太陽光発電の発電所を除外することにするようだ。大規模な太陽光発電施設はもう増やさなくて良いと、そういう事だね。

大規模太陽光発電、買い取り除外に 再エネ支援策見直し

8/5(月) 11:04配信

 再生可能エネルギーでつくった電気を大手電力会社に全量買い取ってもらえる固定価格買い取り制度(FIT)について、経済産業省は5日、新設の大規模な事業用太陽光発電と風力発電を対象から外す見直し案の概要を公表した。これにより2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降に本格化した再生エネの支援策は転換点を迎える。

「朝日新聞」より

え?再生可能エネルギーの比率を増やさなくても良いの?

……これで良いのですよ。

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「全量買い取り」は成立しない

FIT制度の見直し

そもそもこの話、再生可能エネルギーで作った電気を大手電力会社に「全て」買い取って貰えるという、非常に歪な制度としてスタートしたところが既にヤバかった。

だって、発電効率の悪い発電方法で作った電力を、割高な料金で全て買い取れって、大手電力会社はそれを料金に上乗せできるとは言え、限界があるよ。

賦課金等について|東京電力ホールディングス株式会社
東京電力HD「賦課金等について」のページ。東京電力ホールディングス株式会社は、東京電力グループの持株会社です。福島第一原子力発電所事故の「責任」を果たし、エネルギー産業の新しい「競争」の時代を勝ち抜いていくために、大きな変革を実行してまいります。

こちらに電力会社の説明があるのだが、要は消費者が負担しているんだよ、再生可能エネルギーで発電した電力の分は。

文字だけでは分からないのだけれど、これがなかなかヒドイ話で。

かなり多額の割賦金を消費者が負担していることになる。今年あたりは一般家庭で1200円分くらいは負担しているんじゃ無いだろうか?

下手すると、支払っている電気料金の何割かはこれに充てられるような状況である。しかしそれは本末転倒だろう。

消費者がどの程度までだったら負担するか?という事を考えると、精々1割くらいのものでは無いだろうか?

となると、流石にこれを続ける事は制度的に無理がある。

一部過激な人の主張では電力会社が全額負担しろとか言う話も出ては来るようだけれど、それは現実的な話では無い。結局、再生可能エネルギー割賦金で賄わなければ、再生可能エネルギーは普及しないようなシロモノだったのである。

大規模太陽光発電の電力は、何が都合が悪いのか

先ず、太陽光発電は、初期投資をしてしまえばあとは電気を売るだけで儲かるというかなりボロい商売である。

何しろ、発電すればするだけ買い取って貰えるのだから。

案外簡単に壊れるので、不幸な事故が起こる目も当てられない惨状にはなる。

また、こうした被害は住宅向けの保証によってカバーされる場合はあるが、隣の家を破壊するようなケースでは免責事項になるらしい。要注意だな。

さておき、こうしたダメージを受けず、電力設備も故障しなかったとして、電力は全量買い取って貰える。一般家庭で発電できる電力量はたかが知れている。

しかしこれが大規模な発電所ともなると、地域の電力会社の発電する電気に対しての比率が大きくなり、電力コントロールに大きく影響する。

電力会社は曇りの日や雨の日は発電が殆ど期待できないとして、安定的な電力供給を実現できるように、火力発電所など、応答性の高い発電方法に頼らざるを得ない。

電力の安定供給というのは、電力各社に対して課される使命のようなものだが、ある電力量を超えてしまうと、電力会社は吸収できなくなってしまい、法律に反することとなる。

だから、「電力会社が買い取り拒否をする」などという話もあったが、もう今までの方法だけでは追いつかない。だからこそ、大規模太陽光発電はお断りしたいというのが電力会社の偽らざる本音なのである。

その他のFITは維持する予定

しかし、太陽光発電以外の再生エネルギー発電に関しては、まだFITの維持を続けたい意向だ。

 大規模の地熱発電や中型の水力発電は、費用や事業リスクが高く新規導入が進んでいないとして、開発段階での費用補助などの支援策を検討する。住宅用と小規模事業用の太陽光発電、小規模地熱、小型水力、バイオマスは、地域振興や災害時に役立つとして、当面はFITを維持する。

「朝日新聞」より

なんとか推進をしたいようだけれど、小型水力なんかは電力会社としてもそれなりに有望視しているので、増やして欲しいのだろうね。安定した電力供給が期待できるし。

 見直し案は5日午後の有識者会議に示す。今秋に詳細を詰め、来年の通常国会にも改正法案を提出し、21年度以降の実施を目指す。

「朝日新聞」より

再来年には法改正か。

折角なので別の記事も見ていこう。

事業用太陽光、入札制に=FIT見直しで中間整理案-「保護から競争へ」・経産省

2019-08-05 21:58

経済産業省は5日の有識者会議で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを大手電力会社が定額で買い取る「固定価格買い取り制度」(FIT)について、抜本的見直しに向けた中間整理案を取りまとめた。発電コストの低下を背景に、事業用太陽光と風力発電は順次、競争入札制度に移行させる方針を明記。FIT対象からも外していく計画。

「時事通信」より

おっと、風力発電も視野に入っているということらしいぞ。

冒頭の朝日新聞では丁寧に説明されていないが、時事通信では発電コストの低下が進んでいることが理由だとしている。

世界的にFIT制度は維持できなくなっている

ドイツ辺りでは太陽光発電の価格はかなり低下

さて、この流れは実はちょっと前から来ていて、そもそもFIT制度を日本より先に進めているドイツではかなりコストが下がっていると言われている。

「大規模事業者でも厳しい」 太陽光「買取額引き下げ」に悲鳴

2019/2/ 3 17:00

 かなり厳しい水準だ――太陽光発電にかかわる関係者から、こんな悲鳴が上がっている。
   悩みの種は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づく事業用太陽光発電(10キロワット以上500キロワット未満)の買い取り価格だ。これが、2019年度は大幅に引き下げられることになったのだ。

~~略~~

 ちなみに、経産省の調べでは、世界の太陽光の発電コストは2017年上半期で、平均して1キロワット時あたり9.1円、日本と同様にFITの国民負担が問題になったドイツでも2018年の買い取り価格は同8.3円まで下げている。

「J-CASTニュース」より

しかし、J-CASTニュースでは「業者はそれではやっていけないと言っている」という論調で締めているが、じゃあ、ドイツは何故そんなに値段が下がっているの?というところには突っ込めていない。

値段が下がった理由は簡単で、発電効率が上がったことと、設備コストが下がったことが影響している。

では、何故、日本の業者はやっていけないのか?不思議ですね~(棒)

まあ、早い話、業者の見通しが甘い、と、それだけの話なんだよね。

日本では制度設計がおかしかった

そもそも日本のFIT制度は、政商と名高い孫正義が暗躍して民主党政権時代に作り上げられたシロモノである。

その当時は、1Kw辺り42円で買い取るというとんでもない設定になっていたが、ドイツ辺りではその時点で24円程度に価格が下落していたのだから、如何に阿漕な政策を進めようとしたのかがよく分かる。

完全にドル箱だろう。

これを悪用して、日本各地に大規模太陽光発電施設を作る業者がアホほど出現することになる。

景観が失われ、血税はムダに FITが生み出した“太陽光バブル”のツケ

2019.6.30 08:50

 経済産業省が、太陽光や風力でつくった電気を、電力会社が決められた価格で買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」の終了を検討している。6月12日に日本経済新聞が報じ、その後、各紙も同様に報じている。経産省からの正式な発表はまだないようだが、FITの終了は以前から予想されていたことだ。終了が事実だとしても、政府の対応は遅すぎるぐらいだろう。

「産経Biz」より

制度設計がおかしかったのだから、何処かで終止符が打たれることは当時から想定されていた。だからこそ、ソフトバンクは早い段階で売り抜ける作戦をやった。

そして、それに追従した業者が跳梁跋扈した結果どうなったかというと、こんな感じの景観が日本各地に現れることになる。

これが、「クリーンなエネルギー」という印象が先行したために、反対者も少なかったのだが、現実的には褒められた話では無い状況である。

休耕田などを利用して発電すれば良いじゃ無いか!土地の有効活用だ!という人もいるが、無人の野に太陽光パネルが並ぶ様は、哀しくなる光景だと個人的には感じる。

屋根に太陽光発電パネルが乗っかっているのも、風情が無いと感じるのだ。とはいえ、我が家にもあるんだけどね。

厄介な逆潮流

さて、僕の感傷はともかくとして、制度的には時限立法的なやり方しか成立し得なかったところを、「後で考えればいいや」と先送りした制度ではあったが、流石に今の政権は「不味いだろう」と考えていて、色々と手を打ってはいる。

基本的には消費者に負担させる額が増大する一方だから、本来の制度趣旨から外れるという話だ。

しかし、太陽光発電がふえると「逆潮流」の問題も出てくるため、そちらの方が問題としては大きい。

再エネ発電量調整技術開発 松尾建設が特許取得

2018/11/13

松尾建設(本店・佐賀市、松尾哲吾社長)は、太陽光などの再生可能エネルギーの発電量を調整できる技術を開発し、特許を取得した。電力の需給バランスが崩れると大規模停電が起きるため、九州電力は火力発電や揚水発電などで対応できなかった場合、太陽光発電の出力制御を実施してきた。現状の出力制御では発電量はゼロになってしまうが、この技術があれば発電量を半分や8割に設定できるという。

「佐賀新聞」より

この記事にもちょっと出ているが、本来、電気は発電所から消費者の側に一方通行で流されるように設計されているのだが、一部の消費者が供給をする太陽光発電では、電力が逆方向に流れるような事態が起きる。

この逆潮流の電力でも、その量が小さければ問題は無いのだが、発電設備を持つ工場なんかが休みになって、どんどん太陽光発電による電力が電力網に流される場合には、その供給量が不安定であるために、電気事業者側で電力の増減を制御する余力がなくなり、結果的に電力供給がストップしてしまうような事態が生じる場合がある。

北海道胆振東部地震(平成30年:2018年9月6日)によって北海道がブラックアウトした事件は記憶に新しいと思うけれど、あれは供給量が少なくて問題になったケースである。しかし電力網に供給される電力が多くてもまた問題になる。

太陽光発電は、天気に左右される性格があるので、電力としては厄介な部類で、電力の安定供給にとっては、その量が増えれば増えるほど対応が難しくなる。

蓄電池を備えれば対応可能

もちろん、太陽光発電所が蓄電池を備えていて、安定的な電力供給に寄与してくれるのであれば、太陽光発電のネックになる部分をある程度は解消できる。が、技術的なハードルが高くてなかなか実現困難である。

蓄電池を使わず太陽光の電力を“預けて”活用、東電が卒FIT向け新プラン

2019年08月07日 07時30分 公開

東京電力エナジーパートナーは2019年8月6日、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度」による買い取りが満了となる住宅太陽光発電ユーザー向けの新サービス「再エネおあずかりプラン」の詳細を公表した。蓄電池を設置せずに太陽光発電の余剰電力を活用できるのが特徴のサービスで、同年9月9日から申し込み受付を開始する。

「スマートジャパン」より

こんな面白いプランも家庭向けには用意され始めているようだ。

太陽光の「卒FIT」で需要拡大か、家庭用蓄電池市場は1000億円規模へ

2019年04月04日 07時00分 公開

 日本能率協会総合研究所(JMAR)は2019年3月、日本国内の家庭用蓄電池市場に関する調査結果を公表した。それによると、日本国内の家庭用蓄電池市場は2020年度に1000億円、2023年度には1200億円に拡大するという。

「スマートジャパン」より

家庭用蓄電池は今後市場拡大するといわれているのだけれど、太陽光発電と蓄電池の相性は良い。

家庭用の小水力ってやつも結構イイとは思うんだけど、メンテナンスがなぁ……。

行政の作為による不自然な優遇が終わる

そんなわけで、ようやく正常化に向かおうというのが、日本のFIT政策の現状なのだけれど、太陽光発電や風力はそもそも日本ではあまり具合が良くないんだよね。

それを推進しちゃったのが運の尽きというか。

家庭用レベルで留めておけばまだ良かったんだけどさ。

何にせよ、色々と電力行政も変わっていくようではある。

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